2人とも銃持つって.....与太と思ってたコードギアス的な展開やりそう
ちなみにリョウガの元いたSRW世界は昔のスパロボ(a、F、IMPACT、Z等)を参考しているのもあって世界観というか科学技術はともかく文明社会がちょっと古いです。イメージ的には90年代から2010年代くらい、なのでリョウガは若いのにたまに価値観のギャップで悩むことがあります。
今日がクリスマスイブだというのに、リョウガは朝から行きつけのラーメン屋に足を運んでいた。店のガラス戸を開けると、外の冷たい空気とは対照的に、湯気とスープの香りがふわりと店内を包んでいた。カウンターの奥、湯切りの音とともに店主の声が響く。
「イブなのに開けてるとは思いませんでしたよ」
「よう言うわっ 朝っぱらからラーメン食いに来た不健康児の癖に」
店主はぶっきらぼうにそうボヤきつつも、手際よく鍋を振り、麺の湯切りをしている。
カウンターの上には既にネギやチャーシューが準備され、湯気の向こうに店主の顔がぼんやりと見える。
ここは、リョウガがこの世界に来て一月が経った頃から通い続けているラーメン屋だった。昼も夜も、時には深夜まで灯りがともる。小さな赤提灯がクリスマスの喧騒とは無縁に、静かに揺れている。
リョウガにとって、この場所は気を抜ける唯一の店だった。
「....えっ?また来たん?ホンマに体壊すでお前?」
常連に対するそれは、もはやお約束の挨拶だ。リョウガも苦笑して肩をすくめる。
ふと横目で店主を見る、店主は若い。たぶん自分より五つほど年上か。
整った顔立ちに、肩まで伸びた茶色のロン毛を無造作にタオルで巻いている。
胸には〝猛人注意〟の文字、左腕には〝人、登録済・大阪府〟、右腕には〝喧嘩・勧誘お断り〟と、やたらと個性的なプリントが入った黒いシャツ。太い腕と広い背中。昔に格闘技でもやっていたのか、Tシャツの上からでも分かるほど筋肉が盛り上がっている。
厨房の狭さが、逆にその体格を際立たせているようだった。
「今日はクリスマスイブやぞ。もっとこう、若いもんはデート行くとか、パーッとやるもんちゃうんか?」
からかうような口調で、店主はカウンター越しにラーメンどんぶりを置いた。その手つきは乱暴そうでいて、不思議と丁寧さを感じさせる。
「えっと……まあ、その、昼間から“恋人”とデートする予定はあるんですけど、なにぶん俺が初心過ぎて.....」
「おおー!!リョウちゃんに彼女! ほんでほんで!!告白はどっちからなん?」
突然身を乗り出す店主に、リョウガは思わずたじろいだ。
「な、なんなんですか……急に。あ、あっちからですよ」
その言葉を聞いた店長は呆れたように口を開いた。
「はぁあ~~? お前ホンマ……ホンマにそういうとこやぞ?なにあっちに告白させてしまってるねん」
「いやっ そりゃあ………今思えば自分でも情けないとは思ってますよ……」
「まぁ…………その感じ、付き合ったばっかりって感じやな。まっ 祝福したるわ。幸せになるんやで?」
「あ、ありがとうございます店長」
「んで?どんな子なん?」
「え?えーと、ちょっと待ってくださいね」
リョウガはスマホを取り出し、ツーショットの写真を探して画面を店主に向ける。満面の笑みを浮かべるマチュと、照れ臭そうに並ぶ自分が写っていた。
店主はしばらく画面をじいっと見つめた後、ふいに眉をひそめる。
「ほーん、可愛い子やん……ん? いやちょっと待てよ……制服? んなぁ……リョウちゃん? 一応聞くんやけどこの子いくつなん?」
「....え"、えーと……」
「なんや急にしどろもどろになりおって、ささっと喋れや」
「.......来年で17歳になります」
「ふぅん、つまり今は16いうことやな……………うん?」
数秒の沈黙。店主の目が点になる。
カウンター越しに、店主の目が一瞬、じっとリョウガを射抜いた。だがその表情はすぐに崩れて、両眉を盛大に吊り上げ、口を大きく開いて仰天の声を上げる。
「ウ…ウソやろ こ… こんなことが こ… こんなことが許されていいのか !?」
店内の空気が、一瞬ぴたりと止まったように感じる。
湯気の向こう、リョウガはラーメンどんぶりの中を見つめていたが、顔をあげると目が泳いでいた。
「い、いや、別に変なことはしてませんから!?ただ、たまたま……というか向こうから好意を持ってくれて、いや、もちろんこっちも本気で、別にやましいことは一切……!!」
焦って早口になるリョウガ。
店主は唇をへの字に曲げてしばし彼を見つめ――やがて大きくため息をつく。
「はぁ~~~~リョウちゃん、ええか?……"こんな世の中"やさかい 色々難しいもんやろうけどな、ちゃんと節度は守るんやで?来年から大人の仲間入りするねんからな?」
「は、はい……」
思わず背筋を伸ばして答えるリョウガ。
その声はどこか情けなく、しかしどこか安堵も混じっていた。
店主は器を拭きながら、なおもぼやく。
「お前、その子泣かしたりしたら、ワシが本気で怒るからな。女の子いうんはな、こっちが思っとるよりずっと傷つきやすくて繊細なんやで……」
どこか父親のような口調で続けるその言葉に、リョウガは胸の奥がちりちりと熱くなるのを感じた。
「……わかってます。絶対に泣かせませんよ」
そう呟いて、レンゲでスープを啜る。
塩気と旨味がじわりと口の中に広がり、どこか背筋が伸びる心地だった。
窓の外では、街が静かに目覚めていく。
ラーメンどんぶりの湯気の向こうで、若い店主は不意に笑った。
「……ま、青春やなあ」
そんな一言が、朝の静けさに心地よく響いた。
▼▼▼▼▼▼
冬の澄んだ空気の下、街の一角――
街路樹に小さなイルミネーションが灯り始める頃、リョウガはショッピングモール前の広場で足を止めていた。白い息を吐きながらスマホを手に、マチュの到着をじっと待っている。
通行人のざわめきと車のクラクションが遠くで混じるなか、突然後ろから――
「リョウガ~~~~!!」
耳に馴染んだ元気な声と同時に、腹にどん、と衝撃。思わず体が半歩前につんのめる。
「ウゴっ!?…マっマチュ、急に突っ込むのやめないか?」
背後でマチュが、満面の笑顔で彼の腕にしがみついてくる。
「え~~いいじゃんこれくらい」
そう言いながら、彼の胸に頬ずりをしてきた。
恋人同士になって1か月。以前は“妹みたいな存在”としか思えなかった距離感も、今ではすっかり恋人としての“近さ”に変わっていた――むしろ日に日に積極的になる彼女の甘え方に、リョウガは照れずにいられない。
(…おかしいな、前までは平気だったのに。今じゃちょっとしたスキンシップでも、やたら意識しちまう)
「ねぇリョウガ、今日はどこ行こっか?」
ふと見下ろせば、マチュはいつもの制服ではなく、カジュアルな冬服姿。
白いニット帽にそれを合わせるように着たセーター。淡い青緑色のコート。マフラーと手袋もお揃いで、どこか雑誌から飛び出してきたみたいにオシャレだ。
(ううん…もう少し俺もオシャレとかすればよかったかな…)
自分の着てきた地味なグレーのジャケットに視線を落とし、思わずため息が漏れる。
そのときマチュが鼻をひくつかせ、不意に顔を寄せる。
「なんかリョウガ、豚骨臭くない?」
「……あっ、すみません、朝ラーメン食いました」
「リョウガさぁ~~~」
呆れ顔の彼女。その視線に、リョウガは縮こまりながら肩を落とした。
「不甲斐ない……」
しょんぼりした背中を見て、マチュは可笑しそうにくすりと笑う。そしてくいっとリョウガの腕を自分の方へ引き寄せると、しっかり抱きついてきた。
「もういいって!!ほら行こうリョウガ!!!」
「すまないねぇ.....」
思わず昔の癖が出る。
「それ、おじさんっぽい!!!」
「トホホホ……」
そんな二人の声が、冬の街にあたたかく溶けていった。
イルミネーションがきらめくなか、肩を並べて歩き出す二人――
今年のクリスマスイブは、きっと忘れられない一日になる。
▼▼▼▼▼
どこまでも澄んだ空気の中、街はクリスマスのデコレーションで華やかに彩られていた。
駅前通りはイルミネーションが木々を縁取り、道行く人たちも、どこか心なしか浮き足立っている。
そんななか、リョウガとマチュは肩を寄せ合いながらゆっくりと歩いていた。
「ねぇ見て、リョウガ!あのツリー、すっごく大きい……!」
広場の中央には巨大なクリスマスツリー。無数の小さなLEDが宝石のように瞬き、てっぺんには星形のオーナメントがきらきら輝いている。
マチュの瞳も、ツリーの灯りを映して一層輝いて見えた。
「綺麗だな……ここ前に来た時と全然雰囲気が違う」
「うん。クリスマスってだけで、なんか世界が少しだけ優しくなってる気がするよ」
マチュが無邪気に微笑む。その横顔に、リョウガは思わず見惚れてしまう。
ふと、ツリーの根元に設置されたベンチに腰かけた二人。マチュはリョウガの手を両手で包み込んだ。
「リョウガ。私、こうして一緒にいられるだけで、もうすごく幸せだなって思う」
そう言って彼女は少し照れくさそうに笑う。
リョウガの胸にじんわりと温かいものが広がる。
「俺も……こうやって隣にお前がいることが、何よりも嬉しいよ。正直、俺にはもったいないくらいでさ」
「なにそれ、バカみたい」
「バカでいいんだよ。だって、俺……アマテの事が好きだから」
マチュは目を丸くしてから、柔らかく微笑んだ。
小さな手がリョウガの指に絡む。
広場を包むイルミネーションの灯りと、流れるクリスマスソングが、二人の距離をさらに近づけてくれる。
「なぁ、マチュ」
「ん?」
リョウガは少しだけ顔を近づける。
マチュの頬が一気に紅く染まる。
けれど彼女は、そっと目を閉じてそのまま受け入れた。
リョウガはためらいがちに、けれど優しく――
マチュの唇にキスを落とす。
雪が静かに舞い始める。
それは、ふたりだけの静かな奇跡。
騒がしい街の片隅で、誰にも邪魔されない時間。
二人がそっと離れると、マチュがはにかみながら呟く。
「……ねぇ、今日のこと、一生忘れないから」
リョウガも静かに頷いた。
「俺もだよ。お前と過ごす初めてのクリスマスは絶対忘れない」
柔らかな雪と灯りに包まれて、ふたりの影がそっと重なる――
今年のクリスマスは、誰よりも温かい夜になる。
「あっやべ!?、タマキさん用のプレゼント買い忘れた!?」
「えぇ!?」
とはいえ、この男は相変わらずな所は相変わらずであった。
▼▼▼▼▼
ベンチにひとり、リョウガは冬の街の雑踏をぼんやりと眺めていた。
クリスマスツリーの灯りは柔らかく、広場を彩るイルミネーションが、夜の空気にほのかな温かさを加えている。手のひらには、さっきまで寄り添っていたマチュの体温が、まるで残像のようにじんわりと染みていた。
トイレからマチュが帰って来るのをひたすら待っていた。
静かな時間――
周囲の喧騒も遠く、ただツリーの瞬きと子供たちのはしゃぐ声だけが、微かに耳に届く。
「……」
ふと隣に誰かが腰掛ける気配があった。
わずかにベンチが沈む感覚と、冬服の布擦れの音。
リョウガがそちらを振り返ると、恐らくはマチュと同年代くらいの少年が、そっと隣に腰かけていた。
やや癖のある黒髪、澄んだ瞳。年の割に落ち着いた顔立ちと、それでいてどこか場慣れしない、不安げな仕草。少年は両手を膝に置いたまま、少しだけ体を小さくしている。
「こんばんは」
「あ、こんばんは」
軽く会釈を交わす。少年は上着のポケットをもぞもぞ探りながら、控えめに声をかけてきた。
「だれか待ってるんですか?」
「え、えぇ……ま、まぁその……恋人を」
照れくさそうにリョウガが答えると、少年は小さく笑い、目を細めた。
「ハハハ……別に照れなくていいじゃないですか。こんな日に大事な人と過ごせるって、すごくいいことですよ?」
その声は、どこか遠くを見つめているような静けさがあった。
リョウガは、彼が自分と同じような「外側」の孤独を抱えているような気がして、つい問いを返す。
「家族と一緒なのかい?」
少年は少しだけ間を置いて、首を横に振った。
「……ううん。友達と、あと姉みたいな人と。冬休みなんでリボーから来たんですよ。なんでもイズマのツリーは立派だって聞いたから」
「へぇ~、わざわざ?そりゃまた……旅ってやつか」
少年は、肩をすくめて笑う。
「うん、まぁそんな感じです」
しばらく二人でぽつぽつと、他愛もない会話が続く。
クリスマスの思い出――小さかった頃のことや、サンタクロースを信じていた頃の話。
ラーメンの話題になれば、どちらからともなく「イズマで一番美味いのはどこだ」と熱く語り合い、少年は時折、くすぐったそうに笑った。
それでも、どこか大人びた雰囲気が抜けきらない。
やがて、広場の向こうから女性の呼ぶ声が響いた。
「“アル”~! そろそろ行くよ!」
"赤い髪"の、温和な雰囲気の女性が手を振りながら、ゆっくりとこちらへ歩いてくる。
街灯の下で、その赤髪が夜風にさらりと揺れる。
少年――“アル”は「あっ、はーい」と明るい声で返事し、ベンチから立ち上がった。
立ち上がる時の仕草は、どこか名残惜しげだった。
「じゃあ、お兄さん。またどこかで」
「ん? ああ……またな。風邪、ひくなよ」
自然な笑顔で手を振るアルに、リョウガも軽く手を挙げる。
少年は女性と合流し、雑踏の中へと吸い込まれるように歩き去っていく。
去り際、女性が優しくアルの頭を撫でているのが見えた。
二人の後ろ姿は、ネオンと雪の舞う冬の夜に、そっと溶けていった。
リョウガはその背中をぼんやりと見送っていた。
――結局、名前以外、彼が誰なのかも、どんな人生を歩んできたのかも、リョウガには分からなかった。
ただ、その少年の名前と、赤髪の女性の面影が、妙に印象深く心に残っていた。
ちなみにラーメン屋の店主の元ネタというかモデルは自分が好きな格闘漫画の主人公がモデルです。多分、分かる人は分かるんじゃないかなと