守鶴転生   作:砂隠れの下忍

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NARUTO世界、いや他の創作世界においても尾獣という存在は実に特殊だ。

 

例えば世界に九柱しか存在しない事や、死にはするものの基本的に不滅である事など、他に例のない性質を多数帯びている不思議存在だ。

 

しかし、最強かと言われれば首を傾げる程度の強さしかない、一般人や忍者相手なら無双出来る強さを持ち合わせているが、尾獣が束になっても輪廻眼や写輪眼には勝てない印象がある。

 

出自や所属についても謎だらけだ、地球由来生物かと言われると疑問の余地が残るし、かと言って宇宙由来生物かと言われるとそれも違う気がする、もちろんハーフやクオーターでもない、そもそも明確な親がいない。

 

「そんな尾獣に俺様はなってしまったんだなぁ……」

 

時は先史時代、六道仙人が十尾の魂を九つに分割し、己の中に封印した際、俺様は自我に目覚めた。

 

まだインドラ兄弟どころか忍宗すら生まれていない頃の話だ。

 

前世の人間だった頃の記憶、分割元の十尾だった頃の記憶、更に十尾と融合したカグヤの記憶。三つの異なる人格の記憶がバラバラになって混在していた俺様は目覚めて早々に発狂した、暴走と言い換えても良いかもしれない。

 

俺様は赤子とはいえ尾獣だ、そのままでは世に大災害をもたらすところであったが、そこは流石の六道仙人とハムラ、暴走する尾獣を相手にしても怪我人すら出さずにきっちりと対処してみせた。

 

ただまぁ、今にして思えばこの時の処置はかなり雑だった。なにせ封印術を強めにぶち込んではいおしまいだったのだ、六道仙人にしては雑という他ない。

 

まぁ一番初めに造った尾獣がこの有り様なのだ、内心心臓バクバクだっただろうし、さもありなんといったところだろう。

 

速やかに封印された俺様が次に目覚めたのは六道仙人の老後だった。仙人の後継者問題が解決? して、引継ぎも無事に終了し、しばらくした頃に封印を解かれたのだ。

 

理由はもちろん、仙人の没後に自立する必要がある尾獣達に様々な知恵を授ける為だ。

 

聞けば他の尾獣達もずっと眠らされていたらしい、一番槍の俺様が速攻で暴走したのだから当然の措置といえる……のかもしれない。

 

他の尾獣達からすれば完全に冤罪そのもので堪ったものではないだろうが……まぁ、悠久を生きる尾獣達からすれば数十年ぐらい誤差みたいなものだろう。

 

ともあれ、六道仙人に師事した俺様達は、言葉や文字、簡単な計算や地理を習った。小学校かな?

 

六道仙人の無駄遣いとしか言えない内容だけど、尾獣達とまともにコミュニケーションを取れるのが仙人ぐらいしかいないのだからさもありなん。

 

そうして日々を楽しく過ごしている内に、六道仙人は天に召された。まだ一週間も経っていない頃の話だ。

 

早い、早すぎるぞジジイ。さてはコイツ、ギリギリまで先延ばしにしていたな? 小学生かな?

 

まだ一般常識すら習っていないのに、唐突な別れと共に砂漠に放り出された俺様は、半開きになった口をそのままに、ぼんやりと風に打たれた。

 

◇ ◆ ◇

 

今更言うまでもないだろうが、ここは『NARUTO』の世界で、俺様は守鶴で転生者だ。

 

時代はインドラアシュラの時代、つまり原作時空から千年ほど前になる。

 

漫画の語りが正しいなら、この先忍界が産まれ、そして荒れに荒れて、最終的に俺様達は便利なチャクラ兵器として酷使される事になる訳だ。

 

「うわぁ……」

 

尾獣に寿命はない、それどころか死すら曖昧な存在だ、故に俺様達は永久に人間から扱き使われ、最後は星と共に滅びるか大筒木の養分にされるのだろう。

 

大筒木が救いになるとかちょっとあまりにもあんまり過ぎない?

 

マダラやオビトがこの世は地獄と定義付けたのも納得の酷さである、ちょっと絶望的過ぎて泣けてきた。

 

俺様達が中途半端な強さしかないというのもよくない、十尾ぐらい突き抜けた強さを持っていたら人間の手に落ちる事はまずないだろうし、逆に弱すぎたら見向きもされなくなって却って安全だっただろう。

 

その上で俺様が目指すべきは……まぁ、前者だろう。そもそも黒ゼツが十尾復活を狙っている以上、強かろうと弱かろうと戦いに巻き込まれるのは確定しているのだ。

 

柱間もマダラも、大筒木すら跳ね返せる強さがないと俺様に安寧と平和は訪れないのだ……地獄かな? 地獄だったわ……。

 

……もしかしたら、俺様は転生したと思い込んでいるだけで、これは地獄の刑罰なのかもしれない……だとしてもやる事は変わらない訳だけど。

 

◇ ◆ ◇

 

強さを追い求める上で、一番手っ取り早いのは修行だろう。

 

子供の頃、ナルトが印を結んでチャクラを練っているシーンをよく見たものだ。

 

俺様もそれに倣いたいところなんだけど……

 

「何していいかさっぱり分からないんだよなぁ……」

 

チャクラの練り方は分かる、十尾やカグヤの記憶があるし、そうでなくとも漫画やアニメで何度も出てきたのだ、流石にそれぐらいは分かる。

 

ただ、練ったチャクラの使い方が分からない。術どころか印すら知らないのだ、そもそも印ってなんなんだ? インドラが開発したらしいが指遊びで術が出来るってどういう仕組みなんだ……。

 

お陰で初歩忍術の変化すら出来ない有り様だ、俺様は砂狸なのに……。

 

でも十尾から受け継いだのか、磁遁は問題なく使えた。お陰で砂狸なのに砂を操れない……なんて事態は避ける事が出来た、ありがとう十尾……。

 

それにしても磁力で砂を操るって何なんだろうな、砂鉄ならまぁ分かるけど、砂は磁石にくっ付かないだろうに。

 

……もしかしたら、チャクラの性質変化はそれっぽい見た目になっているだけで、本物の磁力とは別物なのかもしれないな。

 

……あぁ、そもそも『性質変化』だもんな、あくまでチャクラの性質が変わっているだけで、本物になっている訳ではないのか。

 

じゃあ俺様の磁遁も、砂だけが引き寄せられる謎の引力をチャクラに持たせているだけなのか……。

 

発展させれば何かインチキ出来そうな気がするけど……まぁ、それは後々だな……。

 

一方で形状変化の方はそれ程苦労はしなかった、元々印が要らない単純な技術というのもあるけど、ナルトの螺旋丸は修行編含めて漫画でもアニメでもたっぷりやっていたのだ、それをなぞるだけで良いのだからまだ分かりやすい。

 

勿論、今は縄文時代に毛が生えたような文明レベルだし、ここは砂漠で俺様は化け物だ。ナルトが修行で使っていた水風船もゴムボールも手に入らないけど、問題はない。

 

そもそも螺旋丸の元ネタは俺様達の尾獣玉だ。原作で守鶴は尾獣玉を使っていなかったけど、俺様だって尾獣の端くれ、その気になればちゃんと使える。

 

十尾の頃から圧縮・回転を自由自在に熟していた辺り、形状変化は尾獣の得意分野なのかもしれない。

 

まぁそれはさておき、俺様なら螺旋丸もこの通り……あれ、意外と難しいな?

 

口から出すのと手から出すのでは勝手が違うのかもしれない、妙に収束の甘い螺旋丸は途中で空中分解して宙に消えてしまった。

 

……まぁ、近接戦はたぶんやらないから練習は後で良いか。砂漠に限定するなら尾獣玉はほぼ螺旋丸の上位互換だしな。

 

やっぱり伸ばすなら砂だな、なんといっても守鶴なんだし、砂狸が砂の扱い下手くそなんて笑い話にもなるまい。

 

流石にそれ一本だと行き詰まるだろうけど……まぁ、それも追々って事で……。

 

◇ ◆ ◇

 

俺様が砂漠で修行している間に、世界状勢は大きく変化した。

 

なにせ既に半世紀が経過しているのだ、半世紀といえば新生児ナルトが七代目ナルトになるよりも更に長い年月なのだ、そりゃあ世界が一新されても不思議じゃない。

 

例えば俺様の砂漠は更に荒廃して人が住めなくなった、具体的にはオアシスが枯れて水源が無くなったのだ。

 

ナルトの時代でも砂隠れはオアシスの周囲に根を張っていたし、人間はオアシスが無いと砂漠では生きていけないのだろう。

 

オアシスの周辺に生えていた集落が風の国の前身だと思っていただけに、あっさり滅んだ時には思わず目が点になったものだ。

 

一方で、俺様の修行は遅々として進歩を見せずにいた。もちろん砂の扱いはかなり上達したし、大規模な操作も出来るようになった。

 

しかし、ここまで来るのに半世紀掛かったのだ。繰り返すようだが半世紀といえば『NARUTO』が『BORUTO』になるよりも更に長い年月を指すのだ。

 

このままではあっという間に柱間が来て俺様は封印されてしまう、これはいけない、流石にのんびりし過ぎだ。

 

何が悪いといえば一人で修行しているのが良くないのだ。そもそも一人で完結するのはこの世界のタブーに等しい、インドラしかり、イタチしかり、どんな天才でも一人でやろうとすると失敗するのがこの世界の法則なのだ。

 

思い至った俺様が目を付けたのは砂漠を横切る難民達だった。

 

砂漠を熟知している俺様からすると無謀そのものな行為だが……偶にいるのだ、この砂漠に逃れてくる難民が。

 

前の俺様であれば見て見ぬ振りをして、死んだら埋葬するぐらいしかしていなかったが……事情が変わった、次に迷い込んだ者にはこちらからコミュニケーションを取ってみよう。

 

正直、尾獣や仙人以外と話すのは産まれて以来だから、想像するだけで今から緊張してきたけど、そんな事言っていたら何も進まないからな……。

 

まぁ、向こうからしても悪い事じゃない筈だ、砂漠にいても衰弱して死ぬだけだしな……。

 

◇ ◆ ◇

 

そう思い至ってから新たな難民を探しているのだが、これが全然見つからない。

 

既に死んでしまった難民なら何度か見たが……流石に死体に用事はないので軽く黙祷してから埋葬させてもらった。

 

こうなった原因は明白だ。この広い砂漠に対して、俺様の知覚領域が狭すぎるのだ。

 

元々弱っている難民が砂漠で生存出来るのは精々三日が限度だろう、天候によっては丸一日生き残れるかすら怪しいものだ。

 

対して俺様が砂漠をひと回りするのに一週間は掛かる、隈なく探索するなら一ヶ月は掛かるだろう。

 

これだけでも絶望的だが、加えて行き違いになる可能性や、難民の絶対数の少なさを加味すると、俺様と難民が出会う可能性はかなり低いと言わざるを得ない。

 

我愛羅のように砂感知が使えればまた話は変わるのだろうが、印すら知らない俺様には何をどうすれば再現出来るのかさっぱり分からないのだ。

 

煮詰まった俺様は作戦を変える事にした。俺様が見つけるのではなく、向こうから来てもらうのだ。

 

具体的には定点で狼煙を上げ続ける、流石に全域をカバーする程ではないだろうが、遮蔽物のない砂漠では狼煙はかなり遠くまで届くはずだ。

 

正直、このやり方は使いたくなかった、うちは一族のような俺様を討伐可能な勢力に目を付けられたくなかったのだ。

 

だが、ある程度はリスクを許容しないと本当に何も進まない、それぐらいこの砂漠は広かった。

 

ところで、資源の乏しい砂漠で狼煙を上げるにはどうすれば良いだろうか。

 

人によって答えは違うだろうが、俺様は遠出して森から木を引き抜く事で解決した。

 

半世紀も砂を弄り倒していたのだ、木を百本単位で引き抜いて砂漠に持ち帰るなど造作もない事だ。

 

◇ ◆ ◇

 

待ちの姿勢に入ってから一週間、ついに俺様の元に難民が来てくれた。

 

全身傷だらけの男と、擦り傷だらけの妊婦の二人組だ。

 

瀕死の癖に俺様を見るなりチャクラを荒立てる男と、決意の籠った瞳でこちらを睨みつけてくる女に対して、俺様は歓喜した。

 

何せまだ生きているし、どう見ても忍宗使いだ。

 

やっぱり狼煙をあげて正解だった、広大な砂漠を走り回るなんて馬鹿のやる事だ。

 

「落ち着け……そうだな、まずは水でも飲んで話をしよう……」

 

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