「いやこのメンツなら主人公救いだせるやろ?」と.....
ハイ滅茶苦茶ご都合展開ですよ。
リョウガは、小さな電子端末――マチュから借りたスマホを指先で操作していた。
最初こそ操作に戸惑ったが、基本的な構造はこの世界でも似ていた。最低限のネットワーク接続は通っており、情報検索も可能だ。問題は、その“中身”だった。
画面をスクロールする指は止まることなく動き、時折、短く息を呑むような反応を見せる。だが、それは驚きというより、確信に変わっていく“答え合わせ”の連続だった。
「今の時代は……一年戦争終結から5年後の宇宙世紀0085年……つまりティターンズが作られてから2年後……いや、ジオンが勝ってるなら、そもそも組織すらされてないか……………」
呟きながら、リョウガは唇を引き結ぶ。
そう、この世界ではジオンが地球連邦に勝利している――それが、この“現実”の世界史だ。
決定的な分岐点は、恐らく“ガンダム”。
自分の知る世界では、アムロ・レイがRX-78に乗り込み、数多の戦いの中で希望と平和の象徴となった。だが、この世界では、シャア・アズナブルがそれに乗ったとされている。
アムロ。
彼にとって、アムロ・レイはただの“英雄”ではなかった。
信頼する仲間であり、数多の戦場を共に駆け抜けた先輩。若者たちを導いてくれた“背中”であり、最後まで自分の命よりも誰かを助けようとした“大人”だった。
そして、シャア。
共に戦ったこともある。理想に燃え、力もカリスマもある男だった。だが――
「……彼は最終的には、ネオ・ジオンを率い、アクシズを地球に落とそうとした……」
そう呟いてから、リョウガはほんの一瞬だけ目を閉じた。
この世界の記録に残るシャアの最後は“消息不明”。だが、彼の世界では、サイコフレームの光の中で消えたまま、帰ってこなかった男。つまり、死んだものとして扱われている。
「……こっちのクワトロ大尉.....いやシャアは、勝ったままの英雄ってわけか。皮肉なもんだな……」
声は低く、自嘲を交えた独り言だった。
彼の目の前に広がるのは、この世界の“常識”だ。公的資料、歴史年表、メディアアーカイブ。どれだけ掘っても、自分たちの戦いの痕跡は一つも存在しない。
「ガンダムファイト国際条約も存在してない……地球でドクターヘルが機械獣軍団を操って世界征服を企てた記録もない……」
まるで冗談だった。冗談でなければ、悪夢だ。
いや、それすら生ぬるい。これは、“過去が意図的に塗り替えられた”ような世界。自分の知る歴史の一切が、初めから存在していないかのような異様な空虚。
「インベーダー達が地球やコロニーに襲来し、連邦のモビルスーツや、地球で開発されたロボット軍団との大戦の記録も、全く存在していない……」
彼の声が、だんだんと遠ざかっていく。
スクリーンの光がその瞳を照らしていたが、そこに映るのは情報ではなく、“喪失”の光だった。
「……本当に、別世界なんだな……ここは……………」
スマホを膝の上にそっと置いた。カチリ、とプラスチックが鳴る。
深く、息を吐いた。
自分だけが知っている“正史”。
それを知る者は、もうどこにもいない。
「なぜ……俺はこの世界へやって来たんだ?」
問いは虚空に落ちたまま返ってこない。
彼は数々の敵と戦ってきた。
時には機械獣、時にはインベーダー、ジオン残党、ミケーネ帝国。
仲間たちと力を合わせ、総力を結集し、Zマスターをも打ち倒した。
そのすべてが、まるでなかったことのように消え去っている。
「いくら考えても仕方ない……切り替えよう。というかこれからどうすればいいんだ俺? 金もなけりゃ、国籍も身分証も、証明できるものも何一つない……」
額に手を当てて、天を仰ぐ。
「これって……想像以上に不味い状況なのでは!?」
リョウガはついに頭を抱えるのだった。