最終防衛学園 ~貞操危機編~   作:ゼフィガルド

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【好き好き編】40日目 その2

「一緒に過ごすと言いましたが、何しましょうか?」

 

 どういう気の迷いか銀崎を誘ってみたが、特にやることは思い浮かばなかった。前回みたいにトレーニングも悪くは無いのだが、以前にされたことを思い出すと遠慮してしまう。じゃあ、他の趣味はと考えてみるのだが。

 

「何かこう。サブカル的な趣味とかはないのか?」

「凶鳥さんにも言ったんですけれど、陰キャ=オタクと言う訳ではないので。僕、アニメも漫画も見ないんですよ。何もない無キャですね」

 

 最近はテンションが高くて忘れていたが、銀崎は元々こういう奴だった。

 自己肯定感は皆無に近しく、趣味と言える物も無い。唯一の心の拠り所は飼っているペット位だったが、残念ながら実在はしていない。

 

「じゃあ、普段は何しているんだ?」

「ずっとトレーニングしているか、淫夢の再履修をしている位ですね」

 

 もしかして、この学園で一番ストイックな奴ってコイツじゃないんだろうか。アスリートである喪白でさえ、割と多趣味なのに。

 このまま2人でボーっとするのも悪いことではないが、凶鳥と違って、銀崎の場合は本当に何となくいるだけになる。というよりも。

 

「(オレ。あんまり銀崎のこと知らないんだよな……)」

 

 2周目に入ってから特防隊メンバーと一緒の時間を過ごして来たが、銀崎は最初の事件以来、接触を避けていた。故に、彼のことをあまり知らない。

 かと言って、お前のことを教えてくれ。と言われても、お互いに会話が弾むほど、コミュ力が高い訳じゃない。……何か間を持たせるイベントは無いだろうか。と、考えていると。銀崎が手をポンと叩いた。

 

「あ。もう一つ、食堂の水槽に飼っている魚に餌を上げたりしていますね」

「そうだったのか。てっきり、NIGOUが世話しているのかと」

「僕からお願いしているんですよ。世話をさせて欲しいって。あの子達にも個性があったりして、見ていて面白いんですよ」

 

 始めて、銀崎が普通に笑った所を見た。ふと、拓海は考えた。

 

「(銀崎の場合。自分に自信が無いから殆ど話さないけれど、凶鳥のことと言い、他のことに対しては割と言及してくれるんだよな)」

 

 つまり、彼の目を通してどう見えているかを尋ねた方が会話的にも弾む気はする。だとしたら、部屋に閉じこもっていては話題も広がり難いと感じて、拓海は立ち上がった。

 

「なぁ、銀崎。オレ、実はこの学園のことを詳しく知らないんだよ。ちょうど、良い機会だし。教えて貰えないか?」

「それなら、僕より大鈴木さんや雫原さんの方が詳しいですよ?」

「お前の口から感想含めて聞きたいんだよ。よし、じゃあ1階から行ってみよう」

 

 とりあえず、銀崎と一緒に1階の玄関ホールまで降りることにした。

 

――

 

「まず、玄関ホールですけれど。資材が揃っているので、もう探索に行く為に使うことはありませんね」

 

 1周目では周囲の探索に向かう時に絶対に通っていた場所なのだが、この周回では資材が潤沢に揃っているので出ていく必要がない……と言うので、思い出したのだが。

 

「娯楽室に大量の資源があったけれど、アレって誰が用意したんだ? オレが戻って来た時点じゃ、2日目だから集めに行く時間なんて無かったハズだが」

「さぁ……? ただ、周回の記憶が増える度に資源が増えているので、一説によれば周回で集めた物が集約されるとか言われていますね」

 

 記憶や我駆力が引き継がれるのは分かるのだが、資源が引き継がれるのは意味が分からない。周回で物資が引き継がれるなら無敵じゃないか。

 

「なんか、周回。って軽く言っているけれど、本当になんなんだろうな」

「そう言う話は雫原さんやシオンさんが詳しいですね。他にも玄関ホールで見所があるとすれば、SIREIの像位でしょうか」

 

 玄関ホールには、雄々しい像にSIREIの顔をコラージュしたかのような不気味な建造物が建っている。ついで、また別の質問が浮かんだ。

 

「SIREIの姿も見ないけれど」

「これも知らないですね。ただ、どの周回でも高確率でSIREIが破壊されますが、居ても居なくても別に良いので、皆さん気にしていませんけれどね」

 

 あまりに扱いが悪い。と言っても、実際に居なくても何とかなっているんだから、ぞんざいになるのも仕方ないかもしれない。

 玄関ホールから出て右回りから観察して行く。トイレや教室は特に言及することも無いにしても。

 

「ガレージや駐車場はあまり用事の無い場所ですね。川奈さんはよく籠っていますが。後、偶に澄野さんの部屋に設置されているカメラの様子を見に来る人が足を運ぶ位で」

「オレのプライバシー! 何処へ!!」

「続いて、技術工作室も大鈴木さんや何人かが出入りする位で、やっぱり用事が無い人が多いですね」

「オレのプライバシーについての訴えを聞かなかったことにするな!」

 

 次に案内されたのは体育館だった。リラックスルーム以外に自主練に打ち込みたい者達が使ったりしていた印象はあるが。

 

「後は、スペースが広いので緊急事態が起きるとここを避難場所にしたりすることも多かったですね。相互監視したりとか」

「……やっぱり平穏なTLばっかりじゃないんだよな」

 

 相互監視する必要に迫られる様な状況。となれば、何が起きたかはあまり想像したくはない所だ。

 

「でも、悪いことばかりじゃないですよ。ここでレクリエーションもありましたし、急にラップバトル始めたりしている時もありましたからね」

「こっちもお祭りがあったりもしたなぁ」

 

 出来れば、悪い記憶だけじゃなくて。楽しい記憶が根付く場所であって欲しい。でも、今の最終防衛学園の状態で、自分がここに来ることがあれば嫌な予感しかしないのだが、ひとまず置いておこう。

 もう1室、謎の部屋もあるが、あそこは偶に監禁室に使う位で、既に役目を終えている部屋であり、ならば見る所がある部屋と言えば……。

 

「食堂ですね。基本的に食事をする場所ですけれど、僕は魚の様子を見に来たりもしますね」

「なんで、魚なんて飼っているんだ? 食用。では無いんだよな?」

「侵攻生や部隊長が苦手としているから。だそうです。これは他TLでも確認されています」

 

 そんな弱点があるのは初めて知った。今度、イヴァーにでも聞いてみようかと思いつつ、暫し魚が泳いでいる様子を眺めながら休憩を入れて、2階へと向かった。

 

~~

 

「訓練室ですね。本来はVR訓練の為の部屋らしいですけれど、川奈さんが勝手に筐体の中身を書き換えたりして好き放題していますね」

「アイツ、ソフトウェア方面も行けるのか」

 

 というか、自分も別TLの記憶を見せる為にとか言われて、似たようなことをされたが、もしかして。ここの技術をリバースエンジニアリングして習得した技術だったりするのだろうか。

 

「ちなみに、今はプレゼントマシーンで作った基盤に差し替えて色々なゲームが出来るみたいですね。ほら、こっちにメタルスラッグとか」

「おぉ。ガンダムもある。イルブリードACも」

 

 コンシューマも悪くないが、やはり筐体でやるゲームというのも格別だ。今度、皆で一緒に遊んでみても良いかと思った。ここに居たら、無限に時間が取られそうなので、グッと堪えた。

 

「銀崎もここで訓練をしたりとか?」

「VRの感覚とリアルの感覚は違うので。それに、僕の学生兵器(クラスウェポン)は訓練じゃ鍛えにくいんですよね。事故死しない為にも、痛覚とかセーフティがありますので」

 

 銀崎の学生兵器(クラスウェポン)は特防隊メンバーの中で唯一無二と言っていいタイプであり、なおかつ相手からの攻撃を必要とするのでVRでは鍛えにくいと言うこともあり、あまり彼には縁がない部屋なのかもしれない。

 一旦、部屋を出て生物薬品室に向かおうとする際に気になる部屋があった。入るのを拒むようにして、板が打ち付けられている扉がある。

 

「銀崎。この部屋は一体?」

「……あまり言いたくない場所なんですけれど、ここ。死体安置室です」

 

 拓海も言葉に詰まった。保健室があるせいで忘れがちになるが、ここは誰がいつ死ぬかも分からない最前線なのだ。実際に1周目では霧藤と雫原が死んでいるし、誰かが死ぬTLもあったのだろう。

 入れないし、入りたくも無いので早急にスルーした。誰がどう死ぬかなんて、やはり聞きたくはない。そのまま生物薬品室に向かうと、面影が居た。

 

「お殺? 2人して、どうしたんだい?」

「銀崎に頼んで、改めて学園を探索しているんだよ。ほら、あんまりジックリ見る機会も無かっただろうし」

 

 生物薬品室。普段は面影が滞在する場所で、1周目では今馬が治療されて、中身をSIREIに移されていたことは覚えているが。

 

「偶に自己嫌悪に陥った時、ここに決死薬を飲みに来たりもしますね」

「なにやってんの!?」

「大丈夫。銀崎君は中身もクソ硬いから、決死薬も効かないんだよね。気になってメスを入れようとしたら、メスも折れた」

 

 フィジカルモンスターが過ぎる。他の面々は普通に殴られたら傷付くのに、どうして銀崎だけこんなに硬くなっているのか。

 

「彼の我駆力や学生兵器(クラスウェポン)が特殊だからという結論に落ち着いているけれど、実際の理由は分からないんだよね」

「肉体に影響を及ぼすタイプの学生兵器(クラスウェポン)って、案外。僕以外に居ないんですよね」

 

 基本的に学生兵器(クラスウェポン)と言うのは武器として顕現することが多く、付随効果として身体能力が上がりはするが、あくまでおまけ程度だ。

 対して、銀崎の物は攻撃にも転用は出来るが、基本的には身を守る、命を守ることに特化している。この事もあり、彼だけ早期に記憶を取り戻したりと、他の面々と違う所が多い様だった。

 

「周回を重ねても分からないことは多い。だから、こうして自分達がいる場所を改めて回ってみるのも良いことだとは思うな」

 

 たった、100日と40日しかいない場所なのだ。こうして、エピソードも加えることで、より印象に深く根付いてくれるか。これ以上は面影の邪魔になるかもしれないと言うことで、最後に図書館に入った。

 

「ここは多分、僕より澄野さんの方が詳しいのでは?」

「一応聞いておくけれど、ここって仕掛け扉とか、空間みたいな場所とかって無いんだよな?」

「そうですね。ここには無かったハズです」

 

 と言うことは他にはあると言うことだが、今は特に向かう必要もないだろう。

 図書館。拓海はあまり読書をする方ではないが、マンガなら読むし、何となく小説や本を読むことだってある。

 

「銀崎もここに来たりすることは?」

「無いですね。漫画も興味ないですし、動物図鑑ならプレゼントマシーンで作りますし、トレーニング方法は現在の物が一番合っているので」

 

 ここに興味がある層。というのは、案外限られているのかもしれない。最後に見る物があるとすれば中庭位だ。

 

「少し前まで、ここに部隊長達とお前が入っていたんだよな」

「割と、この飼育小屋。既に脱出方法が確立されているので、ガバガバセキュリティ過ぎて、僕達はあんまり信用していないですね」

「えぇ……」

 

 つまり、牢屋としての意味をなしていないと言うことか。今更、投獄される様な奴もいないと思うが。いや、居ても取り締まれないのだが。

 

「部隊長達。と言えば、ムヴヴムやクェンゼーレがオレのことを知っているみたいだったけれど、どういうTLがあったんだ?」

「色々とですかね。【和解】TLじゃ穏健派としてムヴヴムさんとクェンゼーレさんを引き入れていましたね」

 

 前に少しだけ聞いたTLの話だ。確か、その際にはどうしてもヴェシネスが邪魔になると聞いていたが、他の部隊長を引き込むルートがあるというのか。

 

「アイツらとはもう少し話をしたかったな」

「また、何処かで会えますよ」

 

 遠くない内にまた会いそうな気はするので、再会した時にまたじっくりと話すとしよう。そして、3階へと向かった。

 

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