迷い込んだ凶鳥   作:ゲット虚無

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最近、久々に第二次スパロボaをやろうとしたらPS2がものすごい異音を立てたんですよ。
そしてディスクにはうっすらと傷が......割って軽く掃除したんですけど変わらないし
いやぁ買い替え時なのか.....萎えぽ.......


コンバンワ

 

 そこは、現実の世界とは違う“何か”だった。

重力のない空間。色彩の意味を失った視界。

その中に、光が形を持って立っていた。

 

 まるで彫刻のように、まるで神像のように――それは“ロボット”としか言いようのない存在だった。

 否、それはロボットの概念を超えた巨大な意思の塊。形を認識する前に、圧倒的な存在感だけがマチュを貫いていた。

 

ひとつ、またひとつと、光の塊が現れる。

 真紅、蒼、黄金、黒鉄――それぞれが異なる“意志”を持つかのように、その姿は目に焼き付けられる前に眩しすぎて視えない。まるで光がその形を持っているかのように。

 

 だがその中で、たった一機だけは違った。

 

 ――ヒュッケバイン。

 

その姿は、マチュが知っている“彼”の相棒に似ていた。だが、どこか違う。

 より重々しく、より鋭く、より深淵に近い色を纏っていた。

胸騒ぎのようなものが、マチュの内心に波紋を走らせた。

 

 そのとき、新たな“光”が現れた。

 

他と違って、その光は徐々に収束していき――ついにはその“本当の姿”を晒した。

 

 機械の悪魔。

 

仮面のような顔面に、禍々しく輝く赤い両目。

 その視線が、はっきりと――マチュを見ていた。

 

その瞬間、脳が拒絶を始める。全身が硬直し、喉が凍りつく。

 

「な、なんなの……?」

 

その問いに、答えるように……空間が歪んだ。

 声にならない声が、心に直接叩き込まれる。

 

 

 

   な   ん   だ   と   思   う   ?   

 

 ――心を“見られた”。

 

そんな錯覚が、全身を覆う。

 

 

「っ――!!」

 

マチュは叫びながら、ベッドから跳ね起きた。額から、こめかみから、首筋から……汗が止まらない。まるで水を被ったかのように、寝間着が肌に張り付いている。息が乱れて、喉が焼けるほど乾いていた。

 

「い、いくらなんでも……怖すぎ、だっての……」

 

荒れた呼吸を落ち着かせようと胸に手を当てるが、心臓は狂ったように跳ねていた。

 夢であることは分かっている。けれど、あの瞳の“実在感”だけは嘘じゃなかった。

 

マチュはベッドの端で膝を抱える。

視界の奥に焼き付いた、赤い双眸の残像が、まだ彼女を見つめているように思えた。

 

▼▼▼▼▼

 

「……そろそろ来るはずなんだけどな」

 

 リョウガは、薄暗い路地の奥――廃工場跡地の搬入口で、壁にもたれながら周囲を見渡していた。時間は深夜、街の喧騒が遠ざかった無人地帯。電灯もなく、月明かりが細く伸びた鉄骨の影を地面に落としている。

 

 ここは、“そういうやり取り”のために使われる場所だ。配達されるのは、合法とは言い難い物品。今回は拳銃――小型だが火力はある、護身用の自動式。彼のような“部外者”にとって、正式なルートで武器を持つのは難しい。だから、こうして地下の伝手に頼るしかなかった。

 

(……物騒な話だよな)

 

 ポケットに手を入れながら、リョウガは小さくため息を吐いた。

 

正直、今の彼の戦闘力を考えれば――銃の一丁や二丁、必要ないと言えばそうかもしれない。彼の肉体は鍛え上げられていた。ニュータイプとしての感覚、念動力、格闘術――すべてが一流。並の不良や傭兵程度なら素手でもひねれる。

 

 だがそれは、力が使える前提の話だ。

 

『いいか? 武器も機体も、その力が使えない時……頼れるのは結局、自分の肉体だけだ』

 

脳裏に響く、かつての師の言葉。炎天下の岩場で、足場の悪い訓練場で、何度も聞いた台詞だ。

そのたびに、リョウガは思ったものだ。

 

『の、脳筋すぎやしませんか?』

 

だが返ってくるのは決まって一喝だった。

 

『バカ野郎っ! 身一つな時に戦えなくてどうする!!』

 

 その“無茶苦茶な理屈”に何度も泣かされた。骨が折れたことも、歯が欠けたこともある。だが、そのおかげで今の自分があるのも事実だった。

 

(……って、違う、今悩んでるのはそこじゃない)

 

 思考のループから抜け出すように、リョウガは自分の額をぺちりと叩く。そして、ふと――彼の脳裏に、“あの場面”がフラッシュバックした。

 

『じ、実は私たち付き合ってるんだよ!』

 

「ぬおおおおお……ッ!!」

 

 その場にしゃがみ込むと、リョウガは両手で頭を抱えた。耳まで真っ赤に染まり、まるで世界の終わりのように呻く。

 

(……俺を庇うためとはいえ、他になんかなかったのかぁ?)

 

 正直、マチュのことは嫌いじゃない。むしろ、どこか惹かれている部分もある。無鉄砲で、勝気で、妙に子どもっぽい……でも、まっすぐで。

 

(……何だったら、好きって言ってもいいかもしれない)

 

 自分で思ってしまった言葉に、さらに顔が赤くなる。

 

(いやいやいや……あ、あれは、あの場を乗り切るための方便だ。そ、そうさ。そうに違いない)

 

 ぶんぶんと首を振って、自分に言い聞かせるように繰り返す。けれど、頭の中にはマチュの照れた顔が浮かんで消えない。

 

 すると、薄闇の中で誰かの足音がした。

 

 ――コン、コン、コッ……

 

リョウガはすぐに立ち上がった。周囲に視線を走らせながら、無意識のうちに肩幅に足を開き、重心を低く構える。まるで何かに備えるように。呼吸が浅くなるのを感じつつ、ニュータイプとしての直感が静かに警鐘を鳴らしていた。

 

(来たか――)

 

その“気配”は、確かにこちらに近づいていた。緊張が背筋を這い上がる。だが次の瞬間、現れたのは――

 

「コ、コンニチワ、オイソギデスカ?……あっ」

 

拍子抜けするほどの声だった。姿を現したのは、猫耳フードをかぶった長身の少女、ニャアン。リョウガの眉がぴくりと動く。

 

「……おお、”ベツニイソイデイマセンヨ”」

 

拍子抜けを隠しきれないながらも、彼は慣れた調子で合言葉を口にする。そして、軽く手を差し出す。

 

「.......まさか君が来るとはね」

 

ニャアンは明らかに緊張していた。手元に抱えた包みをぎゅっと握りしめながら、リョウガに差し出す。

 

「い、いや私も……けっこう驚いてる……これ、配達ので、す」

 

「そんなに固くならなくていいよ。はい、これお金」

 

リョウガはポケットから封筒を取り出し、彼女へ渡す。ニャアンは封筒を受け取ると、内側を開いて素早く確認する。

 

「……うん。確かに。……その、貴方みたいな人が、そういうの使うって、なんか意外で……あっ、いや別に深入りする気じゃなくて……!」

 

言葉がつっかえ、視線が泳ぐ。彼女の耳がぴくぴくと揺れていた。

 

「いや別に気にしてないよ。……治安悪いだろ、ここ? いざって時、何もないよりはマシだと思ってさ。牽制用だよ」

 

リョウガは穏やかに笑う。だがその笑みに、どこか深い疲れのようなものがにじんでいた。

 

「……そう、なんだ。あっ――」

 

その時、ニャアンのお腹が小さく鳴った。かすかな音だったが、沈黙の中ではやけに響いた。

 

「あーお腹空いてるなら、なんか奢ろか?」

 

リョウガは自然な調子で言った。

 

「えぇ!? いっ、いや、いいよ!? わっ悪いし!」

 

「別にラーメン一杯くらい奢るのなんか、大したことないって……ほら、行こ。ああ、これ別にナンパとかじゃないからね? そんな度胸ないし……」

 

リョウガは視線を逸らしながら、耳までほんのりと赤くなっていた。

 

「わっ、分かってるよ!?」

 

ニャアンも慌てて首を振り、頬を真っ赤に染めて返した。その声には、ほんの少しだけ安堵と、嬉しさが混じっていた。

 

▼▼▼▼▼

 

二人は、深夜営業のラーメン屋のカウンター席に並んで座っていた。店内は明かりが柔らかく、湯気と油の匂いがほんのり漂う。遅い時間のためか、他に客は少なく、会話は自然と控えめな声になる。

 

ニャアンは、湯気が立ちのぼる丼の中を見つめながら、箸を少し止めて言った。

 

「その……リョウガさんって……」

 

「別に“さん”付けしなくていいって」

 

不意に口を挟んだリョウガの声に、ニャアンは一瞬びくりと肩を揺らした。だがすぐに小さく頷く。

 

「じゃ、じゃあ……リョウくんで。……そのリョウくんって、いつからここにいるの? ここ最近の人……だよね?」

 

彼女は問いかけながら、遠慮がちに目線を上げる。リョウガは丼から顔を上げ、湯気越しに目を細めた。

 

「うん、まぁ。来たのは5か月前だよ。……なんでイズマにいるかって理由は……まぁ、“いろいろあってね”」

 

その語尾にはどこか寂しさが滲んでいた。ニャアンは、それ以上追及すまいと慌てて言葉を継ぐ。

 

「べ、別に言いたくなかったら、言わなくていいよ」

 

「ごめん、助かるよ」

 

一瞬だけ笑みを浮かべたリョウガの顔に、ニャアンの胸がちくりとした。会話はそれきりになり、しばらくは二人とも黙って麺をすすった。

 

やがてニャアンが箸を置き、手を合わせる。

 

「ごちそうさまでした。……その、カツカツだったから助かったよ。ありがとう」

 

「いいって、別にこれくらい」

 

リョウガは少しだけ肩をすくめて、軽く手を振った。だがその仕草にはどこか優しさがあった。

 

ニャアンはふと、空になった丼を見つめながら口を開く。

 

「……もう行くね。無事に終わったこと、報告しないといけないから」

 

「そっか。……最近は物騒だから、気をつけなね?」

 

そう言ってリョウガは立ち上がる。ニャアンは頷いて、立ち上がりながらもこちらを振り返った。

 

「うん。……リョウ君もね?」

 

そう一言添えて、ニャアンは頭を小さく下げると、店の引き戸をすっと開いて外へと出て行った。

 

外の空気は冷たく、彼女の背中を夜の闇が静かに包み込んでいった。リョウガはその背中を見送りながら、ふぅと息をついた。

 

(……少しは、この街にも馴染めた、かな)

 

彼の目に浮かぶ光は、わずかにやわらかいものだった。

 

▽▽

外の空気は、夜の冷気に晒されて肌をひやりと撫でた。自動ドアではなく、少し重い引き戸を引いてラーメン屋を出たニャアンは、一歩外に出た瞬間、無意識にパーカーを羽織りフードをかぶった。風が耳元でひゅっと鳴る。

 

(ふぅ……終わった……)

 

心のなかで小さく呟く。別に危険なやり取りではなかった。相手も妙にフレンドリーで、それなりに話しやすかった。でも、それでも。

 

(緊張は、するよ……)

 

自分のような小心者が、よりによって非合法の運び屋なんてやっているのが不思議だと、いつも思う。やめようと思ったことも何度もある。でも――今の生活のためにはやめられない。

 

足元からコツコツと響くブーツの音に、周囲の視線が集まるような錯覚がして、ニャアンは思わず肩をすくめた。

 

(……でも、あの人は、変じゃなかったな)

 

少しは普通に話せた。それが少しだけ、ニャアンの心を軽くしていた。

 

『リョウ君もね?』

 

あの言葉は、咄嗟に出たものだった。気遣い半分、義務感半分。でも、それを素直に受け取ってくれたのが嬉しかった。

 

(人をちゃんと見てる人だ。そういうのって、あんまりいないんだよな……この街じゃ)

 

街灯の明かりが歪んで伸びる影のなか、ニャアンはそっと深呼吸する。仕事はまだ終わっていない。報告もあるし、次の依頼が舞い込む可能性だってある。

 

 彼女は背筋を伸ばし、顔を前に向けた。

 

(よし……もう少しだけ、頑張る)

 

自分に言い聞かせるように、ポケットに手を突っ込んで歩き出した。誰に見られているかも分からないこの街で、自分がここにいる意味を、ほんの少しでも証明するために。

 

夜のイズマの雑踏に、ニャアンの背中が溶けていった。

 




ZERO「エッホエッホ、なんか認識されたから挨拶しなきゃ、エッホエッホ!」
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