「秘獣流拳法......剛喰・狼......!」
その瞬間、振るった腕が交差し、牙狼族の首を噛みちぎるかのように抉った。その光景には、敵である牙狼族たちどころか味方のゴブリン、リムルでさえ驚いていた。
(久々にやってみたけど、やっぱり向こうの時より使いやすいな!ただこの技でこの威力だと他の技を使う時は、もう少し加減しないとだめかもな...。)
なにはともあれ、これで牙狼族たちはもう敵対してこないだろう。このまま引き下がってくれるととても嬉しい。が、
「お前たちの長は、討ち取った!さて、選べ!服従か、死か!」
などとリムルが言ってしまったのである。
[お、おい!リムル!それだと撤退してもらえないじゃないか!このまま死兵として突っ込まれてきたらどうするんだよ!]
[あっ!ホントじゃん...。どうしよう、今からでも言い直そうか...。]
いかにも返答を待っているかのような態度を取っていながら、僕達の内心はめちゃくちゃ慌てていた。負けることはないと思うが、あの数で突っ込まれると、流石に面倒だ。
しかし、
「「「我らは、貴方様方に服従いたします!!!」」」
牙狼族はあっけなく、僕達に服従した。もう少し粘ったり、突っ込んでくるやつが何体かはいると思っていたのだが、本当にあっけなかった。後で訊いてみたところ、なんでも魔物には弱肉強食という観念が強く根付いているらしく、長を殺されたからと言って、復讐を誓うなんてことはないのだそう。まぁ、それも個体によるらしいが...。
こうして、牙狼族の襲撃は、こちらの勝利で無事、事なきを得たのだった。
牙狼族との戦闘を経た僕達は、ゴブリンたちと新しく仲間になった牙狼族たちを集めさせていた。理由は、今後の方針について話したいのと、
「今から君たちに名前をつけたいと思う。」
名前に関してだ。僕達はやはり元の世界の考えだからか、名前がないと不便だった。牙狼族やゴブリンたちは、個々で区別がついているようだが、僕達はそうもいかない。
あとは、僕達がヴェルドラに名前を付けてもらったときに、わずかながら強くなった気がしたからだ。もし本当に名付けによって強くなるというのなら、自衛のためにもやっておいたほうが良いだろう。流石に僕達より強くなって反乱ということは......ないだろう。
ヴェルドラも名前を付けるときに種族としての格が上がる、と言っていたし、強くはなるんだろうな。
そう思って提案したのだが、ゴブリンや牙狼族たちは喜ぶよりも先にこちらを心配してきた。何か制約でもあるんだろうか?
『解。魔物における「名付け」とは一種の儀式のようなものであり、名付け親と対象に魂の回廊がつながり、能力の上昇、種族の進化が発生します。ただし「名付け」には必要量の魔素がエネルギーとして必要であり、一般的には「名付け」を行うと、名付け親の魔素が消耗され最悪、死に至ると言われています。』
……大変なことを聞いてしまった。つまりは「名付け」は死を覚悟して行うものだと言うことだろうか?そりゃみんな動揺してこっちの心配をしてくるわけだ。
そうなると名付けはやめておいたほうが良いのだろうか?
『解。「名付け」による魔素の消費は、対象との格の差によります。主様や個体名:リムル=テンペストは個体名:ヴェルドラとの名前共有により種としての格が上がっているため必要魔素量は少なく済みます。また、ユニークスキル「捕食者」を通して個体名:ヴェルドラから魔素を供給することも可能となっているため、主様方が死亡することはありません。』
…都合が良すぎる気もするが、まぁ大丈夫ということだろう。
とりあえずリムルにも大丈夫そうだと話して「名付け」を始めた。基本的にはリムルが付けるという形で進めていった。
ゴブリン全員の名付けが終わり、次に牙狼族の番になったのだが、長の息子の牙狼族に名前をつけた途端、リムルがなんか溶けてしまった。
……いや、やばくない?死ぬ危険性はないって言うからやっていたけどこれって本当に大丈夫なの?
『解。これは魔素の消耗による、一時的なスリープモードです。約3日間続くと思われます。』
大丈夫そうだった。とりあえずあたふたしている皆に事情を説明して落ち着かせたけど、まぁ3日くらいなら起きるまで気長に待とう。