最終防衛学園 ~貞操危機編~   作:ゼフィガルド

62 / 91
前日に何があったか。

https://syosetu.org/novel/376662/7.html

※R-18です。



【好き好き編】46日目

 長らくのお預け期間があったことも大きかったのだろう。拓海と川奈は大いに盛り上がった。

 探索に向けて体力も十分に残しておく必要があったというのに、そんなことも忘れて猿の如く盛り合った。ヘロヘロになって互いに抱き合って、気持ちよく眠りに落ちた翌朝のことである。

 

「たっくーん?」

 

 霧藤が拓海の部屋をノックしていた。今日は探索に行くと言うことで色々と話もあるだろうし、早めに起きておいた方が良いと判断したのだろう。

 幸か不幸か。彼の部屋には鍵が掛かっていない。40日以上の攻防の末、掛けても無駄だと判断したからだ。霧藤がドアノブを捻ると簡単に開いた。

 入った瞬間、異臭がした。噎せ返る様な、汗の様な臭いだ。そして、ベッドには仲睦まじそうに互いに抱き合っている2人の姿。

 

「うー……?」

 

 開けた扉から刺し込む日差しで先に目を覚ましたのは川奈の方だった。ベッドの傍には硬直している霧藤の姿。

 

「あ、おはよう」

「おはよう。じゃないよ! 何しているの!?」

 

 川奈の寝ぼけた挨拶に霧藤が声を上げた。コレには拓海も目を覚まさざるを得ず、周囲を見てすぐに状況を理解したのか顔が真っ青になっていた。

 

「き、霧藤!?」

「何しているって。見ていて、分かんない? 愛し合っていたんだけど?」

 

 川奈が自分の胸を拓海に押し付けると、拓海に掛かっていたシーツの一部が立ち上がっていた。霧藤が顔を真っ赤にしていた。

 

「なんで、たっくんはそんなに節操無いの!?」

「節操無しって、そもそも霧藤さんは澄野の何なの? 彼女面しないでくれる?」

「あの、2人共落ち着いて……」

 

 当然の如く拓海の言葉は無視された。残念ながら、彼に修羅場を解決できるだけの能力はない。

 

「川奈さんこそ、たっくんの何なの!? ゲロ吐いたり、脱がしたり、嫌がらせばっかりしている癖に!!」

「見て分かんない? 恋人同士だけど?」

 

 え? と言いかけて、ギリギリ飲み込んだ。この状況で『いつの間に恋人になっていたっけ?』なんてことを言ったら引っ叩かれる可能性がと思ったが、それはそれで一つの手打ちに出来たかもしれなかった。

 

「恋人???」

「そう。私は、いつまでたってもオママゴトみたいなことしている幼馴染とは違うから。あ、幼馴染のガワを被っているだけだったね」

「おい、川奈!」

 

 川奈の言葉がクリティカルだったのか、霧藤は更に顔を真っ赤にさせていた。堪らず、彼女が手を振り上げた時点で拓海が間に入った。パチーンと景気の良い音が響いていた。

 

~~

 

「それで、朝から頬に紅葉模様作った訳ね」

「つばさちゃん。普段は大人しいけど、ここぞという時は信じられない位に攻撃的になるからなぁ」

「これだから独占欲の強い奴は嫌なんっすよね」

 

 雫原、面影、今馬の探索メンバーに川奈を加えた5人で、ドローンで運ばれて来た朝食を取っていた。食堂に行く勇気はなかった為だ。

 

「そもそも、互いに同意だったんだから別に問題なくない?」

 

 川奈に悪びれた様子は1つも無かった。ただ、探索で拓海を連れ出す上で確執という問題が出来てしまった。

 

「今のつばさちゃんと希ちゃんを学園に置いて行くのは正直言うと、気が進まない。流石に殺し合いはしないだろうけど」

 

 面影も言う様に空気は確実に悪くなる。霧藤は腹芸が出来る類の人間ではなく、かなり直情的だ。

 

「じゃあ、私も澄野達と一緒に探索に行くしかないよね。仕方ないよね」

「良い訳無いでしょうが」

 

 雫原が凄んだ。戦力的な問題もあるが、この状況で川奈を連れ出したら確実に最後の一押しになってしまう。むしろ、連れ出すとしたら。

 

「まさか、霧藤達の方を?」

「もしくは、探索の中止か。ただ、それはそれで澄野君も過ごし難いだろう?」

 

 今の学園は針の筵と言っても過言ではないので、連れ出して欲しい位だった。では、やはり。霧藤を連れて行くしかないのか。

 

「自分、考えがあるんっすけど。いいっすか? 玄関ホールで待っていて欲しいんっすけど!」

 

 今馬が良い感じの笑顔を浮かべながら部屋を飛び出した。一体、どんな考えがあるのだろう? 間が持たない為か、面影が探索の概要を切り出した。

 

「まず、今日の探索の目的は『サイワイの箱』と呼ばれる物を見つけることだ」

「なんだそれ?」

「澄野君や狂死香ちゃんに向けて言うなら、フトゥールム産のドラゴンボールって所かな」

 

 それはつまり。集めたら願いが叶うという、フィクションめいたアーティファクトと言うことか。だが、周回でも何でも起きているのだから、その程度のファンタジーがあっても不思議ではない。

 

「それって、伝承とか昔話的な物じゃなくて?」

「本当に使える物よ。ただ、機能させるには面倒なギミックがあるのよ。13個あるうちの特定の箱だけを開かないといけないって言うね」

 

 雫原も同意していることから、決して与太話と言う訳ではないらしい。ただ、集めれば良いだけではないというのがネックだった。

 

「もったいぶらずに言うと。箱に月の模様が書かれていて、その数が素数の物を開ければ良いんだよ」

「毎回、出現する模様も一緒だし。特定の箱だけを集めれば良いんだけどね」

「そんな便利な物があるなら、どうして使わないんだ?」

 

 現在の特防隊メンバーにならすぐに集められそうなのに、なぜ集めないのか? 侵攻生側も、そんな便利な物があればすぐにでも使いそうな物だが。

 

「そうならない様に。お互いの陣営が直ぐに、起動に必要な箱を1個は確保するからさ。これが実物なんだけど」

 

 面影が懐から箱を取り出した。蓋には17個の月の模様が描かれている。いつの間に確保していたのだろうか?

 

「箱は13個なのに。コレには17個の月の模様があるのか」

「それがヒントにもなっているんだろうね。1~13ではなく、2~14でもなく、2~13、17となっているから」

「そうか。14~16の模様だったら、何かしらの倍数だもんな」

 

 一種の協定の様な役割もあるのかもしれない。ただ、そうなった場合に気になることがあった。素数以外の模様の箱を開けるとどうなるのか?

 

「そっちは『ワザワイの箱』って言って、中に『ギィ』って寄生生物が入っているのよ。とにかく、開けたらロクでもないことになるわ」

「ゾンビパニックになるからね。素数の箱以外は基本放置で問題ないよ」

「答えが分かり切った状態でのギミックってマジで意味が無いんだな……」

 

 話的に恐らく、軽々に触れたら禍が降りかかるみたいなトラップだったのだろうが、既に判明していたら何の意味もない。

 

「素数だから『2,3,5,7,11,13,17』の7つの箱を集めれば良いんだけれど、問題はこの内の『3』をヴェシネスが所持していることなんだよね」

 

 川奈が眉間に皺を寄せていた。そんな簡単に使えたら、ループという前提さえ崩されかねないので、そう甘くはない様だ。

 

「まず、最初に5個模様の奴を探しに行きましょう。地下道エリアにあるんだけれど、場所が問題でね」

「なんかあるのか?」

「この地下道。チューラムタミーの自宅に繋がっているのよ。持ち去られている可能性は高いけれど、念の為にね」

「ちなみに彼女の自宅にも箱はあるよ。9個模様だから、ワザワイの方だけど」

 

 既に40日以上経過しているし、持ち去られてそうな空気はあるが、場所の確認だけでも意味はある。というか、話しぶりからしても周回する場合『3個』と『5個』は既に相手側の手に渡っていると考えた方が良さそうだった。

 

「ちょっと待て。アイツらって、詰め所とか基地にいる訳じゃなくて。自宅とかもあるのか?」

「そりゃそうよ。アイツらだって英雄である前に人なんだから」

 

 雫原が言うことは当然なのだが、そんな家庭的な一面があるというとギャップが凄かった。でも、ちょっと気になった。

 

「もしかして。彼女の自宅に興味がある? 止めておいた方が良いよ。彼女の家、トラップ塗れだから」

「侵入者が来るのが前提の家なのか?」

「そんな奴の家より、私の部屋に来なって!」

 

 川奈が異次元的誘導で自分の部屋に招こうとした辺りで、今馬が帰って来た。彼はスッと親指を立てた。

 

「勧誘バッチっす! それじゃあ、そろそろ探索に向かうっすよ!」

 

 グッドタイミング過ぎてちょっと怪しいが、彼に導かれるまま玄関ホールに移動すると、待ち構えている物が2人。

 

「ほら、希。澄野達も来たし」

「……」

 

 イヴァーに宥められているが、未だに不機嫌な霧藤が居た。あっと言う間に択位の顔はシワシワになっていた。

 

「今馬?」

「先輩、チャンスっす。学園内に残したら他の奴らと結託するけど、連れ出せばアウェーっす。んでもって、イヴァーは先輩に手を出した過去があるから、毅然とできないハズっす」

 

 最悪の選抜方法だった。だが、実際に弱みに付け込むという上では適格だし、探索においてイヴァーの知識は非常に頼りになるので……嫌になる位に合理的だった。

 

「それじゃあ、探索に出るから。消火器を持って」

 

 そう言うと、雫原は消火器のホースを炎の壁に向けた。2周目に入って、ようやくと言うか。久々に周囲を探る意味での探索が始まろうとしていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。