最終防衛学園 ~貞操危機編~   作:ゼフィガルド

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【好き好き編】40日目 その3

 残す所は3階を見て回るだけとなったが、真っ先に向かったのは防衛室前。シオンがいる場所だった。ゲート前には消えない炎の壁が聳え立っている。そして、傍にはイヴァーが居た。

 

「澄野。それとギンザキ。こんな所で何を?」

「いや、改めて学園に何があるのかって銀崎と一緒に回っていたんだけれど。イヴァーこそ何を?」

「ちょっと下見にね。私達がどうなるかは、この先にある物に掛かっているから」

 

 イヴァーが難しい顔をしていた。拓海が体験した1周目では、この先にシオンが居て、ミサイルがあるということも分かっていたが、蒼月の裏切りによって全てがオジャンになった。

 だが、考えてみれば。彼の裏切りによって、ミサイルが発射されることは無くなったのだから、フトゥールムの救世主とも言えるかもしれない。

 

「(直ぐにどうにかしたりしない辺り、直前辺りで行動をしないと人工天体の連中に悟られる。ってことか?)」

「本当を言うなら、直ぐにでも止めに行きたいんだけれど……」

 

 イヴァーは自分の腕を強く握りしめていた。本音を言うなら、自分の娘や皆を脅かす物があるというのなら、直ぐにでも排除したいのだろう。

 

「今は未だ、その時じゃないってコトだろ」

「……分かっている」

 

 イヴァーが防衛室前から去って行ったのを見届けた後、銀崎と一緒に学園探索の続きをしたのだが。ふと、思ったことがあった。

 

「銀崎。お前、一度もイヴァーと目を合わせなかったけれど、仲が悪いのか?」

 

 そう。先程の防衛室前で拓海とイヴァーが会話している時、銀崎は一切彼女の方に視線をやろうとはしなかった。

 拓海の記憶にある限りでは、銀崎は捕縛されたばかりのイヴァーの世話役を買ったりもしていただけに、霧藤程ではないにしても関係は悪くないと思っていたが。すると、彼は気まずそうにしていた。

 

「彼女とは他TLで色々とありましたからね。まぁ、嫌われるのには慣れているので今更ですよ。お互いに干渉しない。これが落し所じゃないですか?」

 

 前は際限なく卑屈になっていたが、今ではサッパリと割り切れるようになったと言うことか。進歩かもしれないが、銀崎が持っていた誠実さや真摯さの様な物が削れてしまったような、多少の寂しさは感じた。

 

「そうだな。それが付き合い方って言うんなら」

 

 だが、否定する気にはなれなかった。自分はたかが2周目。彼らが背負って来た苦労は想像も出来ない領域にあると確信していたからだ。

 そうこう話している内に次の部屋に着いた。拓海は普段あまり来ることが無いが、多くの特防隊メンバーが足繁く通っている『リラックスルーム』だ。

 

「あ。良かった、今日は誰もいませんね」

 

 心なしか銀崎のテンションが高い。ここには通い慣れているのか、足取りに迷いが無い。ただ、拓海は苦い顔をしていた。

 

「(ここで前にアイスティーに一服盛られたんだよな……)」

 

 あの時は銀崎と一緒にトレーニングするだけかと思っていたので、まさかあんなことになるなんて思いもしなかった。

 

「おーい! 拓海さん、もう一度一緒に泳ぎませんか? 今度は普通のスポドリも用意していますから!」

 

 バッとリュックからキンキンに冷えているスポーツドリンクを取り出した。中身が凍り付いている所を見るに、一緒に泳いでいたら良い具合に溶けて最高に美味いスポドリが飲めるかもしれない。喉が鳴った。

 

「しょうがないなぁ」

 

 もしも、この場に他の人物が居たら思ったことだろう。『ちょっとは疑え』と。

 だが、拓海はノコノコと水着に着替えて泳ぐ準備万端と言った具合だった。銀崎も既に海パンに着替えていた。

 

「(見た感じ。別にムキムキみたいには見えないんだけれどなぁ)」

 

 暇があればトレーニングしている。という割には、銀崎は腹筋が割れている訳でもなく、バキバキと言うことも無い。

 それから拓海達は暫く水泳に興じていた。銀崎が泳いでいる姿を見るにトレーニングを重ねているという雰囲気は伝わって来る。事実、拓海も水泳にはそれなりの自信があるが、銀崎には全く追い付けない。

 

「澄野さん! 前より、タイム伸びていますよ!」

 

 がむしゃらに泳いで上がった先。どうやら、銀崎は記録を計測していたらしく、自分でも見たことがない数値が出ていた。

 

「本当だ……」

「でも、無理に僕に追いつこうとするのは危険ですから。ここで休憩を挟みましょう」

 

 用意されたビーチチェアに横たわり、銀崎が用意してくれたスポドリを口にした。泳いでいる時には気づき難いが、水泳は相当に汗をかく。体が欲していた水分他、必要成分がスーッと染みわたり、思わず拓海は唸った。

 

「うん! 美味しい!」

 

 まだ、娯楽室、保健室、作戦室辺りが残っている気がするが、もう良い気がして来た。それに疲れたのか結構眠くなって来た。

 

「いかんな。眠い……」

「では、少し寝てから続きにしましょうか。誰か来たら、僕が事情を説明しておきますよ!」

 

 そう言うことならと。拓海は少しばかり目を閉じた。やはり、この現場に他の誰かが居れば言っただろう。『だから、言ったじゃん!』と。

 拓海がうたた寝をし始めた辺りで、銀崎はリュックからオイルを取り出していた。自分の体に塗りたくっていた。

 

「澄野さんは本当に隙だらけですね。こんな好きだらけの最終防衛学園では危険すぎます。これは体に教え込まないといけませんね」

 

 シームレスに変態行為に移行して来る奴をどう止めろというのか。体格差を活かして、拓海に全身をこすり付ける姿はさながら、ゴブリンめいた物だった。

 だが、ここでリラックスルームの扉が勢いよく開けられた。先程、防衛室で会ったイヴァーである。しかも、学生鎧まで装着していた。コレには銀崎もたまげた。

 

「ファッ!?」

 

 如何に防御力が糞高い銀崎でも生身では限界がある。学生鎧を付けたイヴァーから関節技を極められた。それでも、落すのにかなりの時間を要したことから、彼がとんでもない耐久力の持ち主であったことは伺えた。

 かくして、拓海の貞操の危機は去った。気絶している銀崎を転がして、イヴァーはうたた寝している拓海へと近付いた。可愛らしい寝顔があった。

 

「拓海……」

 

 霧藤のことも大事だし、今馬から色々と言われたけれど、やっぱり胸に滾る気持ちは抑えが利かない訳で。

 リラックスルームの扉を施錠し、銀崎が持って来たオイルを塗りたくり、使った後のボトルはシッカリと彼に握らせておく。アリバイ作りは完璧だ!

 

「拓海は本当に隙だらけなんだから。こんな好きだらけの最終防衛学園では危険過ぎるからね。ちゃんと、身に染み込ませておかないと」

 

 かくして、貞操の危機は再来した。まさか、レイパーAが倒されたと思ったら、レイパーBがやって来るのは衝撃的という外ない展開だが、どちらにせよ拓海の危機であることには変わりない。

 学生鎧を脱いで、インナーを脱いだ所で水着を着ているのは何の予防線か。もしかしたら、銀崎を見掛けた時点でヌチョヌチョする可能性を考えて準備をしていたら、卑しいという外ない。

 

「これは希との初体験に失敗しない為……」

 

 何が悲しくて保護者面している奴から初夜の心配をされなきゃならんのか。

 保護者面している女にオイル塗れの全身をこすり付けられている。そんな、末期的な光景が繰り広げられている。だが、リラックスルームは施錠されている。

 

「うぅ……」

 

 だが、予想外の出来事が起きた。拓海に耐性が付いていたのか、目を覚まそうとしていた。イヴァーは急いで学生鎧を身に纏い、銀崎の全身にオイルを塗りたくっていた。

 

「拓海。大丈夫だった?」

「アレ? イヴァーなんで……」

 

 目を覚ました拓海が辺りを見回すと。気絶した銀崎が転がっている。手にはオイルの入ったボトル。本人の体もヌルヌルだ。

 

「ギンザキが貴方に手を出すんじゃないかと思って、別れた後にコッソリと着けていたの。案の定よ」

「そ、そうか」

 

 拓海が敢えてあまり怒らないのは、そんな気にさせてしまった自らの迂闊さを後悔しているからかもしれない。銀崎を適当な所に転がして、イヴァーが腕を組んで来た。

 

「学園の探索をしているのよね。残り3つ、私と一緒に回らない?」

「いや、イヴァーは学園の施設については……」

「大丈夫。希と一緒に回って覚えたから。さぁ、行きましょう」

「その前になんで学生鎧を」

 

 拓海の疑問も強制的に端折って、イヴァーは拓海を連れて部屋を出た。

 残りの3つ。と言っても、娯楽室については今更説明することはない。それ位、利用頻度が高い部屋だった。強いて言うなら。

 

「このスロットで何が得られるんだ?」

「お菓子が出て来るそうよ」

 

 パッとイヴァーが回して、目押しで揃えていた。うまい棒が出て来た。学生がいる所のスロットなんてこんな物で良いかもしれない。後はプレゼントマシーンの履歴を除く位だが。

 

「『漫画単行本セット』『漫画単行本セット』『家庭用プロジェクター』『最新ゲーム機』『きわどいビキニ』『きわどいベビードール』『きわどい男水着』……。誰が作ったのか、薄っすらと分かるラインナップだな」

「履歴見ても漫画とかエッチな物関係ばかりね」

 

 この学園に蔓延っている風紀をよく表していた。保健室に関しては本当に見る所が無いというか、利用できる部分が無いのでサクッとスルーして。次に向かったのは作戦室だった。

 

「アレ。拓海とイヴァーじゃん。どうしたの2人で?」

 

 作戦室のPC前では飴宮がウンウンと唸りながら、何かを打ち込んでいた。見れば、何かしらのテキストを書いているらしいが。

 

「小説か?」

「そう。やっぱり、自分でも自炊したくなるっしょ。もう、鬱勃起待ったなしのエロエログログロの奴を!!」

「お前、未成年じゃ……」

「妄想として吐き出している内はマシだから」

 

 イヴァーが切実に語っていた。どうやら、先程までリラックスルームで行っていた不貞に関しては忘れているらしい。

 他のPCが空いていたので拓海も触ってみたが、何やら色々なデータが出て来た。よく分からないので、閉じた。

 

「コレで終わりだけど、なんか疲れたな……」

「きっと、水泳した時の疲れが残っているのよ。もう部屋に帰って寝なさい」

「いや、でも。銀崎のことを起こしていかないと」

「私がやっておくから、早く部屋に戻って?」

 

 イヴァーに凄まれて、拓海は自分の部屋に戻って行った。そんな遣り取りを見ていた飴宮も思う所があったのだろう。

 

「悪意剥き出しで敵対している奴より、親切な味方のフリしている奴の方がタチ悪いよね」

「そうね。私もそう思うわ」

 

 イヴァーが表情を崩さずに言う中、飴宮はPCの別ウィンドゥを開いていた。そこには銀崎を気絶させた後、狼藉を働こうとしているイヴァーの姿が映し出されていた。……彼女はそっと、その動画ファイルを削除していた。

 

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