迷い込んだ凶鳥   作:ゲット虚無

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今回は短めです。

前回の話を読んだ読者の皆さんはこう思ったことでしょう....…「いや、これ月面戦争じゃなくてパフェガンいるだけのスーパー今川大戦ヤンケ」と

ぶっちゃけ書いた後、私もそう思いました。

あっ最近、今川監督作品を「ジャイアントロボ~~鉄人28号(劇場版白昼の残月も視聴)」まで再履修しましたです。にしてもあの監督の親の罪を子に背負わせる展開というか傾向は何なのだろうか.....


それでも私は、アレを憎む

 

 宇宙空間――広大な漆黒の中を、閃光と爆発が無秩序に乱舞している。ヒュッケバインの装甲には幾つかの傷が刻まれ、戦いの激しさを物語っていた。

 

「爆現ッッ!!T-LINKナァァッックルッッッ!!!」

 

 コクピットの奥底から響く雄叫びと共に、リョウガの念動力が爆発的に高まった。ヒュッケバインの右拳が青白く輝き、そのエネルギーを凝縮したまま敵機へ突進する。

 

 ザクが慌てて腕を交差させガードしようとしたが遅すぎた。念動力を纏った拳がザクの頭部を直撃すると、鈍い轟音と共に装甲が歪み、メインカメラが音を立てて粉々に砕け散った。

 

 動揺した敵パイロットは反射的にヒートホークを手放してしまう。宙を舞ったそれを、リョウガは鋭い視線で見逃さなかった。

 

「もらったぁっ!」

 

 ヒュッケバインの左腕が瞬時に反応し、宇宙空間を漂うヒートホークを流れるような動作で掴み取った。

 

 刹那、センサーが新たな敵影を感知する。レーダーに視線を向ければ、ジークアクスが後方から敵のゴッグを巧みに誘導しながらこちらに接近していた。

 

『リョウガ!!!連れて来たよ!!!!』

 

 通信から伝わるマチュの緊迫した声。しかし、その中にもどこか信頼の響きが感じ取れた。

 

「よし、そのまま近づけ!俺が合図したらそこから離れろ!!」

 

『分かった!!』

 

 鼓動が早まる。モニターに表示される距離計がみるみる縮まっていくのを凝視し、集中力を研ぎ澄ませる。

 

――ここだ。

 

「今だ!!!左に避けろ!!!」

 

『了解!!!!』

 

 ジークアクスは見事な機動で左へと急旋回し、ゴッグとの距離を開ける。それを追うゴッグの動きが一瞬だけ緩慢になった――まさに狙い通りの展開だった。

 

「トマホーークッッ!ブーーメランッッ!!!!」

 

 リョウガが力強く腕を振り抜くと、ヒートホークが鋭い回転を描いて虚空を裂くようにゴッグへと飛翔した。

 

『バカか!?テメェ!!そんな分かりやすい作戦なんてな!!お見通しなんだよ!!』

 

 敵のパイロットは自信満々に嘲笑いながら、軽々とヒートホークを回避した。ゴッグは両腕のアイアン・クローを展開し、悠々とヒュッケバインへ猛進する。

 

だがリョウガはその瞬間、不敵な笑みを浮かべていた。

 

「馬鹿はアンタの方だよ……ブーメランっつったろ?」

 

 その言葉と同時に、ゴッグの背後から鋭い唸りを上げながら再びヒートホークが襲い掛かる。念動力で軌道を制御されたヒートホークは、寸分違わぬ正確さでバックパックを切り裂いた。

 

『んなッッ!?……はっっ!!?』

 

 突然の衝撃に戸惑いを隠せず、動きを止めるゴッグ。気づいた時には、ヒュッケバインが眼前に迫っていた。

 

「これで終いだッッ!!!!」

 

 再び手元に戻ったヒートホークを確実に掴み、ヒュッケバインは頭上高く振り上げ、その刃を容赦なく振り下ろした。鋭い金属音が響き渡り、ゴッグの頭部装甲は脆くも崩壊し、派手な火花を散らしながら沈黙する。

 

(ファングスラッシャーの要領で竜馬さんの技を使ってみたが、上手くいったな……俺の場合は念動力でズルしちゃいるが、あの人は一体どうやってんだろう。やっぱゲッター線でも作用してるのか?)

 

 リョウガが内心でそう呟くと、ジークアクスから再び通信が飛び込んで来た。

 

『リョウガ!!勝ったし早く逃げよう!!!軍警が来ちゃうよ!!!』

 

 その慌てた声に、リョウガはハッと我に返った。

 

「あっ悪い!マチュ!!」

 

 慌ててスラスターを噴かし、戦闘宙域から離脱する。

 

 ポメラニアンズ――クランバトルの四戦目、その勝利が今ここに確定した。

 

▼▼▼▼▼

 

 リョウガは、カネバンの応接室のソファに深く腰を沈めていた。淡い照明の下、微かに香るコーヒー豆の香りが鼻をくすぐるが、彼の表情は冴えなかった。マチュが着替えを終えるのを待つあいだ、視線は天井を向いているものの、意識はまったく別のところにあった。

 

 ――いや、正確には、彼女のことばかりを考えていた。

 

(……多分、マチュはニュータイプだ)

 

 その考えは、もはや仮定の域を超えつつある。どこか確信めいたものが、胸の奥に静かに根を張っていた。

 

(昔から……あいつ、妙に勘が鋭いとこあったし、感覚もどっか常人離れしてる節がある。最初は竜馬さん達みたく“野生的な感”なのかと思ってたけど……最近のクラバでの動き……ありゃ、もう完全に“見えてる”)

 

 わずかな弾道の読み、予測不能な状況での判断。まるでこちらの“意思”を先回りしているかのような行動の数々。

 

(前に、俺が思念飛ばしたときも……無意識だったのに受け取ってたしな。……いや、あれは、結果的に助かったけどよ……)

 

 そこでふと、背筋がぞわっと粟立つ。

 

(……はぁ。やっぱ普段からコレ、念動力で制御して正解だったわ)

 

 そう思いながら額を指でこすり、眉間にしわを寄せる。

 

(ふと解除した拍子に、俺の考えてること読まれたら……“いろんな”意味でアウトだろ。たぶんマチュ、全力でドン引くぞ)

 

 そんな自覚があるあたり、やましい思考のレベルは推して知るべしである。

一体、普段、彼女に対して何を考えているのか....このドスケベは?

 

(アホか……俺、真顔でなに考えてんだ……)

 

 呆れにも似た自嘲を込めて、リョウガはひとつため息をついた。

 

 と、次の瞬間。

 

 カチャ、とドアが静かに開いた。

 

 そこから制服姿のマチュが現れる。髪を軽く整え、バッグを肩に掛けた彼女は、笑顔で手を振る。

 

「リョウガ〜〜〜、帰ろ〜〜〜」

 

 どこか気の抜けた、でもいつもどおりの柔らかい声。彼女は駆け寄るでもなく、ただ隣に立って、そっと彼の手を取った。

 

 ――ぎゅっ。

 

 それは、まるで儀式のように自然だった。けれど、リョウガは少しだけ驚いて目を瞬かせる。

 

「……珍しいな?」

 

 いつもなら真っ先に飛びついてくるような彼女が、今日は妙におとなしい。

 

「たまには、恋人つなぎで帰るのもいいかな〜〜って」

 

 恥ずかしそうに頬をかきながら、でもどこか満足げに微笑むマチュ。

 

「そ、そうか?」

 

 リョウガは少しだけ照れ臭そうに笑い、握られた手に軽く力を込めた。

 

 ……そんな二人の空気をぶち壊すように、唐突に別室から怒号が響いた。

 

「さっさと帰れッッ!!!このバカップルがッッッ!!!?」

 

まるで針のような視線を彼等に投げつけながら、ジェジーは手に持った書類を盛大に机へと叩きつけた。

 

▼▼▼▼▼

 

  私は憎い……今も、これからも、きっとずっと。

 

 あの赤い機体を。

 

 ――いや、あの“血”の色をしたガンダムを。

 

 鋼鉄で塗り固めたような無機質な巨体に、狂気じみたまでに鮮烈な紅が塗られていた。戦場で初めて目にしたとき、思わず息を飲んだ。赤い……血を啜る者の色。まるで機体そのものが、生き物のように嗤っていた。

 

 ガンダム・フッケバイン――あれが、私の“マヴ”を殺した。

 

 もちろん、“赤い彗星”シャア・アズナブルも憎い。あの男が引き金を引かなければ、どれだけの仲間が死なずに済んだだろう。多くの犠牲を出してきた張本人だ。

 

 だが――。

 

 それ以上に憎い存在がある。

 

 ガンダム・フッケバイン。

 

 あの忌まわしき悪魔の名。

 

 初めて奴が戦場に現れたときのことは、今でも脳裏に焼き付いて離れない。何の前触れもなく、星の光を裂くようにして現れた。その姿は、誰もが知るシャアの赤いガンダムにも似ていた。

 

 赤、という色だけを除けば――だが、その内側に宿る“何か”は、まったくの別物だった。

 

 それは殺意そのものだった。

 

 機体の動きは鋭く、正確で、残酷だった。まるで自分の肉体のように操り、ブースターを唸らせながら敵味方を選ばず切り伏せていく。何よりも恐ろしかったのは、“感情がない”ことだった。

 

 怒りでも憎しみでもない。ただ、目障りだから――その理由だけで、誰かの命を奪うような。無慈悲な効率の中にだけ宿る、動物の殺戮衝動のようなナニカ。

 

 その時だった。悪夢のような戦場で、三つ巴の戦いが始まった。

 

 私たち、シャアの赤いガンダム、そしてガンダム・フッケバイン。

 

 名も知れぬ宙域に、光と炎と破片が飛び交った。

 

 敵か味方かの区別も曖昧な混戦の中、私の耳には、あの二機の通信が確かに届いた。

 

 『どきたまえ!! “奴”を相手取るのにお前達を相手にしている暇は無いッッ』

 

 『失せろ....』

 

 まるで、この戦場の誰もが“前座”であるかのような口ぶり。

 

 だが、“奴”――ガンダム・フッケバインは違った。目の前の全てを、ただの“障害物”と見做していた。

 

 そして――私のマブを殺した。

 

 あの子とは、戦場で何度も背中を預け合った仲だった。軽キャノンの乗り手として、射撃支援と火力制圧において右に出る者はいなかった。言葉では照れ隠しばかりだったけど、誰よりも仲間思いな人だった。

 

 だが――奴は一瞬だった。

 

 何の躊躇もなく、何のためらいもなく。

 

 まずメインカメラが貫かれ、あの子の視界が遮断された。

 

 その隙に奴の”手”は彼女の機体の両腕を引きちぎり、脚部を切断し、最後に――

 

 『有象無象が……邪魔だと言ったろう?……消え失せろ』

 

 そう言って、あの赤い悪魔はコックピットを真っ二つに裂いた。

 

 爆発。

 

 閃光。

 

 そして、沈黙。

 

 私は――何もできなかった。

 

 すぐ隣にいた。あの子の通信も、悲鳴も、最後の一言すら、何も聞けなかった。ただ爆炎の向こうで、彼の機体が砕けていくのを見ていた。宇宙の深淵に溶けていくように、ただ――消えていった。

 

 音のない宇宙に、あの爆発の光だけが静かに焼きついていた。

 

 今でも、夢に見る。

 

 何度も、何度も。

 

 その度に私は、自分の爪で手のひらを傷つけるほどに握りしめている。

 

 今の私は、家庭を持っている。穏やかな暮らしを築いた。

 夫もいる。子供もいる。笑顔のある生活。

 

 ――それでも、この憎しみだけは、私の中から決して消えはしない。

 

 私のマヴを殺したガンダム・フッケバイン。

 

 あいつだけは、絶対に――許さない。

 




鉄人見た後の真マジンガーってどこかエモーショナルを感じましたね。

「良いも悪いもリモコン次第」
「神にも悪魔にもなれる」

話は変わりますが、もしかしてGガンって今川監督の作品の中でもだいぶまとまってる作品説ある.....?
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