私立鳳凰学園けったいな名前だがここは少し偏差値が高い程度の高校だ。
別にお嬢様がいる学校でも名門貴族がいるわけでも、芸能人がいるわけでもない。
しかし、ここには一人だけ周辺の学生、教師、その親を含めて知られている生徒が一人在籍している。
容姿はクラスで3番目ぐらい、テストの点数は高いが運動は苦手そんなありきたりな少女だが、彼女はその他の生徒から尊敬の眼差しを受けていた。そう、彼女こそ警察でさえ手こずっていた学校で起きた事件をたった1日で解決して見せた高校生。
すなわち、「名探偵」である。
「・・・春野さんこちらの問題をといてください。」
「・・・はい。」
視線が痛い。この解けて当然とでも言うようなプレッシャーが痛い。別に私、学年1の優等生じゃないですから。
「はい。よくできました。」
こういうのはさくっと解くのが正解だ。その方が遙かに苦痛が少なくて済む。
私は頭の良い体に産んでくれた両親に感謝しつつ席に着いた。
「さっすが『名探偵』!」
「ヒュー♪」
止めてくれ。これをやられる度に私の胃は痛くなるのだ。
まあ、これのおかげで勉強しなくてはならなくなって成績は向上したのだが、精神的苦痛はもうすでに私の胃を冒し始めている。胃薬持ち歩く女子高生は私ぐらいじゃ無いだろうか?将来、私の胃には穴でも開いてしまうのだろうか。
「先生!名探偵にはこんな問題は簡単すぎるのでもっと難しい問題が欲しいらしいですよー。」
おい。
「久美さん。私語厳禁です。・・・ですが、もしそう春野さんが感じるのでしたら後で職員室に来て下さい。良い問題集を紹介します。」
おい、こら、止めろ。私は今でもう精一杯だ。表情の変化が薄いからって余裕そうに見えるかもしれないが、私の胃はもう痛み始めてるぞ。
「さっすが、春野さん!」
「あの古賀先生からも特別扱いしてもらえるなんて本当に中々ないよ。」
いらないよ。そんな特別待遇うれしくないよ。それってあれでしょ。私が指名されて解かされることになるんでしょ。止めてよ。放っといてよ。胃痛で私を殺す気か。
「さすが名探偵。なんでこんな高校にいるのやら。」
「本当にな~。」
普通だからだよ。普通の頭脳で普通に生きてきたからだよ。あんたらとそこまで頭の差はないよ。あ~私の青春はいったいどこへ行ってしまったのか。
「もう時間ですね。本日はここまで予習と復習を忘れずに。」
先生、私はもう胃が痛すぎて明日には胃に穴が開いてます。だからどうかもうこれ以上は・・・。
「春野さん。」
「・・・はい?」
「お待ちしてます。」
・・・終わった。
この日、春野桜はトイレに5回駆け込んだ。
◆◆◆
「へえ。あの人が。」
「そうだよ。あの人が去年の3月、突然失踪した同級生の謎を解明してこの学校の伝説になった春野桜先輩。」
「俺あの人があんま凄そうに見えないんだけど。」
「はあ、分ってないなあ。あの人は失踪事件を1日で解明したんだぜ。」
「そんなことあるか?普通そういうのは警察が解決するもんだろ。アニメじゃあるまいし。」
「いいか。これは先輩から聞いた話なんだがな。警察は動いていたんだ、他にも学校の先生、自治体、その友達だった人達も動いていたんだ。」
「んだよ。じゃあ、あの先輩がその失踪した先輩を見つけたってことか?」
「ああ、見つけたには見つけたんだがなあ。そのやり方が凄かったんだ。」
「なんだ?超能力でも使ったのか?」
「違う違う。全校生徒のいる前で推理ショーをやったんだ。それも警察やら親御さんがいる前で。」
「はあ!?まじでアニメじゃねえか!?」
「まじのまじ。ほら、これ見ろよ。」
そこには体育館の壇上に立ち一人の少女が警察と生徒の前で何かの話をしている様子が撮られていた。
「マジかー。じゃあ高校生探偵ってことか?」
「ああ。だからあの人はこう言われてるんだよ。『鳳凰学園の名探偵』て」
「すげえー。」
こうして彼女のことは次の世代にも広がっていく。彼女の胃が犠牲になっているとはつゆしらずに。願わくばこのことが彼女に知られないことを祈っt
「春野先輩!あなたの伝説広げておきましたーー!」
「・・・もう、殺して。」
彼女の胃はこの日最高の痛みをもたらした。
頑張れ春野!