夏の時期のお仕事も忙しすギィィィィィィ!!!!!!
いやネタ抜きでマジで忙しくてヤバいです。一週間に2話どころか一話投稿できるのかも怪しいです。夏休みシーズンになれば忙しさはこの倍、もはや執筆自体そもそもできないかも.....この時期のサービス業が地獄なのホントどうにかならんのか......
地下ドッグにてヒュッケバインの整備をするリョウガ、ふとスマホに通知が入ったことに気づくとそこにはマチュからのメッセージが入っていた。
『今日はカネバンに来ないで』
「はぁ?」
リョウガはそのままマチュへメッセージを送る。
『なに? どういうことだよ?』
『いいから!!訳は後で話すから!!』
「……そっちがその気なら、こっちだってな」
呟くと同時に、リョウガは整備アームのリモート停止ボタンを押した。
鋼鉄の爪がギィィン……と音を立てながら格納ポジションに引き下がっていく。
油圧音が静まる中、彼は床に置かれたジャケットを掴むと、勢いよく肩に羽織った。
振り返った先には、自らの手で調整を終えたヒュッケバインの姿があった。光のないドッグで、それはまるで眠っている獣のように静かに佇んでいる。
「……留守番、頼んだぞ」
そう一言だけ残し、リョウガは踵を返す。
▼▼▼▼▼
「ガンダム・フッケバイン……赤いガンダムじゃなく?」
アンキーは眉をひそめ、僅かに身を乗り出した。鋭く問い返したというよりは、思わず漏れ出た戸惑いの声。彼女の脳内では、これまで信じてきた“前提”が崩れかけていた。
「えぇ……表向きには、“私のマブ”を撃墜したのは“赤い彗星”ってことになってるけれど……事実は違うわ」
向かいのソファに座る女――シイコ・スガイと名乗ったその人物は、静かに、けれど確信をもって言葉を続けた。
「まぁ……あの機体の存在自体、一般には秘匿されている“もの”だから仕方ないけれどね」
紅茶のカップを静かに口元へ運ぶ。その所作は洗練されている。だが、彼女の顔に浮かぶ笑みは、どこか不気味だった。
優雅であればあるほど、不自然。張り付けたような仮面。感情のない、感情のふり。
――作られた笑顔。
それが、マチュの彼女に対する今の印象だった。
「フッケバイン……」
部屋にいる誰かが小さく呟いた。
その響きに、場の空気が一瞬止まった。
その名に、いた者全員が無意識に“既視感”を覚えた。
ヒュッケバイン――そう、マチュの前で幾度も姿を見せた、あの紺色の機体。リョウガが乗っている、謎のモビルスーツ。
だが、その機体の来歴も性能も、彼の口から語られたことはない。
アンキー達、マチュでさえも、何度か問いただしたことはあったが、リョウガはいつも軽く笑ってはぐらかした。
《まぁ別にそこまで気にする必要ないだろ?》
《ガンダムじゃねぇって!...いやそりゃあ似てるけど....いや待てよ実際どうなんだ?》
――本気で隠す気があるのか、ないのか。だが、確かに“何かを隠している”のは間違いない。
アンキーは拳を膝の上で握り込む。
彼女は、シイコの仇が“赤いガンダム”だと思っていた。
だからこそ、今カネバンに所属する赤い機体の存在もあり、今日のこの会談はその関係の抗議か、あるいは別の何かか、腹を括っていたつもりだった。
……だが。事態は、もっと根深く、ややこしいものだった。
かつての戦争。各陣営がMSを投下する泥沼の局地戦。そこに現れ、連邦にもジオンにも所属せず、両陣営に牙を向けた動機不明の“赤い凶鳥”。
(……今のアイツの歳は、二十……いや、ありえない)
指でこめかみを押さえる。
計算が合わない。あの戦争から、少なくとも五年以上。
もしリョウガがあの戦場にいたとすれば、年齢が完全に合わない。いたとしてもそれは少年兵ということになる.....しかも――
(……あいつが、そんなことをするとは到底思えないね……)
謎が謎を呼ぶ。だが、考えても埒が明かない。彼女の中で、モヤのように疑念が広がる。
――その時だった。
ガチャ。
応接室の奥にある扉が、静かに、けれど確かな意思を持ったように開いた。
わずかな音のはずなのに、床に張り詰めていた空気がひやりと揺れる。誰も言葉を発さずとも、その瞬間、空気が変わったと肌で理解できた。
入ってきたのは、一人。
その足音はゆっくりとしたものだったが、妙に重たかった。
ただの足取りではない。まるで、この空間に自分が入ることが、何かを変えるとわかっている者の歩き方だった。
アンキーは椅子から身を乗り出すように視線を向ける。
シイコは――その瞬間すら、笑みを崩さなかった。
だが。
その仮面のような微笑の奥――その瞳だけが、一瞬、獣のように鋭く光を宿していた。
まるで、待っていた獲物がようやく姿を見せたと言わんばかりに。
「おいマチュ……このメール、なんなんだよ? って――あら?」
無遠慮に、そして悪びれもなくリョウガが現れた。
いつもの調子――だが、それが余計に場の緊張感を際立たせる。
彼の目に、すぐさまこの異様な空気が映ったかは分からない。だが、足を止めた彼の視線は確実に警戒を含んでいた。
「……お客さん、いらしてたのね?」
リョウガはわざとらしく空気を読まないように見せながらも、視線はシイコへと滑らせる。瞬時に彼女の表情、姿勢、手の位置、靴の汚れまでも観察していた。
アンキーは頭を抱えた。
「このバカッ……!」
立ち上がりかけたマチュが、駆け寄ってリョウガの服の裾をぎゅっと掴む。
「リョウガ!? 来るなって言ってたでしょ!?」
「いやいや、そうは言ってもな……なんだよ、俺が粗相するような男に見えるか?」
リョウガは半笑いで、口元をわずかに緩めたまま言う。
「そういうことじゃないんだって!!」
マチュは焦燥を隠せず、彼を無理やり応接室の隅へと引っ張っていった。
ふたりの会話は小声だが、その慌ただしさは否応なく空間に波紋を広げていく。
その様子を、シイコはただ眺めていた。
ゆるやかに、どこまでも静かに――そして、微笑みながら。
「アハっ……」
吐き出されたのは、かすれた音、乾いた、ほとんど声とも言えぬ囁き。
けれど、それを聞き取った者が一人だけいた。
リョウガである。
その瞬間、彼の背に鋭い針のようなものが突き立ったような感覚が走る。
空間が“変わった”と、感覚が告げていた。いや、もっと正確に言えば――
“意識”が向けられた。
微笑を浮かべたままのシイコ。表情には一切の変化がない。だが確かに、今の一瞬――彼女は“牙”を剥いた。誰にも気づかれないように、ただリョウガにだけ分かるように。
胸の奥がざらついた。喉奥に氷を流し込まれたような感覚。
これは単なる敵意ではない――殺気だ。しかも、ただの脅しではない。あの微笑みの下には、冷徹な計算と、実行力と、そしておそらくは“実際に血を見てきた手”がある。
リョウガは表情を変えなかった。いや、変えられなかった。
その程度の隙すら、この女は見逃さないだろうと、直感で理解した。
「ごめんなさい?聞き覚えのある懐かしい声だったから....貴方、お名前は?」
シイコは微笑んだまま、そう口を開いた。
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「変な質問でごめんなさいね? リョウガ君――五年前は、何をしていたの?」
何気ない会話の流れを装いながら、シイコは紅茶のカップを持った手を静かに止めた。その一瞬の“間”が、妙に引っかかる。
リョウガは彼女の瞳を見た。笑顔は崩れていない。けれど、その奥にある“何か”が、じわじわと目の前に張り出してくるような圧を放っていた。
「まぁ……色々と……」
答えは曖昧に返した。記憶の端を辿りながら、だが口元には笑みを保ったまま。
それ以上の詮索を防ぐ壁――のはずだった。
「そう……じゃあ、“ご両親”は何のお仕事をしていらっしゃるの?」
問いは途切れず続く。
さっきまでの柔らかな雰囲気はそのまま、けれど明らかに“深掘り”に切り替わっていた。
リョウガの表情が、わずかにだけ陰る。
「すみません……両親は、四年前に……二人とも亡くなってるんです」
部屋の空気が、ひとつ呼吸を止めた。
「まぁ……ごめんなさい。そんなことを聞いちゃって……」
シイコは口元に手を添えて、申し訳なさそうな素振りを見せた。だが、その声には微かな違和感があった。言葉に乗せる感情が、ほんの僅かにズレている。謝罪の言葉の中に、別の意図が入り混じっているような……。
「いえ。もう……吹っ切れたことなんで」
リョウガは静かに答える。だが、その胸の奥で何かがざわめいていた。
「それじゃあ……あのガンダム・フッケバインそっくりな機体は、どこで手に入れたの?」
空気が、ピンと張り詰めた。
その名を聞いた瞬間、リョウガの背筋に冷たいものが走る。
「……ガンダム・フッケバイン?」
口の中で繰り返した言葉が、自分自身の鼓膜を刺すように響いた。
そして彼は、シイコの口から語られる“伝説”を聞いた。
一年戦争末期、突如現れた赤い機体。
ジオンでも連邦でもない勢力に属し、両陣営に牙を向けた意図も何もかもが正体不明のモビルスーツ。
その機体が使った技は、現在の技術では再現不可能とされた空間跳躍。
見た事のない技術が使われた兵器の数々....そして……そのパイロットの声は――
「その機体が、私の“マブ”を殺したのよ」
静かに、シイコは言い切った。
リョウガは沈黙の中、思考の海に沈んでいった。
(赤いヒュッケバインって……まるで”EX”じゃないか……?
いや、ありえない。EXはmkーⅡへの改修段階での仮名だったはず。そもそも、あれはまだ……)
しかし、その“ありえない”話が、今まさに自分の目の前で、現実の形を持って語られている。
冷や汗がじわじわと背中を伝う。だが、それを表に出してはならなかった。
「リョウガくん……」
シイコが、椅子の背にもたれていた体をわずかに起こし、静かに声を落とす。
「あなたのお父様は、本当に……四年前に亡くなっているのよね?」
その言い回しは柔らかく、まるで気遣うような口調だった。
だが、言葉の背後には明らかな“意図”があった。
遠回しなようでいて、核心にじわりと触れるような――探る、試すような問い。
リョウガはほんのわずかに眉を動かし、ゆっくりと息を吸い込む。
そして、慎重に言葉を選びながら返答した。
「……目の前で死んだ時のことは、今でもはっきり覚えてますよ」
それは、事実だった。
彼の両親は、彼の目の前で命を落とした。
機械獣たちの襲撃――あの地獄のような日、炎と悲鳴の中で、彼は何もできなかった。
助けられず、ただ見ていた。両親が吹き飛ぶ姿を.....見つけた亡骸をその手に抱いた記憶は今でも忘れられない。
己の弱さを痛感したあの日の記憶を忘れることはできない。
「そう……不思議ね」
シイコはふと身を乗り出した。
笑顔のまま、だがその目だけが笑っていない。獲物を追う猛禽のように、ただじっとリョウガを見据える。
「貴方の“声”が……あの、フッケバインのパイロットと同じなんて」
空気が――止まった。
リョウガの表情が、ごくわずかに止まる。
それは一般人には気づけないほどの変化。だが、シイコには見えていた。いや、見ようとしていた。
背後で、マチュが小さく息を呑んだ。
アンキーは椅子の肘掛けに指を食い込ませ、目を細めたまま沈黙している。
場には、突き刺すような静寂が落ちていた。
誰もが、今発せられたその“言葉”の意味を理解していた。だが、何も言えなかった。
シイコの笑みは変わらない。だがその奥に、確信に近いもの――いや、“確信した上で、なお試す者の目”があった。
それを見たリョウガは、ついに息をつき、苦笑気味に口を開いた。
「ハァ……まどろっこしい問答はこれぐらいにしましょうや……アンタの目的は一体何なんです?」
その瞬間、空気が動いた。
「……あら? そんなつもりはなかったんだけれど?」
シイコは紅茶に口をつけ、微笑を保ったまま返す。
「よく言いますよ……貴方は俺が仇じゃないことは分かってるのに、その敵意だけは一瞬も揺らいでないじゃないですか」
言葉は静か。だが、重みがある。
挑発でも、非難でもない。ただ、見えている事実を淡々と述べるだけの口調。
「まぁ……まるで私の“心”を覗いたような口ぶりじゃない?」
シイコが眉を少しだけ上げた。わずかに、余裕が削がれる。
「ハハハ……ご冗談を」
リョウガは肩をすくめ、乾いた笑いを浮かべた。
“心を読まれた”と気づかれたときの反応には細心の注意を払う――
それが、彼が育てられた場所の“教え”だった。
「そうね……」
シイコはカップを置くと、再びまっすぐにリョウガを見た。
「リョウガくん。次のクランバトルで、私と勝負しましょう?」
――刹那、部屋にいた全員が反応した。
「な……?」
アンキーが思わず声を上げ、マチュは驚きに瞳を見開く。
その場に立つ誰もが、この予想外の提案に思考が追いつかず、ざわめきすら飲み込まれていた。
だが、リョウガだけは違った。
まるで最初からその流れを知っていたかのように、彼は平然とした声で返す。
「別にそれは構いませんが……俺は、貴女が憎い赤い彗星でも、フッケバインのパイロットでもないんですよ?そっくりさん相手に満足できるんですか?」
「....ええ、分かってるわ」
シイコは微笑んだまま、椅子にもたれかかる。
「でも――仕方ないのよ。“奴もシャアも”この世から消えてしまった。
だったら、あの時の執着に決着をつけられる相手は、もう貴方しかいないの」
その言葉には、哀しみと怒りと――ある種の救いを求める響きすらあった。
「なんかやだなぁ……代打みたいで」
リョウガがわざとらしく肩をすくめると、シイコはくすりと笑う。
「いやねぇ……相手をしてもらうからには、手は抜かないわよ?」
その一言に込められた“本気”は、言葉以上の重みを持っていた。
「……まぁ、貴女の気が晴れるなら別にいいですけど」
そう呟いたリョウガの目は、いつもの軽薄さを脱ぎ捨てたように鋭くなっていた。
この勝負が、ただのバトルでは済まないことを――彼は、もう知っていた。
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「リョウガ……君、正気かい!? 君がそこいらのやつより強いのは知ってるけど、相手はあの“魔女”なんだよ!?」
カネバンの作戦室の片隅で、ケーンが声を張り上げていた。額には汗、手は無意識に宙を掻き、いつになく感情が露わになっている。
「一年戦争で100機以上のモビルスーツを撃墜したっていう、あのユニカム(撃墜王)が相手なんだぞ!?」
怒鳴るように言うケーンをよそに、リョウガはパソコンのキーボードをカタカタと打ち続けていた。画面にはマチュの勉強用の参考資料――化学反応式や惑星構造の図表が並んでいる。彼の指は寸分の迷いもなく動いていた。
「あぁ……らしいな」
軽く相槌を打ちながらも、視線はモニターから外さない。
「らしいなって……君、そんな楽観的な……っ!?」
ケーンは手を振り下ろすようにして椅子に座り込み、頭を抱え込んだ。
どうにかして止められないものかと、焦燥がこみ上げる。
そんな彼の横で、ナブが腕を組み、静かに口を開いた。
「ケーンと同意見だ……。リョウガ、何か“勝ち筋”があるのか?」
その声は、低く抑えられ、静かに響いた。
いつもの彼らしく、顔には出さないが、背中に冷や汗が伝っていた。
リョウガは、打鍵の手を一度だけ止めた。そして、ぽつりと答える。
「どんな世界でも通じることだけどな――中身のないヤツほど、数を誇る」
カチ、というキーの音が響き、その場の空気が凍りついたような錯覚を覚える。
何か、見てはいけないものを覗いてしまったような感覚。
「戦争で一人殺そうが、百人殺そうが……それに、何の意味があるっていうんだ?」
その声は穏やかで、静かだった。
だが、言葉の一つひとつが、薄氷を踏むように張り詰めている。
「それが“強さ”の指標だとでも? ――まぁ、そういう評価は世間にはあるのかもな」
画面に目を戻しながらの言葉。だが、瞳の奥には、燃え上がる何かが確かにあった。
“彼らと”共に戦ったことに対する誇り――それはある。
地球を守るための戦いなら。相手が人ではない異形の悪魔達ならば。
けれど――人と人との殺し合いに誇りなど抱かない。
「少なくとも――彼女はそれだけのジオン兵を殺してきたことに、誇りも後悔も、何も抱いてないようだったけどね」
その言葉には、冷たい洞察の色が混じっていた。
“魔女”と呼ばれた女――シイコ・スガイ。彼女の瞳に宿る空虚な色に、リョウガはかつて戦場で見た“何か”を重ねていた。
戦果を積み上げながら、心のどこかで壊れていった者たちを。
自分の仲間にいた、”彼”のように。
ケーンとナブは、返す言葉を失っていた。
リョウガの口調には、怒りも誇張もない。だが、その静けさが逆に彼らを追い詰める。
――あまりに揺るぎがなさすぎる。
――あまりに落ち着いていすぎる。
それが、彼の中にある“何か”を浮き彫りにしていた。
常人では到底理解できない場所にいる、戦士としての彼を。
リョウガはようやくキーボードから手を離すと、画面を閉じ、椅子の背にもたれた。
「それに――あの人は、俺と戦いたいわけじゃない」
そう呟いた声は、どこまでも遠かった。
まるで、自分自身に言い聞かせるように、静かに、確かに。
「戦いの中で、何かを“終わらせたい”だけなんだと思う」
その瞳は遠く、過去と未来の両方を見つめていた。
この世界に来る前に置き去りにした、あの記憶――
戦友たちの声、亡き者たちの姿、そして“凶鳥”と呼ばれた機体に宿る因果。
今度の戦いは、ただの一戦ではない。
――それを、誰よりも理解しているのは、他でもないリョウガだった。
リョウガ「なんやねん その”ガンダム・フッケバイン”って? 俺は知らんでっっ」