最終防衛学園 ~貞操危機編~   作:ゼフィガルド

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【好き好き編】10日目

 流石に、これからも戦いが続くかもしれないし、高校生同士と言うことでワニャワニャまでは発展しなかった。それでも朝まで添い寝して過ごしたので、拓海の眼はギンギンに冴えていた。

 なおかつ、部屋をあのままにしていたら川奈の残り香で眠れなくなる可能性も考えて、一旦ドアを開放してから学園内を徘徊することにした。向かった先は中庭だ。

 

「あ、拓海クン!」

 

 そこでは、NIGOUが壁や床から生えて来る作業用アームを駆使しながら、何かを作っている様だった。それがなんなのかは直ぐに分かった。

 

「新しい檻を作っているのか?」

「うん。皆が凄い勢いで部隊長を捕縛して来るから。2つだけじゃ檻が足りなくて」

 

 基本的に部隊長を捕まえたら、即抹殺コースだったのでこうして捕虜にしていることには若干の驚きを覚えていた。SIREIが居ないから強制力がないというのもあるかもしれないが。

 現在、檻には4人の部隊長がいる。いずれも素顔を晒され、囚人服を着せられている。内一人が坊主頭なのは、狩り尽くされたからだろう。

 

「(こいつらからも話は聞きたいんだけど)」

 

 チラリと拓海はNIGOUの方を見た。現在、SIREIは行方不明になっているが、自分達を管轄する側の人間がいる中で敵側と通じているかのような話をするのはよろしくない気がした。いや、既にバレているとは思うが。

 

「どうしたの?」

「いや、こうして部隊長の素顔を見たら殆どオレ達と変わりないって思って」

 

 咄嗟に誤魔化した。そもそも、向こうでイヴァーやヴェシネスと話をしている時点で、彼らの中身が自分達と変わらないこと位は分かっている。

 

「本当だよね。彼らは何者なんだろうね?」

 

 惚けているのか。あるいは本当に情報を渡されていないのか。判断はし難いが、他の特防隊みたいに記憶云々の話をする気にはなれない。いずれにせよNIGOUがいる状態では、部隊長と話をするのは憚られた。

 

「NIGOU。追加の檻が完成するのはどれ位になりそうだ?」

「特に何事も無ければ5日後位かな? でも、もっと数が必要になりそうだから、皆の捕縛速度には追い付けないと思う」

 

 本来、防衛戦のスパンはもっと空いていたハズなのだが、どういう訳かとんでもない頻度で攻めて来る。コレには心当たりがあった。

 

「(多分、向こうにも周回の記憶があって、色々と改良されているんだろうな)」

「次の戦いがいつになるかも分からないし、拓海クンもゆっくり休んで、英気を養ってね!」

 

 事情がよく分かっていないながらも、皆の為に出来ることをしようとするNIGOUのいじらしさに何となく罪悪感を覚えながら、拓海は食堂へと向かった。

 

~~

 

「やぁ! 拓海クン! おはよう!!!」

「お、おぅ」

 

 食堂に足を踏み入れるや、蒼月から元気よく挨拶をされた。適当な席に腰を掛けると、皆が一斉に自分の席へと集まって来た。

 

「澄野先輩。大丈夫でしたか?! こんなに汚されて!!」

 

 どさくさに紛れて、今馬に抱き着かれてほおずりされた。だが、直ぐに雫原に引っぺがされた。

 

「で。どう、気持ちよかったの?」

 

 拓海は己の迂闊な発言を呪った。果たして、今の自分は幼馴染や特防隊の皆に顔向けが出来るのか。と思い詰めていると、丸子に肩を叩かれた。

 

「しゃーねぇよ。お前も男だもんな。安心しろよ。俺は『理解』してっからな!」

 

 かなりウザい理解者面をされた。チラッと厄師寺の方に助けを求めようとしたが、見事な位に様子のおかしいメンバーにブロックされていた。

 

「澄野さん、気を病む必要はありませんよ。僕達の方がもっと『気持ちよく』させることが出来ますからね」

 

 銀崎の発言に皆が頷いていた。一体、コイツらは何をするつもりなんだろうか。

 昨日の川奈との時間を思い出すに、彼らの方から手を出すのは禁止。という協定が結ばれているッぽい。

 

「そ、そうか。そう言えば! ここ数日は何があった?」

 

 強引に話題を切り替えた。2,3日ほど学園を空けていたが侵攻生から攻め込まれなかったのかとか。

 

「中庭を見て来たら分かると思うけれど、部隊長が3人位攻め込んで来ていたから全員撃破して捕虜にはしたけれど」

「ちなみに澄野君を救出しに行く際は、近隣の拠点全部に攻撃を仕掛けてから行ったから、攻め込まれることも無かったよ」

 

 特防隊が強すぎる。川奈と面影の説明が事実なら、侵攻生達も『コイツらと関わりたくねぇ』ということになりそうだが。

 

「なんかもう。100日間も耐える必要なさそうだよな」

 

 件のミサイルを使わなくても、ここにいるメンバーで全滅させられそうな気がした。まだ10日目だが、敵の部隊長の1/3は捕まえられているし、30日目位には決着が付きそうな気がした。

 

「早めに終えたら、後は自由行動だよ! 拓海クン!」

「やること無くなって暇になりそうだな……」

「暇で良いと思うのでござるな。この学校には図書室もあるし、時間を潰す物には困らないでござるよ。部屋で惰眠を貪るよりは、ちゃんとコミュニケーションを取ったり運動する方が有意義でござるな」

 

 どうして、自分が部屋で惰眠を貪ってそうなイメージが付いているんだろうか? と言っても、二度寝、三度寝を敢行しようとした過去があるので何とも言えなかった。凶鳥の言う通り、何かしら動いたりした方が良いかもしれない。

 

「だから、ご褒美制度は大事だったんだね。ちなみに今回の対象者は歪クンだよ。川奈さんと一緒に、例の部隊長に効く毒を開発してくれたからね」

「という訳で、今日はよろしく頼むよ」

 

 彼が浮かべた笑顔に、えも言えぬ危機感を覚えたが、実際に助けて貰った身分なので何とも言えない。このまま直ぐに行くのは何となく危険な気がしたので。

 

「朝飯食った後でな」

「そう思って、ピザを持って来たわ!」

 

 喪白の手により、レスラーにあるまじき栄養バランス崩壊ブレックファストが目の前に用意された。肉、肉、肉、チーズ、チーズ、チーズ、ガーリック、バター、マヨネーズ。地獄のような朝食だった。

 

「きっと、向こうでは碌な食事も出来なかったでしょうから、いっぱい食べてね!」

「あ、ありがとう……」

 

 実際、捕虜だったときは乾パンやおかゆみたいなのがメイン食だったが、胃に優しいし味付けも悪くは無かったので、むしろ健康的だった。

 ギトギトした油が流れ込み、一口齧るや他の奴らに取られ、コーラの入ったグラスは飲み干し次第、次のグラスを持って来られる。

 

「あの。洗い物が多くなるし、別に」

「澄野先輩。今日は気にしなくても大丈夫っすよ!」

 

 と、今馬が持って行ったが、ピザの油分で汚れた部分の飲み口をなぞる様にして、口を付けていた。もうあきらめた。朝からヘヴィすぎた。

 

~~

 

 ややグロッキーになりながら、朝食を取り終えた澄野は面影と一緒に生物役品室を訪れていた。

 

「色々と殺りたいことはあるけど、まずは検査をさせて欲しい。遅効性の毒が盛られていたり、あるいはSIREIみたいに爆弾や何かが仕込まれている可能性があるから」

 

 普段は殺意と性欲が綯交ぜになっている常識のない男だが、人の心の機微に関しては特防隊でも頭一つ抜きんでている男だ。暗殺を稼業としているだけにあって、気を配ることを得意としているのかもしれない。

 

「分かった。この寝台に寝れば良いのか?」

「話が早くて助かるよ。シャツとズボンも脱いでね」

 

 当然だが、問診をするのに衣服は邪魔になるだろう。丁寧に畳んでかごに入れた。拓海に医学の知識は無いので、面影に身を任せる外ない。

 如何わしいことをされるかと思いきや、機器を使いこなしたり、触診などをしたりと。割とちゃんと検査らしいことをしていた。

 

「SIREIが仕掛けた爆弾は残っているけれど、侵攻生側に何かをされたりした形跡はないね。強いて言うなら、少し胃が小さくなっていたけれど」

「向こうでは粗食だったからな」

 

 尽きることのない食糧やプレゼントマシーンを始めとした製造技術等。この学園が如何に規格外なのかがよく分かる。

 

「よし、問題無し。じゃあ、ここからご褒美タイムに行くよ」

 

 あまりにシームレスに検査から趣味の時間に突入したのでびっくりした。別に拘束されている訳でもないので、逃げ出すことは出来なくもないが。大人しく待っている所を見るに、案外彼は被虐体質かもしれない。

 

「ま、まさか。オレの体をバラすとか……」

「そんなことはしないよ。うーん、内臓露出オ〇ニーは、前に殺ったしなぁ」

 

 到底聞き逃せない行為が聞こえた気がしたが、問い質すのは止めた。聞いた瞬間、耳と脳が犯される気がしたからだ。

 

「偶には、スタンダードに殺ってみるよ」

「そう言うのって、協定的な物があるんじゃ……」

 

 ないのかと思っていたが、面影の舌が拓海の上半身を伝う。思わず、声が漏れた。やがて胸板をなぞり、胸部の突起へと辿り着いた。

 

「澄野君の胸板って暑いんだね。何か、スポーツでも?」

「いや、特にやっていた覚えは……」

 

 耳元に熱っぽい吐息が掛った。女性の物とは異なる質感だ。野暮ったくて、ガサツだが、脳が屈服していく様な。何か作り替えられようとしているんじゃないかと錯覚を覚えた。

 

「いじめ甲斐があるよ。付いた臭いは私が塗り潰して上げるからね」

 

 最後までパンツを脱がされることはなかったが、暗殺者がどういった存在であるかを本能に叩きこまれた1日だった。

 

~~

 

「う~~」

 

 その日の夜のことである。拓海はベッドで悶々していた。協定がキッチリ守られたことで、彼はお預けを食らっていたからだ。昨日の様に理性と本能がせめぎ合っている為か、彼の周囲は陽炎の様に歪んでいた。

 

「(だ、駄目だ。ちょっと学校を探索しよう)」

 

 このままでは到底寝ることなどできない。図書室にある漫画でも読んで、クールダウンしようと向かった先のことである。先客がいた。

 

「アレ? 拓海じゃん」

 

 メイクを落としているのでちょっと印象が違うが、飴宮が居た。辺りにはコミックが積み上げられている。

 

「飴宮か。お前も眠れないのか?」

「元々、夜型人間だしね。拓海は……いや、聞かなくてもいいや。シャワーを浴びては来ているだろうけれど、臭い凄いし」

 

 シャワーで流せない臭いがこびり付いているらしい。なんか、猛烈に申し訳なくなった。

 

「わ、悪かったよ。それじゃあ……」

「いや、別に出て行かなくてもいいよ? むしろ、一緒にいて?」

 

 どういう風の吹き回しだろうか。どちらかと言うとドン引きされている印象を受ける彼女からの誘いを受けて、拓海も適当なコミックを手に取って読みふけることにした。

 

「いつも、こんな感じか?」

「それか作戦室でエロゲしているね。沙耶の唄とかオススメだよ? って、1周目って奴で聞いた?」

「実際に一緒にプレイしたこともあるし、最後まで見たけれど」

 

 簡単に概要を説明すると。この世の光景がグロテスクに見える様に歪んでしまった青年が、唯一美少女に見える謎の存在『沙耶』と共に生活を送るという話で、幻想的で退廃的な作品だった。

 

「そうなんだ! どうだった? 面白かった?」

「そうだな。触れるタイプの無い作品だったから、驚いたし、面白かった」

 

 エロゲと言われると如何わしいだけの物。かと思っていたが、シナリオはとても面白かったし、2人の結末については思うことも沢山あった。

 

「うへへへ。1周目の怠美の仕込みを褒めて遣わす」

「他にも、装甲悪鬼村正とか。君と彼女と彼女の恋とか。なんか、色々と渡されたけれど」

「よく、付き合ったね。見事な位にニトロプラス固めじゃん」

 

 飴宮の好みがよく分かるラインナップだった。いずれのゲームも王道な恋愛や物語とは言い難く、自分が常識と思っている物に問いかけて来るような内容のゲームが多かった。

 

「なんだろうな。何が起きるか分からないし、どうなるんだろう? って思うと、ついつい先が読みたくなって」

「拓海も分かってんじゃん。オススメしたゲームの中で一番気に入ったのはどれだった?」

 

 色々とプレイしたゲームはあったが、特に印象に残っている物があるとすれば。やはり……。

 

「『沙耶の唄』かな。今となったら、郁紀と似たような状況に置かれている奴がいるのが分かるし」

 

 蒼月のことだ。もしも、自分があんな光景で暮らしていたら頭がおかしくなるのも無理はない。郁紀は沙耶がいたから救われていた部分はあったが、彼には該当する人物がいない。

 

「今なら、拓海がいるじゃん」

 

 1周目では色々とあったが、今の彼は比較的安定している様に思えた。

 やったことは決して許されることではない。だが、自分のことを慕う彼を糾弾したり、責める気も起きない。

 

「そうだな。アイツが安定してくれているなら、今の所は問題ないけれど」

「問題があるとすればさ。拓海は大丈夫なの?」

「今の所、身体に問題はないぞ」

 

 ヴェシネス達と夜の運動をしたり、川奈と眠れない夜(猥褻無し)をしたり、面影で全身を弄られたり(猥褻)はあったが、現状。問題はない様に思えた。

 

「そうじゃない。辛くない?」

「まぁ、色々とセクハラは受けているけれど……」

「普通に考えて、皆おかしいし気持ち悪いよ。アレ、絶対に拓海が怒らないって分かっているからやっているよ」

 

 意外だった。あの異常さをキチンと認識している人間が、よりによって1周目でイカレムーヴをしていた彼女だとは思わなかった。

 厄師寺と違って、彼女からは距離を取られていると思っていたが、キチンと心配してくれているのが分かって、胸がジーンとした。

 

「拓海はさ。郁紀のことを別人みたいに考えているかもしんないけど、置かれている状況は結構似ているよ?」

「え? 別にオレの視界は……」

 

 一瞬、何故か周囲に蒼月がいる様な気がした。当然、気のせいだった。

 

「分かんないならいいや。折角、エロゲ談議で盛り上がれるしさ。今から作戦室で一緒にエロゲしない? 沙耶の唄の次は『さよならを教えて』で……」

「ゴメン。もうやっている。アレはちょっと……」

「そりゃそっか! 勧めたの怠美だもんね! 拓海はちゃんと同士に育て上げるからね!!」

 

 そして、一緒に作戦室に行って色々とエロゲのタイトルを見ながら、拓海は久しく。こんな気持ちを抱いていた。

 

「(何だろう。友達とバカやっているみたいで楽しいな)」

 

 どうにも、この10日間。皆の距離が近すぎて辟易していたが、飴宮との交流はとても楽しく心が軽い。2人でゲームタイトルを見ては感想を言い合ったりして、火照った体はいい具合に冷まされて行った。

 

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