閃光瞬く剣の世界【SAO-XD】   作:神矢レイラ

8 / 8
己の運命を悟り、行動を起こそうとする晴輝。
その前に、ある少女へとコンタクトを取る。

【No Account】

気が付けば1年以上も放置してしまっていました……本当に申し訳ありません!
ここから少しずつ再開、更新していきます。
これからも本作品をよろしくお願いします!
今回、ようやくリンク・スタートです!


第8話【勇気=進む先にあるもの】

 本来あってはならない存在。

刻まれるはずのない時間。

交わされること自体があり得ない会話。

人生のすべてが、そうだった。

俺は今、想定外の上に立っている。

それでも今、生きて感じている。

あらゆるものを受け入れる、この世界を。

 

 

 

「えっと、もしもし。

……聞こえてますか?」

 

「あぁ、ちゃんと聞こえてるよ。

あんまり固くならないで、好きに話してごらん」

 

 ちょうどプランプへのご飯を用意し終わり、自分用の軽食を作ろうとした時、そっと耳を打った幼い声。

鈴の音のような心地よさというのは、このことを言うのだろうか。

今も難病と戦い続けている女の子のものとは思えないほど、よく通るものだった。

 

「う、うん。

あの……本当に手紙のお兄さん、なんだよね?」

 

「うん、そうだよ。

はじめまして、残光晴輝です。

通話越しだけど、こうして話せて嬉しいよ。木綿季さん」

 

「こ、紺野木綿季です。

ボクも……晴輝さんとおしゃべり出来て、嬉しいな。

思ったよりもカッコいい声してるね」

 

 現在俺は、倉橋さんの端末を通じて、二年弱ほど文通をしていた相手である少女、紺野木綿季さんと話している。

声の響き方からして、こちらと同じくスピーカーをオンにしているのだろう。

彼女の状態を思えば、納得の手段と言えるか。

 

「そうかぃ?

木綿季さんだって、凄く可愛い声だ。

こりゃあきっとルックスも魅力的なんだろうな」

 

「もう、褒めても何も出ないよ?

けどそう言う晴輝さんだって、毎日モテモテなんじゃないの?」

 

 最近流行りのドラマや映画でも中々耳にしないような冗談を言えている辺り、良い感じに緊張が解れて来ているのだろう。

 

 手紙越しでやり取りをしていた仲ではあるが、実際に話すのはこれが初めてのこと。

向こうからすれば倍近く歳の離れた男性で、少なからず恐怖があったことは想像に難くない。

 

 それを思えば、手応えとしては上出来と言える。

 

「だと良かったんだがなぁ。

生憎モテモテじゃないし、好きな相手すらいないよ。

……妹みたいに可愛がってるやつならいるが」

 

 脳裏に浮かぶのは、昨日会ったばかりの少女。

本来俺が関わるはずのない、この物語にとって欠けてはならない大きな歯車。

彼女は今、運命が定めた通り仮想世界に浮かぶ浮遊城の中にいる。

 

 今頃あの娘はどうしているのだろう。

目に見えるすべてが自身の命を奪いに来る恐怖に震え、それでも僅かな可能性を求めて戦っているだろうか。

ベータテストにおいて、トップ層をひた走り続けた、彼女の親友が傍にいてくれれば心強いのだが。

 

 いずれにせよ、過酷な状況には違いない。

可愛い妹分のことを想うだけで、声色が重くなる。

突如として現れた絶望と向き合い、未来へ進もうとする明日奈を。

 

「何それ、だから声かけられないんじゃないの?」

 

「失敬な、いつまでも引っ付いてるワケじゃないぞ?

れっきとした大人だからな」

 

「自分で言っちゃうの、それ?

ふふふ、やっぱり晴輝さんなんだなぁ」

 

 彼女もまた自分の運命と戦う者の一人。

物心つく前から治る保証のない病魔を抱えて生きることを余儀なくされ、いつ永遠に眠ってしまうのか判らない。

 

 もしかしたら、次の朝は迎えられないかもしれない。

常人ならきっと、恐怖のあまり自暴自棄になってしまうだろう。

それほど辛く、目を背けたくなるような現実だ。

 

 にも関わらず彼女は必死に笑い、最後の時間となるかもしれない毎日を、一つ一つ瞬間を大事に生きている。

内心では怖がっていても不思議ではない。

もっと好きなことをして、思い通りの人生を歩みたかったはずだ。

 

 それでもこの子は、決して弱音を見せない。

 

 正直凄いと思う。お世辞でもなんでもなく、本心から彼女を尊敬している。

だからこそ一切の曇りなく笑っていて欲しいし、楽しく生き続けて欲しいと願う。

この子の声を聞いて、その気持ちはより強くなった。

 

「さっきも言ったが、あんま畏まらなくて大丈夫だよ。

話しやすいように喋ってくれて良いからな」

 

「じゃあ、ボクのことはユウキって呼んで。

ボクもハルにぃって呼ぶから」

 

 短時間でかなり砕けたものだ。

つい溢れてしまった笑みを隠すよりも早く、弾んだ声が飛び出す。

 

「オッケー。ならユウキ、最近体調はどうだ?

つっても、一昨日送った手紙にも書いたんだが」

 

「うん、今は落ち着いてるよ。

けど良くなったわけじゃないから、出来るだけ安静にしてないといけないけどね」

 

 その声音は明るいのに、鼓膜に伝わる感情はどこか暗かった。

理由なんて言われなくても判る。わざわざ言うつもりもない。

この刹那を、彼女は生きている。

暗い話題なんて出したくない。

 

「頑張れるさ、ユウキなら。

今までだって、必死に病気と向き合って来た。

だからこうして俺とも話せてるんだろ」

 

「……うん、そうだね。

ハルにぃの言う通りだ」

 

 ほんの少しだけ、影が失せた気がする。

だが、まだ心が覆われたままだ。

 

「なぁ、ユウキ。

俺さ、どうしてもやらなきゃいけねぇことがあるんだ」

 

 未だ光に当たらぬ気持ちを僅かでも照らすため、俺は思いきって打ち明ける。

これから己が為さんとすることを。

 

「しばらく手紙、書けなくなる。こうして話すことも。

もしかしたら、今まで通り過ごすことすら」

 

 ユウキの声が困惑の色に変わる。

予想していた。だってこれは、元々告げるつもりだったことだから。

話さなければ、彼女は俺を心配するだろうから。

 

「……でも、俺はやると決めた。

後悔だけは、したくねぇんだ」

 

 ここにいるはずのない少女の存在を、しっかりと認識し、電波越しに目を合わせた。

本当に眼前にいるかのように、迷いなき言葉を出した。

 

「……そっか。ハルにぃがやらなきゃって、本気で思ったことなんだね」

 

 俺の気持ちは、ユウキの心を動かした。

 

「理由はたった一つ、今俺に出来ることを全力で頑張りたいんだ。

だから、ユウキも」

 

「もちろん、一緒なら頑張れる。

辛いことも、怖いことも。

ハルにぃが着いてくれるなら、心強いよ」

 

「俺も、頼もしいよ」

 

 気が付けば、自然と笑みが溢れていた。

ユウキだけじゃない、俺もだ。

使命は違えど、互いに自身の運命への反逆者。

 

 謂わば俺たちは、一緒に戦う仲間だ。

例え顔を合わせたことがなくとも、こうして判り合えた。

その縁はきっと、無意味なものではない

 

「お互い頑張ろう、目指す明日のために」

 

「いつか、本当に会うためにもね」

 

 ふと、耳に入ってきた内容に虚を突かれた。

だがすぐに声色は微笑みへと変わる。

 

「うん、そうだな。いつかきっと」

 

 正直、叶えられるか判らない。

というか、実現してはいけないのかもしれない。

それでも俺は、約束してしまった。

決められた物語や、本来の歴史など関係なく、俺は本心からユウキに会いたいと思っていたらしい。

 

 これ以上は名残惜しくなるだけだ。

 

「そろそろ切るよ。

ユウキ、どうかお元気で」

 

「うん、また話そうね。絶対だよ!」

 

 時間も押している。

偽りのない言葉をくれるユウキに感謝を伝えつつ、通話終了のボタンに手を掛けた。

端末にはすでに人の声は無く、ただ電子音が繰り返されるのみ。

これも自分で選んだ道だ。

辛いが進む以外に出来ることはないだろう。

 

 

 

 プランプが起きているうちに、一緒に近所の女性の元を訪れた。

向こうの世界で戦っている間、この子の世話をしてもらうためだ。

 

 もちろん、無事に帰れる保証はない。

最悪の場合、一生我が家ではない場所で暮らしていくことだって有り得る。

これから俺が行こうとしているのは、そう言う所だ。

 

 事前に話は通してあったのもあり、ことはスムーズに進んだ。

プランプのお世話をするために必要な金額を1年分強と、残っていたエサや玩具を渡し、深々と頭を下げる。

 

 我が天使が元より彼女に懐いていたのもあり、逆に感謝された。

ここの猫ことビューティと仲が良いことも、今回の件を承諾してくれた理由の1つかもしれないが。

 

 

 

 これで、未練は無くなった。

あとは件のデスゲーム、ソードアート・オンラインにログインするのみだ。

当然、自分1人が参加したところでどうなるとも限らない。

 

 だが、家の前にいたあの男の言葉通りなら、俺は介入者(イントルーダー)だ。

あの鋼鉄の城(アインクラッド)の中で、1つぐらい出来ることがあるかもしれない。

物語を書き換える者。その肩書きがハッタリで無いのなら、開発者にとって大きなイレギュラーとなるはずだ。

 

 

 

「リンク・スタート!」

 

 その魔法が、俺の意識をあっという間に包み込む。

 

 黒く塗り潰された視界にまず最初に映されたのは、パソコンの画面でもよく見るような入力画面。

 

 そして耳に届くのは案内人の声。

 

 すべてのアナウンスを聞き終わるよりも早く、俺は必要な設定を終えた。

 

 名前は『Lasbelly(ラスベリー)』。

そう、あの男が俺に向かって投げ掛けたものをそのまま引用させてもらった。

まだ意味は判らない、いっそ存在しないのかもしれない。

 

「なら、作り出せば良い。

俺自身の手で、この名前の意味を」

 

 続いて、アバターの作成に移る。

と言ってもリアルのものをそのまま流用し、不要な要素は完全に切り捨てたが。

 

 

 

 そのまましばらく待っていると、意識は未知なる異世界へと吸い込まれていく。

 

 次に目を覚ました時、そこがすでに自分部屋ではないことを理解した。

視界に広がっていたのは、どこまでも続く白亜の都。

 

 世界中の注目を集めたSAO、そのPVの中にも出てきた街そのものだった。

だがその空は、あまりにも不安そうな黄昏に染まっている。

 

「……来ちまったな、この世界に」

 

 この時点で退路は絶たれた。

以前に深澄ちゃんから教えられていた動作を行い、メニューウインドウを呼び出すが、やはりログアウトボタンは無い。

これで俺も晴れて囚われの身、アインクラッドの冒険者だ。

 

「例のアナウンスから、まだ2時間近く。

急げばまだ間に合うか……?」

 

 確か物語の方では、デスゲームに囚われたプレイヤーたちは、現実と何一つ違わぬ姿にされていたはずだ。

ナーヴギアの初期設定の際に行う、機器の計器類の補正作業(キャリブレーション)

それにより刻まれたデータを元に、本来の姿形を再現しているのだと言う。

 

 俺の生きるこの世界がもはや、あの筋書きを辿っていることは、今まで見聞きした数々の事象、及び出会ってきた人々からも覆せない真実。

ゲームとしてではない、作品としてのソードアート・オンラインそのものに入り込んだと言い換えても良い。

 

 ならばきっと、俺のよく知る明日奈と深澄ちゃんがどこかにいるはず。

1度でもHPが尽きれば実際に亡くなるこの世界だ、時間はない。

俺はとにかく全神経を振り絞り、走り出した。

 

 こちら側の身体の走り心地だが、意外と悪くない。

実体を動かしているわけではないため、疲れを感じないのだ。

それでも息を切らせてしまうのは、生物故の本能か。

途中で脳に疲労信号が送られたのか、何度かペースが落ちたのも、そういうことかもしれない。

 

「凄い、本当に走ってるみたいだ」

 

 一刻を争う事態だと言うことは判っている。

だが、一ゲーマーとしてか、それともゲーム開発に携わる者の、或いは両方としての性か、興奮を覚えずにはいられなかった。

今俺は、この仮想現実で、実際に腕を振るい、足を広げ、広大な草原の真ん中を駆けている。

 

 吹き抜ける風も、踏みつける地面の感触も、雑草の奏でる戦慄も、何もかもがリアルそのもの。

これがナーヴギアの、ソードアート・オンラインがもたらす世界だと言うのか。

 

「これがデスゲームでさえ無ければ」

 

 きっと、あの子たちも純粋に楽しめた。

喉の奥から出かかった言葉を呑み込み、先へと進んでいく。

しかし、何事も思いどおりには行かないもの。

すぐに阻む存在が現れた。

 

「っ!」

 

 白い身体の上部に浮かぶ緑色のバーが、恐らくこいつの命の姿、HPなのだろう。

となると、その更に上にあるのが名前。

ダイアウルフ、恐ろしい狼と言ったところか。

  

 このゲームの状態を考えれば、これ以上無いネーミングだ。

こいつは、冒険を始めたばかりのプレイヤーたちを無情に喰らい尽くす狩人ということか。

その対象には無論、俺も入っているのだろう。

赤い瞳がこちらを捉えた。

 

「迷っている暇はない」

 

 もちろん、恐れはある。

だが予想出来ていたことだ、とっくに覚悟も決まっている。

迷いなく最初から背中に装備されていた得物、スモール・ソードを引き抜き、迫り来る魔狼を迎え撃つ。

 

 五感のすべてがリアルだと告げるこの世界の産物は、やはり重かった。

だが本物同然では話にならないということだろう、素人でも振るえるほどの重量に設計されていた。

いくら現実に寄せられていると言えど、ゲームという体裁は保たれているということだろう。

そのお陰で、敵の初動を凌ぐことが出来た。

 

「喰らえっ!」

 

 実際に振るったことなどあるはずもない、しかしその一撃は、驚くほど思い通りに直線を描き、狼の身体を突き上げた。

渾身の逆風にヤツが怯んだのを見逃さず、追撃を浴びせる。

 

「はぁっ!」

 

 素早い袈裟斬りが獣を引き裂き、そのまま光となって呆気なく散った。

これが、この世界における命の終わり。

所詮はデータでしかないのだと、儚くも残酷に示している。

 

「……初バトル、なんとかなったな」

 

 とは言ったが、一息吐いている暇はない。

時刻は間もなく夜半ば。モンスターたちの習性まで現実に忠実なら、間もなく活動が活発になるはず。

そうなれば、2人の捜索どころではない。

まずは自身の安全確保が優先になるだろう。

 

「街を探そう」

 

 判断は早かった。

最初にいたような街は、いわゆる圏内。

一切モンスターに襲われたりすることの無い、安全地帯だ。

逆に今いるような、街の外は県外。

些細なことでHPが削られていく危険区域だ。

 

 今頃あの2人も、どこか安全な街にいるのだろうか。

一緒にいるとは限らないが、きっと深澄ちゃんのことだから、明日奈のことを導いてくれるのだろう。

 

「……あれって」

 

 その光景は、すぐに目にすることとなった。

見覚えのある2人の少女が、武器を持ってモンスターの群れと交戦しているのだ。

距離はあるが、彼女たちが誰なのかハッキリと認識出来る。

それを囲む敵たちの姿も、ではあるが。

 

「っ……」

 

 思い立った時には走り出していた。

居ても立ってもいられないとは、まさにこのような時を言うのだろう。

探していた少女たちの元へ、全速力だ。

 

「くっ、数が多い……」

 

「ミト、このままじゃ」

 

 背中合わせに敵と対峙する2人。

特に栗髪の少女の消耗が激しく、彼女を守るために鎌使いの女の子は防戦一方を強いられている。

 

 モンスターたちは、全部で3種類8匹。

先ほど戦ったダイアウルフの他に、蜂と猪のタイプだ。

後者はともかく、他の2種類の動きが速い。

このままでは、HPの全損は時間の問題だろう。

 

「っ、アスナ!」

 

 1匹、蜂が宙を舞った。

鋭い針を獲物へ向け、容赦なく迫る。

 

「はぁ!」

 

 紙一重の差、毒針が少女を貫くことはなかった。

すんでのところで飛び込んだ俺が、虫を斬り飛ばしたからだ。

 

「えっ、晴輝さん!?」

 

 濃紫混じりの黒い長髪をポニーテールにした少女が、驚きながら俺の本名を叫ぶ。

無理もない、何せ俺は仕事のあとでログインすると伝えていたのだ。

デスゲームだと発覚した以上、来るはずはないと考えていたのだろう。

 

「ミトだな。話はあとだ、指南を頼む!」

 

「わ、判った!」

 

 さすがは深澄ちゃん。いや、ミトだ。

今の一言で俺の意図を読み取り、冷静さを取り戻した。

尤も、傍らの少女こと明日奈は、まだ口元を手で覆ったままだが。

 

「おぉっ!」

 

 まずは1匹、直前に突き飛ばした蜂を問答無用で斬り伏せる。

残りは7匹。まだ油断は出来ない。

 

「晴輝さん、ソードスキルは?」

 

「まだだ、簡潔に頼む」

 

 それだけ言い残して、敵陣へと突っ込む。

正面には猪ことフレンジー・ボアが2体。

見てくれは鈍重そうだが、こちらへ走ってくる速度は真逆だった。

 

準備動作(ファースト・モーション)を起こして!あとはシステムが勝手に動かしてくれる!」

 

「判った!」

 

 今の自分がどんなスキルを使えるのか、確認もせずに出てきてしまった以上判らない。

だが、ミトが初動を起こせと言った以上、初期の状態から使えるものがあるのは間違いないだろう。

 

 獣たちの前で得物を右肩に構え、力を集中させる。

刃が光を帯びた途端、俺の身体は力強く剣を振り下ろした。

一瞬の袈裟斬り、ソードスキル【スラント】だ。

鋭い斬撃がモンスター1匹を葬ったのだ。

 

「晴輝さん、凄い!」

 

「っ、危ない!避けて!」

 

 ミトの言葉を認識した時には、すでにもう1体の猪の攻撃を受け、身体が浮いていた。

背中が地面に打ち付けられ、視界左上にあるHPバーが短くなる。

 

「くっ……何故避けられなかった」

 

「ソードスキルを使うと硬直時間が発生する。だから考えなしに使っちゃダメ!」

 

 注意を促しながらも、ミトは鮮やかな動きで猪を殲滅して見せた。

これで敵はあと5匹、ようやく差が縮まっていた。

 

 長くも短かった沈黙を破り、動くようになった身体を起こす。

痛覚はない。やはりゲームとしての体裁か、そう言ったものはカットされているようだ。

 

「晴輝さん、大丈夫?」

 

 愛しの妹分、明日奈が駆け寄って来てくれた。

我ながら情けない姿を晒したが、無事で何よりだ。

 

「明日奈か、問題ない。

今は協力して、この状況を突破しよう」

 

「うん、晴輝さんのお陰でだいぶ楽になった!

これなら行ける!」

 

「2人とも油断しないで、来るわよ!」

 

 狼と蜂の連合軍が一斉に押し寄せる。

その雪崩を真っ先に塞き止めたのは、ミトの大鎌。

たった一瞬の、しかし俺たちにとっては大きなチャンスを作り、明日奈とともに隙を突き、仕掛ける。

 

「行くぞ、明日奈!」

 

「うん!」

 

 覚えたばかりのスラント、そして細剣ソードスキル【リニアー】。

2つの技が炸裂し、狼が2体爆散する。

直後、ミトが更なる追い討ちをかけ、蜂も1匹砕けた。

これにより、遂にこちらが数で上回った。

 

「あと1匹ずつ、総攻撃で決めるよ!」

 

 ミトの力強い合図で、全員が一斉に襲いかかる。

切り裂き、突き刺し、文字通りありったけをぶつけた本気の攻撃だ。

まさに、一網打尽。

敵は完全に沈黙した。

 

「……ぁ」

 

 瞬間、俺の脳裏に響く軽快な効果音。

それは目の前に開かれた、レベルアップの詳細を通知するものだった。

どうやら今の戦闘で得られた経験値が、俺を強くしてくれたらしい。

 

「……へへ、レベル3か」

 

 ちょっとだけ、嬉しくなってしまった。

少しは大人になったつもりだったが、やはり、いつになってもレベルが上がるのは楽しいものだ。

今の俺は、最初より2つも強い。

なんだか誇らしい。

 

 しかし、そんな細やかな時間はすぐに終わりを告げた。

無言で歩いてきたミトに、胸ぐらを容赦なく掴まれたのだ。

 

「……なんで、来たの。

どうして来てしまったの!?」

 

 

 

END.




◇現在のパーティメンバー
【Lasbelly(Lv3)】



あとがき

プランプ
「食欲マックスの大行進、プランプだよ!
閃光瞬く剣の世界【SAO-XD】第8話、どうだった?

みんな、ずっと待たせてごめんね。
ここから少しずつ投稿を再開していくから、気長に待ってくれると嬉しいな?

さて、物語の内容だけど、まさか晴輝君が気にかけてた女の子が、まさか彼女だったなんてね。
実は筆者の推しだったりするらしいよ。まぁ本編には何も関係ないけど!

そしてそして、遂に晴輝君がラスベリーとして、ソードアート・オンラインにログイン!
ここからようやく物語が動き出すね~

ってか初っ端から険悪ムード!?
喧嘩はダメだよ喧嘩は~!
ま、ミトさんの気持ち考えたらそりゃそうって感じだけどね。

次回、【戦技=切り開くための力】」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。