シイコ・スガイの夫ですが、嫁がアニメで死ぬ前世思い出した   作:深海水塊

5 / 7
第四話 地下都市

UC-0084年4月、ジャブロー地下70キロメートル、ジオフロント新ジャブロー第15層、連邦大統領官邸大統領執務室。

 

「ジャブローを桁違いに上回る超大深度地下施設群がほぼ民間資金のみで僅か1年で出来るとは、ジャブロー建設当時の私の苦労は何だったんだと思わないでは無いよ」

 

連邦軍最大の拠点であるジャブローの地下55キロメートル以深には、人類文明が築き上げたコロニーを上回る最大のメガストラクチャーが僅か1年で出来上がっていた。

 

この新ジャブローは、コロニーで使われてる高強度鉄を上回る鉄材を骨子やロックボルトにし、炭化ケイ素とペリクレースを主材に、高さ600メートルから1.5キロメートルの15層の空間からなり、長辺の長さが500キロ、最大内径が5キロを越える巨大な楕円形をしたトンネル状の空間だった。

 

人口の空が表示される天蓋と壁にはコロニーで培われた人工気象再現システムが有り、地上には居住区の他に速成栽培された森林に湖や池はもちろん、海や山、農地までも備えている。

 

これらの環境は半永久的に健全性を保ち可動する様に設計されており、例え人類が知識を失ってもマントルへと沈むまでは機能を保ち存在し続けると想定された。

 

「これも全てゴップ大統領がこれまで築いて来た社会的資本の蓄積が有ってこそです」

 

実際、建設に必要だったロボットを作る為の社会的資本の最初の部分はゴップ氏が居なければ整備されず、新ジャブローを始めとする地下都市群の完成は3年は遅れていた。

 

なので、この方の功績は非常に大きいのだ。

 

「それがお世辞でない事と実際に影響してるのは分かるがね。心情という物は素直に受け止められないのさ。しかしまあ、それでもこのトンネル状の階層型地下都市はとても良い物だ。

各国のこれにより、地球で人口爆発が再び10回起きても居住地や資源に余裕が出来たし、何より頭を抑えられて逼迫した状況でもコロニー落としや生半可な大きさの小惑星落下に怯えなくて良い」

 

そう大統領執務室の窓から、人工の青空と雲を背景にして空を飛ぶ鳥たちに、青々とした森林とその島のように浮かぶ300メートル越えの摩天楼群、その更に遠くには最大標高1400メートルの山々を望み、地下施設とは思えない大統領官邸からの光景を連邦大統領へと登り詰めたゴップ氏と共に並んで眺める。

 

「それはそうと例のASIだが、長期的に見ても大丈夫なのかね?人間を甘やかして駄目にしてしまう可能性が有るとの声を聞いたのだが……」

 

「人類家畜化の警告ですね。これは見方によるとしか言いようが無いです」

 

「ふむ、説明してくれ」

 

「以前、資料でお渡ししましたが改めて説明しますと、人類の幸福を最大化せよという命令で起こり得るワイヤーヘッド問題という思考実験が有りますが、これは脳に電極を刺して快楽物質で幸福にするという短絡的な解決法で、今のAGIが選ぶ可能性が低い事は、凍結の本能文の生命守護や人類への奉仕という学習の大枠から分かると思います。

この大枠の内容には、人類の物質的豊かさと文化的継続発展、時間的精神的余裕、そして人類との共生が有ります。これは人類という主人に継続した発展を促す共生関係の奉仕者である様に仕向けます。

ただ、これは見方を変えれば従来の自律した人類を自らに依存させる機械という見方もできるので、人類を甘やかして駄目にすると言われたら当たってはいるのです」

 

「なんだ、つまり機械に依存しないと今の生活を維持出来ない現代文明と変わらないじゃないか」

 

拍子抜けしたという風に肩をすくめて、ゴップ大統領はざっくり斬る。

 

まあ、事実では有るのだけど。

 

「はい、一応実際の意思の主体が変わるというのは大きいとは思います」

 

「つまり命令する権利は有るが、それは慣習なり思想なりで自由に使えなくなるという事だろう。そんなのはどの組織でも家庭でも、大なり小なり存在する事だよ」

 

「確かに、言われてみればそうですね」

 

そう考えたら今更という感じはする。

 

地球連邦軍という、人類史上最大の巨大組織で組織人としての階梯を登り詰めたゴップ氏の言葉には、その経験から来るだろう強い説得力が有った。

 

「ま、君の説明で安心したよ。今の路線で大丈夫そうだ」

 

 

 

 

「良い所ね。管理・制御された安全な自然環境、高度な防犯・安全管理システム、綺麗で整備された街並み。何より、空が落ちて来る事に怯える必要が無いのは良いわ」

 

ドキリとした。

 

それはガンダムZで、ロザミア・バダムやカミーユがコロニー落としに対して使った表現と同じだったからだ。

 

やっぱりシイコさんには、アムロ君と同じ特殊な才能が有ると考えた方が自然なんだろうか、史実には居ないと思われる生後1歳になる娘の存在は、彼女の錨となるだろうか。

 

性能の桁が違う新型艦艇や新型モビルスーツの実用化と、コロニー落としに対して後背の憂いが小さくなり活発となった地球連邦軍の宇宙活動により、ジオンとの間がきな臭くなっているのは想定内だが、シイコさんも引っ張られてるのか?

 

連邦軍は主な活動圏として、未だに地球衛星軌道やL1軌道に留まってるが、それは軌道防衛網の構築を推し進めてるからで、同時にサイド6に干渉を強めて表に裏にジオンとバチバチやり合ってもいる。

 

お陰で地球に親父たちを呼び寄せる事になったのは申し訳ないけど、俺の明確な弱点を脆弱なサイド6に置く選択は自分でも周囲からしても有り得ない事だった。

 

一般人にも状況がきな臭いのはバレていて、シイコさんがクラバに参加しなくても軍への復帰を言い出さないかとヒヤヒヤしてる。

 

いや、それは無いか、彼女の執着は未だに赤いガンダムに有るのだから。

 

次に戦争が起きたら、99%連邦が勝つと俺やユウカやアヤネたちがそう断言してるから、次の戦争の帰趨自体は安心してる筈だ。

 

だから、未だに彼女の執着を捨てさせられない自分や、侵襲的な手段を使えば可能なそれを彼女に行う事ができない自分に忸怩たる思いが募る。

 

後者は、彼女にあっさりと勝たせる事ができるという、別に必要が無いからで有るのが大きい。

 

彼女を亡くす位なら決断できても、彼女にフラッグを与えればほぼ100%勝てる。

 

だが、シュウジとサイコミュ搭載のガンダムと、シイコさんという、もう一人のニュータイプが揃う状況が不味い。

 

1機のサイコミュ搭載機と2人のニュータイプ、これはゼクノヴァを起こす要件として十分なのだ。

 

彼女が向こうに持って行かれる事は、絶対に許容できない。

 

「……なた、あなた」

 

「ん?ごめん。ちょっと考え事してた」

 

「もう!お兄ちゃんの幼稚園の保護者面談に来れるの?って話よ」

 

そう、ぷんぷんという擬音が付きそうな表情で膨れてるシイコさんは、その童顔と相まってとても2児の母親には見えなかったが、凄くグッと来る物が有った。

 

有り体に言って、凄く可愛かった。

 

「大丈夫、予定は絶対に開けるよ。それはそうとシイコさん、今夜良いよね」

 

そう、不安となる悪い想像を掻き消すように彼女の腰を抱き寄せて、耳元で囁く。

 

「もう、好きねぇ」

 

仕方ないなぁという声をしながら、抱き返して許してくれるシイコさんに俺は彼女が大好きだと再確認した。

 

それと同時に、シュウジ君には悪いが、彼か赤いガンダムの事前排除を本格的に視野に入れて動く事を決めた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。