最終防衛学園 ~貞操危機編~   作:ゼフィガルド

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【好き好き編/修羅場TL】51日目 その3

 目を覚ました拓海は、中庭で正座をさせられていた。

 おかしい、自分は蒼月を助けて、敵のボス格を退けたMVPとして表彰されても良いハズなのに、どうして取り囲まれているのか。

 

「それはね。拓海が戦場でいちゃ付き始めたからだよ」

 

 飴宮検事がしんみりと言っていた。戦場だから、そんなことを気にしていられるか! というよりも前に、拓海は自らの弁護をした。

 

「待って欲しい! オレは蒼月を助けようと抑え込んだだけだ! やましい気持ちは一切ない!!」

「では、当事者に証言を聞きましょう。名前を」

 

 雫原サイバンチョに促され、檻にぶち込まれたカルアが証言を始めた。気のせいでなければ、顔が紅潮している。

 

「はい。たっくんは背面から抱き着いて来て、胸を押し付けてきたりして。その上、耳に吐息を吹きかけたり、甘噛みをして来たんです」

 

 この場に集まった女子メンバーからジト目で見られ、霧藤からは侵攻生を見るような目で見られていたが、事実なので否定できない。となれば、もう開き直るしかなかった。

 

「しかし、そのおかげで抑え込めました。もしも、オレが恥ずかしがって性的なことをしなければ、力付くで振り解かれていたことでしょう」

「異議を却下するわ」

 

 だが、雫原に一蹴された。魔女裁判めいた様子に拓海が絶望していると、蒼月弁護士が手を挙げた。

 

「ですが! 僕が拓海クンに助けられたのも事実です! 犯した罪は消えることはありませんが、被告人には更生の機会が設けられて然るべきです。暫く、女人との接触を禁じ、僕が更生を促します」

「それも却下よ。被告人の更生を口実に如何わしいことが起きる可能性もある。私が責任をもって面倒を見ましょう」

 

 いつまで、この茶番は続くんだろうか。さっさと、カルアの様子を見に行きたいとウズウズしていると飴宮が耳打ちをして来た。この場を収める妙案でも享受してくれるのだろうか?

 

「ねぇ、拓海。『スーパーマリオ地下帝国の女神』がアーカイブの中から発掘されたよ。また見ようよ」

「それ。今、話さないと駄目?」

 

マリオの映画ならもっと近年に作られた美麗なCG映画があるじゃないか。と思ったが、イルブリードに憑りつかれているのだから仕方がない。

 

「いいや。雫原サイバンチョ。拓海クンは女子に目がありません。加えて、特防隊にいる男子は全員チ〇ポに人格を支配されていますが、僕なら大丈夫です」

 

 蒼月の評価もあんまりにあんまりだった。これを鼻で笑ったのは今馬だった。

 

「アレ? もしかして、先輩ってぇ。いざって時に、立たないタイプっすか? うわぁ、男として終わっていますね」

「そうやってね。直ぐに性的な話に持って行く辺り、品性を疑うよ」

「でも、澄野先輩はそう言う話。好きですよね?」

「黙秘権を行使します」

 

 そんなことを言っている時点で肯定も同然なのだが、守らなければならない体裁はある。ただ、このいつまで続くか分からないウダウダした話は、霧藤がブチギレたことにより突如として中断されることになった。

 

「皆! 今は澄野君の性事情について話す場合じゃないよ! 捕虜にした、カルアちゃんの処遇をどうするかでしょ!」

「流石、霧藤だ」

「澄野君は黙ってくれる?」

 

 折角、褒めたのに無慈悲な弾圧を食らった。

 少なくとも、自身の身柄をどうこうする話題を逸らせるのは大いに助かることであり、実際。この得体のしれない少女をどうするか? というのは、最終防衛学園的にも大きな問題であった。

 

「尋問に関しては、私に任せて欲しい」

 

 面影が手を挙げた。この中で尋問をやらせるのに、彼以上の適役はいないだろうが、慌てて拓海も手を挙げた。

 

「待ってくれ。オレも同席させて貰うことは」

「私からもお願いしたい位だよ。さぁ、皆も防衛戦で疲れたことだろうから先に戻っていて欲しい。後は私達の時間だ」

 

 と。面影が退出を促したが、誰も外に出る気配がない。まだ、何か用事があるのだろうか?

 

「嫌でござる。澄野殿を残すということは、拷問の手段として目の前でNTRをするということは拙者でも分かる」

「そうだよ。歪クンなんて異常性癖者と拓海クンを残したら、何が起きるか」

 

 凶鳥と蒼月の意見に皆が頷いていた。仕方なく、このまま尋問を開始することにした。

 

「まず、名前を。それと、最終防衛学園に攻めて来た理由を」

「『柏宮カルア』だよ。理由は、この学園がしようとしていることを止める為。それと、たっくんを助けに来たんだよ」

 

 彼女の主張は敵対こそする物だが、おかしなものではない。

 最終防衛学園がフトゥールムを焼き払おうとしていることは、この場にいる誰もが知っていることだし。その部分だけなら同意できなくも無いが。

 

「澄野君を助けに来た。とは?」

「白を切るつもり? 自分達が何をして来たかも覚えていないの?」

 

 カルアの表情が変わった。苛立っている。自分は別のTLから来た為、本来。このTLにいた拓海がどれだけ摩耗していたかは想像するしかないが、少なくとも逃げ出す程なのだから、相当な物だったのだろう。

 

「どうやって、私達の内情を知った?」

「幾らでも方法はあるよ。例えば、この学園の施設がハッキングを受けて監視されている。って言っても、対策出来る?」

 

 学園のいたるところに監視カメラなどが仕掛けられているが、これらを弄れるのは川奈位だろう。ということで、皆が彼女の方を見たが。

 

「私、ハードウェアの方は何とかできるけれど、ソフトウェア関係は詳しい訳じゃないから」

「なるほど。今後は、作戦などを考えるときは場所を選ぼう。では、次の質問だ。君は何者だい?」

 

 一体、何処から来たのか。何処にいたのか。拓海をしても想像が付かない。姿形を似せただけの存在でないことは薄々と感じている。

 

「何って。たっくんの幼馴染だけど? そうだ! たっくん。ねぇ、なんでも良いから聞いてみてよ。ベタだけれど、確実な尋ね方でしょ?」

「それじゃあ……」

 

 拓海は幾つもの質問をした。いずれも、皆に話したことがない。

 偽りだとしても。カルアと自分しか知らないエピソードを織り交ぜた物だったが、檻の中にいる彼女はいずれの質問にも明朗に答えてみせた。ここまで来たら分かっていたが、最後にダメ押しをした。

 

「やましい意志は無いけれど。腹を見せてくれるか?」

「コレでしょ?」

 

 ペロンと捲った下には大きな傷跡。少女が抱えるには大きな物だが、カルアは笑っていた。霧藤は驚いていた。

 

「どうして、私と同じ傷痕が?」

「偶々、似た様な場所に傷があっただけだよ。どう? たっくん。コレで、わたしがわたしだってこと。信じてくれる?」

 

 信じるしかない。というのが本当の所だった。いずれも特防隊メンバーに話す様なことでもない、他愛のないことを殆ど網羅していたし、自分の母親の仔細まで知っていた。となれば、拓海には疑う要素が無かった。

 だとすれば、余計に疑問が残る。架空の存在であるはずの彼女がどうして目の前にいるのか?

 

「君は人工天体から後付けで送られて来た刺客。ということは無いか?」

「なんで、自分達を滅ぼそうとするような人間を作り出すの?」

 

 真っ先に思い当った可能性を面影が述べたが、直ぐに否定された。当然だ。どうして、自分達に敵意を向ける存在を作り出す必要がある?

 

「別TLで霧藤の肉体を乗っ取ったギィである可能性は?」

「だったら、この場で我駆力刀を貸して貰えれば変身するよ?」

 

 雫原が次の可能性を述べたが、これも否定された。霧藤は体内の異血が少なく、皆と同じ様な変身が出来ないからだ。

 

「やっぱりゼンタだろ! 記憶とかはどうにかして入手したんだろ!」

「じゃあ、あの部隊長は誰だったんだろうね?」

「私達が部隊長だと思っていた方こそが模倣体だった。とかは?」

「模倣体で貴方達を圧倒できるなら、幾らでも作ればいいじゃない」

 

 丸子がムキになって新たな可能性を述べ、雫原も補足したが、これもまた否定された。模倣体が何人も相手どれるなら、学園は簡単に制圧されるだろう。

 

「では、君は何処から来たんだい?」

「本当を言うと、わたしも覚えていない。気づいたら、フトゥールムにいた。部隊長って人達に保護されて、色々と知らされて戦うことを決めたの」

 

 皆が面影を見た『嘘を言っているか?』と尋ねているようだが、面影は肩を竦めていた。

 

「なるほどね。ただ、君は私達と敵対していることだけは分かるから、暫くは牢で大人しくしておいてもらうよ。それと、澄野君は接触禁止だから」

 

 予め先手を打たれた。自分が彼女に並々ならぬ興味を持っていることは分かっているし、彼女に絆される可能性も考えて接触厳禁にしてあるのだろう。

 

「どうしてもダメか?」

「駄目だ。それに、澄野君は彼女を前にすると冷静ではいられない様だからね。君が捕虜を逃がす可能性だってある」

 

 そう言われたら、反論が出来ない。普段は自分に色々とちょっかいを出して来る面影だが、こういった時の取り決めは厳格だった。

 監視が出来そうな人間だけを部屋に残し、残りのメンバーは退出を促された。これには、丸子も異議を申し立てていた。

 

「なんで、俺は駄目なんだよ!!」

「アレじゃない? 結構簡単に誘惑されそうだし、楽に監視させたら、条件付きで拓海を引き入れそうだし?」

 

 飴宮の指摘に丸子は目を逸らしていた。セキュリティ意識の問題と言うのは、中々に共有が難しい。他にも九十九兄妹や川奈も追い出されていた。

 

「今日は疲れた。じゃあ、澄野! 一緒に部屋に帰ろ?」

 

 川奈が腕を組んで来た。防衛戦のドタバタで忘れていたが、今日は彼女と一緒に過ごすはずだった。凶鳥も色々と取り決めている様だし、素直に付いて行こうとして、もう片方の腕を今馬が掴んでいた。

 

「先輩。途中で終わって、不満じゃないっすか? 自分、女性の相手はバッチリなんで」

「わ、悪い。今日は先約があるから」

「そういうこと。およびじゃないの」

 

 シッシと手で追い払う真似をする辺り、かなり嫌味ったらしいなと思った。眉間に深い皺を刻む今馬に謝罪をしつつ、拓海は川奈の部屋に向かうことにした。

 さて、少しだけ状況を整理しておこう。現在、柏宮カルアと言う拓海にとって絶対的な存在がイレギュラー的に現れたこと。彼女達が戦場で乳繰り合っていたこと。などは全て川奈の耳にも入っている。この状態で部屋に連れていかれた拓海の運命や如何に。……というのは、他の面々も思っていたらしく。2人の姿が見えなくなった辺りで、行動を開始した。

 

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