U.C.0111 機動戦士ガンダムχ 作:サクナ
アスカ・レインは医務室にいる医者の手当を済ませていた。
「しばらくの間、安静にしていなさい。」と医者に言われ、自室でベットに腰掛けていた。腕の骨折と、軽い脳震盪で済んだのが幸いだ。
時を遡り戦闘中。χガンダム一号機がサイコ・ガンダムmk-+に吹き飛ばされた後、ラー・カイラム級機動戦艦「ドルトン」よりも少し遠い防衛ライン近くに落ちていたのだ。
幸い近くにいた陸戦型に改造されたリ・ガズィやジェガンに助けられ、なんとか援軍を呼ぶよう通信を行っていたが、とうとうブレードアンテナが破損しルシファーも陸戦型リ・ガズィ、陸戦型ジェガンのパイロットとも通信が途絶えてしまい、自分も腕の痛さと脳震盪で気を失ってしまったのだ。
目が覚めて、起きてみるとそこはドルトンの医務室のベッドの上だった。
目が覚めた事を知り、医者と兵士が飛んできて事情を伝えられた。
それは、サイコ・ガンダムmk-+を撃破したという知らせと、ルシファーが意識不明であるということを知らされた。
それを聞き、アスカは喜べばいいのか悲しめばいいのか、どちらとも言えない感情になった。
足には問題がないから部屋に戻っていいよと医者に言われ、自室に戻る。部屋に入ると大きいフォグランプの付いた強そうなロータリーエンジンのスポーツカーの改造車のミニカーや自動車雑誌、新聞、パソコンが出迎えていた。
しかし、アスカは何にも触る気にもなれず、ベットに腰掛けている。それが、簡潔に言うと今まであったことだった。
「ルシファーのところ...行ってみるか...」
痛む腕を心配に思いながら、自室を後にし医務室の奥のICU(集中治療室)に向かう。
そこには、ガラス越しに眠っているルシファーがいた。その隣では、赤いハロが「オキテ!オキテ!」と言っている。しかし、起きることはない。
医師がやってくると、χガンダム二号機「カーマイン・ヴェール」の精神汚染と体力の限界がここまで追い込んでいると言った。
アスカは、それを聞くと、ルシファーの方向を見て呆然とした。
呆然とルシファーの眠っているベッドを見ているとると、アスカは目から涙が落ちてくる。
「ルシファーを...守れな...かった」
涙が止まらない。アスカはへたり込んでしまう。
昏睡状態のルシファーを再度見て、更に泣いてしまう。医者がなだめるが、ずっと泣き続けていた。
ずっとずっと、泣き続けていた。
すると、後ろから声がかかってくる。
「アスカくんいつまで泣き続けてるの?」
「エルマ技術大尉...」
そこには、エルマ・クレイドル技術大尉がいた。
「あーあ。無理しちゃったんだなぁ。ルシファーちゃん。やっぱ、チョバム・アーマーがあって良かったか。」
そう言ってエルマはガラス越しのルシファーを見る。そして、更に告げる。
「アスカくん。この子は諦めなよ。どうせ死ぬでしょ?クローンだから替えが効くよ。」
その言葉を聞き、ピタッとアスカは固まる。
そして立ち上がり、泣き腫らした顔をエルマに向ける。
「なんですか...?替えが効くって...」
「言った通りだよ。また捕まえて持って帰ればいいじゃん。クローンなんだし。」
「技術大尉...その言い草はなんですか!クローンは人じゃないんですか!?」
「だって作り物でしょ?」
その言葉を言い放ったとき、アスカがエルマをビンタする。
「痛ッ!」とビンタをもろに食らったエルマは頬に手を当てる。
「技術大尉は何もわかってない!ルシファーの苦しみも知らないで!あの子は..ルシファーは!たとえクローンだとしても人は人です!なんでそれがわからないんですか!あなたは技術士官で僕よりも上です!しかし、その言動はたとえ位が高くても許せません!」
エルマはその言葉をずっと黙って聞いている。
「なんでそんなことが言えるんですか!?クローンは物で人は人なんですか?だからなんですか!?クローンでも人間です!僕からは以上です!」
そう吐き捨て、エルマを残したままアスカは医務室を立ち去った。
「クローンは...人...」
エルマは、痛む頬を押さえながら昏睡状態のルシファーを見た。
ドルトンの外、ジャブロー付近やジャブロー内部では雨の中激しい戦闘が繰り広げられていた。
サァサァと降って、突風が吹き付ける。
カプールや一般機のアッガイF型とブルーローズ隊のザクIIIや陸戦型ジェガン、陸戦型リ・ガズィと激しい戦いが繰り広げられている。川で戦っているものもいれば、ビーム・ライフルで撃ち合いをしているのもいる。
背の高い木々が踏み潰されていく。カラフルな鳥も、飛び去っていった。
すると、巨大なエクソダスの民のマークが書かれた大気圏突入用カプセルが落ちてくる。
「レーダー捉えました!12時の方向!」
「曇っていて見えないが、あれは恐らく...エクソダスの新型モビルスーツかもしれん...」
「こちらの戦力は陸戦型ジェガン数機しかいません!二号機はパイロット昏睡状態で機体も持ちません!一号機は損傷が激しいですが、出撃はできる程度です!」
「仕方がない...。アスカ少尉は?」
「わかりません。ただ、腕の骨折があるため操縦は難しいと思います...。」
「ここまでか...」
「しかし、AIで操縦することはできますが...」
「それで行けるのか?」と艦長が疑問を隊員に投げかける。
「まだ実験段階で暴走のリスクがありますが、行けないことはないです。」
「わかった。一号機をAI操縦システムに切り替えをしろ。発進だ。」
「了解しました。」
そして、MSデッキで一号機のカメラアイが緑色に光った。
そして誰も乗せていないχガンダムが、動き出した。