最終防衛学園 ~貞操危機編~   作:ゼフィガルド

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【好き好き編】35日目 その3

 時間は少しだけ遡る。澄野の服をはぎ取った川奈であったが、イヴァーの暴力には敵わず、結局絞め落されていた。

 

「本当に川奈さんは謝罪していたのかな……」

 

 白目を剥いて気絶している川奈を見ながら、霧藤は思っていた。ゲロ吐いたり、服をひん剥いたり。敵対すら思わせる蛮行の数々だった。

 

「好意が振り切れて、頭がおかしくなっているのよ。それよりも、今の澄野は全裸だから、服を持って行って上げないと」

 

 イヴァーが部屋のクローゼットから下着やらTシャツやらを取り出していた。

 そうだ。今の拓海は全裸で学園を徘徊しているのだ。その経緯を知っているのは自分達だけなので、何も事情を知らない者達からすれば変態にしか見えない。……いや、今更。全裸の変態程度でどうこう言う風紀でもないが。

 

「とりあえず。先に、くららちゃん達にも説明しておかないと!」

 

 霧藤は冷静だった。彼女には仲間に頼るというアイデアがあったからだ。

 直ぐに娯楽室へと向かい、上映会の準備をしていた皆に事情を説明した。開いた口が塞がらない様だった。

 

「なんだろうね。前までは驚いていたんだけれど、怠美達以外の特防隊メンバーだったら、それ位やるだろうね。って、嫌な信頼感があるよ」

 

 もはや、飴宮は驚くことすらなくなっていた。一旦、上映会のスケジュールを遅らせることにして、全員がプレゼントマシーンで下着とTシャツを作った。校舎を徘徊する拓海を見つけ次第保護する為だ。

 

「もし、蒼月とか銀崎とかに見つかったら、碌でもねェことになるだろうからな」

「男に見つかった方が貞操がヤバくなる学園って……」

 

 厄師寺の懸念は正にその通りなのだが、改めて噛み締めてみれば貞操観念どうなってんだと思わざるを得ない。大鈴木はトマトの被り物をポコポコと叩きながら、思い悩んでいた。

 

「とりあえず! 澄野君を見つけ次第確保よ! アタイ達が恥ずかしがったり、ドン引きしたりしないこともちゃんと説明しながらね!」

「ウム! 今更、全裸で怯む拙者らでござらん!!」

 

 喪白と凶鳥の言葉は頼もしくはあるのだが、見る側が大丈夫でも、見られる側まで大丈夫という訳ではない。

 

「それじゃあ! 皆! 探しに行こう!」

 

 霧藤も同じ様にTシャツと下着を持って探しに行こうとした時点で、全員の視線が向けられた。

 

「「「「「あんたは残れ!!」」」」」

「なんで!?」

 

 それは拓海の尊厳というか、そういう所に絡んだ話になるので、霧藤に説明するには多少の時間を要することになった。

 

――

 

「なんだか、澄野君と一緒に全裸徘徊できると思わなかったなぁ。なんだか、ワクワクしちゃうよ」

「オレは今、心臓がバクバクしているぞ」

 

 現在、拓海達は屋上へと向かおうとしていたのだが、そうはいかなかった。というのも、屋上へと続く扉の前に、何故か蒼月が待機していたからだ。何やら、今馬と話し込んでいるらしいが、会話は聞き取れない。

 

『あのゲロ女が拓海クンの衣服を剥いだらしい。可哀想に、彼は今。全裸で校舎を逃げ回っているんだ』

『それは大変っす。自分達が保護しないといけないっすね』

『保護した後は、丁寧に慰めないと』

 

 と。背後から、面影が彼らの喋っていることを説明してくれた。彼曰く『読唇術』だそうだ。

 

「澄野君。どうする? 彼らになら別に全裸を見られても問題ない様に思うけど」

 

 既に2人とはモニョモニョしているので、見られた所で……といった気はするが、彼は首を横に振った。

 

「い、嫌だ。今日は霧藤が誘いに来てくれたんだ。サラリと済ませて、一緒に映画を見るんだ」

「澄野君が自分でしたいことを見つけてくれて嬉しいよ」

 

 面影が拓海に芽生えた我欲を祝福する様に微笑み、彼の局所も立ち上がって喜んでいた。

 

「そう思うなら、なんで服を捨てたんだよ!?」

「それはそれとして。澄野君と全裸徘徊はしたいからさ。大丈夫だよ。私達は何時だって、プライドという名の服を着ているから」

「さっき、服は虚飾だって言っていたじゃないか!」

 

 普段からおかしいからあんまり気が付かなかったが、全裸の面影はテンションが上がり過ぎているのか、喋っていることも割と支離滅裂になっていた。そんでもって、こんだけアホみたいに騒いでりゃ勘付かれるのも当然の話で。

 

「拓海クン。随分、楽しそうだね」

「もしかして、全裸徘徊もプレイの一つだったんっすか?」

 

 いつの間にか蒼月と今馬が隣にいた。こうなったら、拓海も言い訳とかに講じている場合じゃない。交渉へとシフトすることにした。

 

「ちょっと服をはぎ取られて困っていてさ。今から、服取りに行くからどいて貰えないか?」

「そんな姿を希さんにでも見られたら大変だからね。僕の部屋に来なよ」

「いや。オレの部屋に戻って服を取りに行くだけだが……」

 

 何故、蒼月の部屋を経由する必要があるのか。思ったよりもすんなり行けそうな話だったのに、どうしてややこしくするのか。

 さっさと話を切り上げて部屋に戻りたいのだが、今度は今馬が肩を叩いて来た。彼は得意気な顔をしていた。

 

「先輩。自分には分かりますよ。本当はコレをいい機会だと思っているんっすよね。ゲロブタのせいで全裸になっちゃったから仕方ないって奴です。パチンコで遊び終えたら、何故か皆。あっちの方に行くって奴っすよ」

「何、言ってんの!?」

 

 拓海が制止する間もなく今馬はするりと制服を脱いだ。中学生と言うこともあって、瑞々しさに満ちた肢体が現れたので、拓海のが上向きになった。

 

「そうか。そう言うことだったんだね!」

 

 今度は蒼月までもが脱ぎだした。拓海は彼らが脱ぎ散らかした物を着ようとしたが、2人は直ぐに屋上へと飛び出して、着ていた衣服を投げ捨てていた。

 

「何がお前らを裸族に駆り立てるんだよ!!」

「赤信号。皆で渡れば怖くないって奴っすね!」

「裸の付き合いというじゃないか」

 

 今馬と蒼月のがブラブラと揺れている。どうして、こんな地獄絵図が生まれてしまったのか。あの時、自分が日和らなければ。今頃、皆と一緒にダンガンロンパを見ていたんだろうか。そう思うと、涙があふれだした。

 

「凄い一体感だよ。澄野君、私はかつてない程に喜んでいる」

「そうか。オレはかつてない程に己の選択を後悔しているよ」

 

 面影が何か言っている。とは言え、屋上には出て来られた。後は、自分の部屋に戻って着替えるだけで良い。誰も来ない様に祈りながら、速足で向かっていると、屋上へと続く扉が開いた。

 きっと、銀崎か丸子だろう。と、思いたかった。運が悪かったら女子に見つかるかもしれない。だが、いつだって最悪は望んでいないタイミングでやって来る。

 

「あ」

 

 やって来たのはイヴァーと霧藤の2人だった。拓海以外にも何故か全裸3人。彼女が言葉を失う中、拓海を除くバカ3人がスクラムを組んで、霧藤達の前に立ちはだかった。

 

「拓海クン! 行くんだ! 君の尊厳は僕達が守る!!」

 

 果たして、何も言わずに自室に引っ込んだ拓海が彼らに感じていたのは感謝か。あるいは、もうどうでもいいやという諦観だったのかは定かではない。

 ただ、霧藤は望んでもいない男子3人の全裸と局所を見せられることになった。この後に彼女が起こす行動は至極当然の物だった。

 

「いーーーーやーーーー!!!」

 

 悲鳴を上げた。幾ら3人が端正な顔立ちをしていても許せない物は許せない。霧藤が顔を覆った一瞬を狙って、イヴァーは3人を一瞬で気絶させて地面に這いつくばらせた。勿論、うつ伏せで。

 彼女が荒い呼吸を繰り返す中、拓海のプレハブの扉が開いた。いつも通りのパーカーを着た彼が姿を現わした。

 

「おぉ。霧藤、イヴァー。どうしたんだ? なんで、コイツらは全裸で気絶しているんだ?」

「たっくん?」

 

 だって、さっきまで一緒にいたはずじゃ。と言いかけて、イヴァーはそっと首を横に振った。そして、言った。

 

「実は皆で映画の上映会をしようと思った、澄野を誘いに来たの」

「そうなのか! オレも見に行くよ!」

 

 屈託なく笑っていた。どうして、こんな彼に真実を告げることが出来ようか。霧藤は視界の端に移る全裸3人を見なかったことにして、無理矢理笑顔を作った。

 

「うん! 一緒に行こう!」

 

 そして、拓海と腕を組んで、彼女達は娯楽室へと向かった。

 そう、今まで見たのは真昼の悪い夢だと言うことにした。今日という1日の残りは楽しいことだけをして過ごすのだから……。

 

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