スーパーロボット×ファンタジー 作:名無しの転生者
あれはあくまで“初期状態”のもの……
エルドリオンは状況に応じて色々と
「進化」します。
リオンの能力検定の翌日、副官から報告を受けたギルマスは頭を悩ませていた。
(何なんだこの馬鹿げた能力は……まるでおとぎ話に出てくる勇者すら赤子の様に見えるぞ?!)
ギルマスはリオンの行った数々の奇行……もとい、攻撃や防御に関する報告書を副官から受け取り、コイツ、ヒトじゃない何かではないか?と結論付けた。
(確かに全身鎧ではあったが……鎧と言うには明らかに派手過ぎたしな。顔すら見えんタイプの鎧は確かにあるが……あれは……)
リオンの顔は俗にいう「マスク付きの大型ロボット」という感じだが、この世界ではそんな説明しても理解が及ばない。
メタに言えばエルドリオンの外見は「勇者ロボ」的な外見なのだ。他に説明しようがない……
アレから数日後……リオンは正式にギルド加入を果たし、また“風来坊”の4人目として認知される様になっていた。
「………………」
「………………」
「………………」
……だが、晴れて新規参入となったリオンの外見があまりにも異質な為、周囲からの視線は以前までとは明らかに異なった目であった。
(明らかに嘲笑の目で見られてる……)
(皆、リオンの実力を知らないから……)
(……まぁ、知ったら腰抜かすどころじゃねーよなぁ)
それまでは若い女性3人組が破竹の勢いで認められ、羨望や嫉妬が多かった。時には熱烈にパーティ加入を行う輩も居たが、ギルドは完全実力主義なので、個人やパーティに関する揉め事は基本的に本人任せである。
……最も、他人に迷惑が掛かる事案が報告に上がれば速攻でギルマスに対処されるが。
彼女らに対しては、ギルド自体が黙認の様相……無論それは、パーティ“風来坊”は清廉潔白な上で明らかに強かった為である。
不埒者はその実力で排除……それが普通に可能だったが故、ギルドも黙認しているだけであった。
それ以来、パーティ“風来坊”はギルドの中でもある種の“指標”として認められ、あるべき姿の一つとして扱われていた……
……そんな彼女達が招き入れた新人が、正体不明の新人冒険者リオン。
顔すら分からぬ全身鎧に身を包み、一挙手一投足に何かしら奇妙な音が響く謎多き人物……
世間一般からはリオンはそんなイメージで見られていた。
「あ、“風来坊”の皆さん。依頼達成ですか?」
ギルドの依頼カウンターで仕事を熟していたスタッフの1人が彼女らを見つけ、声を掛けた。
今は依頼カウンターも比較的に空いており、冒険者達の多くは依頼や装備の手入れに行っている……それでもギルド内には幾つかのパーティが屯しており、依頼用の掲示板や仲間内の会話をしていたが、ギルドスタッフの声にチラホラと戻って来た“風来坊”の4人を見始める者も出てきた。
「あんま声上げないでくれよアリス、最近変な目で見られてるんだから……」
既に奇異の視線は数日間に及んでおり、さすがに苛立ちを隠せなくなったフレアはスタッフであるアリスに抗議した。
アリスも彼女らの苦労が分かった様で、すぐに「あっ、ゴメンナサイ……」と謝った。
「さすがに今回はキツかったわ……まさかエアドラグまで来るなんてな」
いい加減この奇妙な現状を打破したいレオナは、大した内容ではなかった筈が大物が出て大変だった……と、ワザと周囲にも聞こえる様に言い放つ。
「うえっ?! エアドラグですか?!」
アリスはエアドラグと聞いて素っ頓狂な声を上げ、周囲の冒険者たちも明らかに騒然とし始めた。
エアドラグとは、難易度Aランク相当の飛竜型魔物で強靭な翼と尾を持ち、常に飛行し続けられる程の体力とスタミナを持つので本来ならば1体でもギルド総動員体制を敷く程の相手……
周囲からは「嘘だろ……」と言った懐疑的な声が漏れ聞こえるが、ノエルがバッグから取り出した討伐証明の爪と牙を出した事で一瞬で消えた。
「えっ……まさか、4人で討伐しちゃったんですかぁ?!」
そんなアリスの声に、レオナは“そう言うのを待ってたんだよ”と言わんばかりにニヤリとして……
「んや、コイツが一人でやっちまったんだよ。唖然としたぜ……」
「そーそー、アタシらでも逃げる選択すんのにコイツってば『人類に害なす魔物……排除する!』って突っ込んでってさぁ……」
「……私達、よく生還できたよね」
レオナの煽りに乗じてノエルも此れ見よがしに言い放ち、ノエルも本気で“死ぬかと思った”と胸中をぶち撒けたのだ。
「そんなら奥で詳細を話して貰おうじゃねぇか」
「ギルドマスター?!」
カウンター周辺のざわめきは建物の奥に居たギルマスまで届いていた様で、ギルマスは4人に「奥に来い」と指示を出す。
だがそれを……
『失礼。討伐した例の対象は、何かしら利用されると聞いています。何処か広い場所はありませんか?』
と、リオンが急に割って入った。
「ん? なら前に試験で使った彼処が良いな……後ろの連中も納得させるんだろ?」
リオンの発言に何かしらの意図を察したギルマスも、拒絶せず指示を出す。興味が湧いた冒険者達も、一人また一人と風来坊の4人の後を追い訓練場へと歩を進めるのだった。
『……この辺りなら大丈夫ですね』
リオンは訓練場の中央付近……特に何も置かれていない辺りに立ち、徐ろに手を地面に翳す。
『転送対象、座標データ取得……転移誤差修正、認証ロック解除。目標捕捉……定点接続、開始』
ブツブツと詠唱の様に意味不明な単語を羅列したと思った冒険者達は次の瞬間、リオンの眼前に現れた光の壁に一斉に驚く。
「な……光の……壁……?!」
「何をやってるんだ……アイツ……」
「オイ見ろ、アイツ……!?」
一同が驚愕の目で見守る中、リオンは光の中に半身まで手を伸ばして突っ込み、中から巨大な死体を片腕で引き摺り出してきた。
長い尾と大きな翼……瞼の無い丸い目は既に光も無く、紛れもなく完全に死んだ飛竜の死体である。
「嘘だろ……間違いねぇ、エアドラグだ……」
ギルマスもこの光景に目を疑ったが、実際に死体に触り知りうる限りの箇所を確認して周りそう呟くと、周囲も騒然となった。
「ねぇリオン……さっきのアレは何……?」
聞きたくないけど聞かないといけない……そんな意味不明な使命感が湧いたノエルは、引き攣った顔のままリオンに尋ねる。
『今のは軌道衛星とのリンクを利用した短距離物資輸送ゲートです。サーチ範囲のテストがまだでしたので試験ついでですが……上手く使えたので結果オーライです』
「オーライじゃない!! また奇異の目で見られる要素増やしてんじゃないのよ!?」
さすがに素手では痛いのでハリセンを取り出し、容赦なくリオンにツッコミを入れるノエル。
ちなみにリオンが饒舌になっているのは主にフレアのせいで、依頼の道中などでリオンの堅苦しい言葉遣いを矯正すべく努力したからである。
「……アンタ、そんな見た目でやるんだな。見直したぜ」
ノエルの全力ツッコミにもピクリともしないリオンに、冒険者の1人が謝罪に訪れる。冒険者ギルドは完全実力主義であるが、規律を守らない者はギルマスに制裁される為、あまり不届き者は居ない。この冒険者も、当初はリオンの事を“女パーティの風来坊に突然割り込んだ不埒な男”だと思っており、あまり良い目では見ていなかった事を謝罪しに来たのであった。
『……私には性別はありませんが……謝罪は素直に受け取ります』
「……リオン。素顔も見せないで誠意は伝わらないわ、さすがにマスク位は取りなよ」
そんなフレアの一言に気づいたリオン。
『……そうなのか……では……』
徐ろに頭部へと手をやるリオン。不可思議な機械音が幾つも響き、マスクが割り開かれ、素顔が顕になる……
「…………き……綺麗だ……」
謝罪に来た冒険者は、顕になったリオンの素顔にただ一言……それだけを口にして卒倒したのであった。
……はい、常にロボ頭では不都合が生じるので生身の頭が生えました(ぇ?
なお、エアドラグの死体を運んだ転送システム。
コレは距離以外は特に制限も無い万能手段!
人員物資の輸送にも使えます!!
なお、最大転送距離は半径約50km程とのこと。