シイコ・スガイの夫ですが、嫁がアニメで死ぬ前世思い出した   作:深海水塊

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第二話 ミドル・モビルスーツ

「アムロ君、こいつはどうだ?」

 

真新しい機体を土下座の様な降着姿勢にして背後のハシゴ付きハッチから降りてきたアムロ君にウチが新規開発した新型ミドル・モビルスーツの所感を聞く。

 

「シミュレータだけでしたが、実機もとても良いですよ。ドラケンとは大違いです。網膜投影で視界は360度、小型の直動型Iフィールドモーターのお陰でマニュピレーターでの細かい作業も非常にスムーズだし、非常にトルクフルです。

そしてサラに煩雑な作業や安全確保、移動を任せられるのはオペレーターの負担を大きく軽減します。ただ、此処まで来るともう無人でも良いと思うんですよね」

 

「其処はやはり規制がね」

 

「AIに関する人間主体規制法ですか、今更な感じもしますけどね」

 

アムロ君が言ってるのは、先ごろ連邦議会で可決制定された、高性能AI導入に関連する人間主体性遵守の為の規制法の事だ。

 

内容は題名そのままで、平均的な人間の代わりに働けるレベルを越えた高性能AIが原則として人間の指示を優先して働く態勢を構築維持する事を求める法で、

これにより、例えばミドル・モビルスーツや建機のオペレーターの場合、AIはオペレーターの指示が無ければ作業開始が出来ないとか、AIの操作を人間がオーバーライドできる仕組み等だ。

 

まあ実はAIの段階的かつ反発の少ない導入拡大の為にゴップ元帥に推し進めて貰ったんだけどね。

 

急激な変化は強い反発を生むので、敢えて規制を進めるという動きで先回りしたのだ。

 

工事現場でなく工場等の管理が容易で外乱が少ない環境では、既に監督者1人に対して10台から20台のロボット運用が許されてたりするけど。

 

ウチの物流倉庫や機械部品工場は既にそうで、同時にベーシックインカムたる最低生活保障に関する給付制度も制定され、ロボットやAIの導入に応じて段階的に施行される事が決まってる。

 

「そうか、アムロ君がそう評価するならこれを売り出す方向で行くかな。アムロ君、これからは量産に向けた商品としてのブラッシュアップを頼むよ」

 

「分かりました。これからは性能だけでなく量産性や保守性、運用性も考えろって事ですね」

 

「そう、何を優先すべきかや変えない方が良い部分などはサラやテムさんとか、開発陣と相談して欲しい」

 

「そう言えば、僕のサラはどうしたか知ってます?何時もは迎えてくれるのに」

 

「端末は持ってないのかい?」

 

「ロッカーで上着を脱いだ時にポケットに入れてたみたいで」

 

「ちょっと待ってくれ。サラ、アムロ君が君は何処に居るか聞いてるぞ」

 

『私はセリオさんがお部屋を掃除してる間に売店での買い物を頼まれまして、それを済ませて今そちらに向かってます』

 

アムロ君とそうやり取りして、俺のスマホ型端末に向けて空中にモニターが投影され、アムロ君所有のサラが映し出され答える。

 

「まったく、親父は相変わらず日常生活がだらしないな。もうセリオ達メイドロボが居なきゃ生きてけないぞ」

 

「はは、まあアレだけ技術者としてセンスの有る人だからね。トレードオフとしての何か犠牲が有るんだろう」

 

「そうは言いますけどね。仕事ではオモイカネの支援を受け、物理的にもセリオや他の秘書ロボットの支援を受けて、戦時中より仕事にのめり込んでる感じがして」

 

「うん?休暇とかはセリオ達が取らせてるよね?」

 

「もちろんそうですけど、どうも親父は勤務外もオモイカネやセリオと壁打ちしてモビルスーツの草案や新システムを練ってるみたいなんです。その、やっぱり後悔が有るみたいで……」

 

「あー、そういう内心の問題だと俺は踏み込めないなぁ。セリオ達による体調やメンタル管理はしっかりしてるんだよね」

 

「そこはまあ、親父もその方が効率的に働ける事を自覚してるので守ってます。元々、仕事に集中できるなら集中したい人だという事は分かってるんですがね」

 

なるほど、アムロも元々人付き合いよりメカいじりが好きな人種では有るけど、それでも流石に蔑ろにされ過ぎてる感じがして寂しいのか。

 

「あー、なら今度日本の大阪で開催される作業機関連見本市に2人で視察に行って来てくれないかい?オペレーター兼技術者であるアムロ君と機械部門のトップのテムさんには何か良い刺激になると思うんだ」

 

「ああ、あのイベントですか、復興需要とウチに刺激されて人型建機業界も大きくなりましたからね」

 

「そうそう、作業用大型ロボットをミドル・モビルスーツやプチ・モビルスーツでなく、レイバーという呼称にする動きも次第に定着して来たしね」

 

「スガイ社長が主導してましたけど、なんでレイバーという呼称なんです?」

 

「それはね、モビルスーツと区別を付けたいからだよ。アムロ君も知ってるだろうけど、作業用として求められる仕様と戦闘用に求められる仕様は、大きく違う。

それこそジオンが大量に放出したザクの様に、安価な有り物を使うなら兎も角として、作業用ならその作業に適した仕様という物がある。だから区別を付けたかったのさ」

 

もちろん作業向けに規制基準が決まってれば、戦闘用に作られた安価な放出ザクが未改修で入って来れないという利点も大きい。

特に装甲周りは、デブリ対策と砲弾やミサイル対策では大きく変わるから改修が必須となる。

 

「しかし、こいつを量産に向けてデチューンするのは惜しいですね」

 

アムロ君はこう言うが、生産技術の進歩と生産力の拡大により其処までの廉価化は考えて居なかったりするが、それでも彼の評価を聞いてみるか。

 

「そんなに良いのかい?」

 

「ええ、ドラケンより全高が1.5メートル高い6.5メートルなのはドラケンを想定した環境では少し気を使いますが、それは脚部の引き出し式ホイールと二重膝関節による中腰やしゃがみ移動で問題としませんし、

触媒式の低温核融合炉はミノフスキー炉には及ばなくても、水素燃料電池とは比べ物にならないパワーを発揮します。さっきも言いましたけど、Iフィールドモーターで動作も非常にスムーズかつトルクフルです。

この網膜投影式バイザーによる広い視界と、対話型AGIによるサポートで、映すべき物の抽出表示支援、作業手順の表示や作業指示を映像に重ね合わせるガイド表示、安全確保の為の注意警告。

更に簡単な指示をするだけで済む自動化にこちらの意を汲んでくれる作業補助、この柔軟性はオペレーターに必要とされる技能やワークロードを劇的に減らしてくれます。一度これに乗ったら従来機は苦行ですよ」

 

そうアムロ君は、シューティンググラスの様なスマート眼鏡を手でもて遊びながら、先ほどまで乗っていた降着姿勢の機体に視線を向ける。

 

「いやぁ、べた褒めだな」

 

「まあ、開発から自分も携わりましたからね。甘く評価してる点は有るでしょうけど、それでもこいつは乗りやすいし、操縦の自由度も高くて支援も手厚いので、初心者から高技能者まで誰もが使い易くて楽だと評価すると思いますよ」

 

へえ、アムロ・レイに此処まで評価されるなら、仕様はこのままで良いかな。

 

元々OEMによるサードパーティを増やす想定案の場合だと、販売計画として高評価が付いてたし、その分は情報セキュリティの手間として返ってくるけど。

 

それはいずれ強化したかった事では有るし、何よりアムロ・レイがべた褒めする機体なら、市場でのインパクトも大きいだろう。

 

「よし、なら現在の仕様は下げない方向で行こう。アリス、話は聞いてたね。そう言う事だから伝達宜しく、それと盗み聞きの事は後でユウカとお説教するから」

 

『うわぁーん!ご主人様にバレてましたー!伝達共有は了解ですー!』

 

 

俺が端末のカメラに目線を合わせてそう言うと、幾何学的な緑色のホログラムを頭上に浮かべたメイド服の少女の映像が表示され、そう悲鳴を上げた。

 

「はい、じゃあユウカに宜しくね」

 

『…はい、分かりました』

 

気落ちした感じでそうアリスは返すと通信を切った。

 

AIを危険視する人間が見たら先ほどのやり取りはギョッとするかも知れないが、彼女たちは主人が許すラインの見極めが出来るので問題は無いのだ。

 

先ほどのアリスは特に好奇心が強い性格をしてるけど、それでも踏み込んで良いラインでしか踏み込んで来ない。

 

「はは、好きですねぇ。でも、独身の僕や親父なら良いですけど、シイコさんは嫉妬とかしないんですか?」

 

「まあ、呆れてるけど、優先命令権は彼女に渡してて浮気してないと分かってくれてるし、例えそうなっても、今や誘惑の多い立場だから

人間の女性相手より圧倒的にマシというか、寧ろ安心だと言ってくれてるよ。それにどうやら、結婚する前からこう言う人だったと諦められてるみたいだ」

 

そう、前世の記憶を思い出す結婚前の思い出として、初デートの時に緊張して思わず美少女アンドロイドを作る夢を語り、彼女を呆れさせた事を思い出す。

まあ、シイコさんがホントに理解のある人で良かった。

 

「全く、あんな良い奥さんに心配させて、大事にして上げて下さいよ。2人目も出来たと聞きましたよ」

 

「当然さ、僕の人生はシイコさんとアキラとお腹の子と一緒に幸せになる為に存在するんだからね。それは徹頭徹尾、揺るがないよ」

 

そう、アムロ君の言う通りシイコさんとの間に2人目が出来た。

 

これは、アリス達アンドロイドの存在により、家事や育児での余裕が出来た事で、2人目を作ろうとなったからだ。

 

この子が無事に育てば、シイコさんを留める錨の一つが増える事になると思う。

 

「そう言う惚気は奥さんに言って上げてください」

 

肩をすくめてアムロ君はそう言うと、格納庫の入り口へと到着した人間サイズのアンドロイドボディに入ってるサラへと向かって手を振り返した。

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