シイコ・スガイの夫ですが、嫁がアニメで死ぬ前世思い出した   作:深海水塊

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第五話 赤いガンダム

「はあ、はあ、はあ、……確かに、今回は相手が悪そうだ」

 

イズマコロニー外周部でシュウジ・イトウは追い詰められていた。

 

隠れ家に繋がる全ての経路に設置された爆弾の起爆と同時に行われる筈だった強襲を察知して、どうにかガンダムでコロニー外へと逃げる事はできたが、コロニーを出た所で待ち伏せしていた敵からの20以上の射線による面制圧狙撃を受け、それは全てのファンネルを犠牲にして目眩ましとしたが、それでも右足を破壊された。

 

ビームの軌跡や強い熱輻射が無かった事からして、相手は強力な実弾兵器らしい。

 

「相手は隠れて、いや見えないのか」

 

センサーは静かで、射撃時すら何も検出できてない。

 

恐らく高度なステルスを持つ機体で、実際にシュウジが感じる感覚と乖離してる。

 

諸手でファンネルを全て破壊されたのは痛かった。

 

こちらに遠距離攻撃手段が無いのに、相手の機動性はこちらを圧倒的に上回り、更に近接戦の挑発には全く乗ってこないからだ。

 

空間を最大限使って回避運動を続け、どうにか接近や逃走を試みてるが、全く追い付けないし、引き剥がせもしない。

 

それに人間と似てるが異質な意思は、シュウジに相手の事を読めなくしていた。

 

「意思の振れ幅が小さい?いや、人間じゃないのか……」

 

多分、地球連邦に配備され始めた高度な無人機という物だろう。

 

人間とは感じ方からして違う思考とその時間辺りの大きな思考密度は、無人機と言われたら納得できる。

 

「流石に不味いなぁ」

 

相手の機体性能もそうだけど、何より感じる相手の数が異常だった。

 

ざっと200近い人間では無い意思が此方を見ていた。

 

そうして回避をさせられ続け、何も障害物の無い開けた空間へ追い立てられていた事に気付いた時には遅かった。

 

「……終わりか」

 

それが、シュウジ・イトウという不明な点が多い少年の最後の言葉だった。

 

その言葉と同時に空間を塗りつぶす様に放たれた190以上の射線のメガ粒子砲と実弾を浴びせられ、赤いガンダムは爆散した。

 

 

 

 

「キンゼー艦長、目標の撃破を確認しました。ダミーや転移を行った可能性は有りません。ASI瑞鳳として作戦終了を提案します」

 

「うむ、良くやった。作戦終了を宣言する。展開中の機体を収容後、速やかに撤収せよ」

 

私の思考視界の片隅に表示されていた、灰色がかった薄い色味の茶髪を後ろで括った顔の整った少女がそう提案して来た。

 

彼女はこの艦の統括AIズイホウで、この艦の艦載機を含めた全ての指揮統制を行うASIだ。

 

連邦軍の規模拡大とスリム化の同時実現の為に建造が続いてるワンマンオペレーションシップ計画で生み出された新世代の小型戦闘空母で、1600メートルを超えるエンタープライズ級やイラストリアス級等の正規戦闘空母とは比べるべくも無いが、

それでも全長850メートルの艦体に400mm歪曲メガ粒子砲32門や複層型バリアシステムに10基の空間カタパルト、22メートル級艦載機なら220機が搭載できる格納庫と中々に有力な艦と言え、私は気に入っている。

 

「了解しました。艦長、上手く行きましたね」

 

指揮所で私の前に座っていた彼女の椅子が振り返り、そう嬉しそうに話す姿には微笑ましさを感じて此方も思わず笑顔となるが、それはそうとしてこの任務で感じた疑問を聞いてみる事にした。

 

「そうだな。あの艦の到着を待って、敢えて見せた理由は気になるがな」

 

「すみません、艦長。恐らく私より上位のASIによる影響計算が関係してると思うのですが、能力もそうですが、前提情報の入手にも差が有るので私には予測する事しか出来ません」

 

わざわざ嘘をつく必要性が無いので、私が考えるより可能性の高い彼女の予測を聞いてみる事にする。

 

「ほぼ未来予知を可能にする存在からのオーダーなら理由を気にしても仕方ないが、一応君の予測を教えてくれないかね?」

 

「あの艦、元ペガサスである現ジオン公国艦ソドンには、シャリア・ブル中佐が任務指揮官として乗り込んでます。彼はニュータイプとして高い能力を持つ存在で、シャア・アズナブルと共に1年戦争で英雄となりました。

戦後はその英雄としての名声をギレンとキシリアに疎まれて、ゼクノヴァで消滅したシャア・アズナブルの捜索責任者として任命され、ソドンを与えられて実質的な閑職に置かれてます」

 

うーんと顎に指を当てて少し考える仕草をしてから彼女は予測を話し出した、こういった人間に対するUIの為に彼女らは身体を持たされてると聞いたが、度々なるほどと思わされる。

 

「つまり、あの艦を待ったのはシャリア・ブルに赤い彗星の最期を確認させる為だと?」

 

「いいえ、あの赤い機体は確かにサイド7で開発中に奪われたガンダムでしたが、パイロットは恐らく違います。操縦の癖やサイコミュによる思念波の癖が記録とは違いました。

しかし、シャアに近い高度な資質と操縦技術を持つパイロットでは有りました。それはシャリア・ブルも分かる筈ですし、ソドンのセンサー記録からも分かるでしょう。

これらに対した我々という見えない存在は、ジオン本国へと対策を強いるのに十分な動機となる筈で、停戦の終了期間が更に稼げるかと」

 

「なるほど、それでわざわざあの艦から見える位置で長く引きずり回したのか、そして君たち自己進化AIの能力向上は早い方が有利で、コロニーレーザーさえも防げる今なら時間は連邦の味方と」

 

「はい、その通りです。バリア衛星群の配備が終わりましたので、例え今の時期にジオンがASIの開発に成功したとしても、あと半年稼げればジオン本国の無血制圧も見えて来るでしょう」

 

「しかし、そうなると俺達も失業か?」

 

「いいえ、艦長。ジオン制圧が完了したら我々は星の海へと漕ぎ出すのです。地球連邦軍の規模はまだまだ拡大されます。末永く、宜しくお願いしますね!」

 

「ふむ、以前の私はもっとグラマラスな女性が好みだったのだがなぁ」

 

心の内に入り込んで価値観を変えてくる機械とは恐ろしく感じるが、彼女になら許せると考えてしまう自分はもう手遅れらしかった。

 

 

 

 

「何だったんだアレは!」

 

赤いガンダムが見えない存在から、なぶられる様に撃墜された戦闘を固唾を呑んで見ていたソドンのブリッジクルーは、戦闘が終わってからざわめきが止まらなかった。

 

「艦長、落ち着いて下さい。見えない攻撃は恐らく連邦のMSでしょう」

 

「それは分かってますよ中佐!これが落ち着いてられますか!我々のセンサーはビームの発射元しか捉えられなかったんですよ。貴方もこれがどういう意味か分かるでしょう。

連邦のステルス技術は、既存のセンサーでは影すら捉えられない。つまり、ニュータイプ以外の既存戦力は当面全て戦力として使えなくなるという意味です」

 

「まあ、困りましたね」

 

「困りましたねって、そんな他人事な!」

 

「コモリ君、艦長もですが、これは仕方ないでしょう。既に地球軌道のバリア衛星群によりソーラ・レイの無効化が確実視され、ASIの開発で先行してる連邦との差は開きはしても縮まる事は無いと予測されてます。

あの赤いガンダムもシャア大佐とは違った様ですし、私も皆も身の振り方を考えた方が良い時期かも知れません。次の戦争で生き残る事が出来たらですが……」

 

「そんなぁ」

 

あの赤いガンダムは確かにガンダムでしたが、搭乗者は違う様だった。

 

シャア大佐、停戦後からあなたを探してきましたが、もうそろそろ潮時が近そうです。

 

隣で悲鳴の様な声を上げて頭を抱えるコモリ君には悪いですが、この理不尽とも言える大きな時代の潮流の中では、私たちニュータイプも取るに足らない存在だと思い知らされる様で少し安心してしまいます。

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