最終防衛学園 ~貞操危機編~   作:ゼフィガルド

49 / 91
【好き好き編】37日目

 昨日はギリギリの所で事態を隠し通せて、皆で一緒に楽しくダンガンロンパ3絶望編の上映会をした。ただ、ちょっとだけ問題があった。

 

「にしても。何故、逆蔵殿はあんなに怯えていたのでござろうか?」

「昔は同性愛者に対する偏見が凄かったらしいわ。この学園にいると、そういう感覚がマヒしそうだけど」

 

 凶鳥と大鈴木が作品内におけるキャラのスタンスやムーヴに対して、当時の価値観を交えて説明するなど、実に健全な感想を漏らし合っていた。

 

「そう言う偏見や常識のせいで好意が拒絶されるってのは苦しいと思うしね。だから、隠していたんだと思うよ」

 

 いつもはファンキーな言動で注目を集めている飴宮だが、こういった人間関係云々の考察に関しては、妙に真摯で誠実な物が出て来るのだから驚く。

 

「だからって、日向に当たり散らしていたのはどうかと思うけどよ」

「それだけ、恋ってのはクソデカ感情なのよ!!」

 

 こういう漫画やアニメの会話に厄師寺が極自然に混じる様になったのも感慨深い物もあるし、喪白も楽しそうに話していた。そして、このメンバーの中で取り分け思い入れが強い過子は霧藤に熱弁していた。

 

「絶望編のワンシーンの中でパンを持った少年が通りかかるシーンがあるけどね! あの子は、ダンガンダロンパゼロにも出て来る重要なキャラなの!」

「じゃあ、次はダンガンダロンパゼロのアニメも行っちゃう?」

「でも、皆には霧切さんも知って欲しいからダンガンダロンパ霧切も見て欲しいし。でも、テンポ的な物を考えたらこのまま2に行って欲しいし、ダンガンロンパ3も観て欲しい!」

 

 普段は大人しいが、こういう時に熱弁を振るう辺りは実にギークだった。ただ、拓海としてはあまり他人事のように思えなかった。

 

「(オレがバイだとかそういうのは置いとくにしても。やっぱり、相手にどう思われるかが気になるってのはあるよな)」

 

 というか、イヴァーがジッとコチラを見ているし、昨日の上映会にやって来るのが遅かったことからも恐らくバレているだろう。と、考えていた。

 そんなことを考えながら目玉焼きを突いていると雫原がやって来た。蒼月や川奈なら追い返しやすいが、彼女はやり辛い相手だった。何故なら、瑕疵が無い。

 

「ちょっと、澄野を借りて行くわ」

 

 別に本人以外に許可を取る必要は無いのだが、こんな言い方をしたのは言外に彼を独占していることに対する皮肉も込めてのことだったかもしれない。

 様子がおかしい組のメンバーが集合したテーブルに着くと今馬はニッコリと笑っていたし、川奈は視線を彷徨わせていた。そして、自分の隣には雫原と蒼月。

 

「あの。なんで、オレはこのテーブルに?」

「ズバリ、拓海クンに聞きたいんだけれどさ。希さんとは何処まで行ったの?」

 

 普通なら同級生らしい会話なのだろうが、蒼月の目が据わっていた。

 ちょうど、1周目の最終局面で見せていた様な、ネガティブな感情が表情を固定しているかのような剣呑さがあった。

 

「いや、一緒に映画とか見ている位だけど……」

「実に健全だね。私が言っても説得力は少ないけれど、第2防衛学園の皆と澄野君が仲良くしてくれると嬉しいよ」

 

 恐らく、面影は本心から言っているのだろう。こういう所の人柄の良さは、このグループ内における貴重な制動役も担っていると思うのだが……。

 

「ずっと、この状況が続くのは困るけれどね」

 

 そっと添えられた一言が彼の本性を表している様で、拓海は思わず竦んでしまった。畳みかける様に丸子が口を開いた。

 

「そうだぜ。最近の澄野は俺達のことをモブかなんかだと思っている節があるからな。銀崎と川奈はそう思われてもしょうがねぇけど」

「丸子さんに雑に扱われて頭に来ますよ!」

「す、澄野。私は違うよね?」

 

 サラリと他2人を見捨てる発言をしている辺り、川奈も相当に焦っているのだろう。コレには拓海も慌てて返していた。

 

「だ、大丈夫だって。オレは川奈のことも大事に思っているし。それに、丸子と銀崎も大事な仲間だよ」

「は? 好き」

 

 川奈の不安が一瞬解消されたことから、銀崎が『ちょろ過ぎィ!』と顔で叫んでいた。丸子も嬉しそうに握り飯を食っていた。

 

「でも、この先はどうなるか分からないのよね。霧藤次第で私達との関係が変わる可能性だってあるんだから」

 

 雫原の言葉に、拓海は今馬との会話を思い出した。普通、恋人がいる人間は不特定多数の人間と関係を持ったりはしない。

 

「その。ほら、凶鳥や大鈴木達も普通にしているしさ。別にその、性的な関係じゃなくても友達でいることは。出来るんじゃないか?」

 

 この発言が如何に無意味であるかと言うことは拓海自身も分かっていた。それでも一応は言った。建前は必要だからだ。

 

「嫌だ。って言ったら?」

 

 雫原が皆を代表して言った。拓海も説得に応じるとは思っていなかったのか、食い下がる真似もしなかった。

 

「そもそもの話。狂死香さん達が付いているから、希さんも勘違いしているのが原因だと思うんだよね」

「勘違いって……」

「彼女達が真っ当になっているから、僕達もそんな風になれると思っているのかもしれないってことだよ」

 

 蒼月も言う様に、彼女達も周回組だというのに、ここにいるメンバー程ぶっ飛んだ考え方はしていない。これは何故なのか気になる所ではあった。

 

「なんで、凶鳥達はあんなに大人しいんだ?」

「喪白から何か聞いていない?」

 

 雫原の言うことに心当たりは……ないことは無かった。事情説明というか、愚痴みたいな内容だったが。

 

「なんか、アイツにしては結構珍しく。ネガティブな話だったけど」

「仕方ないよ。第2防衛学園組の立場はあまり強くないからね」

 

 このメンバーの中で唯一第2防衛学園出身の面影が言った。それはどう言うことなのか? と説明を促すと、彼は語ってくれた。

 

「まず、第2防衛学園組は防衛線においてあまり強くない。というのがネックになっているんだ。これは最終防衛学園の方が多く襲撃され、その分。異血の吸収機会が多かったこともあるし、強くなれば生き残り易くなって、更に吸収できる可能性が上がる。というループで、戦力差が開いてね」

「澄野に言っておくと。TL次第では先に第2防衛学園が全滅するって言うのもあるのよ」

 

 と、雫原が補足を加えていた。拓海も1周目で聞いた話では、第2防衛学園組も全滅仕掛けたと言っていたし、自分達の助けが間に合わなかったTLもあったのだろう。

 

「強さはそのまま最終防衛学園内での立ち位置になる。私はまだ薬品の開発や手術とかの技能があったからどうにかなったけれど、くららちゃんの兵器開発も微妙になっちゃったし、狂死香ちゃんともこちゃんみたいな完全戦闘要員は本当に肩身が狭いと思うよ」

「そうなのか? オレの記憶にある限りじゃ、1周目の凶鳥とか。物凄い強かった記憶があるんだけど」

 

 拓海の記憶にある凶鳥は、2本の刀を用いて堅牢な敵も構わず切り裂いていく『剣豪』という称号が良く似合う人物だったと記憶している。……今は、皆が強すぎて霞んでいるが。というか。

 

「防衛戦とか私が居れば大丈夫だし。皆はラストエールでも送ってくれていたら、十分だしぃ?」

 

 自分のアピールポイントを誇示するかのように、媚びる様に猫なで声を出している川奈を見て、拓海は彼女が暴走気味になる理由が分かった気がした。

 

「だから、自信を無くしてしまっていることもあるかもしれない。それなら、友達の幸せを願って。というのは健全だと思うけどね」

 

 と、面影は締め括った。要するに自分がヒロインになれる可能性が低いから、他の有力候補を担ぎ上げる。というのは、少し穿った見方かもしれないが。

 

「そう言う経緯があったのか……」

「自分を好きになれないって辛いですよ。他でもない自分が常に責めて来るんですから」

 

 自己評価の低さという点について、銀崎には思うこともあったのか切実なことを言っていた。普段は変な奴でも、こういう時位は真面目なことが言えるらしい。

 あくまで推論でしかないが、もしも本人達がそう思っているなら自信を持って欲しいとは思う所だが。

 

「よっし! じゃあ、自分達の方で凶鳥先輩達を元気付けたら良いと思うんっすよね!」

「……そうだね! 僕達としても仲違いが続くのは良くないと思うし!」

 

 今馬の提案に蒼月がニッコニッコで頷いていた。一体何をするつもりなのか気になったが、面影に肩を叩かれた。

 

「多分だけれど、ここ数日はもっと大変なるだろうから頑張ってね」

「最近は落ち着いていたのになぁ……」

 

 一体、ノリノリになって来たコイツらは何をするつもりなのか。排除とかに動く訳じゃなさそうにしても、どう動くべきか。沸き上がった不安を流し込むようにして、拓海は牛乳を飲みほした。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。