最終防衛学園 ~貞操危機編~   作:ゼフィガルド

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【好き好き編】36日目 その2

 現在、特防隊メンバーが最終防衛学園で目覚めてから36日目。

 拓海が1周目の記憶を取り戻したのが2日目だとすると、35日目。ここに至るまで、拓海が関係を持った相手は実に7人。大体5日に1回は誰かを抱いている計算になる。

 彼が東京団地で過ごした記憶が偽りの物であったとしても、形成されたパーソナリティは本物だ。責任感は強いが、清廉という訳でもない。根は割とネガティブで自己評価は低め。そんな彼が強く求められた時に何が起きるかというと。

 

「上映会が始まるまでなら……」

 

 断れないのだ。加えて、こんな爛れた生活のせいで彼の貞操観念はゆるゆるになっていた。今馬はパァっと表情を明るくしていた。

 

「そうっすよね! 澄野先輩ならそっちを選んでくれると思っていたっす! 自分達を裏切る訳無いって!」

 

 翻せば。今の自分は霧藤を裏切っていると言うことだが、拓海は内心で言い訳を並べ立てていた。

 

「(霧藤からは直接言われた訳じゃないし。何よりも、護衛兼保護者みたいなイヴァーともやっているし)」

 

 既に彼の脳や体が一部の者達にとって都合のいい様に作り替えられていると言っても過言ではなかった。

 現に、今の彼は着替えている今馬から目を離せなかったのだから。脱いだ制服をハンガーに掛け、下着をベッドの上に放り出して、代りに取り出した物は。

 

「お待たせしました!」

「ぶっ……」

 

 今馬が着ていたのはシースルーの黒いベビードールだった。ご丁寧に女性用の下着まで付けている。今馬の華奢な体格と端正な顔立ちもあって絵になっていた。

 

「今、着慣れていると思ったっすよね? そりゃ、これも仕事着でしたから」

 

 どういう仕事かはさておき。先程と同じく対面座位の形になって、2周目になってから何度目になるか分からないキスを交わしていた。

 先程とは違い、互いの口腔内で舌が絡み合う。ズボンの股座辺りが張っている。上映会が始まるまで、もう少し時間はある。最後まで行こうとして、チャイムが鳴った。心臓が跳ね上がった。

 

「出ます?」

 

 お楽しみを邪魔されたことに甚く不服なのか、今馬は不機嫌そうに言った。

 上映会が始まることを考えたら、恐らく出席者の誰かだろう。虫をすれば『もしや寝過ごしているのではないか?』と言うことで入って来る可能性がある。

 

「今馬。ベッドの下に隠れてくれ」

「いよいよ、自分が間男みたいになってきたっすね」

 

 慌ててハンガーに掛けていた制服と一緒に隠れたのを見て、拓海は乱れていた衣服を整えて応対に出た。扉を開けた先に居たのは……。

 

「たっくん? 寝てた?」

「あ、あぁ。始まるまでには起きる自信はあったけど」

「寝過ごす人間の典型的なセリフよ?」

 

 霧藤とイヴァーだった。まだ時間があるはずなのに、一体何の用か。自分を起こしに来ただけでは無さそうだが。

 

「まだ、上映会が始まるまでは時間があるけど」

「それなんだけれどね。先に行って、皆の分の飲み物とかお菓子とかをプレゼントマシーンで作っておこうと思って」

 

 昨日は、集合してから各々が好き勝手に作っていたが、それでは段取りが悪いと言うことで事前準備しようと思ったのだろう。

 

「そう言うことなら、オレも手伝うよ」

 

 とにかく部屋に入れる訳には行かないので、さっさと娯楽室へと向かおうとしたのだが、2人が部屋の中を見て怪訝な目をしていた。

 

「たっくん。そのバッグ、何?」

 

 霧藤が指差したのは今馬が持って来たバッグだ。中には多分、そう言うことに使う道具が入っているのだろう。下手に誤魔化そうとしても墓穴を掘るだけなので、拓海は出来るだけ事実に沿ったことを言った。

 

「寝る前に今馬が部屋に来ていたんだけれど、その時に忘れて行ったんだろう。後で届けておくよ」

「でも、上映会が始まったら暫く出ていけないし。今馬君も困るかもしれないし、先に届けに行こうよ」

 

 彼女の言う通りなのだが、肝心の本人がベッドの下に隠れているので届けに行ける訳がない。なので、拓海も諦めない。

 

「じゃあ、部屋前に置いて行くよ」

「駄目だよ。中に入っている物次第じゃ痛んじゃうかもしれないし。……何が入っているんだろう?」

 

 恐らく、アダルトなグッズです。中身を確認されたら色々と不味いので、拓海は平静を装って制動を掛けた。

 

「勝手に中身を覗くのは良くないと思うぞ。じゃあ、今馬のプレハブ小屋の前に書き起きだけ残しておくことにしておくよ。オレの部屋に取りに来いって」

「たっくんが良いなら、別に良いけれど……」

 

 多少、不自然さがあったのか霧藤が腑に落ちない様な表情をしていたが、これ以上問われることもあるまい。と、胸を撫で下ろしたのも刹那。

 

「澄野。この部屋、何か臭うんだけど」

「今馬の臭いじゃないのか? アイツ、身なりとかはかなり気を遣っていたし、香水的な奴じゃ?」

 

 イヴァーがこの部屋に残る何かの臭いに気付いていた。部屋が臭い立つほどにはしていなかったハズだ。と、拓海は内心でかなり焦っていた。

 霧藤は何とか通せる部分はあるが、イヴァーは違う。もしかしたら、彼女ならばベッドの下に隠れている今馬にも気づくんじゃないか?

 すると、彼女はベッドの上に放置されている物を手に取った。咄嗟の判断で制服を取って隠れたのは良かった。だが、下着は放り出されたままだった。

 

「コレ、澄野の下着?」

 

 そうなんだ。オレには寝る前にパンツを脱ぐ癖があるんだ。なんて言い訳が通じるとは思えなかった。詰んだ。こうなったら、力押しだ。

 

「いいや、違うぞ。多分、今馬が脱いでいったんだろう。ほら、ダンガンロンパでも友好の証としてパンツを渡してくれるだろう? アレだよ」

「そ、そっか……」

 

 霧藤がドン引きしていたが、イヴァーにはもうバレているっぽかった。滅茶苦茶ベッドの方をガン見している。

 

「それより、早く上映会の準備しに行こうぜ!」

「え、あ、うん」

 

 誘いに来たのは霧藤のハズだったのに、何故か拓海の方がノリノリになっていた。色々と納得いっていない様子だったが、拓海は霧藤と一緒に上映会の準備に向かった。残されたイヴァーはと言えば、ベッドを持ち上げていた。

 

「やっぱり、分かっていたんっすね」

「そりゃそうよ。だって、澄野以外の呼吸音があったんだから」

 

 そもそも、最初からバレていたらしい。これ以上は隠れている意味も無いと言うことで、今馬も大人しく出て来た。

 

「で? 態々、澄野先輩を追い込むような真似をした意味は何っすか?」

「貴方がそんな格好でここに居るってことは、そう言うことをしていたんでしょう? 澄野がどう思っているのかを知りたかったのよ」

 

 あんなに必死に隠し通そうとしていたのだからやましくは思っていたのだろう。同時に、そんなことを考えながらも断り切れなかったことも分かった。

 

「知って、どうするんっすか? まさか、不特定多数の人と関係を持つのは止めろ。なんて言うつもりじゃないっすよね? 貞淑な保護者面して、自分だけは特別とか思っている『女』とか。マジでキモいんですけど?」

 

 女。の部分を特に強調している辺り、イヴァーも不特定多数の人間に含まれていることについて咎めているのだろう。

 

「希を諭す時に使うだけよ。それに、私が間に入らないと。貴方達、彼女に危害を加えるのも辞さないでしょう?」

「そうっすね。自分、霧藤先輩がどうなろうと知ったこっちゃないんで」

 

 拓海に纏わりつく鬱陶しい存在。周回の記憶も持ち越さないので、彼らにとってみればマイナスの印象が積み重ね続けられている存在として非常に評価が低かった。加えて、今回の件で自己主張まで始めて来たので、増々目障りな存在になっていた。

 

「つか、自分としてはなんでアンタがそこまで霧藤先輩に入れ込むかが分かんないっすよね。もしかして、娘モドキと息子モドキをくっ付けたがっているんっすか? お人形遊びなら別のでやって欲しいっすね」

 

 剥き出しの敵意と共に吐き出した言葉に対する応酬は、暴力だった。今馬の顔や体に傷が残らない様に関節を極めていた。

 

「貴方が希のことをどうでも良いと思う様に、私も澄野と希以外はどうも思っていないの。不用意な言葉は口にしないことね」

 

 直ぐに解かれたので骨折したりすることも無かったが、痛みはジンジンと残っていた。

 

「まぁ、今は自分達を責めていれば満足するでしょうけど。アンタもこっち側に来た時が楽しみっすよ」

 

 今馬は制服に着替えた後、不敵な笑みを浮かべて去って行った。

 イヴァーは少しだけ深呼吸をして、気分を落ち着けた後。上映会が行われる娯楽室の方へと向かった。

 

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