〈リムル視点〉
しばらく牙狼族と戦って、長が攻めてきたので拘束した。
硬いと言っても糸であることに違いはないので、切られないか不安だったが、大賢者さん曰く問題ないとのこと。
「どうだ、これでもまだ降参はしないか?まだやるつもりなら、俺はお前を殺すぞ?」
あまり戦いたくはなかったので、少し威圧も含めた声で訊いてみたが、
「ふん、スライムごときに情をもらうくらいなら死んだほうがマシというものだ。」
どうやら諦めるつもりはなさそうだ。ゴブリンたちとの約束もあるし、復讐とかに来られても困るだけだから、殺すしかないのか...。
この世界に来て、初めて意思疎通のできる相手を殺すとあって少し気が引けたが、俺は覚悟を決めて殺すことにした。
「それじゃあな、せいぜい攻めてきたことを後悔してくれ。」
そう言って糸を縮めて、長の体を細切れにする。その瞬間、
「いまだ!やれ!」
突然長がそういった。そしてそのまま死んでいった。
刹那群れの一体、長のそばにいた屈強な牙狼族が糸が少なくなったのを見計らって、村の中に入ろうとした。
少し動揺していた俺はすぐに反応することができなかった。
(まずい!このままだと村が全滅する!)
そう思い、飛び出そうとした瞬間、俺の目の前には、
牙狼族を片手で受け止める、クロスの姿があった。
(え...?クロス...!?片手で受け止めた?なにかスキルでも使ったのか?)
『告。個体名:クロス=テンペストがスキル、及び魔法を使った形跡はありません。あれはクロス=テンペストの純粋な技術、体術と推測されます。』
大賢者の判断に俺はさらに驚いた。自分と同じ地球出身の元人間があれだけ大きな獣相手に体術で勝つなど想像できなかったからだ。
クロスはそのまま牙狼族を押し返し、何かを呟いたかと思うと、空中に舞っている牙狼族を倒した。やられた牙狼族は、ナニカに噛みちぎられたように首が切れていて、一瞬で死んでいることがわかるような状態だった。
(これは、後でしっかり問いたださないとな...。)
とりあえずは一件落着ということにしておこう。
〈クロス視点〉
リムルが長を捕らえたので安心していたんだが、長の死ぬ前の合図で群れの一体が村に向かってきていた。
(なるほど、これを狙っていたのか...。というよりも、保険って感じだな。)
『告。ユニークスキル「破壊者」で対象を「破壊」しますか?Yes NO』
(うーん、今はいいや。それも試したいけど、今回は久々に体を動かしたいな。)
管理者が撃退法の提案をしてくれたが、今回は断った。
ということで、僕は向かってくる牙狼族の前に立った。
「人間だか魔人だか知らんが、ガキに負ける俺ではない!」
牙狼族が挑発的なことを言っているが、僕は気にしない。ゆっくりと重心を調整し、
「ふっっ!」
右手で突進を受け止めた。舐めていた相手に簡単に止められてしまったことで牙狼族たちは驚いていた。
(うーん、こっちに来て初めての肉弾戦だけど、感覚はそこまで鈍ってないな。むしろ体が変わったからか、向こうの時よりも動きやすい気がする!)
そして僕は受け止めている牙狼族を倒すため、受け止めている右手に力を入れて押し返した。このとき体から何かが出て、いつもより力が増した気がしたのだが...。
『解。主様の固有能力「操気」によって「気」が放出されました。「気」は各個体に備わるエネルギーで、魔素などと似たものとなっています。』
と、管理者からこのような返答を頂いた。色々と応用のききそうな力だ。これは試してみないといけないものが増えてしまったな。
(面白そうだし、体にまとわせてみるか。...おっ!なんかすごい力が増す感じがする!それじゃあ今回は狼が相手ということだし、この技にするか!)
そして僕は、両手を前に出し、まるで狼が敵を噛みちぎるように牙狼族の首に向かって腕を振るった。
「秘獣流拳法......剛喰・狼......!」