最終防衛学園 ~貞操危機編~   作:ゼフィガルド

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【好き好き編/修羅場TL】49日目

 スクールバスに揺られて、霧藤達は部隊長達のアジトに付いていた。

 侵攻生物達から『また来やがったよ』みたいな視線を向けられたが、今馬が大声で叫んでいた。

 

「すいませーん! ヴェシネス大将軍に取り次いで貰いたいんですけどー! イヴァー部隊長も同行していまーす!」

 

 流石に大将軍の妹が一緒に居るとなれば無碍にする訳にもいかず、侵攻生物達の一部が部隊長達を呼ぶ為に持ち場を離れていた。

 待つこと10分ほど。たった、これだけの時間で来られるのだから部隊長も暇なのかもしれない。迎えに来たのは、ムヴヴムだった。

 

「あの。イヴァーさん? 当たり前のように連中を連れて来ていますけれど、僕達敵対しているのを忘れないで下さいね?」

「拓海とも?」

「それはその、スミノは別だよ」

 

 秩序の化神の癖にダブスタをかましていたので、今馬が鼻で笑っていた。だが、これが切っ掛けになると踏んだのか、霧藤が一歩前に出た。

 

「その澄野君に関することで相談があるんです。これは、そちらの協力も無ければ出来ないことなんです」

「……何があった?」

 

 これまでに何があったかを話した。他所のTLに向かったこと、拓海が女体化したこと、帰還の際、別TLの特防隊メンバーに拉致されたこと。

 

「イヴァー様が付いていながら、そんなことが?」

「言い訳はしない。だから、こうしてお姉ちゃんにお願いに来たの」

 

 ムヴヴムが息をのんだ。もしも、拓海を攫われたなんて知ったら、ヴェシネスがキレ散らかすのは間違いない。

 だが、自分としても拓海が攫われたのなら黙っている訳にはいかない。どうしたら良い物かと考えていると、背後からゾワリとするほどの威圧感。

 

「なるほどな。態々、イヴァーが来るから何の用かと思えば」

「ヴェシネス様!?」

 

 正に話題の人物である彼女が居た。顔には青筋が浮かんでおり、何かしらの方法で先程の説明を聞いていたのだろう。

 

「やはり、お前達に預けたのは間違いだった。別のTLに渡りたいというのだから、これに用事があるのだろう?」

 

 何処まで話が早いのか。彼女の手には『3つ』の模様が付いたサイワイの箱があった。だが、このまま素直に渡してくれるとも思わなかった。

 

「交換条件は?」

「スミノは偉大なる私が頂く。貴様らは、奴にセクハラと凌辱を繰り返した挙句、拉致までされているのだから預けるに値しない」

 

 霧藤の問にヴェシネスは微塵たりとも怒りを隠さずに言った。全てが事実なので仕方ないのか、誰も反論できずにいた。

 

「良いんすか。自分達と交渉するつもりがないなら、こっちが持っているサイワイの箱を使わせないっすよ」

「構わん。今からでも、奪いに行くだけだ」

 

 今馬も強気な態度を見せたが、最終的に物を言うのは暴力だ。一触即発の空気が漂い始めたので、慌ててイヴァーが仲介に入った。

 

「待って、お姉ちゃん。流石に他所のTLに行くなんて経験は殆ど無いから、ここら辺は希たちに頼るしかないと思うの」

 

 ッチ。とヴェシネスは舌打ちをしていた。殆ど、という言い方からPL装置の存在については知らないわけでは無いし、使用した経験もあるのだろうが、あまり詳しくは無いのだろう。

 

「本来ならば、あんな物も必要ないからな。不本意であるが、貴様らの方がこういったことには詳しいのだろう」

「それじゃあ……」

「ただし、私も同行する」

 

 霧藤もムヴヴムも言葉を失っていた。ヴェシネスが自分達に同行する。あまりにあり得ない事態だった。

 

「おかしなことは言っていまい。貴様らがサイワイの箱を用いて、スミノを取り戻す以外に使う可能性もある。何より、偉大なる私から伴侶を奪った狼藉者達を手打ちにせんと、溜飲も下がらん」

 

 一先ず、これを呑み込まない限りはサイワイの箱を獲得することも出来ない。皆も顔を見合わせ……頷いた。霧藤が前に出た。

 

「分かったよ。じゃあ、一緒にバスに……」

「さっさとしろ」

 

 かくして、敵の総大将を乗せたスクールバスはかつてない程の緊張感に包まれながら、最終防衛学園に向けて帰還し始めた。

 

~~

 

 昨日は雫原に1日中拘束されていたが、今朝はあっさりと解放されていた。

 もっと執着されると思っていたが、嫌われるのも嫌なので、ある程度の自由意思は尊重しなくてはならないという塩梅なのだろうか。と言っても。

 

「やぁ! 拓海クン! 今日は僕と一緒だね!」

「ああ! 逃れられない!!」

 

 今日は蒼月に拘束される日だった。2周目に戻って来たばかりを思い出す束縛だった。しかし、言うほど苦痛に思わなかったのは、それだけ色々な人間に付き合い続けて来たからだろうか。

 

「今日の拓海クンは元気だね! 前なら、苦々しい顔をするだけだったのに」

「別人だよ! お前達が知っているオレと!」

「見れば分かるよ。で、拓海クン。今日は何する?」

 

 話が通じているんだか、通じていないんだかという恐怖が若干湧いた。

 それはそれとして、どうやら彼は自分が何をしたいかということを聞いて来る位には、こちらの意思を尊重してくれているらしい。

 

「じゃ、じゃあ。今日は皆に挨拶したいかなって」

「駄目だよ。特防隊メンバーなんて、頭のおかしい奴しかいないんだから」

「オレの意見を聞いた意味! 何処!!」

 

 じゃあ、聞くなよ。だが、未だに遭遇していない特防隊メンバーの様子は気になる。銀崎が既に殺されているとしたら、他に会っていないメンバーは。

 

「(丸子、飴宮、喪白の3人か。それと、イヴァーはどうなっているんだ?)」

 

 もしかして、異血吸収されたのだろうか。と言っても、本来のイヴァーは敵対している相手なので不思議ではない。

 

「なぁ、蒼月。イヴァーはどうしたんだ?」

「逃げられたよ。まさか、あんな元気があるだなんて思っていなかった。それ以外の部隊長は大体仕留めているから問題ないよ」

 

 蒼月は親指を立てていた。1周目では言葉も分からなかったので抵抗も無かったが、今となっては彼らのことが分かってしまうので、手に掛けることには忌避感が湧いていた。

 

「そっか。分かった。全員に挨拶はしなくて良いから、丸子、飴宮、喪白の3人だけも無理か?」

「楽クンは駄目だよ。君は彼を犯罪者にしたいの? 特防隊メンバーからレイプ魔が出るなんて、僕は堪えられない」

 

 あまりに散々な評価だった。とは言え、今の状態であったら危険なことは想像が着いた。となれば、残り二人だが。

 

「じゃあ、喪白は?」

「あ、ごめん。喪白さんは探索に出ているんだ。資源のやりくりも大変でね」

 

 当たり前の話だが、資源は有限だ。自分がいたTLではガッツリ溜め込んでいたが、基本的には1周目と同じで稼ぎに行く必要がある。

 

「飴宮は?」

「駄目。怠美さんとは合わせられない。危ないから」

「お前よりも?」

 

 と、軽口を叩いてみたが、蒼月の表情は真剣なままだった。つまり、本当に危ないということか。

 

「どういうことだ?」

「直接行く訳にはいかないから、これを見て欲しいんだけど」

 

 蒼月が懐から取り出したデバイスを起動させた。部屋の様子が映し出されたが、異様としか言えない光景が広がっていた。

 薄暗い部屋。エロゲのパッケージや漫画が散乱している部屋に紫色の肉塊が蠢いている。体の各所に目玉がぎょろりと浮かんでいて、何処でもない虚空を見ていた。

 ふと、何かに気付いた様に。大量に浮かんだ目玉の全てが一斉にカメラを見た。デバイスを通して、こちらを見られている気がした。肉塊から生えた触手がパタパタと左右に動いていた。

 

「なんだよ。なんだよコレ」

「ノモケバって言うのを取り込んだらしいよ。僕も詳しくは知らないけど」

 

 拓海は皆から受けた説明を思い出していた。フトゥールムに住まう生物で、ザックリ言うと『沙耶の唄』の『沙耶』みたいな見た目をしているが、中身は滅茶苦茶厄介な物だと聞いていた。

 

「なんで、飴宮はそんなことを?」

「彼女もショックを受けていたってことだよ。だからね、拓海クン。ずっと、ここにいてね?」

 

 ギュッと両手を握られた。跳ねたくなる衝動を抑えた。一体、どうして彼らはここまで追い込まれているのか? 理由を直接訪ねる勇気は無かった。だが、やりたいことは出来た。

 

「蒼月。飴宮の部屋に行っても良いか?」

 

 自分は拉致された身であるが、彼らを加害者だと思うことはできない。

 1周目で、2周目で過ごして来た彼らと違っていたとしても、特防隊メンバーとして何か出来ないかと考えてしまう。

 

「なるほどね。だから、比留子さんは君を選んだのかな」

「蒼月?」

「良いよ? 一緒に行こう。ただし、我駆力刀を持って行ってね。何が起きるかは分からないから」

 

 蒼月に言われた通り、一旦。作戦室に向かって、我駆力刀で変身を済ませてから、飴宮の部屋へと向かった。

 

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