シャーレの先生追放計画《集いし4人は無関心》   作:ルルザムート

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前回-2th②だったのを間違えて-2th③で投稿していた話…
ま、まぁ物語の進行自体に間違いはなかったからヨシ!
というわけで-2th③です、お楽しみください


-2th ③

-2th ③

 

「…嫌な気持ちだ」

空崎先輩の家を後にし、重い足取りを取りながら呟く

 

言うべきじゃ無かったという心と言ってよかったという相反した心がぶつかりあっている

正直に言えば空崎先輩にはキヴォトスに残って欲しい

 

『それだけ動ければ充分頼りになるわ』と

そう言ってくれたあの場面が反芻する

 

空崎先輩に認められたのが嬉しい、もっと努力すればもっとたくさんの言葉や想いをかけてもらえるかもしれない

 

…だが空崎先輩にも俺にとっての彼女のような存在がいる。それがシャーレの先生だ

残って欲しい、行かないで欲しいと俺が思うように空崎先輩も先生と離れたくないだろうし、一緒にいたいはずだ

 

先生をキヴォトスに残す選択肢はもう無い、それをやれば狐坂ワカモが俺を潰しにくる

ならば…本当に空崎先輩を想うのなら率先して彼女を送り出すべきなのではないか?

 

一瞬だけなら剣先さんクラスの相手と渡り合えることは既に証明できた、俺と空崎先輩が組めば切符を掠め取ることも簡単に──ああクソ

 

「そうなったらゲヘナのトップを狙うどころじゃなくなるかもしれないな」

「ほう?貴様はこのマコト様よりも上を目指すと、そういう訳だな?」

「一応な、分かりやすい目的ではあるから──ってウオワッッッ!」

 

とんでもない人物の出現にアホみたいな声が出る

 

「は、羽沼議長!?な、なんでこんなところに!」

「キキッ、さてなぜだろうな?…だが良いところで出会ったな火神ドグマ、帰宅部なら暇だろう。一緒に来い」

 

空崎先輩の話を聞いてなにかしらのコンタクトがあると思っていたがまさか議長自らやってくるとは…

 

しかしなんでだ?俺の名前もそこそこ有名になってくれたのは嬉しいが流石に議長自ら出向くほどのことじゃないと思うが…ん?

 

前を歩く羽沼議長の右手には某スイーツショップの紙袋、中身は…一瞬見えた感じプリン?

「イブキさんのプリンを食……いえ、買いに?」

「キ、ま、まぁそうだな。やはり贈り物は贈る本人が調達してこそ意味があるものだからな」

「・・・」

 

アンタまた他人のデザート勝手に食ったのか…

当番の時先生がボヤいてたの聞いたから知ってるが、そうかまたやったのか…

 

エリートの集う万魔殿、それを束ねる羽沼マコトという生徒。とはいえ俺は別の奴に投票してたしそもそも雑な奴らしかいないゲヘナでエリートと言ってもなぁ

 

のし上がりたいとは思うがコレの下にはあんまりつきたくない、入るとしても当分は丹花イブキか棗イロハのどちらかの指揮に入りたいな…

 

なんて、呑気なことを考えていた俺の予想はあっさりと裏切られ…てもいないが、それが霞むほどのトラブルに巻き込まれる事になる

 

──その日、俺は万魔殿に拷問を受けた

 

 

 

 

 

「うひゃひゃひゃあはっはははっはっ、やめ、おい、このっ、やめわははははっ」

「ほーら、早くゲロっちゃってくださーい!

じゃないともっとくすぐりますよー?」

 

くっ、クソが!?なんでこうなったんだ!

 

「七囚人一歩手前と言われる映画狂い!

あの妙奇ロハンと何か企んでいるのは知ってるんですからね!

 

加えてトリニティへの潜入と正義実現委員会との模擬訓練…狐坂ワカモとの密会…

どう考えても特ダネの予感!

ゼッタイ吐いてもらうよー?」

 

万魔殿の下っ端3人からがんじがらめに拘束され、無防備になった脇とか足とかを元宮チアキは羽ペンみたいなものでひたすらくすぐってくる

 

「だ、だからっなんのことだかばひゃひゃひゃひゃっ!!」

ちくしょう誰が吐くか!早く、早く諦めろ…!

 

笑いすぎるあまり涙まで出てきた、剣先さんに首絞められた時がおままごとに思えるほどにキツい時間が続いていく

 

たかがくすぐりで?と思うかもしれないがくすぐりというのはかなり苦しい、まず暴力や毒物による苦痛ではないため堪えようがない

 

また『笑う』という行為は必然的に肺の中の空気を強制的に外に出すと同時に呼吸をも止められてしまうため息ができない

 

さらに拷問する側が使うのは羽ペンだけ、殆ど労力を使わないため何十分、何時間でもできる

だから疲れて止める、というのも期待できない

故にただ諦めてもらうことを願うしかないのだが…

 

「むぅ、強情ですね…こうなったらあなた達にも手伝ってもらいます!」

と、新しい羽ペンを拘束係の万魔殿生徒に手渡すチアキ

 

コイツいかにも無害そうな顔してるくせになんてことしやがるんだこの女!

「キキッ、様子はどうだチアキ」

 

と、俺をこんな目に合わせた元凶が部屋に入ってきた

羽沼マコト…!話す間も無く拷問送りにしやがって、空崎先輩にも嫌がらせしてるし…万魔殿という組織は好きだが、こうして考えるとロハンより腹の立つ相手だ

 

「それがぜーんぜん、ホントに何も知らないんじゃないですか?」

「はーっ、はーっ、だからっ…さっきからそう言ってるだろ!

ここ最近懐が厳しいから金でロハンの映画作成に協力してるだけだって!

七囚人と繋がりがあるのもロハンだけだ!アイツに聞けよ!」

 

最初、この言い分で元宮チアキを押し切れそうだったのだがマコト議長が電話を介して完全否定。曰く『火神ドグマ自身の動機と映画以外の目的が必ずある』と

 

特に何の根拠も提示されないまま元宮チアキはそれを信じて俺を拷問し続けているというわけだ

 

「キキッ、違うな火神ドグマ。お前のことは以前から目をつけていた、このマコト様には分かるぞ。お前は金で靡くような女ではないとな

 

そしてゲヘナのトップを狙い、ゲヘナ生でありながらこれまで勤勉に…そして真面目に動いてきたお前が急にあの妙奇ロハンと手を組み始めたのには必ず理由がある

 

多少印象を悪くしてまで組んだ理由は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということまでは分かるが具体的に何をするのかまでは直接聞かなければ分からない

 

…そろそろ喋ってくれないか?」

 

俺の頬に手を添え、無駄に整った顔で覗き込みながら『マコト様からの《お願い》だ』なんて言ってきやがる

 

くっ!腐っても万魔殿のトップというわけか?ロクに話したことも無いのにかなり読まれているぞ…

 

だがこれは百鬼夜行の密会以降の動きに関して完全には把握できていないことの裏付けにもなる

 

おそらく俺は完全にマークされていたのだろうが狐坂ワカモがロハンの側に付くようになった以上、ロハンをマークするのはもう不可能だ

 

実際に元宮チアキから『ロハンにつけていた万魔殿生徒は全滅した』という話も聞けた

加えてこいつらはラミィとフクヨの関与を(多分)知らない、俺がシラを切り通せばまだなんとかなる

 

「ぜー…ぜー…何度も、言っているように俺はなんにも知らない、来週のどこかで映画撮影の協力が欲しいと、言われただけだ…!」

「…喋る気は無いか、よし再開だチアキ、くすぐり倒してしまえ!」

「いえっさー!」

 

と、今度は元宮チアキに加えて拘束係も2人参加するらしく羽ペンが迫ってくる

 

「あのー、早いところ喋った方がいいと思いますが…」

うるさい、放っとけ

 

「『耳べろべろ』と『耳ぺろぺろ』どっちがいい?」

何言ってんだコイツ???

 

様子のおかしい万魔殿生徒をよそに拷問再開、3倍化した羽ペンが襲いかかってくる──

 

ぺろ

 

のに加えて耳元に感じる突然の舌!

「ヒャア°ッッッ、なにしやがんだぁっ、

あっ。」

 

ぺろぺろぺろぺろぺろ!!!

 

「にゃひへぇェェェッッ!??」

生暖かくて湿った異物が耳の中をぐりぐりほじくり返してくる!

 

「うわっ」

「キ、おい少しやりすぎじゃないか」痙攣してるぞ

 

「ぺろ、何言ってるんですかマコト様。ゴーモンしてでも聞き出せとの指示を忠実に守っているだけですよ

 

さぁ火神ドグマさん、◯ボタンを押せばLIFEが回復します。服従したければセレクトボタンを押してください、LIFEが無くなるとゲームオーバーですよ」

 

ドン引きしている2名の拘束係、マコト議長と元宮チアキをフルシカトして猫っぽい視線を向けながらソイツはにじり寄ってくる

 

「はひ、ひっ…だからっ、何言ってやがるんだ!

は、離せ!」

 

どんっ! ぺろっ

 

「ひゃひッッ…!?」

 

ぺろぺろべろぺろぺろぺろ!

 

「ひあああああっ!!耳はやめてぇぇぇ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拘束係モブC「すいません、つい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後…

 

 

 

がちゃん!

「ぐふっ…」

「マコト様からストップがかかってしまうとは…残念です。ではまた後で」

 

例のあたまおかしい万魔殿生徒に連れられ、牢屋──ではなくなぜか

 

「・・・あなたも災難ですね」

「ええ、お互いに…なるべく早く出ていくよう努めますので…」

 

棗イロハの家へと放り込まれた

心の底から気の毒だと憐れむ視線も、今だけはどうでもよかった

というかあの状況に比べればどんなものでもマシだ。なんだよアイツ、万魔殿よりシスターフッドの方が似合ってるだろ

 

「別に構いませんよ、私自身も謹慎中でして

話し相手がいた方が気が楽になります」ほら、立てますか?

 

「謹慎…?」ええ、なんとか

「少々サボりすぎてしまいまして、まぁ私がいないと回らないような業務も無いのでこれ幸いという感じで堂々とサポってるんです」ココアでもどうぞ

 

…なるほど、4日前に丹花イブキと先生が一緒にいた時どうしていつも一緒のはずの棗イロハが近くに居ないのか不思議だったがそういうことか

 

お礼を言ってココアの入ったカップを受け取る

質素なリビングに置かれた大人しい色のソファを勧められ、腰をかけてココアを一口…

…美味いな

 

「ところで…私の間違いでなければ火神ドグマさんですよね?」

「ええ、そうですが」

 

何気に彼女にも知られてるのか俺。

 

「私からすれば胸焼けするくらい真面目なあなたがいったい何をしたんですか?」

 

これじゃまるで囚人、良くて捕虜ですよ。と隣に座りながら質問するイロハ

…もちろん答えられるはずがないが

 

「何もしてませんよ、羽沼議長がただ言いがかりを付けてきているだけです

おおかた風紀委員会に手を貸している私が疎ましかったんじゃないですか?」

 

「どう、でしょうか?マコト先輩はかなりバカですしマヌケですが…」

…自分の上司に対してめっちゃ言うなこの人。

 

「しかしあの人は情報を集める力と人を見る目だけは一級品です。

あなたをここに連れてきた生徒を見るに…《彼女》に尋問を受けた後でしょう」

 

一言も話してないのによく分かるな…

 

「マコト先輩ならそもそも尋問なんて必要ないんですよ、いつの間にか外で情報を仕入れて勝手に完結してるんで。

 

そういう人がわざわざ尋問までさせるということは…余程丁寧に隠し通しておきたいことがある…というふうに見えるんですが」

 

羽沼マコトに対する信頼が変なところであるせいか面倒なことになってきている

だが所詮はただの憶測や推測でしかない、彼女が計画に近付くことはないだろう

 

「まぁ、話したくないならいいですよ。特段聞きたいわけでもないので」

めんどくさいですし…と彼女が伸びをする

 

「そうそう、これ返しておきますよ」

「え?…これをどこで?」

 

差し出されたのは久田イズナから貰った忍具袋とロケットスター2丁、弾丸BOXもしっかりある。拷問前に取り上げられていたこれらをどうして…?

 

「イブキがあなたに返してあげて欲しい、と持ってきた物ですよ」今度会ったらお礼の一つでも言っといてください

「…分かりました」

 

どうやって取り返そうか考えていたからこれはありがたい。これなら万魔殿に戻る必要はなさそうだ

 

俺の扱いはほとんど捕虜だが別に棗イロハの家に鍵はかかっていない、出て行こうと思えばいつでも出ていける

羽沼議長は代えのきかないロケットスターを取り上げることで脱走を防止しようとしたのだろう

 

「しかし…私を行かせてもいいんですか?」

見逃してくれるならそれに越したことはないが

 

「『監視しろ』とは言われましたが『脱走を阻止しろ』とは言われてませんので」

「ふふっ…すごい屁理屈ですね」

「上手にサボるためには屁理屈が上手くないと困りますから

…私に言わせればあなたは少し真面目すぎる」

 

俺のコップが空になったのを俺よりも早く気付いた棗イロハが2杯目を注ぎながら言う

 

「風紀委員長のようなスペックやメンタルならそれでまかり通るでしょうが…

あなたのそれは多分長続きしない」

「…少なくとも今現在までは続いていますよ」

 

「確かに、ですが休む理由が壊れたからでは遅いと思うんです

休まないにしても…自分の胸の内を誰かに話すくらいはしてもいいんじゃないですか?」

「………」

 

イロハはそれまで一口も付けていなかったココアを一気に飲み干し、気怠そうな、それでいてどこか相手を気遣うような視線でまっすぐに射抜いてくる

 

「別に、口外しませんよ。面倒ですし、ただイブキも私もアナタのことは気に入っているんです

このまま黙って潰れていくのを見るのは少し後味が悪い

…話してくれませんか?」

 

心から心配してくれているのが伝わってきて口元が緩む

 

──いや

「…伝えたい人には伝えました

棗さん、俺なら大丈夫です

イブキちゃんにもそうお伝えください」

 

心遣いはありがたい、だがいくら口外しないと言っても彼女の所属は万魔殿。

空崎先輩の選択が終わるまで万魔殿はもちろん、他の誰にも話すわけにはいかない

 

「…これで失礼させていただきます」

「アナタが決めたことならこれ以上の詮索はしませんが…それとは別に聞いてもいいですか?」

「? なんですか?」

 

何故か窓の外を指差す棗イロハだがすぐに意図が分かって窓を開ける

 

「ターゲットを発見したわ!助けに来たわよ、火神ドグマ!」

「陸八魔アル…?」

というか便利屋68全員来ている、いったい何故?

 

『酷い有様じゃあないか、ドグマくん?

その様子だと万魔殿に余程絞られたようだねぇ』

「うわっ」

 

前触れなくケータイからあいつの声がしてちょっぴりビビる

 

「お前かよロハン!驚かすな」

『助けを送ってあげたのに酷い言われようだ

キミが捕まったせいで予定にない出費とスケジュールを組むことになったんだから反省して欲しいものだがねぇ』

 

ということは便利屋を向かわせたのはロハンか

…あいつ地味に金持ってないか?

 

「社長、風紀委員に気付かれた。早く離れたほうがいい」

「えっ、あ、そうね!で、でも万魔殿の生徒がそこに…」

「邪魔ですか?邪魔なら吹き飛ばします!アル様の邪魔をするというのなら全部私が…!」

「ストップストップ、それをやるとターゲットも吹き飛ばして依頼失敗しちゃうよー?」

 

「………私はドグマさんを見張っていろと言われただけで逃走を阻止しろとは言われてないので連れて行きたいならどうぞ」

「えっ、そう?それならそれで…」

「社長、ドグマさん、早く。風紀委員が押し寄せてきてる。風紀委員長は居ないみたいだけど」

「よ、よし!回収するわよ!さぁドグマさん、こっちに!」

 

その後、俺は便利屋に救出されゲヘナ自治区内を出た。

万魔殿に狙われ、また指名手配の便利屋と共に行動しているのを多数の風紀委員に見られたためゲヘナ内に留まるのは不可能というロハンの見立ては正しいのだろう

ひとまず俺の拠点はゲヘナから百鬼夜行に変わりそうだ…

 

 

 

 

 

「………はぁ、疲れました」

火神ドグマがいなくなってさっぱりとした部屋の中、ココア…はもう無くなったのでお茶を飲んで深呼吸。

 

ちなみに彼女たちは居なくなったが部屋には別の客が来ていた

「キキ、どうだイロハ?火神ドグマはお前に何か打ち明けたか?」

「別に何も、そもそも例の生徒の拷問で何も喋らなかった以上初対面の私に話すとは思えませんが」

 

「打ち明けなかったのか?…妙だな、奴ならお前には話すと思ったんだが」

「話聞いてました?彼女と繋がりなんて無いですよ私」 

 

「いや、マコト様の見立てに間違いは無いはずだ。お前が火神ドグマを気に掛けているのは事実、心からの気遣いには緊張も緩んで気を許すはず。…ならば、よしイロハ!」

 

スック、と立ち上がる議長に嫌な予感しかしない。今度は何をやらせるつもりですか…

 

「なんですか、まさか私1人で火神ドグマを追いかけろと?」

「キキ、違う。おそらくドグマはもう何も語らない。だが奴の性格上、手を組んでいる者以外の誰かに打ち明けたかもしれん、それを探すぞ」

「・・・あー…」

 

《伝えたい人には伝えました》

 

確かに火神ドグマはそんなことを言ってた気がする

この人、バカだけど有能なんですよね…バカだけど。

 

「…分かりましたよ、どこから探します?」

「まずは風紀委員会、空崎ヒナに決まっているだろう。奴がトップを目指していることは確定しているからな、ゲヘナ内で話すとすれば風紀委員会か万魔殿の有力者だ。

よく差し入れとかしてるみたいだしそこから当たるのがいい

万魔殿は私が調査するからお前は風紀委員会に行け」

 

今からだぞ!と言ってくれちゃってるマコト先輩にまたしても頭を抱えながら私は仕事の準備にかかるのだった




ワカモの全てを肯定したらどうなるか気になる作者のルルザムートです、ハイ。
万魔殿は尋問、拷問もギャグであって欲しい故の凶行。
あとマコト様は先生になって初めて引いたガチャから出た生徒なので割と思い入れがあったりする
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