最終防衛学園 ~貞操危機編~   作:ゼフィガルド

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今日は川奈さんの誕生日ですね!!!


【好き好き編】35日目

 最終防衛学園で迎えた35日目。現在、拓海へのアプローチ全てに失敗し、ヒロインレースに置いて川奈は絶望的だった。

 食堂に響くクラスメイトの溜息。『今回のTLの川奈は面白黒人枠ね』という声。無言で出て行く特防隊メンバーの中、川奈は1人泣いていた。

 【デスゲーム】TLで手にしたヒロインの立ち位置、熱愛、感動。そして、信頼できる仲間達。今のTLで得ることはほとんど不可能と言ってよかった。

 

「どうすればいいの……」

 

 川奈は1人悔し涙を流し続けた。どれ位経ったろうか、川奈ははっと目が覚めた。どうやら、泣きつかれて眠ってしまったようだ。突っ伏していた、ひんやりしたテーブルの感覚が現実に引き戻した。

 

「やれやれ。帰って、開発の続きをしなくちゃ」

 

 川奈は苦笑しながら呟いた。立ち上がって伸びをした時、ふと気づいた。

 

「(アレ? 特防隊メンバーが少ない)」

 

 顔を上げた彼女が目にしたのは、空席の目立つ食堂だった。重苦しい空気の中、拓海が必死にまくし立てて場を明るくしようとしている。

 どういうことか分からずに呆然とする川奈の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「つばさちゃん。彼氏が必死に話しているんだから、盛り上げてよ」

「お、面影?」

「どうしたの? つばさサマ?」

「飴宮さん?」

 

暫時、唖然としていた川奈だったが、全てを理解した時、もはや彼女の心には雲一つなかった。

 

「澄野!!」

 

 面影に送り出され、澄野の元へと駆けよる川奈。その目に光る涙は悔しさと無縁の物だった。

 翌日、食堂で冷たくなっている川奈が発見され、丸子と銀崎は病院で静かに息を引き取った……。

 

~~

 

「って、夢を見たのよね」

「知るか!!!!」

「バカじゃないんですか?」

 

 食堂の片隅にて、川奈は丸子と銀崎に愚痴を漏らしていた。

 現在、拓海とお近付になりたいが、粗相が混み過ぎて相棒枠のブービーを突っ走る3人である。

 先頭を走る雫原やイヴァー達。ここに霧藤というダークホースまで参戦して来たのだから、いよいよ彼女達の立場は危うくなっていた。

 

「このままじゃ、私は暴力と開発以外に取り柄のない女になっちゃうよ!」

「特防隊メンバーとしては満点ですね」

 

 女子でブービーを走るのが川奈だとすれば、男子でブービーを走る銀崎が笑顔で言っていた。

 拓海的に言えば、1周目の彼は卑屈ではあったが心優しい少年だったはずだ。現在ではネットミームを振りかざし、人を煽りまくるクソ野郎となっていた。

 

「もう、ゲロ交換した時点でレース復帰は無理だろ。諦めて、暴力ゴリラの道を進んどけば?」

 

 丸子が多少余裕をもって話しているのは、2人と違って拓海とゴニョゴニョした経験があるからだろう。だが、川奈は納得していなかった。

 

「ここから一発逆転する方法とかは……」

「もう、アイスティーを飲まして昏睡レイプする位しかワンチャンスありませんよ」

 

 自分から可能性を潰していくのか……。と、丸子は小さく呟いたが、彼女が一考している所を見るに、相当に視野狭窄に陥っているらしい。

 

「つうか、普通に接しろよ!! ゲロ交換だの発明品だのじゃなくて!」

 

 丸子でさえ見かねるレベルの遣り取りをしていたので、つい声を上げてしまった。だが、川奈と銀崎は唸るばかりだった。

 

「普通って何だっけ?」

「分かりませんね。まず、普通の定義を始める所から……」

「娯楽室で遊んだり、リラックスルームで一緒に泳いだりとかで良いんだよ!」

 

 どうにも能力故に常識とか普通が滅茶苦茶になってしまっているらしい。だが、彼の提案には一つの問題があった。

 

「でも、丸子さん。アレを見て下さい」

 

 銀崎が指差した先。そこには、昨日と違ってぱっちりと目を覚ました拓海が皆に囲まれて、楽しく朝食を取っていた。

 

「たっくん! だし巻き卵を焼いてみたの。どうかな?」

「うん。美味しい! マジで美味い!」

 

 蒼月や自分が近付くと多少警戒した色を見せる筈の拓海が本当に楽しそうに食事を取っている。隣には白い制服に着替えて、髪型も変えた霧藤が『あーん』をしている。その付近では第2防衛学園の女子陣が囃し立てている。

 

「これぞラブコメの覇道でござるな。拙者らが求めているのはジャンプ的なラブコメであって、DLsiteやFANZAの次元ではないのでござるな」

「そこはせめて、ヤング○○とかで例えなさいよ!! ド直球過ぎでしょうが!」

「なんか居心地良いわ~」

 

 ねっとりドロリとした空気の中に爽やかに光る青春の風。猥褻な心を持つ者達の罪を咎めるかのようだった。

 

「な、なぁ。今からでも。あそこに混じって来て良いかな? 俺ならギリセーフじゃね? お前らみたいにヤバくないし」

 

 この期に及んで、自分は違う感を出す卑小さが受け入れられるかどうかはさておき。川奈はいよいよ頭を抱えていた。

 

「このままじゃ、同級生って位しか接点が無くなる……」

「ダメみたいですね」

 

 銀崎が追い打ちを掛けていたが笑いごとではない。このままじゃ、自分がヒロインレースはおろか、同じ学園内にいる妙に便利で強い奴。とか言う、Gジェネオリジナル軍みたいな印象しかなくなる。それは避けたかった。

 

「(何とかしないと)」

 

 和気藹々と食事を取る拓海達を傍目に、川奈はもっそりとした動きで食事を取っていた。緊張やら何やらで妙に酸味が強かった気がした。

 

~~

 

「(今日なんだか、いつもより行動できそうだな)」

 

 丸一日、ぐっすりと睡眠をとったお陰で拓海の体調は万全だった。朝食も楽しかったし、午前中は霧藤を誘って一緒に過ごそうかと考えていると、ピンポーンとインターホンが鳴った。

 この部屋に人が来るのは珍しいことでも無いので、拓海は警戒することも無くドアを開けた。川奈がいた。

 

「ねぇ、澄野。……今、時間。ある?」

「あ、いや。大丈夫だけど」

 

 知らず内に緊張していたのか、拓海の声は固かった。無理もない。それだけ、先日の一件は強烈だった。

 部屋に招き入れるべきか迷ったが、玄関先で立ち話をするのも何だと言うことで、彼女を上がらせた。……どうにも雰囲気がいつもと違う。

 

「(なんか、いつもと雰囲気が違う)」

 

 2周目において、川奈のイメージは常に突っ走っている暴走車のイメージがあった。暴力にせよ、開発にせよ。彼女は出来ることが多いので、色々なことをして来るし、拓海もよく弊害を受けている。

 なので、彼女と対面するときは大抵緊張するのだが、どうにも今日の彼女はしおらしい。なので、彼の方から切り出した。

 

「ど、どうした? オレになんか言いたいことが?」

「う、うん。ちょっと、言いたいことが……うぶっ」

 

 見る見る内に彼女の顔色が真っ青になって行く。最近は単純な不快感で吐く場面を多く見ていたが、本来の彼女は緊張感に極度に弱く、それが嘔吐に繋がるという体質の持ち主だった。

 拓海は迷うことなく、トイレを解放した。直ぐに川奈は駆け込んで、朝に食べた物を戻していた。出す物を出し切って、口の中を濯いでいた。

 

「大丈夫か?」

「……うん。ごめんね、言わなきゃいけないことを言いに来ただけなのに」

 

 普段は暴走気味な彼女だが、今回は言葉を選んでいる様で。中々に出て来ない様だった。暫く待って、ようやく絞り出した。

 

「その、澄野は怒っている? この間、ゲロ……を飲ませたことについて」

 

 普通の人間ならブチギレる所からそのまま絶縁しそうな物だが、拓海は何とも言えない表情をしていた。

 

「怒っていない。とは言わない。でも、なんであんなことしたんだ?」

 

 話を聞くだけ相当に有情な対応だった。当の川奈と言えば、緊張から来る吐き気もあって、朦朧としていた。

 

「だって。皆が好き好きにやっているから、私もやりたいことをやっても良いかなって……。澄野に私の全てを受け止めて欲しいと思ってやっちゃって。でも、冷静になってみれば、ヤバかったことに気付いて」

「もっと早くに気付いてほしかったよ」

 

 出来れば、やる前に。と付け加えようとしていたが、川奈があまりに気落ちしていたので、追撃を加える気にはなれなかった。

 

「だから、謝りに来たの。ごめん。あの時の私、本当にどうかしていた。だから、嫌いにならないで……」

 

 川奈がボロボロと泣き始めたので、拓海も慌てていた。こちらの方が被害者であるはずなのに、悪いことをしている気分になった。直ぐに返事をした。

 

「そりゃ、ビックリもしたし。イラっともしたけれど。オレが川奈のことを嫌いになる訳無いだろ。こんなに頑張ってくれているのに」

 

 拓海がヴェシネスに拉致された時、並み居る侵攻生物達を蹴散らしてやって来たのは川奈だった。イヴァーに拉致されそうになった時も、最後まで立ちはだかったのは彼女だった。

 素行や性癖については置いておくにしても、自分の為に頑張ってくれている人間を嫌いになる訳がない。という答えは、最初から拓海の中に在った。

 

「本当?」

「本当だよ。ただ、もう少し落ち着いてくれると……」

 

 嬉しいかな。と、言い切ろうとした所で抱き着かれていた。

 皆の好意や行動が重く感じることが無い訳ではないし、傍目には不快に映る物もあるかもしれないが。それでも、向けられた好意をぞんざいに扱うつもりはなかった。

 

「……好き」

 

 ポツリと呟かれた。彼女から向けられている好意は愛の領域にある物だとは思うが、今の自分がどれだけ彼女のことを気にしているか。と言うことは、拓海自身にさえも分からなかった。

 

「ありがとう。オレも好きだよ。今はまだ、友達として」

 

 これからどう変わっていくのかは分からないが。少なくとも、この謝罪を持って。数日前から抱いていた悪印象が和らいだのは事実だった。暫く、互いに何も言わずに抱き合っていた。

 

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