閃光瞬く剣の世界【SAO-XD】   作:神矢レイラ

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東京の一角に一人住む青年、残光晴輝。
昔馴染みの明日奈に呼ばれ、変わらぬ日常に目を覚ます。

【No account】


プロローグ【介入者(イントルーダー)
第2話【起床=残光晴輝という男】


 普段目にしていたものとはまったく異なる、映画とでも言われた方が現実味のある異様な光景。

頭がその内容を追う前に、一つの声に引き留められる。

 

「――ねぇ、起きて。

起きてってば!」

 

 瞬間、混濁としていた意識が現実へと引き戻される。

日付は二千二十二年、十一月の四日。

時刻は午前七時。

瞼を開き、己の名を呼ぶ声の主を確認する。

 

 真っ先に映る栗色のロングヘアに、愛らしさを帯びた榛色の瞳。

シンプルだが品のある制服に身を包んだその少女は、正しく‘お嬢様’と言うような風貌だ。

 

明日奈(あすな)、どうしてうちに?」

 

 寝ぼけながらもハッキリと、彼女の名前を呼ぶ。

それに対して明日奈は、微笑みを返した。

 

「起こしに来てあげたのよ。

近所だし登校するついでにね」

 

「それにしては随分早ェな。

何か用事でもあるのか?」

 

 慣れた会話を展開しつつ、我が身をゆっくりと引っ張る。

起き上がった時にはほとんど眼は冴えていて、脳も現実仕様に切り替わっていた。

 

 一週間も前から続き、何度も強烈な印象を与え続ける‘あの夢’。

今回は見ることこそ叶わなかったが、どのような内容かは簡単に思い出せる。

その中で俺は、一人の少年に憑依し(なっ)ていた。

 

 摩訶不思議な話だが、今その件は良いだろう。

これまでのものと、今朝に見た夢の一切を明確に区別し、割り切るべく、己がいかなる存在かを、今一度認識する。

 

「別に用ってほどでもないけど、朝ごはんでも作ってあげようかなって。

どうせ晴輝(はるき)さんのことだから、あんまり栄養取れてないだろうし」

 

 そう、晴輝だ。

俺は晴輝、姓は残光。

二千年の八月十五日生まれの二十二歳、残光晴輝(ざんこうはるき)だ。

東京都世田谷区宮坂のとある一角に一人住む、なんてことのないごく普通の男。

少なくとも先週まではそうだった。

 

 そんな俺に軽い罵倒とも心配とも取れる言葉を投げてきたのは、結城明日奈(ゆうきあすな)

 

総合電子機器メーカーとして知られる大企業【レクト】のCEOの実子で、要するに外見通りの良いところのお嬢様。

 

 この娘が五歳だった頃から個人的な付き合いがあり、それが今日まで続いた結果、歳の離れた幼馴染みや親戚のお兄さんのように、遠慮のない間柄にまでなった。

実兄の浩一郎さんには悪いが、少しチャランポランな兄貴分として接させてもらっている。

 

 その明日奈はすでに、十五歳となってから約一月。

いつからか家にまで押しかけては、こうして世話を焼いてくれるようになった。

良い大人が情けないし申し訳ない気持ちでいっぱいなのだが、彼女に渡したスペアキーこそが、可愛い妹分に甘えてしまっている証左となっている。

 

 ちなみに余談だが、彼女の父親こと結城彰三氏の会社こそ、俺の職場だったりする。

 

 思考を巡らすのもこの辺りにして、会話のキャッチボールをするとしようか。

まだ球を握ったままだった。

 

「失敬な、そのぐらいちゃんとしてるぜ?」

 

「ふぅん、ならプランプちゃんのお世話は?

あの子たくさん食べるから、自分の食費減らしてでも面倒見てそうなものだけど」

 

「さすがにねェよ。

……って言えれば良かったんだが、残念ながら図星なんだわ」

 

 弁明したかったが、容易く折れた。

プランプとはその名の通り、まん丸とした愛らしい見た目が特徴の、我が家の守り神だ。

 

 ある日明日奈が出した提案により、一人しか住人のいなかったこの場所に舞い降りた愛猫なのだが、一般的な猫たちと比べて本当に良く食べる。

 

 そのおかげで、自身の腹を満たすものを減らさなければならない時があるのは、ご愛嬌というものだ。

食べる量が減るのは辛いが、あの子が笑ってくれるなら正直安い。

 

「はぁ、やっぱり来て正解だったみたい。

すぐ作っちゃうから、その間に着替えて降りてきてね」

 

「おぅ、悪ぃな」

 

 時々明日奈がやって来ては、何気ない軽口を叩き合う。

これが普段の日常風景だ。

こんな調子ではどちらが歳上か判らなくなるが、もうすぐこの娘は高校生。

楽しくも慣れ親しんだ時間ともお別れすることになるだろう。

 

 せめてその間だけでも、と。

噛みしめるように彼女の背中を見送った。

木製の扉が軽く当たる音が鳴り、数秒の後に我が身を布団から引きずり出す。

 

「じゃあ、とっとと準備しますか。

つってもスーツにネクタイ着けりゃ良いだけなんだが」

 

 声に出した通りの内容物を、レトロモダン風のクローゼットから取り出す。

学生時代はこれを着る際もたついていたが、すでに社会人となった今では慣れたものだ。

 

 

 

 

 立て掛けられた縦長の鏡を前に、無難なデザインのネクタイを手早く結んでいく。

眼前に映る姿は、僅かに赤みを帯びた独特の黒髪を小さく跳ねさせ、墨のように濃い色の瞳をした、身長180cmの男。

目に優しい紺色のスーツを身にまとう、残光晴輝の仕事用の装いだ。

 

「うし、あとはカバンと……

アレだな」

 

 壁沿いに置いてあるビジネスバッグを拾い、直後に机の上にある封筒を掬い上げて収納する。

必要なものは事前にこの中へと入れておいた。

これでもういつ出発しても大丈夫な状態だ。

朝食を食べていないことを除けば、だが。

 

「さてさて、今回はいったいどんなものを用意してくれるのやら。

まぁ大した食材は買ってないはずだから、割りと検討はつくんだが」

 

 なんてことを言っているうちに、下から鼻腔をくすぐる香りが漂ってきた。

察するに、【朝の定番と言えば】みたいなメニューだろうか。

その正体をいち早く確認すべく、自室をあとにした。

 

 俺が明日奈の厚意に甘えている理由の半分近くは、ズバリ料理である。

彼女は超大手のご令嬢ながら、そこらの天才シェフよりも腕が立つ。

 

 我ながら高評価すぎるとは思うが、実際そのぐらい美味しいメニューをいつも作ってくれる。

毎日食べられるワケではないが、本人曰く『ただの趣味レベル』なのだから驚きだ。

 

 L字状の階段を降りてすぐのところにある扉を開き、その実態を確かめた。

瞬間、俺は目を見開き、同時に輝かせることになる。

 

 白米に味噌汁、焼き魚に卵焼き。

ザ・基本中の基本。

朝食の代表的なメニュー、それ以上でもそれ以下でもない。

だが、それ故にシンプルイズベスト。

 

炊き立てに出来立て、最高の焼き加減の品が次々テーブルの上へと運ばれていく。

 

「おぉ……」

 

「ふふっ、相変わらず子どもみたいな反応。

晴輝さんって、そういうところ大人っぽくないよね」

 

「別に今更だろ、それを許容してんのは他でもないお前さんなんだし」

 

「だって可愛いじゃない、そう言うの」

 

 何でも言い合える距離感だからこそ、と言うべきか。

母と子のような会話を繰り広げながら、そそくさと席に着く。

まぁ、実際の年齢は真逆なのだが。

それに『何でも言い合える』というのも、最近に限っては自信が持てない。

 

「みゃん」

 

「おっ」

 

 ふと足元を見ると、そこにはプランプがいた。

チョコクリームのような薄茶色の身体を丸め、こちらを見上げるつぶらな瞳は、地上に間違って降りてきてしまった天使と言って差し支えない。

そんな愛猫だが、珍しく口元が汚れていた。

 

「おはようプランプ。

まさか、もう食べたのか?」

 

 プランプを抱き上げ、傷物を扱うようにして優しく撫でる。

俺の問いに答えたのはこの子ではなく、代わりに朝ごはんを提供したであろう人物だった。

 

「晴輝さん、ぐっすり寝てたからまだだろうと思ってね。

晴輝さんもちゃちゃっと食べちゃって。

もうすぐ仕事なんだから」

 

 俺の胸からプランプを掬い上げながら、明日奈が微笑む。

なんでも食べる我が愛猫のことだ、きっとこうしなければ瞳を輝かせて目の前の料理にがっついたに違いない。

 

 だが今はそんなことより、

 

「この世の食材すべてに感謝を込めて、いただきます!」

 

「どんな言い方よ」

 

 明日奈がツッコむよりも先に、俺の口内に米が放り込まれていた。

刹那のうちに四分の一が消え、湯気を昇らせていた味噌汁は具材ごと吸われ、あらゆる食材が腹の中へと移っていく。

 

 それほど美味すぎるのだ。

我が妹分の作るご飯は、どうしてここまで箸を止めてくれないのか。

まさかこの娘は、この世には存在しないとされたはずの魔法使いではなかろうか。

 

 大袈裟だと思うだろう、俺もそう思う。

でも思考よりも早く断言するほどなのだから仕方ない。

何せ普段から『毎日食べたい』と渇望するほど待ち焦がれていたものなのだから。

プランプには悪いが、独り占めしたい。

 

 

 

 

「ご馳走様でしたッ……!」

 

 あっという間に食事を終え、皿の上には魚の骨と使い終わった箸が乗るのみ。

砂漠で半日かけてオアシスを見つけた旅人のような喜びを込めて、その言葉を吐き出した。

 

「お粗末様でした。

満足してくれたみたいで良かった」

 

「そりゃ満足するさ、それどころか大・大・大満足だよ。

こんなことなら、もっと食材買い溜めとくんだったぜ」

 

「はいはい、リクエストお待ちしてます」

 

 気持ちがいいほどの満面の笑みで、天才超えの料理人がそう言う。

その様にはプランプも、小さな前足で拍手をしていた。

 

 そんな明日奈だが、食事を始めた時から今に至るまで、こちらをずっと笑顔で見ていた。

まるで何かを期待するかのように。

 

「んで明日奈よ。

わざわざ俺が食べ終わるのを待ってたってこたぁ、車か?」

 

「察しが良いわね。

どうせ通り道だし、交換条件ってことで」

 

「まぁ、だろうとは思ったよ。

こういう時のお前さんは、判りやすくて助かる」

 

 この娘が朝食を作りに来る時は、決まって俺が車を走らせる。

送り先は当然、彼女の通う【私立エテルナ女子学院】。

初等科から高等科までエスカレーター式の、歴史ある女子校だ。

そこには明日奈の親友である兎沢深澄(とざわみすみ)(俺は深澄ちゃんと呼んでいる)という少女も在籍している。

 

 手早く食器を水につけ、高くも低くもない微妙な位置の時計を見る。

大人気なくがっついて食べたおかげだろうか、思ったよりも時間があった。

これなら学校はもちろん、職場にだってギリギリだが間に合う。

なんならついでに寄り道しても大丈夫かもしれない。

 

「そんじゃあ、行くとしますか。

忘れモンとかねぇか?」

 

「抜かり無しよ。

戸締りはこっちでしておくから、車の準備お願い」

 

「あいよ。

プランプ、行ってくるから、いつも通り留守番お願いな」

 

 玄関まで見送りに来てくれたプランプの頭を撫で、早朝の風を顔面に受ける。

もうすぐ年が明けるということもあって、冷水のように肌寒い。

少しずつ、それでいて確実に全身へと張り付いて来るこの冷たさは、これから年末にかけてまだレベルを上げていくのだから恐ろしい。

 

 

 

 

 そんなことを考えつつ、脇に止めてある愛車の運転席へと腰掛ける。

やや小振りながらもスマートな、昔ながらの青い中古車。

 

 コイツとは二十歳の時からの短い付き合いだが、年期に反して現役並みの走りを見せてくれる。

ゴーサインが出てからというものの、大学時代は毎日お世話になっていた。

まぁ今でも出勤の際に利用しているのだが。

 

「お待たせ」

 

 振り返っているうちに、相席に可愛い妹分が入ってきた。

シートベルトの音を聞くとともにエンジンをかけ、相棒が目を覚ます。

 

「今言うのもアレだが、道すがら用事を済ましても良いか?

手紙をポストに入れたくてよ」

 

「別に構わないけど、もしかして‘例のあの娘’宛に?」

 

「あぁ。

生まれながらに重い病気を抱えちまった娘でな、去年入院が決まったらしい。

ある筋で偶然知っただけだが、それ以来気にかけちまってな」

 

 我が家から愛車を走らせ、安全運転をしながら口を動かす。

直前まで青だった信号が赤くなるかどうかというところで、明日奈がこんなことを聞いてきた。

 

「二年くらい前から何かしてることは気づいてたけど、まさかその時から手紙を?」

 

「まぁな。

ほんの出来心で送った一通から始まった、文面だけでのやり取り……

初めての返信で、あの娘がまだ小学生だってことを知っちまったんだ」

 

「えっ、まさかその娘ってまだ!」

 

「十か十一、それぐらいだろうな。

まともに卒業出来ねぇまま病院生活を強いられるってのは、尋常じゃなく辛いはずだ。

それで俺は、ちょくちょく筆を取ることにしたのさ。

ま、月一で送れれば良い方だがな」

 

 ちなみにだが、その少女から返ってくる手紙は途中からすべて代筆である。

文章からある程度事情を聞いてこそいるが、彼女が患ってしまったのはそれほど重い病気なのだ。

その頃から目にするようになった、大人が書いたであろう綺麗な文字は、いつ見ても辛いものがあった。

‘あの娘’は今、自分で返事を書くことも出来ないのだ。

 

「……それでも、晴輝さんは優しいよ。

見ず知らずの娘のためにそこまで出来るんだし」

 

「理由はたった一つ。

心を込めて書いた文章は、下手な言葉よりも勝る。

声はかけてやれないが、文字ならずっと残り続けるからな。

それを実物としてずっと傍におけるなら、これ以上の励ましはないだろ?」

 

 ネットワークが普及した現代だからこそ、直筆の重みというのは格別なのだと俺は思う。

だからといって、別に恩を売ろうだとか、自惚れているというワケではない。

自分に出来るささやかな手助け。

その程度だ。

 

「うん。

少しでも良くなるといいね、その娘」

 

「だな」

 

 途中でポストを発見したので会話を中断し、車を止める。

カバンから取り出した封筒をさっさと投函し、一分としないうちに運転席へと戻った。

 

「小耳に挟んだ程度だが、フルダイブ技術が医療に転用されるかもしれないらしい」

 

 再びハンドルを握り、周囲の走行車や通行人に気を配りつつ口を動かす。

 

「フルダイブと言えば、ナーヴギアよね」

 

「そうだ。

量子物理学者かつゲームデザイナー、茅場晶彦が開発した、仮想世界(バーチャル)へのフルダイブ技術。

そしてそれを実現するマシン、ナーヴギア。

向こうにいるアバターに入っている間、現実(リアル)の身体は何を感じることもない。

それを患者に用いれば、麻酔なしで手術が進められるんじゃあないかって説だな」

 

「確かに、本人の精神は仮想空間(あっち)にいるんだもんね。

医療用フルダイブ機器、そんなものが実現するとしたら……」

 

「……あの娘も、少しは楽になるかもしれねェな」

 

 まだ遠い先であろう未来に想いを馳せながら、長いようで短い道を走る。

俺自身、ほんの偶然聞いただけに過ぎないので、どこまで本当かは定かではない。

だが本当にナーヴギアのような機械がこの先増えて、あらゆる分野に役立つのなら、世界はもっと発展していくことになるだろう。

 

 それはもちろん、医療関係にも。

この先フルダイブ技術が毒となるか薬となるか判らないが、少なくとも希望となるのなら、病院に籠もりきりのあの少女にも、少しは生きる楽しみが出来るのか。

偶に返ってくる文章でしか彼女の気持ちを知ることの出来ない俺には、到底推し量れない。

 

 お通夜ムード一歩手前にまでなりかけたが、いつまでもこんな調子ではお互い駄目だろう。

何か話題はないかと思考を巡らせ、ふとここにいないゲーム好きの女の子の姿が頭に浮かんだ。

 

「そういや明日奈、深澄ちゃんとはどうよ?

最近俺が会えてねェってのもあるが、ちょっと気になってさ」

 

「あんまり変わりないよ。

強いて言えば、晴輝さんと会えなくてヤキモキしてるぐらい。

また一緒にゲームでもしたいのかな」

 

「まぁどうせ今日も会うだろうし、『言ってくれれば予定空けるよ』って伝えといてくれや。

少なくとも明日は休みだしよ」

 

 深澄ちゃんとは、明日奈を通して親しくなった。

最初こそは歳の差と性別の壁もあって距離があったが、ある時期を境にちょっとずつだが気安い態度を見せてくれるようになった。

 

 クールそうな娘というのが第一印象だっただけに、ここまで懐かれるとはまるで思っていなかった。

いざ蓋を開けてみれば、年相応の女の子。

それと大人の男性である自分がまさか、気の合う友だちにまでなろうとは。

病気の少女に手紙を書き始めた少しあとぐらいに知り合っただけに、ペースがあまりにも早すぎると言わざるを得ない。

 

 一定の線引きはしていた、だが深澄ちゃんの方からどんどん距離を詰めてきたのだ。

別にあの娘のせいにするワケではないが、世間の目が気になるところではある。

一応保護者としての自覚を手綱に、今も己を律してはいるが。

 

 

 

 

 何気ない会話をしているうちに、校舎の付近までたどり着いた。

他の生徒たちの目に触れない裏道に車を止め、左右のフロントドアがほぼ同時に開かれる。

 

「ありがとう晴輝さん、おかげでだいぶ早く着いちゃった」

 

「良いってことよ。

じゃあ今日も頑張って来いよ学生」

 

「そっちもね。

くれぐれも遅れないように、社会人さん」

 

 もう何度と繰り返したやり取りをして、ゆっくりと歩いていく背中を見送る。

数歩ほど離れたところで再び愛車に乗り込もうとしたのだが、その時明日奈が急に身を翻した。

 

「そうだ晴輝さん。

クリスマスの予定、ちゃんと空けておいてね。

お兄ちゃんや深澄と一緒に行くから!」

 

「はいはい、判ったから、とっとと行ってきな」

 

「うん!」

 

 満足そうに去っていく明日奈を俺は笑顔で見送った。

学生二人はともかく、浩一郎さんと自分はちゃんと休みを取れるのか。

我が社の未来を想いながら祈るしかない。

 

 今度こそ愛車に戻ろうと振り返ろうとしたその時、明日奈と入れ替わりで一人の女の子が姿を現した。

とは言っても、向かい側から歩いて来ただけだが。

 

 見た感じ歳は明日奈と同じぐらいだろうか、彼女よりは少し身長は低いか。

短めの焦げ茶色髪に、頬にそばかすのある童顔と。

着ているピンク色のカーディガンも相まって可愛らしい印象を与えるのに、表情はかなり沈んでいるようだった。

 

「悪ぃな嬢ちゃん、車邪魔だろ?

すぐにどかすよ」

 

 気安く、同時に癇に障らない程度のトーンでそう言う。

 

「大丈夫よ、普通に通れるから」

 

 だが彼女は、ほとんど感情の籠もっていない声で返してきた。

 

「生憎だが俺もちょっと急ぎでね。

君がいなくなるのを待ってたら、仕事に遅れるかもしれない。

それで納得しちゃあくれねェか?」

 

「……そう、判った」

 

 一応は飲み込んでもらったところで、俺はようやく運転席へと着くことが出来た。

もう一度我が相棒に命を吹き込み、すぐにでも発進出来るようにする。

 

「そうだ、嬢ちゃん」

 

 フロントドアガラスを降ろし、ひょこっと顔を覗かせる。

当然だが女の子は、それに対して驚いていた。

どうせこの瞬間限りの関係だと、俺は構わず言葉を投げる。

 

「何があったか知らんが、少しは元気出しな。

せっかく可愛い顔してんだから、笑わなきゃ損だぜ!」

 

「ぁ……」

 

 彼女の身体がピクッと動いたような気がしたが、それに気付いた時にはすでに車は動き出していた。

 

「待って!」

 

 その言葉を聞くことはなく、例の夢のことについて考えながら、俺は一人会社への道を走り出すのだった。

 

END




あとがき

プランプ
「みんなー、プランプだよ!
閃光瞬く剣の世界【SAO-XD】、第2話を最後まで読んでくれてありがと~!

……え、なんで僕がしゃべってるんだって?
まぁ、細かいことは良いんだよ!
あとがきの時は僕がしゃべるの、そう言う料理を食べたの、ってことにしといて!

まぁ、そう言うことで。
今後あとがきでは、僕がその回にあった色んなことを語っていくよ!
今回は挨拶だけだから、ここまで。
みんな、また次回も見てね!

次回、【日常=ありふれた時間】」
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