U.C.0111 機動戦士ガンダムχ 作:サクナ
ドルトンがベルヌーイを出発して2日。アスカは一人カフェテリアでインスタントコーヒーを飲んでいた。
ルシファーはかなり疲れていて、部屋から出てこない。心配だが、敵の侵入も防げた。アスカ的にはあまり何も感じていないようだ。
「なに一人で黄昏れてんの?」と、後ろから声がかかる。
アスカは振り向き、とある女性を目にする。
「エルマ技術大尉...」
エルマと呼ばれたルシファーそっくりの顔立ちに白衣の下に軍服という謎スタイルの女性。
自販機のパック酒を持っている。飲んでいるようだ。
「なんか嫌なことあった?私の設計に文句でもある?」
「いえ、ないです。というか、何で勤務中に酒を飲んでいるんですか?」
「お酒を飲むとね、なんかこう気持ちがパァーッとなるというか...今まで悪かったことを全部忘れられる気がするんだ。今まであったこと、全部忘れられそうな気がしてね。シラフだと、死ぬかも」
「それ、アル中ですよ。今すぐ酒をやめたほうがいいです。」
「やだね。おこちゃまにはわからないか。」
「わかりたくないんですよ。」
「そっかー。」
そう言ってパック酒を飲む。
「あ、あと技術大尉はルシファーの...お姉さんなんですよね..?」
「うん。そうだよ。でもお姉さんというよりは...オリジナルかな?」
「オリジナル...ですか?どういうことですか?」
「つまり、簡単に言うと、彼女はクローンね。私は、クローンのオリジナル。つまり本物。」
[え...?」アスカは思考が停止した。
「あの子はね、エリートだったから戦場に投入されたのよ。彼女は『ルシファー・クレイドル』を名乗っているけど、本当は『エルツー』なの。私はサイド3出身でジオン残党からの出身だから、遺伝子情報も持っているわけね。どうりでそっくりなやつを作れると思ったわ。しかも、私はニュータイプじゃないのに。多分クローンに強化を加えたと思うな。」
「......でも..」
アスカは何かを言いかけたがどもってしまう。
「技術大尉は...その...どうも思わないんですか..?」
「え?思うって?」
「クローンが作られてて...あなたがそれをルシファーに明かすことは...」
「しない。だって明かしたらあの子多分自分を保てなくなるわ。」
何事もなかったようにパック酒を吸う。
「そうですか...」
「うん、そう。」
重苦しい雰囲気がカフェテリアを包む。誰もいないのが幸いだ。
「じゃ、私はこれで。そろそろジェミニに着くよ。準備しといてね。」
「わかりました.......。」
アスカはずっと下を向いている。日付が、変わる。コーヒーはすでに冷たくなっていた。
一気飲みし、自室に戻る。ルシファーの部屋を開けると、小さな寝息を立て、布団にくるまったルシファーがいた。
(クローン...か。クローンでも..いいじゃないか..クローンも..生きてる。人間なんだ。)
部屋のドアをそっと閉じ、自室に戻る。
ルシファーは夢を見ていた。いつも見る夢。
それは、ルシファーの昔のことで、10人以上の『姉妹』と呼ばれる存在といた。病棟のような場所で病衣を着ている。
「私達、どうなるのかな?」と同じ顔をした少女が覗き込む。
「さぁ、わからないわ。」とルシファーが言う。
「えーどうなるんだろう」と壁に絵を書いている自分と同じ顔の少女が言う。
「どうせ私達はクローン、体が保てなくて死ぬわ。」と下を向いている自分と同じ顔の少女が言う。
「おうちに帰りたい...」帰る場所もないのに、ずっと泣いている同じ顔の少女。
そこへ、ジオンの軍服を着た男が現れる。
「2番。時間だ。来い。」
「私が2番だわ。」
ルシファーが呼ばれる。
ドアを開けたところで、夢は終了する。
ルシファーはベッドから飛び起きる。
「はぁ...はぁ...はっ...」
残酷なものだ。自分はいつもその夢を見るのにその内容を覚えていないのだから...