最終防衛学園 ~貞操危機編~   作:ゼフィガルド

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【好き好き編】9日目

「で。拓海クンはシたの?」

 

 1日掛けて学園に帰還すると、すっかり日が暮れている中、蒼月に尋ねられた。

 自分を中心とした包囲網が敷かれており、逃げることなど敵わない状況だった。ついでに誘拐したシャンシンは中庭の檻に放り込まれていた。

 長い長い沈黙だった。と言っても、あんな情事後の映像を見られたんだから、言い訳が利く訳もないし、何より自分の為に命を張ってくれた皆を騙すような真似はしたくなかった。

 

「……はい」

「無理矢理だった?」

 

 先程の戦いでも恐ろしい程の活躍を見せた川奈は平静を装っていたが、手の甲に血管が浮かび上がる位にブチギレていた。拓海の中に選択肢が現れた。

 

「(どうするべきだ?)」

 

 『無理矢理だった』。これは決して嘘ではない。ヴェシネスに手籠めにされたのは本当だが、我駆力刀も無い状況で抵抗できる余地はなかった。

 『気持ちよかった』。回答としてはカスの部類になるが、仲間に嘘を吐きたくない。意外と情事中はヴェシネスもイヴァーも優しかった。致した後のピロートークもまた、2人の想いが伝わって来た。2人にも嘘を吐きたくなかった。

 

「どうだったの?」

「気持ちよかった」

 

 雫原に促されたことで、つい本音が出てしまった。嘘を吐かないことと配慮しないことは全くの別物だって、それ一番言われているから。

 様子のおかしいメンバーが押し黙り、数少ないマトモ組である飴宮と霧藤からも距離を置かれる中、厄師寺だけが話し掛けてくれた。

 

「詰まり、無理矢理じゃなかったんだな?」

「え、まぁ、うん……」

「じゃあ、良いじゃねぇか。あんな状況で貞操を守れる奴なんていねぇよ。仕方ねぇよ。こうして、無事に帰って来れただけでも良しとしようや」

 

 気遣いと優しさに満ちた言葉に拓海の目尻には涙が浮かんでいた。

 彼のコミュニケーションを皮切りに竦んでいた、霧藤と飴宮も遠慮がちにではあるが話し掛けて来た。

 

「澄野君。やっぱり、向こうでは事情聴取とか拷問みたいなことが?」

「いや、特にそう言うことは無かったかな。部隊長の何人かとは話したけれど」

「もしかして、向こうの部隊長も似たような感じ?」

 

 何と? までは、飴宮も言わなかった。皆のことを指定すれば、話が面倒臭くなりそうだと察していたからだ。

 

「そんな感じ。戦いを止められないかって交渉したりもしたけれど、無理だった」

 

 理由は言わずもがな。いや、最終防衛学園にいる皆の意見を聞けばすぐに分かるだろう。劣等侵略者殲滅を掲げているのはお互いに同じだった。『※ただし澄野拓海を除く』みたいな文言は入っているかもしれないが。

 

「無理だったら仕方がないよ。心置きなく全滅させよう」

 

 蒼月としては最高の回答だったらしい。他の面々が頷いている所を見るに、相手を滅ぼす気MAXなようだ。

 

「拙者の聖十文字刀も。これが定めさ! 知りながらも突き進んで道だろう! と言っているのでござるな」

「ハッ。どうせ、100日間守り切ればこっちが自動的に勝利よ。そんなに焦る必要もないわ」

 

 大鈴木が尊大に言っていた。100日後には消えない炎が搭載されたミサイルが放たれ、侵攻生は全滅する。

 拓海がいた1周目では、蒼月の蛮行により未然に防がれたが、今回は蒼月も発射に賛同している様だった。

 

「(でも、それは本当に正しいのか?)」

 

 拓海の中に残っているのは、数日間共に過ごした部隊長達との記憶だった。特に、とある女性の顔が思い浮かんで離れない……という様子は外から見ても簡単に分かったのだろう。いつの間にか包囲網が縮まっていた。

 

「あ、蒼月。前回の防衛線と今回の襲撃。どう考えても私がMVPだよね?」

 

 川奈がコレでもかという位に自己主張をしていた。防衛線での暴れぶり、基地に襲撃を掛けてきた際も川奈は暴れ狂っていた。1人だけキルレートがエグイことになっていた。

 

「それは疑う余地もないね。ご褒美に関しては、間違いなく彼女が相応しいと思う。皆も異論はないね?」

 

 蒼月が確認を取った。不思議なことに、これに関しては何かしらの協定が決まっているのか、マトモ組のメンツ以外は深く頷いていた。

 

「ちなみにご褒美って何するん?」

 

 詳細を知らない飴宮が好奇心から聞いてみたが、皆はニッコリと微笑むだけだった。不気味だった。

 

「それじゃあ、拓海クン。つばささんと2人で部屋に向かって?」

 

 何をされるんだろうか? という警戒心が働かないことも無かったが、先の戦闘だけでなく、1周目の時も彼女には助けられ続けた。

 何か、自分に労えることがあるなら喜んで引き受けよう。と、2人で自室に向かった。部屋に入り、鍵を掛けた。

 

「やっと2人きりだね」

 

 2人で一緒にベッドに腰掛ける。ほぼ密着状態なので、拓海も何を言えば良いか分からずドギマギしていた。

 聞きたいことは沢山ある。先日、ヴェシネスから聞いたように。川奈達も周回の記憶があるのだろうかとか、だとしたら何を知っているのだろうかとか。

 ただ、拓海は特防隊のリーダーである以前に健全な青少年である。大切なことよりも、同年代の女子を意識する位には男子である。

 

「(これじゃあ、オレが変態みたいじゃないか)」

 

 男子が抱える煩悩なんてそりゃもう凄いモンである。一度でも解放すれば、後は出口を求めて悶々と溜まり続けるばかりだ。

 あり得ない。共に戦う仲間に対して不埒な考えを抱くなんて言語道断だ。気を鎮めるべく深呼吸をした。隣にいる川奈のいい匂いが大量に入り込んで来た。

 

「はぅっ」

 

 一度破られた貞操が再び強度を取り戻すには時間がかかる。ワニャワニャになった拓海の脳みそには、刺激が強すぎた。だが、彼は堪えた。

 

「澄野、どうしたの? ……って、あっつ!!」

 

 理性と欲望の激しい戦いの余波とでも言うべきか、彼の中に在る血に反応したのか。拓海の周囲は陽炎の様に揺らめいていた。こうなれば迷っている暇はない。切り出すことにした。

 

「川奈。聞いて欲しいことがあるんだ」

 

 ヴェシネス達に捕まっている間に聞いたことを話した。自分以外にも周回している人間がいること、そこで色々な人と関係を気付いていたらしいということ。

 どうして、自分が1周分の記憶しかないのかも気になったが、一番気になることがあるとすれば。

 

「お前にも、あるのか?」

「そっか。聞いちゃったんだ」

 

 いつもみたいなブチギレではなく『余計なことをしやがって』という、怒りが見て取れた。そして、気を取り直して真顔で拓海を見て言った。

 

「あるよ。私にも。拓海が言う1周目とは違う記憶」

 

 もしも、知っているなら教えて欲しいと言い掛けた所で、彼女の目尻に涙が浮かんでいることに気付いた。

 

「……川奈?」

「でも、話したくない。澄野には今までの澄野でいて欲しいんだ」

 

 そっと一緒にベッドに倒れ込んだ。彼女の知っていることを知りたい気持ちはあった。だが、聞いてしまえば害となる情報があるというのも薄っすらと分かっていた。

 

「(例えば、オレが何も知らない霧藤の事情を知っていたら気味悪がられるだろうし……)」

 

 自分が知っている1周目も犠牲者が出ないことは無かったが、少ない。とは言えた。だが、アレも言ってみれば綱渡りが上手く行った結果でしかない。

 あまり触れるべきでない部分だろうと判断して、どうにか重くなり過ぎない話題へとシフトさせようと頭を働かせた。

 

「ちなみに、そっちでのオレってどんな感じだった?」

「凄く真面目で何でも背負い込んでいたりとか、ね。他には、皆の『人気者』になったりするパターンもあったけれど」

「オレが人気者か。想像も付かないな……」

「は? 澄野が人気者じゃないってあり得ないんだけれど?」

 

 川奈としても譲れない何かがあったらしい。そして、さっきからずっと密着された状態で横になっているが、気恥ずかしくなって来た。

 

「なぁ。川奈、そろそろ離れて欲しいんだけど」

「駄目。まだ、私のご褒美タイムは終わっていない。他にも気になること、色々とあるでしょ?」

 

 何でも聞いてね。と言わんばかりに待機していた。かくして、拓海の長い夜は更けて行った。……終盤ではお互いに密着した状態で寝こけていたが。猥褻は一切なかった。

 

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