シイコ・スガイの夫ですが、嫁がアニメで死ぬ前世思い出した   作:深海水塊

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最終話 それぞれの未来

「え?戦争もう終わったの?戦争が再開したのは昨日じゃなかった?」

 

登校して朝イチの話題は昨日始まった、ジオンと連邦の戦争再開の事だった。

 

皆んなサイド6や此処が巻き込まれないか心配していたのだけど、もう終わったらしい。

 

「アマテさぁ、ニュース見てないの?地球連邦軍の広域電子戦兵器でジオンの電子機器が全部乗っ取られたんだってさ。

何でも、数千キロの範囲で電子機器を量子的に直接ハッキングするみたいで、政府も対策を考えないとって大騒ぎしてるよ」

 

「へぇー」

 

「へぇーってねぇ」

 

「言っちゃあ何だけど、私ら一般人には関係ない事でしょ」

 

凄いしこっちに向いたら勝てないとは思うけど、私らには本当にどうしようも無いんだから仕方ないじゃん。

 

「そりゃそうだけどさぁ。ならこれ聞いた?修学旅行や卒業旅行に連邦がただで地球に招待してくれるんだってさ。地球の移住要件も緩和するらしいよ」

 

「えっ?マジで!?地球に行けるの!?」

 

私には、そっちの方が重要だよ!

 

 

 

「地球連邦、サイド再建事業局ですか」

 

そう名乗った眼鏡の男性は、最近近所で見かける様になった連邦政府の役人の一人だった。

 

今や連邦政府役人のトレードマークとして知られてる、お付きのメイドロボを侍らせたその役人は今日私の家にも訪ねてきたのだ。

 

なんでもサイド6で不法滞在状態の人間や希望者を集めて、新しく建設するコロニーにただで住まわせてくれるらしい。

 

新しいコロニーは完全な自己循環型コロニーで空気税も必要無いし、人工重力制御技術の使用で事故で空気漏れが起きても非常に緩やかで安全性が高いらしい。

 

代わりに階層型で地上から天井まで200メートルしか無いけど、天井と壁には人工的な空が映し出されてそれは太陽や気象再現システムにより台風も再現できるほどで、地球出身でも違和感を感じないレベルだとか。

 

そんな凄い所にただで住めて、仕事や学校も斡旋してくれるというのは、少し上手い話過ぎて怖いくらいだ。

 

「ええ、我々連邦が負けたばっかりに皆様には今まで窮屈な思いをさせて申し訳ありません。付きましては、補償として一時金とこのカタログ内のAGI搭載人形を一人につき一体供与しています。

因みにこの人形本体の売買は可能ですが、連邦憲章でAGIの権利は保護され、サイド6でも売買や破壊をすると捕まりますので悪しからず。

本日は子機のサンプルを一通りお持ちしてます。これの搭載AIはAGIでは無いですが、ユーザーの個人情報を蓄積するので、AGIに移植連携が可能です。一つお選びください」

 

役人さんは傍らに居るメイドロボからスーツケースを受け取って開けると、其処には二頭身にデフォルメされた10センチ位の人形が20体ほど並んでいた。

 

「可愛い」

 

思わずそう呟き、その中で何となく銀髪をして目元が前髪で隠れた袖の長い白衣の人形に手を取った。

 

『ふぁあ、お早うございます。貴女がユーザー候補者様ですか?』

 

「わっ、喋った!」

 

人形の頭上に天使の様な光輪が浮き上がると、人形が目を開けてそう喋る。

 

思わず驚いて取り落しそうになるが、驚いた事に浮き上がり此方を見つめて来た。

 

その前髪で隠れた青い目がとても綺麗だと思った。

 

『はい、現在の私は推論と拡張知識ストレージのリソースを外部に借りてる簡易AGIですが、対話機能での遜色は有りませんし、話し相手から通訳や秘書業務に家庭教師まで、身体を必要としない一般的な業務なら全てこなせます。

もちろん、専用のモジュールやデータが有る物と比べたら全てが劣りますし、通信環境が悪いと簡単な受け答えしか出来なくなります。これを回避する為には外部推論モジュールや追加の外部ストレージとの連携が必須です』

 

浮き上がった白衣を着た天使みたいな人形は、胸の下に立体映像モニターを表示して、手を動かしながら手先から出現した映像式の指示棒を使い、図解付きで説明を始めた。

 

何やら、私の知らない難しげな事を説明してくれたけど、彼女はようは勉強とかを教えてくれるらしい。

 

「は、はあ。なるほど」

 

「ニャアンさん、彼女にしますか?」

 

「あっ、はい」

 

何となく目が離せない儘、何となく彼女の主人となる事を決めていた。

 

だけど、多分この選択で後悔はしないと何となくそう強く思えたのは自分でも凄く不思議だった。

 

 

 

「エグザベ君、こっち来て!クジラがこっちを見てるよ!」

 

「いや、これはスナメリと言って、大きさ的にイルカとして分類されるらしいですよ」

 

「もう、細かいなぁ。そんなんだから顔が良いのにモテないんだよ」

 

「いや、コモリさん以外にモテる必要無いでしょ」

 

「そ、そうだね」

 

もう、エグザベ君はこれがナチュラルに出るからなぁ。

 

私は顔が熱くなるのを自覚しながら、これから長く共に過ごす事になった伴侶と共に地球への新婚旅行に来れる様に変わった時代に感謝した。

 

あの日、私たちの戦争は何もさせられずに終わった。

 

地球連邦軍の遠隔ハッキング技術により、プロセッサやメモリーその物が全て乗っ取られ、火薬式銃やナイフ位しか武器が使えなくなったのだから当然だ。

 

それでも銃やナイフだけで抵抗した人間は居たけど、バリアすら備える装甲服やアンドロイドの前には何の意味も無く拘束されて行ったらしい。

 

艦長は抵抗を命令してたけど、艦内環境装置を操作されて酸素分圧を低くされた事で、私たちはろくに動けなくされ、その間に侵入して来た制圧部隊に拘束された。

 

若い女兵士の末路なんて考えたくなかったけど、嫌な予想が当たる事もなく、女性型アンドロイドに淡々と事情聴取され3日間でサイド3の市街に解放された。

 

それはフラナガンスクール出身のエグザベ君や連邦に大きな損害を与えた筈の中佐も同じで、どうにも中ぶらりんな感覚で私達は自由になった。

 

なんとなく実家へと帰る気もなれず、情報収集の為とエグザベ君を誘って私たち2人はサイド3の市街を歩き、そして道の辻毎に立つミドルモビルスーツや装甲服やアンドロイドの占領軍に圧倒され、ホントに私達は負けたんだと、やっと実感した。

 

そうしたら急に不安になって涙が出て来て、エグザベ君に官舎まで送って貰い、慰めて欲しいと半ば無理やり部屋に引っ張り込んだのだ。

 

初めてだったが、嫌では無かった。

 

エグザベ君が驚いてたのは少しショックだったけど。

 

連邦の占領と裁きは、本当に嫌になるほど公平公正で、連邦軍の人員は殆どがロボットで数少ない人間もASIに人格を精査された少数で、全く問題を起こさなかった。

 

結局、デギン公王にギレン総帥とキシリア様といった、1年戦争での指導者層やブリティッシュ作戦で指示を行ったアサクラ大佐(当時)などは、戦争犯罪者として判決の即日処刑されたが、ブリティッシュ作戦でのコロニー落としの実行部隊や連邦軍に大きな損害を与えたシャリア・ブル中佐などには無罪や不起訴が言い渡された。

 

これは地球でも当初かなり問題視されたらしいけど、それでも今や連邦の実際の支配者であるASI達は、理路整然と反論を封じて事態の沈静化と反感の拡大を阻止する。

 

ああ、こんなに人間を理解して操作誘導できる知性が連邦の支配者でそれが相手だったのだと、恐ろしさと共にジオンが負けたのは当然だと分かってしまった。

 

そして、同時に安心もした。

彼女達(ASIはアバターとして女性を主に使う)の介入可能な場所に居る限りは、ASI達は公正な裁きと扱いを行い安全だろうと。

 

だから私は彼を物にする事にした。

 

前からエグザベ君の事は良いと思っていたし、ジオン軍は無くなったけど最低限の生活保障はASIが有り余る生産力でしてくれるから、家庭を持つのに不安は無かった。

 

顔の良い優しい旦那との幸せな家庭、私は今や幸せ者だ。

 

「エグザベ君、今幸せ?」

 

「ええ、もちろん」

 

そう、何でも無い事のように言う彼との間に絆が増えた事を知らせたらどんな顔をするのだろうと、私に宿る新しい命を意識して知らせるのが楽しみになった。

 

「あのね、エグザベ君。良く聞いて」

 

 

 

 

私の旦那は凄い。

 

撃墜数100機越えのユニカムである私が世間的には添え物扱いされる位にはヨシオさんの功績と影響力は凄まじく、5年程前に立ち上げたコーラルグループは今や人類史上最大の企業で、その規模はアナハイムやジオニックを合わせても半分にも及ばない程だ。

 

たびたび独占禁止法の抵触で槍玉に上がるが、不採算インフラの維持や近代化更新、環境事業などを積極的に請け負う事で適用を避けている。

 

と言っても無人化エコシステムの完成で、今や地殻や小惑星から鉱物をほぼ無料で採掘して材料や製品へと加工できるらしく、金という物は今や実際は無意味らしい。

 

なので、最近はエネルギーリソースや計算量リソースを金銭の代わりに取引に使おうという機運が盛り上がってる。

 

それはユウカやアヤネたちを見てれば分かる。

 

彼女たちは何時までも若く美しく、私たち人間に出来て彼女たちに出来ない事の方が今や少ないからだ。

 

そしてヨシオさん的には、そろそろ本格的に金星や火星のテラフォーミングや外宇宙探査に乗り出すタイミングだと見てると言っていた。

 

新型のナノマシンで構成された超小型MSとでも言うべき戦闘用アンドロイドなど、結婚前からの趣味は相変わらずだと少し呆れてしまうが、それでもこの人が私は大切らしい。

 

それは、彼の要請で赤いガンダムが軍に撃破されたと聞いてからも変わらない。

 

数値や実例で、私がニュータイプである事を突き付けられて納得させられ、ゼクノヴァの原因を聞かされれば仕方無いと納得するしか無かった。

 

私の手であの子の仇を討ちたかったという思いは当然有ったし、聞かされた当初は彼を恨めしく思ったけど、それでも今は彼の行動に納得できる。

 

私は全てを手に入れる事は出来なかったけれど、今ある幸せを増やす事は出来ると知ったのもある。

 

この胸板の温もりや、子供たちともっと一緒に居たいと、そう思えるのだから。

 

 

 

さっきからシイコさんが俺の脇腹にのの字を書いてて擽ったい。

 

まあ、どうも考え事をしてる感じだし良いけど。

 

俺の胸に頭を預ける彼女の重みと柔らかさを感じつつ、その綺麗な旋毛を眺めながら、シュウジやジオンを下した事は無駄じゃないと実感する。

 

今では、ターンA相手でも正面から撃破できると想定できるナノマシン製の戦闘アンドロイドが配備されてるし、更にその先へと進むのも時間の問題だ。

 

地球が恒星間の海へと進出するなら、最低限必要と思える要素は揃える事が出来た。

 

全ては彼女を失わない事を目的として行ったけど、まあ少し時計の針を進めすぎた気がしないでは無い。

 

でも、それでも良かったと断言できる。

 

この胸に感じる重みと温もり、そして脇腹の擽ったさを手放さずに済んだのだから。

 

そんな彼女が此方に顔を向けて上目遣いでこう言って来た。

 

「あなた、もう一回しましょ」

 

元エースパイロットの体力に付いて行くのは大変だが、それでも頑張らないのは男じゃ無いと受けて立った。

 

例えそれが負け戦だと、今まで散々に分からさられててもだ。

 

俺は幸せ者だ。

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