シャーレの先生追放計画《集いし4人は無関心》 作:ルルザムート
…-2th ⑤です、お楽しみください
百鬼夜行連合学園の宿にて…
『………距離近いんじゃない?私は生徒であなたは先生、誰でもかれでもそうやって近付くのは良くないと思うけど』
『あ、うん、そうだね。キョウの言う通りだ、ごめんね』ススッ…
がし。…ぴとっ
『別に、嫌とは言ってないでしょ。相手を選べって言ってるの
誰にでも優しくしてると、いつか勘違いした生徒に襲われるかもしれないよ』
猫の尾は不機嫌そうで、それでいて意中の男性を心配するようにゆらゆらと揺れていた
だが当の本人はそれに気付かない
『はは、カズと同じこと言われちゃったな』
『は?…誰、それ?』
揺れていた猫の尾が時を止めたかのように停止した
『え?いや、以前トリニティの生徒に──』
『私が目の前に居るのに他の女の話をするの?』
『え、えっ?ご、ごめん…』
『で?』
『へ?』
『誰なの?その女──』
パチッ
「やれやれ」
DVDレコーダーを止めて背伸び、ディスクをキチっとケースにしまってテレビの電源を落とす
「忍劇伝はメチャクチャ面白かったがオマケはイマイチ、というかよく分からん。なんだこの昼ドラ?」
多分映画とは別に出資者の依頼で作った映像か何かだろう、忍劇伝との落差が強すぎる
「ロハンが置いてった忍劇伝3部作全部見終わっちまったし………暇だな」
立ち上がってもう一度背伸びしつつ外の様子を伺う
ラミィと話をしてからというもの、俺は宿泊先の宿から一歩も出れずにいた
ただの見間違いならいいんだが…
『ゲヘナの風紀委員が百鬼夜行に来ている、かもしれない』と言うのはラミィの言葉。
よその学園に風紀委員が?とも思ったもののアビドスの一件を空崎先輩から聞いて知っていた俺はそれを否定できずにいた
やるとすれば天雨行政官だろうな、以前アビドス自治区に風紀委員をけしかけたことがあるらしいし。
便利屋と一緒にいる事実も知られてしまった以上動きにくいことこの上ない、銃器店を周っている間に遭遇しなかったのは運が良かったな…
コンコン
「ん?」
扉を叩く音…ラミィか、結構早く帰ってきたな
あいつは風紀委員会に顔が割れていない、特に用事も無いと言っていたので偵察を頼んでおいたのだ
「鍵開いてるぞ、入れよ」
特に見ることも無く入室を促しながらスマホをいじる
…?アイツ偵察に行ったんだよな、それにしちゃ戻るのが早くないか?まだ30分も経っていな──
「ん、獲物発見」
がし
「──んあ?」
どう聞いてもラミィではない声、どう見てもラミィではない獣耳
「誰だアンタ…いや待て、見たことある気がするぞ」
ひょい
どこだったか…そうだ!
「確かアビドスの生徒だ、風紀委員会の書類整理を手伝った時に資料で見た…って、なんで俺を担ぎ上げてるんだ?」
「ん、もちろん──」
銀色の獣耳をフヨフヨと動かし、さも当然と言わんばかりにその少女は俺を担ぎ上げて言った
「売り飛ばすため」
「──は?」
行っている意味が分からないドグマだったがアビドス生徒の腰ポケットから飛び出しているゲヘナロゴマークがついた手配書が答えを教えてくれた
「え」
"火神ドグマ 賞金首"
ショーキンクビ???賞金は0が1つ2つ3つ4つ5つ6──
「はぁ!?なんだよこの額!」
「生捕り限定だから面倒、だけどこの額は魅力的。だから──ん、賞金首を攫う」
「んなぁーっ!?おいやめろ!あ、待ってジャンプしないで!ここの扉高くないから
ごしゃっ!
「ぎゃぴぇっ」
ぴょーん、と颯爽に去っていく謎の生徒が謎なジャンプをしたせいで俺の後頭部が扉上部の壁に激突、一瞬にして意識を奪われてしまった
「ホシノ先輩、聞こえる?」
『良好だよ〜、火神ドグマは捕まえた〜?』
「うん、ここにいる。都合良く気絶してくれたし一度そっちに戻るね」
『りょーかーい、横取りされないように気をつけて帰ってきてねぇ〜』
「ん、分かった」
「ん〜↑美味しいわ!このお団子、いくらでも食べれるわね!」
店内の椅子に腰掛け、だらしない顔で3つ目のお団子を頬張る陸八魔アル
初めはアウトローとして情けない顔をしないと誓っていた彼女だったが数日間、百鬼夜行で食べ歩きをした結果その誓いはあっという間に砕け散った
「えーと、アルちゃん?」
「もちろんムツキの分もあるわよ」はいどうぞ!
「ありがとうアルちゃん、でも私が言いたいのはお団子のことじゃなくて…」
「? お団子の気分じゃなかった?」
「そうじゃなくてね、ムツキちゃんの見間違いでなければ──」
「…? あ、まさか…」
まさか風紀委員会が追ってきたのだろうか?でも服装を変えて完全に百鬼夜行の一員として潜り込めている以上、すれ違ったくらいじゃ気付かれなかったし…
「社長、まずいことになった。
…火神ドグマが攫われた…!」
「・・・」
な、な、なんですってーっ!?
がちゃん!
「ぐふっ…」
「ん、万魔殿の生徒が来るまでそこで待ってて」
デジャブを感じる乱雑さで建物に放り込まれ、そのまま閉じ込められた
「くそっ、俺が何したってんだよ…」
作戦が終わった後に狙われるのはある程度覚悟していたがまだ何もしていないのにこんな目に遭わされては流石にたまったものでは無い
それもこれも全部羽沼マコトのせいだ、俺みたいないち生徒にアホみたいな懸賞金をかけやがって…
しかも出所を考えると風紀委員会の予算から出している可能性もある
「っチ…」
もうトップがどうとか関係ねぇ
どんな手を使おうと上に立って奴を、羽沼マコトをアゴで使ってやる!
とりあえず靴裏に仕込んでおいた小型ナイフをメチャクチャ頑張って取り出し、手首と足首の縄を切る
ロケットスターを始めとした武装の殆どは置いてきちまったしスマホも宿だ、持ってるのは…
「…お?」
ピストル1つ持っていなかった俺だが不幸中の幸いというやつか、服の内側に入れていたイズナの忍具袋をあの生徒は見落としていたようだ
「………よし」
脱出するか!
「シロコちゃんお手柄だよぉ〜」ナデナデ
「ん…♪」ホクホク
尊敬する先輩に褒められ、ご満悦の少女…
対策委員会の札がかけられた一室には少女と少女の先輩の他にも数人集まっていた
「それにしてもラッキーでしたね、まさかこんな高額な賞金首がいたとは…」
「で、でもノノミ先輩、相手は他校の生徒ですよ、いくら指名手配されてるとはいっても…」
「別にいいじゃない、ゲヘナ学園がゲヘナ生徒を捕まえてくれって手配書を学園外まで撒いたんだから」
バイト代の何倍あるかしら?と、もう1人の獣耳生徒が顎に手を当てて考えているが異議を唱えていたメガネの生徒はあまり納得していないようだ
「そもそもあのゲヘナ生は何をしたんでしょう、ここまで高額にも関わらず具体的に何をしたのか書いていないのはおかしい気が…」
「うへ〜、それに関しては心配しないでいいよアヤネちゃん
もし踏み倒されたり、詐欺とかだったりしたらその時は──ね、シロコちゃん」
「ん、万魔殿を襲う」
だよねぇ、なんて笑う桃髪の生徒。ほのぼのとした空気が教室に流れていたが──
どがんっ!
「「「「「!!!」」」」」
直後鳴り響いた爆発音はその空気を一瞬にして消し飛ばした
「っ…ホシノ先輩!」
「アヤネちゃんはドローンで学園周囲の状況を確認!ノノミちゃんはアヤネちゃんの護衛!
私とシロコちゃんで向かうからセリカちゃんはいつでも飛び出せるよう準備しておいて!
行くよ!!!」
「「「「はい!(ん!)」」」」
特殊部隊か何かと思わせる速度で役割を割り振り、いの一番に飛び出していく桃髪の生徒。銀髪の彼女もそれに続いた
「うへぇ、今の爆発ってさぁ」
走りながら先輩が聞いてくる
「…うん、賞金首を閉じ込めてる方から聞こえた」
「誰かが助けに来たのなら感知されてるはずだから…多分武器を隠し持ってたんだろうねぇ」
「………ごめんホシノ先輩」
「んー?シロコちゃんが謝ることじゃないよ〜
正直言うと攻撃しないで無力化するのはおじさんよりシロコちゃんの方が得意だからねぇ
シロコちゃんが気付けなかったのなら他の誰にも無理だったよ
気を落とさないで、ね?」
こんな時にも先輩は優しい、いやこんな時だからこそだろうか
そんなことを考えていると監禁場所についた、のだが
「うへぇ、見事に内側から爆破されちゃってるねぇ」
内側から吹きとばされたであろう扉と、火薬の跡に残る足跡は獲物が外に逃げ出したことを示していた
「ん、まだそう遠くには逃げてないはず」
「砂漠に出られたら色んな意味でマズいねぇ、探すよシロコちゃん!」
そこで先輩と別れて捜索開始、せっかくの高額賞金首…ここまで来て逃がすのはあまりにも惜しい
逸る気持ちを抑えながらもアビドス学園の生徒たちの意識は自然と学園の外に向いていた
獲物を逃すまいとするのもそうだが土地勘の無い生徒を砂漠のど真ん中に出すわけにはいかないという気持ちが強かった
行ったか?
「・・・よし、行ったな」
──故に
トンッ
「っしょっと、『天井張り付きの術』〜
…なんてな。まずは地図と移動手段を探そう」
ドグマが監禁場所から出てもいないことを気付けた者は1人もいなかった
そして…
「…よし」
地図ゲット、あとは移動手段だな…
地図を手に入れる前は『最悪移動手段は無くてもいいか…』なんて思っていたがとんでもない
フザけているとしか思えない面積の砂漠から徒歩で出ていくのは普通に死ぬだろう
というわけで探すのは車の鍵だ、外は無人偵察機(ドローン)が飛んでるが車さえ手に入れれば振り切るのは容易いはずだろう
既に車は見つけてる、地下倉庫でも無い限りあれ1つだけだ
周囲への警戒をしながら校舎の中をゆっくり探索、1つ1つの教室を調べていて──見つけた
半端に開かれた扉の隙間から見えたのは壁にかかった車の鍵、ご丁寧に車と同じナンバーが書かれた札がセットだからよく分かる
よし、あれをいただいてさっさと──うん?
「………?」
なにか、なにか変な感じがする、ここだけ空気が違うと言うか…
いったい──あ。
「…」
…なるほどな
そういうことかと納得し、俺は何食わぬ顔で部屋の中へ
「………」
「よしっ、あったぞ」
念願の車の鍵を手に入れ、とっとと出てこうと出入口に──「ん、終わり」
狼の如く真横から飛びかかってくる誘拐はn…アビドス生徒、だが誰かがいることは想定済み!
「お前がな…!」
「んっ!?んーっ!!!?」
掴みかかってくる手をするりと避けて、逆に相手をフン捕まえる
遅い遅い!剣先さんのとは比較にもならねぇな!
「み、みんなここ!ここに賞金首がむぎゅっ!」
「大人しくしてろ…よっと!」
壁登り用の縄で手早く手足を封じ、余った縄で猿轡も付ける
「悪いが俺が逃げ切るまでここに居てもらうぞ」
「むー!むー!」
からっぽの掃除用ロッカーにソイツを押し込み、教室を後にする
ついでにコイツの銃も貰っていくことにした、弾丸も大して入ってないが丸腰よりマシだ
「っと、早速役に立ちそうだ…!」
学園周囲を警戒していたドローンを撃ち落とし、窓から飛び出して車へダッシュ!
ドア、車と素早く鍵を差してエンジンをかける
黒髪獣耳とミニガンの奴が走ってきているがこの距離なら充分だ
「じゃーな!!!」
間に合わなかった2人に手を振ってやりながらアクセル全開、2秒で引き離して砂漠へとハンドルを切った
撃たれるんじゃないかと僅かながら心配はあったが追撃は無い、振り切ったようだ
「ふぅーっ、案外なんとかなるもんだな」
捕まった時は終わったかと思ったが…学習しない俺じゃない、さぁ早いとこ百鬼夜行に戻
チャキッ
「………えぇっ…?」
「うへぇ、ここで待ってて正解だったねぇ
…さぁ車を止めて」
後部座席から伸びてきた冷たい鉄がこめかみに押し付けられている
そしてバックミラーに映る彼女の姿には見覚えがあった
「──アビドス高等学校3年生、対策委員会委員長の小鳥遊ホシノ…」
「うわぁ、おじさんも有名になったねぇ。まさかゲヘナにまで名前が知られてるとは思わなかったよー
…それはそれとして車を止めて、3度目は言わないよ」
ゼロ距離でショットガンを構えるというとんでもないことをされていては従うしかない、とりあえず車を止める
「ま、色々と言いたいことはあるんだけどさ
…その銃、誰から奪ったの?」
と、どうやら彼女の関心は俺と言うより俺がアイツから取り上げた銃にあるみたいだ
「…俺を攫った奴から取り上げたんだよ」
「………その生徒はどうしたの?」
「縄で縛って掃除ロッカーに放り込んだ」
「…へー、そう」
少しだけ彼女の威圧感がおさまった気がした
…まさか俺が殺したとでも思ってたんだろうか?流石にそんなことするわけ──あ、今の俺って指名手配されてる凶悪犯か
くそ、それにしても小鳥遊ホシノをここまで近付けてしまうとは迂闊だった
トリニティの剣先ツルギやミレニアムの美甘ネルといった最強格の中でも特にヤバい相手なのに
万全の空崎先輩を正面から叩き潰せるとかありえねぇだろ…!しかもアビドスの財政を考えるに風紀委員会よりも装備のランクは下のハズ、その上での強さを持ってると考えると例えロケットスターがあったとしてもこんなのと戦えるわけがない!
「…見逃してくれないか?壊した校舎とドローンの費用は弁償するから」
なんとか命乞いをしてみるが聞いてくれそうも無く、銃が引っ込んだ代わりに小鳥遊ホシノの細い腕がするりと首に絡んだ
「うへぇ、悪いけどそれは受け入れられないな
…大人しく降参するか、絞め落とされるか、どっちか選んで」
「ぐ…!」
まだ殆ど力は込められていないが小鳥遊ホシノがその気になれば一瞬で意識を奪うことくらい容易いだろう
ど、どうする?ここで連れ戻されたらもう脱出の機会は来ないぞ…!かといってできることなんて──
「え、えへ…全部吹き飛ばせばいいんですね」
「「え?」」
見覚えの無い、いやある。前から知ってたし、つい最近も見たことのある顔が後部座席の窓から俺たちを覗きこんでいて──
「ッッッ!」ゾッ
背中に氷柱でも入れられたみたいな悪寒が走り、無我夢中で腕を振り払って飛び出した!
「あっ!こら──
ドガーンッ!!!
「ひゃっ!?」
「ぶべえァっ」
直後背後から飛んでくる爆風を受け、ピヨピヨサンダル踏み潰したみてーな声が出て吹き飛ばされた
「うわ、わっ!大変!
ムツキ!カヨコ!彼女をこっちに乗せて!」
「はーい!」「了解」
頭上に《?》を浮かべた俺を便利屋2人がえっさえっさと別の車へと担ぎ上げる
「ハルカ乗って!逃げるわよ!」
「は、はいっ!アル様!」
炎上する車から無傷で出てきた小鳥遊ホシノを尻目に便利屋社長はアクセル全開で発進、
今度こそアビドスのバウンティハンター達を振り切った
「ひー…助かった、いやホントに助かった。ありがとう社長」もちろん社員の人たちも…
『僕にはないのかい?』
うっ!
鬼方カヨコから渡された俺のスマホから嫌な声が聞こえる
といってもこの場合は嫌悪感よりも耳に痛い意味でだが。
『…だから、余計な出費と時間を使わせないで欲しいんだがねぇ』
「・・・スミマセンでした…」
流石に1日に2回も攫われていては某桃姫様も真っ青である。
電話越しでも分かるため息を混じえて説教するロハンに、俺は小さな声で謝るしかなかった…
ワカモと一緒に台所に立ちたい作者のルルザムートですハイ。
ホントはこの話を半分ずつ投稿する予定でしたがちょっと短すぎたんで繋げました(脱出時に変に途切れてるのはその名残でさぁ)
それと投稿する前はロハンの一人称は《私》で通してましたが誰が喋ってるか一人称だけで分かった方が読みやすいのでは?と思い《僕》に変えてる…はずなんですがもしかしたら直し損ねてるのがあるかも…