U.C.0111 機動戦士ガンダムχ   作:サクナ

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第三十三章「灰となれ」

暗礁宙域付近では、アウフ・ヌルMk-II が強制冷却を行い、次の発射に向けて準備を始めていた。

 

パイロットのシオン・アルトリアはかつてのおっとりさは見えていない。

 

そこにあるのは《死神》。

 

「冷却プレート、冷却液パイプ、どちらも稼働。コードタイプ1007....第二冷却ファンがオーバーラン...予備冷却ファン2機を合わせて引き続き冷却...。砲身部分の最大冷却まであと20秒...。スラスターユニット正常、プロペラントタンクユニット正常、ジェネレーター冷却中...武装、ロボットアームともに正常。再発射まで残り40秒。」

 

淡々とロボットのように読み上げる。意識を取り戻したアスカは、機械のように喋るシオンを見て、背筋が寒くなる。

 

「な、なぁ...これ、撃ったらどうなるんだ...?」

 

「今さっき発射しましたよ?」

 

「え....どうなったの?」

 

少しの沈黙の間、徐々にシオンは優しい笑顔になり、

 

「ふふふ...。目視で確認した限り、上半身が消えましたけど。」

 

恐ろしい笑顔でシオンは答える。それにアスカは背筋に寒気を感じる。

 

「それじゃ、もう一回行きますね。あと、音楽かけていいですか?」

 

「か、構わないけど....」

 

「じゃ、流しますね。」

 

モニターのポップアップを押すと、大音量でヘヴィ・メタルが流れ出す。

 

「エネルギーリチャージ、砲身冷却完了。再発射まで残り5秒」

 

「おいおいおいおい待て待て!本当に撃つのか?というか撃てるのか?!」

 

「少し衝撃と音がひどいですけど、音楽流してるし大丈夫ですよね」

 

ドッキングベイ付近でヘビーガンとZプラスと交戦中のリゲルグやズサに照準がピピピピと音を立てながら近づいていく。

 

ピーというブザー音とともに照準が完璧に合わさる。

 

「砲身冷却100%、エネルギー100%!!発射ァァァァ!!!!」

 

徐々にエネルギーが溜まる音がしたと思ったら、ゴーという音とともにビームが発射された。

 

辺りの音が消える。モニターの照準の向こう、

 

Zプラスとヘビーガンの付近にいたエクソダスの民のリゲルグとズサの上半身が消滅したのだ。

 

「嘘だろ.....消滅した....」

 

アスカはただただ驚愕する。

 

「このビームは2回撃つだけでレウルーラ級を沈めることができます....これが私のあだ名...『遺灰の騎士王』の名前の由来です...。」

 

「そ...そうなのか。」

 

「でもアスカ中尉だって『天使の生まれ変わり(アースエンジェル)』....ARXχ-01に搭乗しているじゃないですか....」

 

「え、俺そんな風に言われてたの?」

 

「は、はい...」

 

少し申し訳なさそうな顔をしてから、モニターの方を向いて「Store」と書かれたポップアップを押す。

 

外装のキャノン部がとハイザックが折りたたまれる。

 

そして、本体であるMk-iiが姿を表すと、ゆっくりと動き出す。

 

シオンも何かがスウッと抜けるように元のオットリした状態に戻る。

 

「まだバーニア基部の放熱も終わって...ませんし......ジェネレーター出力が.....下がっていますから、しばらくはゆっくりと....でも敵に見つからないように移動して...ドルトンに帰還しましょう...」

 

「ああ、そうだな。」

 

ゆっくりと進んでいくアウフ・ヌルは時々サブアームのマシンガンを敵に撃ち込みながら、着々とドルトンへ向かっていった。

 

凸凹とした宇宙要塞ジェミニの岩肌。所々に見える黄色の穏やかな光とモビルスーツが爆発する閃光が、アスカとシオンの目に映る。

 

「なぁ、シオンはさ、この戦争が終わったら、何するの?」

 

アスカは問いかける。

 

「そうですね......」

 

シオンは少し黙考したあと、

 

「私は.....小さい頃、地球で.....パン屋を....したかったんです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一転して、ドルトン格納庫にて、半壊したルシファー・クレイドル専用高速機動型ザクが運び込まれていた。

 

疲労困憊のルシファーは一時的に医務室に運ばれ、格納庫では赤のバーザム(カーマイン・ヴェール)が増加装甲と背部にこれでもかと追加された武装と巨大なファンネルが搭載されている。

 

フルアーマーχガンダム2号機[カーマイン・ヴェール]が、姿を表す。

 

奥には一号機が、『S.N.R.I』と大きく書かれたシートに包まれた状態で横たわっていた。

 

まるで、(あるじ)を待つかのように。

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