シャーレの先生追放計画《集いし4人は無関心》   作:ルルザムート

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今回は逆に少し長め。
-0th 02h 20mです、お楽しみください


-0th 02h 20m

「………」ヒョコ

 

か、かっこよく引き受けたのはいいけれど…

「アレ全部、止めるの???」

 

侵略作戦かしら?とでも言いたくなるほど道を埋め尽くすトリニティ、トリニティ、トリニティ…

 

列を揃えて歩いてくるそれらはこちらを見つけた瞬間、我先にと殺到してくるだろう

「・・・とりあえず連れて来たけどむしろ危ないんじゃないかしら」

 

ムツキとハルカで抱えてるのはさっき無力化した聖園ミカ、ティーパーティの偉い人?を連れていればきっとロハンさん達ではなくこっちを追いかけてくると思って連れて来たけど捕まってしまっては意味がない

 

カヨコもどこにいるか分からないしどうしたら…

 

「…?アル様、あいつらの様子がおかしくないですか?」

「えっ?」

 

なんだか…慌ててる?

列を乱し始めたトリニティ生徒達、後ろで何かあった…?

 

「社長」ポン

「ギャァ「静かに社長、私だよ」

「カヨコ!?良かった無事だったのね!」

 

「こ、こんにちは…」

「あれ?フクヨちゃんじゃん、カヨコちゃんと一緒にいたんだ〜…ってその人は?」

「それは、ですね…あはは…」

 

あはは…

 

「   」カヒュッ

 

駅で行方不明になったはずのカヨコとフクヨ、そしてフクヨが抱えている簀巻きにされている見たことの無い生徒…

 

「えと、カヨコ?その簀巻きになってるのは…」

「ティーパーティのトップ、桐藤ナギサ。守りが薄くなった瞬間に攫って来た」

え!

 

「フクヨを通じてロハンから便利屋の動きについては聞いてたから

…これでトリニティは私たちを追わざる負えなくなった

使えそうな車も見つけた」

 

・・・これもしかしなくてもヤバいんじゃないかしら?権力者を2人も攫ってるし…

 

「社長が何を考えてるかなんとなく分かるよ

だから聞かせてほしい、今なら彼女とそっちの生徒を置いて逃げれば少なくとも今日便利屋は狙われない。逃げるなら今だよ」

「────」

 

確かにカヨコの言うことは正しい、トップ不在とはいえ流石にあの数相手を引き止めるのは簡単ではない

 

──でも

 

「いえ、残るわ。だって依頼はまだ完遂してないもの」

「うん、そういうと思った」でなきゃ攫ったりしなかったし

 

2人の生徒を抱えた上に私たちはたった4人、相手は大軍…正直かなり怖いけれど、それと同時に高揚もしてる

 

これに成功すればきっと便利屋の名前も一気に広まるだろうし何よりも

 

「…!社長?」

「あっ、アル様!」

 

表に出てティーパーティの軍勢と相対する

1人、また1人とこちらに気付き、動揺の波が静まっていく

 

この数相手に勝ち切るのって凄く…アウトローじゃない?

 

「聞きなさいティーパーティ!アナタ達が頼りにしている聖園ミカと桐藤ナギサは便利屋68が預かったわ!」

「ちょ、ちょっと社長!今やるのは…」

 

「なっ、なんだと!?」

「デタラメを言うな!」

「でも確かにナギサ様からの指示が急に…」

 

「ハルカ、ムツキ、見せてあげて」

「はいっ!」

「はぁい」

「2人もやめてって──」

 

無力化した2人を見せつけるように掲げさせ、静まったはずのティーパーティは混乱の極みへと──

 

「飼い主を取り返したければ追って来なさい

せいぜい私を楽しませてくれるといいけど。

ふふふ…あーっはっはっは!」

 

数え切れないくらいの生徒が私達に注目している。台詞はロハンさんの受け売りだがいつかは自分で考えられるようにしないと

 

「なんてこと、魔女はともかくナギサ様が…」

「いや、連中を捕まえればナギサ様に…」

「怯むな!この数なら一瞬で倒せる!突撃だ!」

 

地鳴りのようにティーパーティ達が向かってくる

よし、逃げましょう!

 

「カヨコ!車を出して、退くわよ!」

「だ、だから社長!車は見つけただけでここには無いの!」

「──え?」

 

「それにエンジンかけるのも少し時間がかかると思うし…だから今はダメだって…」

 

「「「「・・・」」」」

 

な、な、な、なんですってぇーっ!?

 

便利屋68、ティーパーティ足止めのため離脱

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

制限速度を大きく超えるスピードでの運転、ちょっと手元が狂ったら大事故まっしぐらなドライブだったが今聞いた話はそんな事実を忘れさせるほど衝撃的なものだった

 

「万魔殿が壊滅した!?」

ドライバーの万魔殿生徒からアホみたいな話が飛び出したが聞き間違いだと信じたい

 

「仕方ありません、万魔殿も全員がここに来るわけにはいかなかったのです

シャーレの先生が行方不明かつ空崎ヒナが不在の中、ゲヘナにも人員を残す必要があった」

「そ、そうは言っても…」

 

…俺の聞き間違いじゃなかったみたいだ

しかし羽沼議長と棗さん、風紀委員まで出て来ている以上相当本気できていたはず、それが壊滅したとなると…

 

「やったのはどこの勢力だ?」

多分ほぼ無傷の新しい軍勢が不意打ちでも仕掛けたんだろう、というかそれくらいしないと万魔殿は潰れないぞ

 

「1人」

「は?」

 

「相手は1人だったらしいです。私はそいつが来る前にこちらに向かっていたので見てはいませんが…」

「い、いや冗談が過ぎる!そんなことできる奴なんてそれこそ空崎先輩クラスの──待てよ?」

 

聖園ミカは無力化し、他の勢力もまだこの地区に来ていない

ロハンの奴が外にも警戒網を張っているから新しく何かがやってきたならネットニュースと合わせて分かるはず

 

「………もしかして桃髪のオッドアイなチビだったりしないよな?」

「それは──「っ!?止めろ!!」

 

キキーッ!

 

「わっ、たった、と…いきなりなんですか!」

いきなりなんですかはこっちのセリフだ、まぁコイツに向けた言葉じゃねぇが

 

「うん?あっ!アイツだ!アイツが万魔殿を全滅させた生徒です!」

「うわぁ、あれって…うわぁ。」

「爆弾で吹き飛ばした上に列車の下敷きにしたんだぞ、なんで平気なカオしてんだ?」壊れたのかショットガンは変わってるが。

 

「………」ギロリ

 

今日1番最初に戦い、かつ撃破したはずの生徒、小鳥遊ホシノが道路を塞ぐように立っている

 

俺たちのところに来たということは少なくとも先生の所在や目的地は知られていないようだが…

 

「──俺が相手をする、ロハンとアンタは先生のところに行け」

「1人で?無茶じゃないかい?」

「無茶だろうとやるしかない、それに俺でないとダメだ。俺の予知とエアダッシュが無いと間違いなく瞬殺される」

 

それに詳しいことは知らんが先生の転移にはロハンの知識が必要になるだろう

ムカつく奴だがここで失うわけにはいかない

 

車を降りて小鳥遊ホシノと再度対峙、こうして見ると結構ボロボロだが列車のダメージに加えて万魔殿と戦り合ったにしてはむしろ軽傷すぎる

 

「じゃ、ここは任せるよ」出してくれ

「おー、任せとけ」

 

小鳥遊ホシノには俺のエアダッシュを知られた、だが──

 

車が動き出し、当然小鳥遊ホシノもそれを逃すまいと飛び出した。それを

 

「ウリィヤァッ!」

「っ!?」

 

タイヤを狙い撃つより早くドロップキックを喰らわせて吹き飛ばす!

当たった…!?狙いが逸れればそれでいいと思っていたが

 

回避も盾の防御もすり抜け、エアダッシュによって加速した両蹴で一旦ホシノを追いやれた

だいぶ、いやかなり疲弊してきている!いくら空崎先輩と互角とはいえここまで弱っているなら…!

 

「す、すごい…ドグマさんって思ったよりも強いんですね…!」

「ボケっとするな!さっさと行け!」

 

こんな時にイチイチ車を止めるアンポンタンに喝を入れて追い出し、改めて小鳥遊ホシノと相対する

 

「おかしな手品を…!」

「やれやれ、割と本気で蹴ったんだが埃しか付かないとは泣けるな?」

 

飛びはしたが蹴り自体のダメージは殆ど無いらしい、しかも

 

「おかしな手品、か」

あの一瞬でカン付いたか、列車内でも使ってたとはいえ剣先さん以上に予知への気付きが早い

 

「急げよロハン」

 

前言撤回だ、これには勝てん

急げロハン、こんな怪物そう長くは止めてられないぞ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やぁやぁラミィ…あれ違った。山田マヤじゃないか、キミ再起不能(リタイア)してたと思ったけど』

「い、今はそれよりどうすればいいか教えろ!」

 

眠ったままの先生を抱え、1人ひっそりと転送装置へ辿り着いたマヤ。

転送装置と一緒に設置されていた通信機を使ったことによりようやく明確な先生の所在がロハン達に伝わったのである

 

『おいおい落ち着きたまえ、穴の横にベッドがあるだろう?』

「え、あ、ああ、見える」

『そこに先生を寝かせて、横の机の上のボタンを押してくれ』

 

ボタン…映画とかでよくある脱出装置とか自爆スイッチみたいにわかりやすいこの真っ赤なボタンか

「押した、次は?」

『以上。』

 

 

「へ?」

『あとは機械と私がやるから邪魔にならないところで昼寝でもしててくれ』じゃ。

「お、おい妙奇ロハン──切れた…」

 

見れば穴のちょっと横にホログラムでカウントダウンが表示されてる

この数字がゼロになった時先生は外の世界に戻るのかな?

 

ピリリリッ

 

「うわっ!…もしもし?」

『ロハンだよ、キミ今ヒマだよね?』

 

一方的に切っておいて今度は一方的に電話をかけてきて喋り出すという中々イラつく態度だが残念なことにマヤには怒る勇気など無くただ先を促した

 

「…暇だったらなに?」

『机の下に救急箱があるだろう?それをもって今から指示するところに向かってくれ

そこで合流しよう』

 

「救急箱…誰か怪我でもしたの?」

『どうだろう、怪我で済むとは思えないな…あ、今迎えが行ったみたいだから合流地点を更新しよう。救急箱は彼女に渡してくれ』

 

訳がわからないが救急箱が必要な以上急いだ方がよさそうだと結論付けて外へ飛び出す

…ネットニュースは烈火の如く更新されまくっている、他の人たちは大丈夫だろうか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「く、くっそ…!こんな強ぇの反則じゃねぇの…?」

「ハッ…ハッ…」

 

予知、エアダッシュ、残り少ないイズナの忍具、惜しみなく使って自分の身を守るのがやっとだ、これが小鳥遊ホシノ…

 

空崎先輩不在とはいえ万魔殿と風紀委員会が一方的にやられるとは思えない、そこでの戦闘のダメージは少なからずあったはず

だが目の前の生徒は多少フラつきながらも列車内で見せたものとあまり変わらない戦いぶりを見せている

 

「──先生は?」

「んな最高機密を俺みたいなのにロハンが教えるわけないだろうが、知りたきゃ俺を叩きのめしてロハンに聞くんだな」

 

とんっ

 

っ、来る!

 

射撃1、蹴り3、打撃2…!

 

「うぉあっ!?」

「………」

 

予知の通りに攻撃を避けるが弾丸、体力、忍具が凄まじい速度で減っていっている

そろそろ逃げないとホントに殺されるな…

 

しかしコイツは…俺の憶測に過ぎないが小鳥遊ホシノはまだ本気で戦っていない

本気でやれば一目散に俺が逃げると考えているからだ。…そしてそれは正しい

 

俺だって死にたくはない、空崎先輩や剣先さんとは違う。格上から本気の攻撃を喰らえば命に関わるかもしれない

 

だから手を抜いている。エアダッシュに目を慣らしつつ、俺が背を向けて予知ができなくなったその瞬間に本気を出して叩き潰す腹づもりだろう

 

適当に時間を稼いで逃げるつもりがもう逃げられなくなってしまった

ロケットスターの弾丸はまだまだあるがイズナの煙玉は残り1つ…

 

予知とエアダッシュだけじゃ小鳥遊ホシノの攻撃を凌ぎきれない、死なないにしてもまず間違いなく半殺しに遭う

 

「やれやれ…」

さてどうするか?期待したいのは空崎先輩が復活して駆け付けてくれることだがあの様子ではまだ無理だろう

 

他の味方は…期待できない、そもそも他を行かせるために俺が足止めしてるんだ。誰かが戻って来ることは考えにくい

 

でもなぁ、期待したい。率直に言って小鳥遊ホシノがメチャクチャ怖い。聖園ミカはまだ良かった、目に見えて弱ってたし近くに味方がいて何よりもキレまくってるのがすぐに分かったから

 

でもコイツは…

 

「……………」

「──勘弁してくれ」

 

左右で色の違う瞳は真っ直ぐに俺を射抜いているのに何を考えてるかまるで分からない

虚ろに見据えながら銃を構えるそれは人というより感情の無い暴力装置にも見える

 

もちろん先生を取り返したいという動機があるから感情無いってのはないだろうが…

捕まったら最後、無表情のまま首でも締めてきそうな雰囲気だ。…いやホントに怖い!

 

ピクッ

 

! 射撃が来る!

 

「くたばれっ!」

「お前がな…!」

最後の煙玉で居場所を誤魔化しつつ射線を回避、イチかバチか逆に接近しショットガンを狙う

 

賭けになるが武器さえ潰せば──

 

「っ」ダッ

 

煙幕内を飛び出し、小鳥遊ホシノとの距離──

ゼロ距離だ!

 

だが慌てない、詰みだと思った場面をそのフザけた運動能力で悉く裏切ってきたコイツにはまだ足りない

しっかりと予知を挟んでから攻撃を──

 

「っ?」

な、は…?予知が、できない

 

こちらを睨みつけながらも微動だにしない小鳥遊ホシノ、今更止まることもできずショットガンめがけて攻撃をした

…俺の方から、仕掛けてしまった

 

ぱし

「くそ、しまった…!」

「フッッ!」

 

ドギャッ…

 

「ごはぁっ…!?」

常に後出しジャンケンでなければならないはずの状況で先出ししてしまった代償は大きく、ショットガンこそ吹き飛ばしたものの強烈な掌打撃を腹に受けてしまった

 

くそ、剣先さんと同じ手を…今の失敗は防げた

ぐぅっ…メチャクチャに痛ぇ…!

 

「手こずらせてくれたね…ロハンとあなたが一緒に動いてたのは知ってる。とぼけるのもここまでだ…先生はどこ?」

「うっ、くそ…ガチで知らねぇんだよ!」

 

もう大人しく教えて見逃がされたいが先生の所在は途中から不明のままだ。ラミィと違って転送装置の正確な場所を知ってるわけじゃないから情報も無ぇし…

 

「──じゃあもう用はないね」

顔面を踏み砕こうと彼女の細足が持ち上がる

まずい、流石に死ぬ──

 

ピタ

 

「…っ?」

止まった…?あ。

 

 

 

「ぬん!」

バチン!

「…ちょうど別の情報源が欲しかったんだ、あなたでもいいよ」

 

「錠前サオリ…!?」

かなり前方にいたはずだが戻ってきたのか…?

 

「ロハンがお前の力を借りたいと言っている、ここは受け持ってやるからロハンの元に。私がきた方向に進めば案内人がいる」

「すまん、任せた!」

 

色々と聞きたいことはあったが今は小鳥遊ホシノから一刻でも早く離れたかった

アレの相手をしなくて済むならそれでいい、とりあえず言われた通り案内人を探そう

 

 

 

「さて、ここからは兵士交代だ。小鳥遊ホシノ」

「せっかく来てもらって悪いけど長く構っている時間は無いんだ

あなたは私の知りたいことを答えてくれる?」

「ふ、力付くで聞き出してみたらどうだ」

「ッチ、どいつもこいつも…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ!」

ドギャッ!

 

「ぬ…!」

ゴシャッ!

 

「っくぅ」

ガギンッ!

 

小鳥遊ホシノ…聖園ミカと遜色ない戦闘力を持つというのは誇張ではないようだ

 

疲弊してきているのは分かるがそれでも私より強い、普通にやったら押し負ける

そう、普通にやったら…

 

「………」

 

依頼主(ロハン)の指示…できることならやりたくない。

報酬も貰っているし、なにより先生を安全な外の世界に帰す手伝いを私なんかができるのだ、どんな命令だってこなしてみせる

 

──が、こればかりは覚悟がいる

『確実に足止め可能で、かつ相手の集中を乱すことのできる演技』…

 

なぜロハンが私のトラウマを知っていたのかは分からなく不気味だ

だが彼女…小鳥遊ホシノも私と似たトラウマを持っているらしい

 

それを承知で抉り出してでも止めろと言うのだから流石に理不尽──いや、私にそんなことを言う資格はない

これが先生を守る最良の手だと言うのなら私は悪魔だって演じてやる。私はやる。

 

「──なるほど、疲弊しておきながらも強さを失わない神秘…黒服が目を付けるわけです」

「っ!?…お前は誰だ!」

 

それまで感情の見えない戦闘機械のようだったホシノが『黒服』という単語を出しただけであからさまに動揺した

彼女にとってこの黒服というのが、私にとってのマダムなのだろうか

 

「………」

 

もし自分の立場だったら…得体の知れない相手が自分のトラウマを知っていて、それを突き付けて来たら…

それを思うと言葉が止まりそうになる、身体が動かなくなりそうになる

 

だがこれは、

『頼んだよサオリくん、これは全て先生のためなんだ』

そう、彼への罪滅ぼしのためなのだから

 

「ええ、申し遅れました。ワタシはベアトリーチェ…分かりやすく言えば黒服と同じ組織、ゲマトリアに属する研究者と言ったところでしょうか」

 

 

 

「────」

思考回路がフリーズする

なんて言ったんだ?この生徒は、いや生徒みたいなものは自分があの大人と、黒服と名乗った汚い大人と同じ組織にいると…じゃあ錠前サオリという生徒は?

 

「あなたの浅はかな考え、思考を読み取って先に答えておきましょうか

…この身体は錠前サオリという生徒のもので間違いありません」

「なっ…」

 

「あなたのような子供に言っても仕方ありませんが私も最初からこうだった訳ではないのです

私の、私だけの身体は確かに存在しましたが…忌々しいシャーレの先生と複数の生徒によって破壊され、機能しなくなった

故に不本意ですがアリウス生の1人である錠前サオリの肉体を乗っ取り、こうして動いているわけです」

「何が、狙いなの…!?」

 

それまでの傭兵のような気配を潜め、嘲笑と軽蔑の笑みを浮かべる錠前…いやベアトリーチェに銃を突きつける

 

もし錠前サオリが乗っ取られたのが昨日今日ならまだいい、だがずっと前だとしたら?先生追放計画が発動するより前だとしたら──

 

「決まっているでしょう?復讐ですよ

この私をこんな目に合わせたシャーレの先生とそれを慕う生徒へのね」

「!!」

 

「妙奇ロハンを騙すのはそう難しいことではありませんでした。肉体に宿る記憶を頼りに錠前サオリを再現し、あたかも彼への罪滅ぼしを望む1人の子供として振る舞う…おかげでこんなにも容易く、先生の喉元へと近付けた」

「きさま…!」

 

「そしてあなたという最後の追手を叩き潰し、安心しきったところで彼の周りにいる生徒達のヘイローをひとつひとつ割ってあげるんです

 

そして最後は無力に打ちひしがれた彼を足先から切り刻み、その全てをキヴォトス全土にばら撒く…そうして初めて私はこの因縁を終わらせられる

 

ふふ、アビドスにも送ってあげましょう

どの部位がいいです?指か、耳か、それとも目──」

 

「────っ!!!」

 

怒りの表現として『噴火』という言葉を使う時があるが今の私はまさにそれだった

声すら出すのも忘れる憤怒が腹から迫り上がり、目の前の女に飛びかかっていた

 

先の戦闘とは違い、なんの捻りもないただの突撃はあっさりといなされ地面へと叩きつけられる

 

だがそんなこと知るか、構ってられるか

コイツは、目の前のコイツは──!

 

「許さない…!」

「ほう、許さない?許さなければどうすると言うのです?」

「お前を、殺す」

「随分と強気なのですね」

 

この女は生かしてはおけない、先生や他の生徒とどういう確執があったかは分からないが先生の元に行かせるわけにはいかない!

 

身体のダメージも忘れるほどの殺意を湧き出させて目の前の存在に向かっていく

 

確実に息の根を止めなければ。身体を乗っ取ることができるということはどんな生徒にでも成り代われることに他ならない

 

ここで逃したりすればもう私はコイツを追えないし、もしこんな奴に先生やアビドスのみんなが狙われたら…

 

殺意と焦りがただでさえ消えかけていた冷静さを完全に打ち消し、視野がベアトリーチェという女でいっぱいになる

──それがいけなかった

 

 

 

 

 

「『on fire』」

 

「は?」

 

光。銃の撃発音とも違う轟音と共に真横から私を抉り飛ばしたのは視界いっぱいに広がる光と

 

ビシャン!!

 

「ぎっ…!?うぎゃああああああっ!!?」

 

全身を貫く電撃の嵐。

 

「ぐ、ぐげぇっ…!?」

普通の、武器じゃない…今の、は

 

瞼が重くなる

 

だめだ、まだ倒れられない、先生を守らなきゃ

先生を連れ戻さなきゃ

 

「せ、せん、せ…」

 

 

 

 

 

どさり

 

 

 

 

 

 

「………」

ホシノはサオリに釘付けで動いていない、今が使いどきだろう

 

『第15.16バッテリー接続、電力供給開始』

『激鉄稼働、ヒューズ装填』

『G型装備リンク開始、誤差修正+3.0』

 

本来は聖園ミカや剣先ツルギを倒すために作らせた最終兵器だがミカ以外の最強格はトリニティから動いておらず、またそのミカも無力化されているのなら使うのはこちら。

 

『エネルギー充填率102%突破』

『超電磁直撃弾への充填開始』

『冷却水残量23』

 

ティーパーティは予想以上に崩壊が進んでいるらしい、どうも便利屋がミカとナギサを両方手中に収めたらしく、我らが神にとって喜ばしい方向に物事が進んでいる

 

ヤシマ無しでここまでやれるとは想定以上、ならば私にできることはそれらを台無しにしないよう務めること

 

『超電磁直撃弾の充填完了』

『目標 小鳥遊ホシノ カウント開始』

「カウント省略、ロックオン完了と同時に発射」

『了解。………ロックオン完了』

 

あなたに恨みは無い、けれど

 

「我らの神のため、ここで邪魔されるわけには行かないの。──『on fire』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光り輝く雷の衝撃波に包まれた小鳥遊ホシノ、いくら最強格といえど『落雷と同威力』だと言う超電磁直撃弾をまともに受けたことにより戦闘不能に陥ったようだ

あとの問題は…

 

「よし、死んではいないな」

止めたはいいが殺してしまっては本末転倒だ、それは先生に対する明確な裏切り行為だろう

 

…今もかなりグレーなことをしてるという自覚はあるが

 

「終わったのね、ごくろうさま」

「………雷川ラミィ」

「完璧な囮だったわ錠前サオリ、おかげでヤシマの超電磁直撃弾が完全に入った

怪我は無い?」

「ああ…だが、少し休ませてもらっていいか?」

 

演技とはいえベアトリーチェという存在をなぞるのは色々と堪えるものがある

 

「………ええ、もう強い追手はいない。あとは私たちだけで充分対処できる

力を貸してくれてありがとう」

「すまない」

「あ、ただヤシマの解体は手伝って欲しいわね」数が多いし

「分かった、それくらいなら」

 

重くなった足を動かし、ラミィの後をついていく

その途中、

 

「卑怯者、外道と言われても文句は無い、だが私はしくじるわけにはいかないんだ」

言い訳するように意識のない小鳥遊ホシノへ語りかけるのだった

 

 

 

錠前サオリ、戦闘続行困難により離脱




眠れないワカモに子守唄を歌ってあげたい作者のルルザムートです、ハイ。
今回少し長めですが次はもっと長くなる模様。
次回!最終決戦!お楽しみに!!!
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