雑魚妖怪に転生しました。邪見さまではないです。 作:蜥蜴の隠者
暇つぶしにどうぞ。
白昼の空で星が弾ける。
彗星かな?いや違う、違うな、彗星ならもっとこうパァーッて弾けるもんな!
………
……
…
…ハッ!?此処は一体!?俺はどうして?どうなって…?
気がつくと俺は、白昼に輝いて弾ける無数の桃色に輝く流星群を見上げていた。
…この景色、何処かで見たことあるような?そんな景色に擬視感を覚えながら周りを見渡すと驚くべき光景が広がっていた。まるで時代劇の様な木造の平屋の街が広がり、通行人もこれまた時代劇の様な和服姿をしている。誰も彼もスーツや洋服を着ておらず高層ビルとはいかずともコンクリ建造物の一つも見当たらない
ここは何処なんだ?日光江戸村か?東映撮影所か?時代劇のセットにしては規模がデカ過ぎないか?
惚けて歩いているうちに小川の前に出た。そこに映った姿に俺は目を疑った
「…え?…は?…何これ?」
そこには嘴と三つ目が特徴的な緑色の小鬼の姿があった。
…う、うん。そうだな、状況を整理しよう。
気がつくと、俺はよく分からん時代劇風の場所で目覚めた。
そして俺の姿は三つ目の嘴ゴブリンになっていた。
…うん。夢だな。夢に違いない。そうであって欲しい。
最近は夢も見ないなぁと思っていたんだが、疲れてるんだなぁ俺。
夢だ夢だ、醒めろ醒めろ、消えろ消え…あ、ヤベ言いすぎると本当に消えちゃうかも
…しかし、妙だな。この姿、どっかで見た様な…
い、い、…何だっけ?…じゃ?…じゃんけん?
なんか、思い出せそうで思い出せないなぁ
どっかで見たんだけどなぁ、こんな、画風?
そんな時である、若い男女の喧騒が聞こえてきた。
「本当にこっちに四魂の玉があるのかよ!?全然ねぇじゃねぇか!」
「五月蝿いわねぇ!つべこべ言わず探しなさいよ!多分こっちにあると思うんだけど…」
聞き覚えのある声に、俺は驚いた。
この声は、そう、少年誌に掲載されていた戦国御伽草子の主人公とヒロインの声!
…まさか?
俺は忍び足で声のする方に近寄った。すると茂みの向こうに見えたのは特徴的な犬耳と長い銀髪の赤い水干姿とセーラー服だった。
…え、マジ?、マジすか?え夢だよな?夢であって欲しい。こんなの現実だなんて…いや確かにファンだけども、アニメも漫画も全部見たけど、だからこそ、こんな場所、過酷過ぎんだろ!?
俺は受け入れ難い現実を前に硬直してしまうが、すると、更に向こうの茂みの奥から三つ目の烏の首が現れ、2人組に襲いかかって来た。だが、あっという間に退治されてしまう。その烏の亡骸から桃色のカケラが現れる。
間違えない、アレが四魂の玉のカケラ。あのカケラを見た瞬間、どうしようもなく欲しくなった。だが、俺はアレの正体を知っている。あれは何者の願いを叶えることはない。欠陥品だ。ドラゴンボールの方がまだマシだ。
何とか理性で我が身を抑える。今彼らの前に現れる訳にはいかない。もう気づかれてるかも知れないが、まだ死にたくない。
俺は恐怖で強張る身体を無理やり動かし、その場を去った。
その夜、小川の側に戻り思考を纏める。
この姿、あの2人組、そして四魂の玉のカケラ。
間違えなかった。否定する材料がなかった。
俺は架空の世界と思われていた"犬夜叉の世界"に来てしまったのだ。
しかも、妖怪の姿で。妖怪として。犬夜叉達の取るに足らない雑魚敵として。
月明かりに照らされた水面に映る自分の姿と思わしき小鬼の姿を眺めながら思い耽る。
緑色の肌に痩せ細った手足とでっぷりと出た腹、餓鬼のような身体には三つ目の禿鷲のような頭が生えている。一応、頭には落武者のようなざんばら髪が生えており、額には細い山羊のような角が生えている。
こんな妖怪は原作漫画でもアニメでも観たことがない。だがそれっぽい妖怪は見たことがある。よく犬夜叉の必殺技である"風の傷"でぶっ飛ばされる雑魚妖怪の1匹だ。まぁ、小鬼は小鬼で正解なんだろうな。
さて、どうするか。どうやって生き延びようか。
出来れば犬夜叉達について行きたいが、今のままじゃ確実に退治される。
であるなら、普通に野良で生活することにするのか?
正直弱肉強食なこの世界で人間相手にすら勝てる気がしない。他の妖怪も言わずもがな。
それに以外と、この世界には野良法師も徘徊してる。よく犬夜叉の敵妖怪の噛ませ犬役に登場するので。
外の世界は怖い。正直、楓婆ちゃんの村以外に安全な場所を知らない。
…とりあえず、楓婆ちゃんの村周辺で暮らしてみるか。
当面の目標を思いついた後、俺は眠りに着いた。