U.C.0111 機動戦士ガンダムχ   作:サクナ

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第四十一章「さよならを聞かせて」

四肢を切断された二号機は、ジェミニの方向へ流れている。

 

もう動かないその機体のコックピットには、しゃくりあげている少女(ルシファー・クレイドル)の声がこだまする。

 

「アスカぁ....なんでよ...なんでよぉ....」

 

しかしその声に答えるものはいない。

唯一電力が供給されている一部のモニターから見える宇宙の光は、物悲しいものだった。

 

ドルトンが衝突し、グレイ・オルドリンの乗るガイストローゼとアスカ・レインの乗るフルアーマーχガンダム一号機が閃光と煙とデブリに包まれてから、およそ1時間。

 

それを見たエクソダスの民は退却。

既に両陣営の戦力はほぼ無いに等しく、ギリギリでの戦いは、終結したことになった。

 

ブルーローズ隊は旗艦を失い、生存者は他隊の旗艦に戻ることになった。

全隊員百名のうち、七七名死亡、八名行方不明、生存者はたったの十五人しかいないという多くの戦力を失った結果となった。

 

「アスカ...助けてよ...ねぇ...」

虚ろな目でモニターを眺めるルシファー。

 

すると、コックピットに衝撃が走る。ガタガタと揺れ、モニターが死ぬ。

 

暗くなった密室に、接触回線でコックピットに声が届いた。

 

『ブルーローズ隊の機体を発見。中にパイロットはいるか?』

 

ルシファーはヘルメットの通信装置を起動し、回線を繋げる。

 

「ブルー..ローズ隊所属、ルシファー.....クレイドル...中尉よ..」

 

『地球連邦軍所属、クラップ級ユキカゼの者だ。救助に来た。お前は助かる。』

 

「ねぇ...アスカ・レイン中尉はどこなの...ねぇ...うっ...」

 

突然ルシファーは嘔吐(えず)く。ルシファーの視界は歪み、リニアシートにぐったりと倒れた。

 

『大丈夫か?!搭乗者は酸素欠乏症を引き起こしている模様。直ちに牽引して帰還する。』

 

何者かに連絡をして、ルシファーが乗った二号機はどこかに連れられていった。

 

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ルシファーは夢のようなものの中で、ウリエル・クレイドル、グレイ・オルドリンを始めとするその他死亡してしまった人物を見た。

 

「アスカ....アスカはどこなのかしら...?」とルシファーはグレイ・オルドリンに聞いてみた。

 

するとグレイは首を横に振り、

 

「ここにはいない。」

 

と言った。そこでルシファーの意識は途絶える。

 

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ルシファーが目を覚ますと、知らない天井が眼の前にあった。

ドルトンの医務室よりは狭い。しかし違うのは、患者の数があまりにも多いことだ。

 

横になっている人の(ほとん)どが(うめ)くか意識がない。

ルシファーもその一人、虚ろな目をして動く様子は見られなかった。

 

あちらこちらに包帯を巻かれ、天井をぼーっと眺めている。

 

すると、連邦軍の女性士官が目を覚ましたルシファーに近づき、

 

「ルシファー・クレイドル中尉、お気分はいかがですか?」

 

「................」

 

「アスカ・レイン中尉の事は姉から聞いています。行方不明者リストに載っていて、残念です。」

 

「そうなの....。貴女(あなた)は...知っているのね...」

 

女性士官はルシファーの目にライトをササッと当て、手元にある書類に何かを書き込んでいる。

 

「姉の名前はシオン・アルトリアといいます....ご存知ですか?」

 

ルシファーは起き上がり、首を縦に振った。

 

「死んだわ...。私の眼の前で...アスカと私を庇ったばかりに...」

 

「そうですか....」

 

ルシファーは俯き、必死に涙を堪える声で

 

「二人の(かたき)を私が討ちたかった....。二人ともなんで私を庇うのよ...っ....消耗品の私なんかを....」

 

そう言った。

それを見た女性士官はルシファーの肩に手を置き、

 

「戦争なんですもの。仕方ないですよ...。二人ともきっと中尉の事を大切に思ってくれていたから...。」

 

そう言った。そしてバイタルチェックを全て終えたのか、女性士官は話し始めた。

 

「このユキカゼはアクシズショックの時から運用されていて、旧世紀の日本の不沈艦から名前を取ったそうです。元の名前はラー・キェムと言います。第十三独立艦隊(ロンド・ベル)から払い下げられて、救助艇としてやって来ました。」

 

「そうなのね...。この人たちは?」

 

辺りを見回し疑問符を浮かべるルシファー。女性士官は下を向き、言いにくそうにする。

それを見たルシファーは、無理な質問だと思い首を振った。

 

「私はどうなるのかしら?」

 

「そうですね...。これから近場のコロニーで傷病人を降ろし、地球に向かいます。」

 

「ブルーローズ隊の人たちは?」

 

「全員奇跡的に意識があります。最近は集まって談話してるみたいです。」

 

「私は降ろしてもらわなくて結構」

 

「なんでですか!?ケガしてるんですよ!」

 

「私は地球連邦軍を退役して地球で暮らすわ...。きっと口止め料がたんまり払われて辞めれるでしょうねぇ...ククク...」

 

ルシファーは体の傷は癒えても心の傷は癒えないことはわかっていた。

今は必死で生きるしかないと心に決めたからだ。

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