最終防衛学園 ~貞操危機編~   作:ゼフィガルド

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【好き好き編/修羅場TL】52日目

「奥が深いな……」

 

 翌朝。拓海は早速教わったことを試していたが、これが中々に面白い。

 化粧で化ける。とは、よく言うが自分にも適用されるとは思っていなかった。メイクにも色々な種類があるし、コレを機に髪型や衣服にも気を使ってみるのも良いかもしれない。

 

「澄野も気づいちゃったか。もっと、女子力高めてみない?」

「いや、昨日みたいなことがあるから練習位で」

 

 いざ、張り切って化粧した後で防衛戦が入ったら大変なので本格的にやるのは平和になってからにしよう。

 さて、今日は明確にやりたいことがある。あのカルアが何者かを確認したいのだが、接触が禁じられている以上は会いに行く訳にはいかない。

 

「澄野。私に良い考えがある」

「川奈司令官!?」

 

 失敗フラグがすごいが、人事に関しては成功フラグなのでワンチャンスあるかもしれない。でも、提案者が提案者だからロクでもない気がする。

 

「その名も! 天岩戸作戦!!」

「日本神話だっけ?」

 

 ザックリ言えば、閉じこもってしまった神様に出て来て貰う為に、岩戸の前で楽しく踊ったりして、賑やかな雰囲気を作り出すことにより、外へと誘い出すという物であるが。

 

「そう! 幸いなことにね。澄野もおめかしを覚え始めたしね。全ては、この作戦の布石だったんだよね」

「お前、ライブ感だけで言っているだろ」

 

 普段は真面目そうなのに、テンションの乱高下が激しすぎて拓海も付いて行くのが大変だった。とは言え、何の手掛かりも無しに行くよりも可能性はあるかもしれないので、ひとまず作戦に乗ってみることにした。

 

~~

 

 中庭の入り口にて、凶鳥は精神の統一を図っていた。監視員に選ばれた者達の中では、特に篭絡され易いと思われているだろうが、ここは好意を寄せる相手の為に、心を鬼にするべきだと決めていた。

 

「(今の拙者の心は完全に『不死川 実弥』殿に候。例え、澄野殿が何を言ってこようと『接触はやめろォ』と言ってのけるでござる)」

 

 シュッシュッと。彼女がサミングの練習をしている時のことであった。

 こちらに向かって来る者が2人。片方は川奈だが、もう片方は見たことも無いギャルだった。手には、ランチボックスと水筒。

 

「よっ。凶鳥、お疲れさま」

「……もしかして、澄野殿でござるか?」

 

 いつもはダボダボのパーカーをだらしなく着ていたが、今は伸びた髪をツインテ―テールにまとめて、胸元が開いた黒のブレザーにチェック柄の赤いミニスカート。更には、黒いハイヒールブーツ。と、ギャルメイクをキメていた。

 

「そうなのよ~! 折角、女子になったんだからとことんプロデュースしてみようと思って。見なよ、私の澄野を」

 

 フゥーと一息吐いて、これ見よがしに自慢していた。当然だが、拓海は彼女のモノになった覚えはない。

 

「それと。凶鳥が見張りをしているって聞いたから、朝飯を持って来たんだ。もう、食べていたら持って帰るけれど」

「いやいや、大いに助かるでござる」

 

 拓海はランチボックスを渡して去ろうとした所で、凶鳥に呼び止められた。

 

「え? 澄野殿。一緒に朝食は?」

「いや、オレはこれから川奈と一緒に朝食を食いに行くから」

「じゃあ、頑張ってね~。私は次のコーデを考えているから」

 

 これ見よがしに手をブンブンと振りながら去っていく。そして、凶鳥の視界から消えた頃合いを見計らって、拓海は耳打ちをした。

 

「なぁ、これの何処が天岩戸なんだ?」

「フフフ。コレで澄野は交渉の材料を得たんだよ。きっと、凶鳥さんは羨ましくなって、蜜璃ちゃんのコスをさせたがるはず。そこでね、澄野は言うんだよ。『カルアのことが心配でちょっと乗り気じゃないかな』ってね」

 

 自分を売る。後、川奈も鬼滅を読んでいることにちょっとびっくりした。なんと、分かりやすい色仕掛けだろうか。

 

「そうか。それで、入れて貰えれば」

「あ、それは駄目駄目。最初はね、一目見せて。とか、軽い要求から行くんだよ。そして、徐々に話をさせてとか。って、要求を切り替えていくんだよ。それをね、皆に満遍なくやるんだよ」

 

 川奈の言わんとしていることを理解して来た。こうして、全員に材料をちらつかせることで誰かがルールを破ることを期待している。

 自分がいつでも喋りたがっている訳じゃないし、本当に一目見たら満足するパターンもある。とすれば、我先にと。皆が焦るのを狙ってのことだろう。

 

「す、すげぇ。川奈が名軍師だ。本当に人事に関した作戦は完璧だ」

「そして、私は澄野を弄り倒して自慢する。全てがヨシってわけね」

 

 変に献身的ではなく、自身も得をする要素がある。ということで、拓海としても信用はできる。できるのだが。

 

「でも、川奈。この服、胸元開け過ぎじゃないか?」

「ギャルは見せてナンボだからね。じゃあ、食堂行こっか!」

 

 朝から上機嫌な川奈と腕を組んで廊下を歩きだした所で、不意に人の気配を感じた。まさかと思い、振り返ってみたが誰も居なかった。

 

「(まさかな)」

 

 今の会話、もしかして。聞かれていたのだろうか? 凶鳥は真面目だ。もしかしたら、今の作戦を報告するかもしれない。そうしたら、この目論見はパァだ。

 しかし、拓海は凶鳥を信じることにした。この間は胡蝶姉妹をしたいと言っていたが、今日の自分を見たらきっと蜜璃ちゃんをさせたがるだろうと。そして、自分が伊黒さんをしたがるだろうと。

 

「その場合、オレは桜餅食いまくらないと駄目か?」

「普通にウィッグで良いでしょ」

 

 もしかして、オシャレとかナンヤラは楽しいのかもしれない。とりあえず、食堂に向かうとして。

 

~~

 

「澄野先輩。ついに目覚めたんですね?」

「わぁ……!」

 

 食堂では九十九兄妹がホイコーロー丼のチョコレートチップ&ラズベリーソース掛けを食していた。胸焼けがした。

 

「色々と教えて貰ってさ。最初は面倒臭いと思っていたけれど、やってみたら案外楽しいな」

「霧切ちゃん! 霧切ちゃんのコスもして欲しい!!」

 

 過子が待ちきれないと言わんばかりに拓海の周りをグルグルしていた。極自然に今馬が手を取ろうとしていたので、川奈がインターセプトに入っていた。

 

「川奈先輩。流石に独占し過ぎじゃないですか?」

「そうは言ってもねぇ。私は澄野と作戦会議があるから」

 

 言外にカルアと会いたいんだろう? と言われている気がした。

 幾ら興味が出てきたとはいえ、コーデやメイクについては殆ど分からない。と思ったが、これまた今馬がドヤ顔をしていた。

 

「自分、メイク関係の仕事もしていたことあるんで?」

「は? 私が一番澄野を上手くプロデュース出来るんだけど?」

 

 その、根拠のない自信は何処から湧き出て来るんだろう? 2人が火花をバチバチ散らしている光景を傍目に過子の隣に腰を下ろした。

 

「澄野先輩と一緒にオシャレできたら楽しいと思う!」

「かもな。今まで、無縁の世界だったから、ちょっと楽しいかも」

「そうだよ。拓海が興味を持ったって言うなら、怠美も色々と教えて上げるからね!」

「どっから湧いて来た!?」

 

 自分が入って来た時に、飴宮は食堂にいたのだろうか? 偶々、冷蔵庫に入っていただけかもしれないが、だとしても大分不自然だ。

 

「本当は部屋で寝ているつもりだったけれど、拓海があんまりに可愛かったから這い出てきちゃった……」

 

 食堂の天井を見たら、染みっぽいのが出来ている気がしたが……深いことは考えない様にして。ここに来て選択が一気に別れた気がしたが。

 

「いや、皆でやれば良いんじゃないか?」

 

 着せ替え人形位になっても良いと思って言ったのだが、全員が渋い顔をしていた。理由は分かる。コーデは時間が掛かるので、独占をしないと自分がしたいことができないからだ。

 

「皆。拓海はこう言っているんだ。オレを一番うまくコーデしてみろって」

「言ってない」

「そうっすよね。強請るな、勝ち取れってことですよね!」

「全然違う」

「ふん。誰が相手だろうと! 私の引き立て役にしか過ぎないんだからね」

「コイツら人の話聞いてねぇ!!」

 

 自分の意見が置き去りにされるのは、どのTLでも同じことなのかもしれない。かくして、3陣営によるファッションバトルが開始されようかという時、食堂の扉が勢いよく開かれた。ニューチャレンジャーのエントリーだ!

 

「そんな面白そうな大会。お祭り男である俺を忘れてねーか?」

「そうか。そのまま忘れていてくれ」

 

 丸子だ! 拓海としては最も参加して欲しくない人間なのだが、変な所で律儀なので参加を拒否するという真似はしなかった。かくして、四陣営で催しが開かれようとする中、ポツリと。飴宮が呟いた。

 

「こんなに食堂に人が集まったのも久しぶりだね」

 

 そう言えば、時間帯を決めて使っているみたいなことを言っていたか。全員の目的が自分だとしても交流のきっかけになるならと、拓海は甘んじて現状を受け入れることにしていた。

 




 ちょっと2週間ほど。更新頻度が落ちるかもしれません。
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