U.C.0111 機動戦士ガンダムχ 作:サクナ
捕まえられ、疲弊したアスカはやる気を失った人のように申し訳程度に壁から伸びているベッドの「ような」物に横たわっていた。目の光が失われている。
アスカにはどれだけ時間が経ったのかや、何処に向かっているかさえも考える気はなかった。
すると、自動ドアが開く。小洒落たジオン風の軍服を着た男二人が、こちらを見ている。
「出ろ。到着だ。」
「.............」
到底アスカには動く気力もなく、静かに横たわっている。
「出ろと言っているんだ!」
男の一人はアスカの腕を引っ張り、外に無理やり出させる。
「.........」
アスカは両手をまたも掴まれ引きずられるように連れて行かれる。どうやらここは重力空間らしい。
しばらくふらふらと歩かされていると、木目調の廊下が現れた。今までの無骨なデザインとは全く違う。
そして、ある部屋のドアを大男の一人が叩く。
「総帥。入ってもよろしいでしょうか?」
「ああ、入っていいぞ」
ドアが開き、木目調の部屋が現れる。拘束が外れ、アスカは床にへたり込む。そしてそこに立っていたのは、黒髪の男。
グレイ・オルドリンだった。中性的な顔立ちをしているため、ジオン風の軍服が似合わない。
しかし、アスカはただそれを黙って見ていることしか出来ない。
「まぁ、座りなさい。黙っているだけでは何も始まらない。」
ふらふらとアスカは立ち上がり、近くにあった椅子に座り込んだ。
「紅茶は飲めるか?」
アスカは顔を俯けたまま相槌を打つ。グレイはティーポッドを持ち、静かに慣れた手つきで紅茶をいれる。
「いつまでも負けに固執しては行けないぞ。アスカ・レイン。君は、私達エクソダスの民に殺されると思って絶望しているんだろう?」
「.....なんで」
アスカはここに来て初めて口を開いた。
「なんで俺を助けた...?」
「私達が助けずに殺すと思うか?アスカ・レイン。笑わせるにも程があるな。誰にでも優しくすることが人間の本質だ。君がどのような人生を生きてきたのかは知らないが。」
そして、グレイは話を続ける。
「私達はネオ・ジオンを再興させるために日々尽力している。君達地球連邦軍に足止めされるのは物資の不足を呼ぶ。そして私達は君達と仲良くしたいんだ。わかるだろう?」
「攻撃を仕掛けてきたのはそっちじゃないか...!!お前らがしつこく攻撃を仕掛けたから!」
「しつこく?....ハッ..笑わせるなアスカ・レイン。お前らは知らないだろうが何度も連邦軍が攻撃を仕掛けてきているんだよ。図に乗ったカモどもが...。」
「お前らの嘘じゃないのか....?」
「なぜここで嘘を付く必要がある?その上、私の権力はあくまで総帥だ。いつだって戦闘をやめ停戦をすることができる。だが、私達の部下は勝ち気で喧嘩っ早い奴らばっかりなのでね。」
「じゃあ何故止めない....?」
「止められないんだ....。私達ジオン残党が連邦軍相手に太刀打ちできると思うか?その上、ここで停戦しても分が悪い。残党軍内で摩擦ができてさらに反地球連邦軍勢力を増やすことになる。」
グレイ・オルドリンの言っていることはごもっともな正論だった。それを聞いて、アスカは疑問さえ持たないし、持てない。
「とにかく君は隊に送り返す。質問はあるかね?」
「なぜ貴方達はルシファーを狙うんですか?....」
「ああ、そういえば言っていなかったな。彼女は私達の鍵となるのだ。」
「鍵....?」
「そうだ。鍵だ。これからのニュータイプを先導していく力が彼女にはある。そして、シャア・アズナブル総帥の成し得なかった事を十分にやっていける力もある。私達は、その土台というべきだろうか....。」
「土台....?お前らが土台にしているんだろう?彼女と初めて話したとき、モノ扱いされるのは嫌だと言っていたんだぞ....。」
「最善の対応は務めたはずなのだが....な。しかし反発を強めることもたまにはある。君だって、反発したいこともあるだろう。あの時、ルシファーを取り戻すのに必死になり過ぎ語気を強めたことは謝ろう。すまなかった。」
「.........」
「これで質問は以上だな?では、送り返そう。」
大きいデスクの隅に置かれていた電話型のインターホンを手に取り、何かを指示する。
「君の機体の準備はとっくに出来ているそうだ。居住区を今から縮める。そして、そのノーマルスーツとヘルメットをを着用しなさい。」
居住区...?とアスカは疑問を持つ。すると少し揺れ、無重力空間が生まれる。
「さぁ、行くんだ。」
アスカは服の上からノーマルスーツを着て、ヘルメットを付け、ドアを開ける。
ふわふわと浮いた感覚が懐かしく感じる。
リフトグリップを手に持ち、指示された場所に向かっていく。
そして、指定された場所には、黒っぽい青をしたガンダムタイプのモビルスーツがあった。しかし通常のガンダムより少し小さい。頭部も、スリットは見えるがツインアイがVRゴーグルのように四角いユニットが付いている。胸部には、見にくいが青いバラのマークが付いている。
それをじっと見ていたアスカは、近くにいた作業員のような人物に怒鳴られ、開いた状態のコックピットの中に乗り込む。自動でハッチが閉まり、辺りが全天周囲モニターに表示される。
『聞こえるか?連邦兵。今お前の機体はカタパルトデッキにいる。準備ができたら、作動させるからな。』
「とっくに準備はできてますよ。」
突然通信がつながった作業員の前で、やれやれといった様子でアスカは答える。
眼の前の作業員が機体のそばから離れると、デッキの正面が開く。
ブザー音とともに、カタパルトが作動しアスカは機体とともに宇宙空間へ飛び出した。