普通の定義とは何か?
勉強で言えば偏差値50
運動で言えば平均値
普通の高校生とは何か?
私が思うにそれは、ある程度の後悔をして、ある程度の成功をして、恋をして、失恋をしてと、そういうたくさんの思いを経験する3年間を過ごす者達だ。だからこそ、みんなが恋い焦がれる青い春。
「そんな青春を私は・・・」
先生から新しく授与された問題集をうんうん悩みながら一人寂しく教室で問題を解く。そんなガリ勉ルートを私は進んでいた。
憧れた青春とはほど遠い悲しき孤独の獣、探偵という栄誉を与えられると同時に友人を失った私は今日も勉強に時間を割くしかないのだ。運動が苦手な私は文科部に入っていたが探偵と呼ばれた始めたことにより居づらいし正に私はぼっちちゃんだ。
「どうして私は・・・。」
後悔が押しよせる。絶望が押しよせる。それ以上に明日間違い無く当てられる問題集の難しさに胃痛がやってくる。
「く~~~。」
もう、泣き言はいえない。これ以上は心がもたない。成せばなるのだ。母さんも言ってた!
「・・・お疲れ様です。名探偵。www」
急に横に現れた青年は、なんと言うことか。助手じゃないか。
「止めてください。夏樹。」
夏樹は私の助手という謎ポジに収まる男なのだ。
「別に良いじゃないですか。俺は助手ですよ?」
だが、彼には友人も部活動の仲間も居て孤独とは縁遠く、青春を生きるまさに私の焦がれる生活を謳歌しているのだ。そして私を探偵へと担ぎ上げた張本人である。
「元はといえば夏樹が・・・。」
「桜も同意してただろ?それにあのままだったら後何人か死人が出る可能性があったんだ。仕方ないだろ。」
あれ?でもこいつ今の私の状況の黒幕じゃね?
「それは・・・そうだけど。」
「それにあの事件の謎を解いて、事件を解決したのは桜だ。誇れよ。」
「夏樹も解けていたくせに。」
「解けてねえって。ていうかあれを一日で解けるのは古今東西お前だけだよ。」
「言い過ぎですよ。そもそもあれはたまたまです。」
「へえ、警察も自治体も教師もさじを投げていた事件を、解けたその日に警察の協力を取り付けて、容疑者を誘導尋問して自白させるのが、たまたまねえ。」
「・・・そうですよ。たまたま。」
「ついでに力仕事全部俺に押しつけて、俺は助手兼、『探偵のパシリ』の二つ名を獲得したのも、たまたま?」
「そ、そうですよ!たまたま、たまたま!」
「・・・まあ、いいだろう。この件は俺の心を犠牲にするだけだ。」
私もこいつも、そろって事件によって学校生活が大きく変化した。事件を解決したのはそうするべきだと決めてやったことだ。だが、こんな事になるなど私もあいつも思いもしなかったのだ。
「それにしても誰も思いもしないだろうなあ。お前の耳が特別だって。」
「耳が良くて良いことなんてほとんどありませんよ。」
「でも、事件を解決できた。」
「あれは完全にたまたまです。たまたま、私がいた場所でその事件の話をしていた生徒がいて、それが犯人だった。そういう運が重なっただけです。あの場に他の耳がいい人がいたらその人は事件すら防いでいたかもしれません。」
「誰も思わねえだろ。殺すって言って本当に殺すなんてよ。」
探偵春野桜がしたことはただ、知っている内容をただ推理ショーぽくしただけだ。こんなもの頭が悪くても誰でも出来る。ただの三文芝居だ。
「まあ、お互い頑張ろうぜ!」
「はあーー。で要件はそれだけですか?」
「いいや。お前があの古賀に気に入られて特別待遇されてるって聞いたからな。笑いにきた♪」
確信犯だった。私はなにかがブツリと切れる音を聞くと同時に殴りかかった。
悲しいかな。運動クソ雑魚探偵の拳は、運動大好き助手によって軽く躱されるのだ。私はこの友人を笑うためだけに教室にやってきた怨敵に必ずや鉄槌を下すべくこの身の力の全てを込めた。そう、例えこの先にあるのが運動神経というどうしようもない壁であったとしても。
これが普通な私の日常なのだとは断じて認めないのだ。
◆◆◆
(side 葉月夏樹)
もし、彼女が自分のことを普通というのなら、俺は普通を信じられない。
彼女の第一印象は、言うならばちょっと可愛い女の子だるか。別に高嶺の花という程ではないが、なんとなく声がかけずらい雰囲気をしていた。たまに声を掛ける女の子がいたが、すぐに声を掛けるのを止める。彼女は少しずつ孤立化していったのだ。声を掛けた女の子曰く、話が合わないらしい。
そんな彼女は放課後図書室で本好きの友達と一緒に本を読んでいるようあった。何でも文学部に所属しているらしい。運動一辺倒の俺とは縁の無い話しだ。成る程、そっち系の女子かあ。と、当時の俺は納得をしていたが・・・。
彼女は今俺を殴りに来ている。
「避けんなー!ゴラー!」
右ストレート、そこからの回し蹴りまるでキックボクサーのような派手な攻撃にさすがに俺は命の危うさを感じている。煽った手前、反撃するのも大人げない。だからといってこのまま暴れ続ければ「名探偵」が「武闘派探偵」になってしまうかもしれない。おお、なんとクラスチェンジまで狙えるとはすげえなこいつ。
「全部聞こえてんだよ!何が武闘派探偵だー!そして完璧に捌くなー!」
うん。見事な右ストレート。もしかしたらこいつは世界を狙えるか?
「これは、あんたをぶちのめすために鍛えた拳だー!」
拳と言いながらハイキックまでかます探偵。やはり間違いない。こいつ、ついにやりやがった。
「はあ、はあ、はあ。」
いや、やはりそうでもないな。普通にしょぼいし体力ゴミだし、うん。落第。
「ちくしょーーー!」
名探偵 春野桜ができたのは負け犬の遠吠えをあげることだけだった。
「もういい!お前の二つ名は今日から『探偵の腰巾着』として広げてやる!もう、お前にはただの人としての人権は無くなるぞ!」
何を言うかと思えばその程度か。腰巾着なんて優しい優しい。俺はもうお前の助手になったせいで雑用をやらされることが増えたんだぞ。「助手」だから。
「ふん!いい気味だ!」
というか、お前そんな事広げられる人脈あるの?友達いるの?
「ぐふう!!」
すまない。致命傷だったか。哀れな。まあ、成仏してくれ。お前さんは人を助けたんだから天国にいけるだろうよ。
「青春もせずに死んでたまるかあ!」
青春は戻らない。とはよく大人は言うが確かにそうだろう。だが実際、青春を叶えて学生生活を終える者とはどれぐらいいるのだろうか?それに青春なんてそれほど特別なものじゃない気がするんだが。人それぞれの青春があってしかるべきだ。
春野桜の青春は間違い無く奇想天外なものになるんだろうと俺は思う。そしてこいつは知らないのだろう。多くの生徒はお前のような特別な存在に憧れているのだと。
名探偵は普通の生徒に憧れて、普通の生徒は名探偵に憧れる。隣の芝生は青いとは正にこのことだろう。
まあ、こんな面白いことに巻き込んでくれて俺はうれしかったんだぜ!
「知ってるか?うちの名探偵。」
「知ってるに決まってるだろ。春野さんだろ。」
「ああ。あの人、実は喧嘩もめっちゃ強いんだってよ。」
「マジかよ!さすが探偵。でもあの人そんなに運動神経良いなんて聞いたことねえよ?」
「ほれ。これ証拠。」
「うお!まじだ。すげえー。」
一枚の写真と共に探偵の新たな噂は拡散を始めた。
噂を広げるための人脈と友人をどこかの愉快犯は持っていたらしい。
「おのれ!!くそ助手ーーーーー!!」
なお探偵は秒でその相手を突き止めたとか。
葉月夏樹は勝ち組だった。