シャーレの先生追放計画《集いし4人は無関心》   作:ルルザムート

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最終決戦はノーカットで。
ちょっと時間飛びすぎな気がしますがこれは作者の無計画故。お許しを…
先生追放計画最終戦、-0th 00h 46mです、お楽しみください


-0th 00h 46m

「さっきの…かなり近いですよね…」

「なんだ、マヤは雷苦手か?」

 

案内人、山田マヤと一緒に歩きながら弄るように聞いてみる

 

「怖いに決まってるじゃないですか!音より速くてどこに落ちるか分からない、当たれば即死、怖い要素しか無いのに…!」

「・・・言われてみればそうだな」

 

さっきの轟音はまさしく雷だったが…発生方向が気になる。俺達が歩いて来た方向からだ

 

「やれやれ、気が休まらないな…」

「ドグマ」

「うん?あれ、ラミィいつの間に来てたんだ?」

 

シスター服に似合わない軽トラックを走らせるラミィが俺たちの後を追うように合流してきた

聖園ミカとの戦いでもコイツとフクヨは居なかったがどこにいたんだ

 

「詳しいことはロハン達と合流してから話す

乗って」

「そうさせてもらう」

 

渡りに船とはこのこと。指定場所まで地味に距離があったのでありがたく便乗させてもらった

 

「おいマヤ、お前もだ」

「…?荷台に載ってる鉄クズの山は…?」

「いいからはやく乗れ!」

 

助手席にマヤを引き摺り込んでドライブ再開、いよいよこの戦争にも終わりが見えて来たようだ

 

 

 

 

 

そして…

 

 

 

 

 

「おい合流したぞロハン!…あいつどこいった?」

「彼女は地下で作業してます、代わりに…」

『やぁやぁお疲れ様!元気そうでなによりだよドグマくん!』

「っ、ビビるからやめろって言ったよな?」

 

相変わらず携帯から大音量で聞こえてくるロハンの声は心臓に悪い、コール音とか挟んでくれたらまた変わるだろうに…

 

「はぁ、もういい。状況は?」

『先生の転送なら「それも大事だが外は?」

 

コイツなら全体の戦況を把握してるだろう、正直これ以上ヤバいのが増えるのなら敗走も視野に入れないといけない

 

『最重要警戒対象である小鳥遊ホシノと聖園ミカの無力化を確認してる、他勢力の抑え込みも成功、これで最後だよ。お疲れ様だねぇみんな』

「はぁー…」

 

波乱続きだった状況にようやく舞い降りた吉報に胸を撫で下ろす

 

やれやれ、ようやく終わりか。それにしても2度とごめんだぞ、こんなフザけた戦争は

 

「あれ…ねぇドグマ」

「それにしても小鳥遊ホシノを止めたのは誰だ?空崎先輩か?」

錠前サオリ1人じゃ勝てるとは思えない

あんなのをなんとかできるって言ったらもう先輩以外に思い浮かばないんだが

 

『いや、サオリくんとラミィくんだよ』

「………驚いたな、先輩以外にアレを止められる生徒がいるとは」

 

怪物としか言いようのない強さと苛烈さ、列車の中やさっき見たそれですら彼女の力の一部でしか無いのだろう。つーかラミィお前、あんなのと戦ってたのか

 

『まぐれ勝ちみたいなものだったらしいよ?小鳥遊ホシノの注意を引いてポジトロンライフルで狙撃したみたいでねぇ』ね、ラミィくん

「………」

「それ死んでないよな?」

 

雷と同じパワーを持っていると言うヤシマ…

どんな怪物だろーと雷に打たれて平気なやつなんていない

俺たちの起こした行動で誰かが死んだなんて笑えないぞ

 

『さぁてね、分かっているのは彼女と戦う必要はもう無いってことだ

ふふ、運はこの妙奇ロハンに味方してくれている!』

 

やれやれ、調子のいい奴だ

 

「ところでその錠前サオリは?」

『万魔殿の子の車で帰ったよ、これ以上戦えそうにないらしくて無力化した小鳥遊ホシノと一緒に地区の外さ』

「そうか」

 

「ドグマ」

「それで?先生の転送はあとどれくらいだ?」

『あと1時間もかからない、心配せずとも一撃でここを解放できる勢力はもう間に合わない、私たちの勝ちだ』

 

「ドグマ、聞いて」

「後でいいだろラミィ、せっかく終わったんだから」

 

『うふふくくく…それにしても素晴らしい!本当に素晴らしい体験ができた!これは忍劇伝以上の傑作が撮れるねぇ!くっはははっ!』

「お前ホント…いや、もういい面倒くさい」

 

「ドグマっ」ブンッ

「あだぁっ」

バシン、と後頭部を引っ叩かれ無理矢理意識を引っ張られる

 

「ドグマ」

「なんだよもぉ、お喋りしたいならフクヨにでも「あれ誰…?」

「あ?」

 

ラミィが指差したのは即席監視カメラの映像の1つが映ったモニター

…誰かいる?

 

遠い上に画質がそこまで良くないので人影があることぐらいしか分からないが確かに誰かが歩いている

 

「たった1人だ、放っとけ」

「でも…ねぇロハン。c-5の監視カメラの映像、拡大できる?」

『うん?ああ、できるとも。

ついでに高画質化してあげよう、チョッピリ時間をくれ』

「………待ってられない、様子を見てくる」

 

普段の無表情を塗り替えるほどの不安を表情に表し彼女は出て行った

 

やれやれ、心配性だなラミィは…

「そういや狐坂さんは?」

フクヨの奴もいつの間にか居ないが…

 

『フクヨくんに連れられて帰ったよ。これ以上ここにいても辛いだけだそうだ』

「そうか…あれ?狐坂さんは先生と一緒に外の世界に行くんじゃなかったか?」

 

確かそれを交渉材料として仲間に引き入れたと思ってたが

 

『《辞退する》…だってさ、自分が横にいる限り先生はキヴォトスを、生徒達を忘れられない

そうなれば先生が苦しむだろうと結論を出し、ここに来て辞退したんだ』

「辞退って…あの人超一級の犯罪者だよな…?」

 

まぁ無理もない。狐坂さんの先生に対する想いは少ししか一緒に過ごしていない俺にも分かる

 

周りは七囚人だなんだと騒ぎ立ててるが…蓋を開けてみりゃただの女の子だったんだよな

しかも一緒になれるチャンスを捨ててまで愛した人のことを想って身を引くことのできる、俺やロハンよりずっと純粋で一途な…

 

「…悪いことをしたな、先生追放の片棒を担がせちまった」

『追放とは人聞きの悪い

これは先生の安全と身の保証のためだと分かっているだろう』

 

ロハンの言うことももっともだ、先生は俺たちとは違う。弾丸1発引っ掛けただけで死ぬかも知れない、外の世界に帰した方が安全だ

 

「お前の言っていることは正しい、けれど手段が正しくなかった

…これは俺たちだけでやるべきことだった」

『──かもしれないねぇ、お!c-5の映像が出たよ!…アレっ、ラミィくんはどこだい?』

 

なんださっきのまだやってたのか

「ラミィなら『待ってられない』ってさっき出て行ったぞ」

『ええー!頼んでおいて酷いなぁ…あ?うん?えっ、これって…』

「? おいどうした?」

 

無線機の向こうから聞こえていたロハンの声が急に口淀んだ

「ロハン?」

『いや…まさか…動けるはずが…どうやって…』

「おい聞いてんのか、ロハ──

 

ドゴォッ

 

「うおっ!なんだ!?」

 

いきなりコンクリートの壁がブチ破られて何かが飛び込んでくる

って。

 

「ラミィ!?お前何やってんだ?」

「…げほっ、ぐ、うう。ドグマ…まだ、終わってない…」

「は?」

 

呻くラミィの身体にはさっきまで無かった銃創や出血があり、どうみたって『敵に攻撃されました』と言わんばかりの姿だった

 

ザッ…ズリッ…ザッ…

 

『バカなっ…こんな…ドグマくん!止めろ!なんとしても地下に入れるな!』

 

なぜ、どうやって、そんなことをいくら考えたところで意味がない

ただ目の前に現実として立ちはだかるのは

 

「────勘弁してくれよ、無力化したんじゃなかったのか…!?」

 

桃色の毛先は黒く焼け焦げ、服もボロボロ。よく見ればボディアーマーらしき破片が溶け、服にくっついている箇所もある

 

左右で色の違う目は虚だがしっかりとこっちを見据えており、左手の盾と右手のショットガンを引きずるようにして1歩1歩こっちに向かって歩いてくる

 

瀕死…多分今まで見てきた事象の中で目の前の彼女よりこの言葉が相応しい状況を俺は知らない

1歩踏み間違えて転んでしまえばそのまま死んでしまいそうな、いわば死に体

 

だが死に体だろうと向かってくる…!

もしかしたらよく似た別人かも、なんて甘い考えすら許さない気迫とオーラを纏って。

 

「小鳥遊…ホシノ…」

「ごほっ…はっ、はー…先生を、返して。」

 

ゆらりと、銃口がこちらに向いて──

「「!!」」

 

弾けるように飛び退き、ロケットスターの加速でスライディングして距離を積める

小鳥遊ホシノは見てから充分だと言わんばかりに軌道修正してくるがそれはこちらも同じこと

 

さらに身を眺めてばら撒かれた散弾を回避、避けきれなかった分は防弾コートで受け流す

「…!?」

 

そして彼女も例外なく驚いている。大抵、自分よりずっと弱い奴が弱いまま想定外の動きをしてきたら戸惑うものだ

 

悪いが手加減できない、一撃で終わらせる…!

 

1発3万クレジットの強化弾を2発纏めて撃発、最高速のエアダッシュでゼロ距離に──

「フッッッ!!」

無防備な顎部をロケットスターで抉るようにカチ上げて吹き飛ばした

 

顎への一撃…!かなり危険だから本当に追い詰められなきゃ使わないが脳を揺らすこの一撃は神秘の強さ関係なく相手を倒せる数少ない手段だ

 

「はあっ、クソ。ビビらせやがっ…て?」

………マジか?

 

「………」むくり

見れば頭を抑えながらもフラフラと立ち上がる小鳥遊ホシノの姿が…

 

「っ…ならもう1発ブン殴るだけだ!!」

再びエアダッシュ、その顎を──

 

バシィッ!

 

「ッ!」

止められ──

 

「じゃま…!」ブンッ

ゴッ…

「しっ…がおっ…!あ"…!?」

 

今度は俺が殴られた、それも俺が殴ったところと全く同じ部位、顎を。

クソ、焦った!きちんと予知しながら攻撃していれば──

 

だが後悔しても過ぎたことは戻らず、吹き飛ばされるまま地面へと叩きつけられた

脳が、揺れる…!身体が、言うことを…!

 

力が入らない、意識も消えかけている

ここまで来て…!

 

ダンダンダンッ

 

「そこまでですわ、小鳥遊ホシノさん…でしたっけ」

「………今は構ってる余裕は無い、どいてもらうよ七囚人」

 

「っ…!」

放たれた散弾を瓦礫を盾にして防ぎつつ、なんとか距離を取りながらライフルを構えるが

 

カチッ

 

くっ!?またですか!

 

先読みで投げられていた手榴弾に阻まれ距離が取れない

小鳥遊ホシノの、まるでこちらの手が全て分かっているかのような間合い管理に狐坂ワカモは大苦戦していた

 

もうまともに戦えるのは自分だけ…それに自惚れるわけではないが自分より強い味方がいない以上、ここで私が食い止めなければ小鳥遊ホシノは間違いなく先生を奪い去ってしまう

彼も、彼の未来も

 

──そんなもの、到底許容できない

 

避けきれなかった散弾の一部が脇腹を掠める

鉄塊で殴りつけられたような打撃をいなしきれずにダメージが身体に響く

 

負傷して尚、彼女は私より強い

ですが、それでも、諦めるわけには──

 

 

 

 

 

 

「くそ…」

トドメを刺される前に狐坂さんが戻ってきてくれたおかげでなんとか小鳥遊ホシノを止められているが

 

「聞こえない…?邪魔だって言ってるの!」ドンッ

「く…!どこにこんな力を…」

ヤシマのダメージはもちろん、万魔殿とアリウススクワッド相手に単独で戦ってタダで済むとは思えない。確実に疲弊してるはずだ

 

だがそれでも小鳥遊ホシノは戦い続けており、

殆ど万全であるはず狐坂さん相手に互角以上の戦いを見せている

 

「これ以上邪魔をするのならヘイローの無事は保証しない…!」

「はっ、はぁっ…このワカモ、例えヘイローや身体が砕け散りようともここを通しはしません…!」

 

ヤバい、劣勢だ。狐坂さんだけじゃ押し負ける

俺の方はだいぶ身体の調子が戻ってきたがこのまま無策に突っ込んだところで狐坂さんの邪魔になるだけだ

 

考えろ、考えろ、今の俺に何ができる?何をすれば事態が好転する?

これまであまり他人を信用していなかったツケというのか、『誰かのために何ができるか』という思考がどうしても回りづらかったドグマは必死に考えていた

 

だが俺が1人悩んでいる間にも戦況は動き続けている

時は都合よく止まってはくれない

「はああっ!」

「このっ…あぅぐっ…!」

 

致命傷になり得る攻撃だけはなんとか防いでいたワカモだが衰えないホシノの猛攻を前にとうとう綻びがでてしまった

 

小回りのきくナイフでリロードの隙を狙おうとしたワカモを返り討ちにするようにショットガンで殴打、無防備な脇腹を抉るように殴られてしまい…

 

「ごほっ、え"ほっ…!」

「──起き上がってきたらヘイローを砕く」

倒れ込むワカモに躊躇なくショットガンを突きつけるホシノ

 

本気だ、あの目は本気で殺す気の目だ…!そこまでやるか?

先生1人のためだけにそこまでやるのかお前は?

 

「ぐ、はぁっ、はぁっ、言ったはずです…

このワカモ、例えヘイローや身体が砕け散りようとここは通さないと…!」

ワカモは起きあがろうとしているがあれではどう考えても起き上がるより早くホシノにトドメを刺されてしまう

 

ピリリッ

 

「!」

突然耳元の通信機が鳴る

通信?空崎先輩か!?

 

「もしもし空崎先輩ですか!?」

『残念だけどラミィよ、いい?用件だけ言う。

小鳥遊ホシノを足止めして、1分後になんとかする。』

 

1分?先生の転送にはまだまだ時間がかかるハズだから1分は別の数字か?

だがそんなこと聞き返す余裕は無い

「信用するぞ…!」

 

脳震盪は治ったと思い込む事にして突っ込む

どう転ぶにしても俺が小鳥遊ホシノを無力化するのは無理だ、なら──

「徹底的に邪魔をしてやる…!」

 

再びエアダッシュでホシノ目掛けて突進、発砲音でホシノの注意が僅かにこちらへ向くものの依然として銃口と視線はワカモから離さない

 

俺は警戒されてない、少なくとも近接戦闘以外は。

今は距離があるから迎撃も反撃もしてこないがさっきの間合いにはもう入らせてはくれないだろう

 

「邪魔をするってことは、あなたもヘイローを割られたいのかな」

「今のうちにホザきやがれ!すぐに黙らせてやる!」

 

15mを切る、ここからはショットガン1発で即死か瀕死だ

だがまだ撃たないだろう、単独でここまで戦ってきたのなら弾丸にも余裕はないハズだ

 

予想通り小鳥遊ホシノはまだ撃ってこない、だが銃を握るその手には間違いなくこちらへの殺意がこもっている

 

まだだ、もう少し近づかねぇと

小鳥遊ホシノが考える『踏み込んだら殺す』というスペースの1ミリ手前、目指すべき位置はそこだ

 

2発目の弾丸で更に加速、小鳥遊ホシノまであと6m。

どう足掻いても今撃たれたら即死だろう、それに1発は避けられてもその後が続かない

 

つまり俺が付け入る隙はその最初の1発だけ

 

あと2m──

 

「────」カチャッ

小鳥遊ホシノのターゲットがワカモから完全にこっちに向いた!

 

これまで通りに動きを予知して回避、ただ向こうも俺が予知をしてると分かった上で狙ってきており、転ばなければ避けられなかった

…そして地べたで無防備になった格下へトドメを刺そうと銃口が向かう

 

──ああ、待ってたぞ。その一撃を

 

ベシャッ

 

クナイで火薬袋を切り裂き、中身を浴びせる

…流石と言うべきかこの距離でも回避したらしく、火薬は小鳥遊ホシノに殆どかかっていない

せいぜいショットガンが粉塗れになっただけだ

 

だがこれでお前はもう撃てない、撃てばその場で爆発してパーだ

「っ、小細工ばかり…!」ポイッ

 

だが小鳥遊ホシノも怯まず、足元のワカモからライフルを取り上げて迎撃体制へ

目を疑う速度で銃口をこちらに向けたホシノだったが1つ見落としがあった

 

カチ、カチッ

 

「う…!?」

俺が急接近したほんの1秒未満の間、ワカモは既に自分の銃から弾丸を抜いており、ホシノが奪ったライフルから弾が発射されることは無かった

 

「今…です…!攻撃を…!」

満身創痍のまま這いずって距離を取ったワカモが言う

「ああ分かってるさ…食らえ小鳥遊ホシノ!」

 

「この…!」ブン

「るせぇっ!」

 

投げつけられた盾をロケットスターで吹き飛ばし、いよいよ無防備になったホシノに予備のハンドガンを向ける

 

「終わりだ!!」

腕を交差させてダメージを少しでも抑えようとするホシノ、俺は──

 

「!!」

ダンダン、ダンダンと銃声が4発鳴り響く

──空に向かって4発、叩き込んだ

 

「…はっ、1発外しちまった」

だがまぁ、充分だ

 

「…へ、は?」

「え…」

 

ボトボトとカラスが2羽、雀が1羽落ちてきた

カラスは即死だが雀は羽を掠っただけなのか地べたで血を流しながらもがいている

 

「な、に…?鳥を撃ち落として、いったい…何のつもりなの…?」

「…すぐに分かるさ」

なぁラミィ

 

「小鳥遊ホシノっ!!!」

「がふっ…!ぐ…!?」

 

飛び出してきたラミィがそのまま小鳥遊ホシノに突撃、両手には銃…というにはかなり大きな何かを持っており、刺すようにホシノへと叩きつけた

ホシノもホシノでなんとか両手で受け止めたがあの体制では武器はもう拾えないだろう

 

というかあれは…対聖園ミカ用のポジトロンライフル…?

かなりパーツが足りない上にところどころ溶けて崩れている。どうみても銃本来の使用は無理だ

だとすれば──

 

「神の代行者として!あなたを砕く!

…超電磁直撃弾点火!」

「…! 自爆する気…!?」

 

レーシングカーのエンジンみたいな高い音がポジトロンライフルから鳴り響く

爆発がどれくらいの規模か分からないが『なんとかする』と確信じみた声で言ったラミィの様子から威力は相当な──

 

「いや考えるのは後だ、狐坂さん逃げるぞ!ヘタしたらここら一帯吹っ飛ぶ!」

 

ロケットスターを1丁落としてしまったが拾う余裕なんてあるわけなく、ボロボロの狐坂さんを担いで撤退。

…ラミィには悪いがもうアイツは助けられない、見捨てるしかない

「………すまん」

 

 

 

 

 

「ぐぐっ、ぐう、う!」

 

──足りない

 

「誰もかれも邪魔ばかり…!いい加減にしてよ…!」ググッ

少しずつではあるが押し返されている、これでは爆発より早く突き飛ばされて終わってしまう

 

っ…神よ、痛みなんかどうでもいいのです…!

シスターフッドの未来を開くためにあと少しだけこの手に力を…!

 

両腕は比較的マシだがさっき蹴り折られた左足と腹部に受けた散弾のせいで力が入らない

彼女さえ倒せばもう障壁は無い、だがその最後の障壁があまりに重い…!

 

「あっ…はあっ、あくくぐっ…」

「お前、1人で…爆発してろ!」

もう、だめ…弾かれる──

 

「させるかァッ!」

「「!?」」

怒号と共に乱入してきたのは逃げたはずの火神ドグマ

なんで戻ってきたのか、なんて考える間も無く檄を飛ばす

 

「爆発まで時間がない!彼女の体勢を崩して!」

「分かってる!」

ナイフを手にドグマが斬りかかる

小鳥遊ホシノは既に限界だ、1発当ててくれれば──

 

ギィンッ

 

「いつの間に俺の…!てめーホントに同じ人間かよ!?」

ポジトロンライフルを抑えていた手を片方離し

ドグマの振り下ろしたナイフを忍者の刃物を使って器用にいなす

 

「力が、もう…ドグマ、早く…!」

「分かってる…!分かってるんだよそんなことは!」

 

ポジトロンライフルから吹き出し続ける熱風と身体に蓄積したダメージが意識を奪おうと襲いかかっている

だめ…今爆発しても倒せない、直接ぶつけないと…

 

「うおおおあああ!」

「あああああああ!」

 

片手でポジトロンライフルを抑え、片手でドグマを迎撃、いったいどんな身体構造をしていればこんなことができるのかと聞きたくなる攻防が繰り広げられている

 

ビギッ…

 

「ああっ…!?」

ヒビを入れられていた左腕の骨が完全に折れた、ポジトロンライフル内部の温度も既に臨界突破し、5秒後には爆発する、私もヤシマも限界だ

 

「は、あうっあ…!どぐ、ま、はやく…!」

「分かってるっつってんだろ!!!

ぐ、ちくしょう!近寄れねぇ…!」

もう終わりだと諦めかけた、というか諦めていた。だが瞬間

 

ズバッ…

 

「あ…!?」

 

ぐらり、と小鳥遊ホシノの身体が傾いた

一瞬見えたのはワカモのナイフを持ったフクヨが背後から斬りかかっていて「ラミィ、今だ!」

 

「!!!」

最後の力を使い切り、ノーガードになった小さな身体にポジトロンライフルを叩きつけて──

 

──広場が爆炎に包まれた

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

「………」

 

「………いってぇ」

今のはマジに、死んじまうとこだった…

 

ぐいっ!

うん?

 

「…?おい離せフクヨ、もう大丈夫だ」

「………はっ!?…やっつけた、でしょうか」

セミみたいにしがみついているフクヨを引き剥がして起き上がる

 

「あの爆発だ、ケリはついたさ

…それにしても駆けつけるのが遅ぇよ、もう終わったかと思ったぞ」

「す、すみません。お姉様と一緒に戻ろうとしたのですが置いてかれてしまって…」

 

しゅん、と耳を垂れる彼女にそれ以上の言葉を掛ける気は消え、代わりに別の問題を思い出した

「あー、それはもういい。それよりもラミィと小鳥遊ホシノだ、早く見つけてやらねぇと」

 

爆発の寸前でフクヨが突き飛ばしてくれたおかげか衝撃波を受けるだけで済んだ

…いやメチャクチャ痛いのに変わりはないんだが

それでも動く分には問題ない

 

「動けますか?」

「割とな、お前は?」

「なんとか」

…よし

 

「おいロハン、聞こえるか?」

『聞こえてるよ、派手にやったねぇ』

「労いも賞賛も後にしろ、ラミィと小鳥遊ホシノを探してくれ」

『了解』

 

…はぁ、どうするかな

「生きて…ますよね…?」

 

質問、というよりも自身の言葉を肯定して欲しいのだろう。こっちを伺うように聞いてくるフクヨだが生憎、俺はこう言う時に気を遣えるほど人ができてはいない

 

「…気休め言ったところで現実は変わらないから言っておく。小鳥遊ホシノは分からんがラミィは多分死んだ」

「っ…! そんな言い方…!」

怒りを露わにするフクヨ、だが目を逸らしてなんになる。言うべきだ。

 

「歌住サクラコのためだと信じれば簡単に命を投げ捨てる奴だ、自爆に少しの躊躇いも見えなかったしありえる話だ」

「そんな…」

 

とはいえ諦めるつもりも無い、もしかしたら生きているかもしれない

「ただまぁ『ありえる話』だ、『事実』じゃない

すぐに探すぞ、助けられるなら助けるべきだ」

 

『もしもーし、ラミィくんの反応をキャッチしたよ』

「生きてたか!?」

さすがミレニアム生と言うべきかこういう後方支援は頼りになるんだよな

クズだけど。

 

『それは確認してみないと分からないねぇ、もしかしたら死体かもしれない』

「い、嫌なことを言わないでください!

場所はどこですか!」

『ええとね…「ゆるさない」

 

「「『────え。』」」

 

背後から聞こえたあからさまに『殺してやる』オーラ全開の声に揃って凍りつく

え、あの、え?待て、待って?あの──

 

「あれほど警告したのに、よくも…よくも…

サクラコ様を侮辱したなぁっ!」ブンッ

「あ。そっち? パオっっっ!?

 

飛んできたコンクリ破片が顔面に直撃!

マジで痛ェ!

 

「て、てめー!フザけんなよアホが!

生きてるならさっさと出てこい!」ムダに心配させんな!

「うるさい…!よくもサクラコ様を呼び捨てに…!サクラコ様を…うぐぐっ…」

「あわわっ、ラミィさん!」

 

とりあえず生きてたラミィだったが全身ズタボロの酷い有様で、その場に倒れ込んでしまった

 

…クズではないがクレイジーなラミィには迂闊に近付きたくないので介抱はフクヨに任せるとしよう

 

「それにしてもよく生きてたもんだ、正直爆散して死んだと思ってたぞ」

「………ロハンから、バリアを貰ってた…

これが無ければ危なかった」

「バリアですか?」

『ああ、正規実用型《ぜったいあんぜんバリア》か。役に立ってなによりだ』

 

…確か狐坂さんにブチ割られてた奴だな、正規実用型というあたり相当頑丈らしい

相変わらず名前はダサいが。

 

「あとは小鳥遊ホシノだ、おっかない奴だが死なれたらマズい」

『分かってるさ。彼女の位置も把握してるからそこに向かって──え』

 

…あ?

 

「あーよし、うん。もう分かった、充分だ。てめーの思わせぶりな態度はもうたくさんだ

いいな?もうお腹いっぱいなんだ」

『い、いや…その、位置が…』

「もういいから何処にいるか教えろ」

『────ラミィくんとフクヨくんの、隣だ』

 

………は?

 

「ひっ…!?ど、ドグマさ──うわぁっ!」

「キャッ…!?」

 

一体どこにそんな力が残っていたのか、バッシーンとやけに軽快な音を立てて2人が吹き飛ばされていく

 

「ごほっ…げっ…え…!ぜえっ…ぜえっ…もう、許さない…ここまでだ…!」

「ウゥッ…ッソだろ…?不死身かテメーは!?」

 

桃色の髪は右半分がマッ黒焦げになっており、時折する咳には多量の黒煙が混じっている。おそらく内臓も焼けているだろう

 

全身ボロボロで特にポジトロンライフルをガードしていた右腕は酷く、かろうじて形は保っていたがほぼ炭化して使いものにならなくなっており、左足脹脛には手の平より一回り大きいポジトロンライフルの破片が痛々しく突き刺さって今も出血している

 

…どう考えても動ける身体じゃない、気力だけでここまで戻ってきたのか?

彼女をここまで駆り立てる先生って存在はいったいなんなんだ?

 

「…もう諦めろ小鳥遊ホシノ、その身体でこれ以上暴れたらマジで死ぬぞ

それともその状態で割と万全な俺と勝負するか?」

 

ラミィとフクヨは吹き飛ばされはしたがあれは不意打ちだった。

万全というのは誇張表現ではあったが今の小鳥遊ホシノに比べれば──

 

「もう、警告は終わった。

立ちはだかるなら、殺す」

「…っ」ゾクッ

 

くそ、なんなんだ…相手は死に掛けの生徒1人なのに

 

いつの間にか拾われていたロケットスターを引きずりながら小鳥遊ホシノがゆっくりと向かってくる

 

それなのに、まるで勝てる気がしないのはなんでだ!?

 

「ああクソ!今度こそブチのめしてゲヘナ救急医学部に叩き込んでやる!」

「………」カチャ

 

正真正銘最後の防衛戦、先に動いたのは──

 

「…っ?あいつ何やってんだ?」

左腕ももう動かないのか、銃口を後方に落としたまま動かない

 

いや、あの構えを俺は知ってる。多分他の誰よりも

「ごほっ…たしか、こう、だったよね」

 

ドンッ

 

直後文字通り『跳んで』きた小鳥遊ホシノから繰り出される銃打撃をなんとか受け流す

あ、アホほど練習してようやく使えるようになった俺のエアダッシュをこうもあっさりと…!

 

「クソ!」

片手片足失ったとは思えない速度で飛び回る小鳥遊ホシノ

付け焼き刃であるはずのソレは俺が使うものよりも速く、予知ができても反撃が間に合わない

 

そして──

 

! 来る!

「死んで…!」

 

再び突っ込んでくる小鳥遊ホシノ、繰り出されたクナイの斬撃とロケットスターによる殴打を防いだが小鳥遊ホシノの攻撃は止まらない、それどころかどんどん速くなってきている

 

追い、切れねぇ…!

俺の予知を、単純な速度だけで…!

 

「てめ── ボギッ… あ。」

 

首をへし折ろうとした蹴りの一撃をガードした俺の腕から嫌な音と

「ぐっ!?うぎゃああああっ!!!」

遅れてやってくる灼熱の痛み

 

「クソがぁぁっ!ふざけんなよ!?

ここまでやってなんっで動いてんだ!ありえねーだろ!ィい加減空気読めやバケモンが!!」

 

悪態なんか付いたところでホシノの勢いは止まらない、殺意と執着を剥き出しにして追ってくる

 

クソクソクソクソクソ!!ここまで来て邪魔されてたまるか…!

 

 

 

 

 

「ィい加減空気読めやバケモンが!!」

首を狙った蹴りは外れたがその代わりに腕を奪った。エアダッシュで距離は取られるも速度、勢い共に大幅に落ちている

 

──殺せる

 

「うっ…!」クラッ

 

こちらもエアダッシュで追いかけるがその度に身体から信じられないような苦痛が響いてくる

 

「ごぼっ、お…!が、ぐ…!!」

 

吐き気が止まらない、咳には工場の煙突から出るような黒煙と凝固しかけた血液が混じっている

 

『その身体でこれ以上暴れたらマジで死ぬぞ』

 

その通りだ、あいつの言った通りこのままだと死ぬ。

…じゃあ、なに?安静にして、休んで、大切な人がここから消えていくのを黙って眺めて──いや、眺めることすら許されないの?私はまた、大切な人に別れすら言えないの?

 

「……冗談じゃ、ない」

 

2回も大切な人を失って、その上で生きている意味などあるのか?そんなこと、許せるのか

 

「冗談じゃない!」

「やめろ…!やめろおい!?イカれてるのかこの女!」

 

最後の散弾を使い切り、逃げるドグマに接近、振り抜かれたナイフをそのまま奪って

「うぎゃあっ!」

 

ドグマの右眼から光を奪った

「ちくしょおおああ!そんなに先生が欲しいのかよ!?お前も先生もなんなんだよぉっ!!」

「黙れ!!」

 

喚くドグマを殴り飛ばして壁に叩きつけた。そこでようやく気絶したらしく、起き上がってくる気配は無い

 

「はっ、はあっ、ああっ…うあ、せんせぇ…!」

使いものにならなくなった右腕と左足を庇いながら歩く

早くしないと私の命が尽きる、それより早く先生を連れてシロコちゃん達のところに…

 

「ここ、だ」

さっきこの建物からドグマが出てきているのを見た。周りから見た時はそれらしいものは無かったから多分地下に…

 

「ウワァッ!?とうとうここに…!」ドグマくん達はやられた!?

 

地下を降りるとすぐに見つかった

手術室のような部屋に所狭しとよく分からない機材が並べられ、中央にはミレニアムの制服を着た少女と宙に浮かぶ何かの穴、それと…いた

 

「せんせ、え…!!」

ここではないどこかの景色が映っている穴の近く、そこに置かれたベッドに寝かされている先生、近くには『転送完了まであと1分32秒』と表示された電光板。

間に合った…!

 

「せんせい…ひどいよ、なんにも言わずに居なくなろうとするなんて…」

「待て!待ってくれ小鳥遊ホシノ!これは唯一のチャンスなんだ!

先生が故郷に帰れるたった1つの!頼む、見逃してくれ!

彼の故郷を奪わないでぎゃっ!」

 

何か騒いでいたミレニアム生に弾切れのショットガンを投げつけて黙らせる

…機械が止まる様子は無い、先生をアビドスに連れ帰ったあとでここも破壊しておいたほうが良さそうだ

 

「げぼっ…破壊は、シロコちゃん達に頼もう」

次まばたきしたらそのまま眠ってしまいそうな掠れた意識を振り絞って先生の元へ一歩、また一歩

 

「と、止まってください…!」

「しつこい、な…」

 

まだ仲間がいたのか不良(スケバン)っぽい生徒が震えながら機材の陰から出てきた

泣きそうに、というか泣きながらちっぽけなハンドガンをこちらに向けて…

 

「っ」

ばしん!

「っア…!」

 

平手打ちで不良を張り倒し、今度こそ先生の元に──がしっ

 

「…離してくれない?」

「い、いや、です」

右足にしがみつく不良を殴る

…だが離れない

 

「あなたは、先生が嫌いなの…?」

「そんなわけ、ない!」

先生は大切で、かけがえのない存在…もう、失えない…!

 

「なら…どうして…」

「私はもう失えないの…!これ以上大切な人を失ったら、私は壊れてしまう」

だから連れ帰らないと。私だけじゃない、アビドスには…シロコちゃん達にとっても先生は大切で、かけがえの無い人だ。先生を含めた6人でアビドスなんだから

 

「だからっ…!邪魔をしないで!」

しがみついてる子の頭を殴る、残った力を込めて全力で。

 

「…っ」

…離れない

「離せっ!」

もう一度殴る、今度はコンクリート片も使って

 

「い、いやだ…!離すもんか…!」

それでも離れない

「お前らに、何がわかる…!ヘラヘラして、自分のことだけ考えていればいい平和ボケしたお前らみたいなのに…!

失った事のない奴らに何が分かる!」

 

以前シャーレの当番で先生の護衛をした時に見た事がある

不良…通称スケバン達は自分のことばかりで平気で他人に迷惑をかけて、それを指摘されたところでヘラヘラして、また同じことを繰り返して…

そんな奴に説教される謂れはない

 

「わか、らない…あなたがどうしてここまでするのか私は知らない…

でも、私にとっても先生は大切だから…先生は私みたいな生徒でも見捨てなかったから…

これが最後なら…私は先生のためになることをしたい…」

「っ…これが最後なんて認められるものか…!」

 

内臓のダメージとは別の要因の吐き気がする

「もう、いい」

「あっ、うあ"っ…!?」

 

傷が裂けるのも構わず左足で彼女を蹴り飛ばし、その無防備な首を踏み付ける

「もう薄っぺらい説得はたくさんだ…先生は、連れて帰る」

 

ミシミシ、ミシミシ、体重がかかっていく

「お、お願いやめて…生徒同士でこんなこと、間違ってる…先生が、悲しんじゃうよ…」

普段散々自分勝手なことばかりのスケバンが軽々しく『先生が悲しむ』なんて吹いていることに余計苛立つ

 

これが先生を守るための措置なのは分かってる、でもそうしないといけなくした原因はなに?

…お前達みたいなのが好き勝手暴れるからだ

 

「先生は、私が守るよ…これが終わったら、あなた達みたいな馬鹿を1人残らず潰せば、少なくとも今より先生は安全だから」

「あ、うあ、あ…」

首から聞こえる音が大きくなってくる

 

先生…今行くね…

 

不良の首が、折れ────

 

 

 

 

 

 

 

チャキッ

 

 

 

 

 

………

 

「…え?」

 

「そこまでよ」

 

 

 

「だ、れ…?」

「ごめんなさい、貴女が誰なのかは知らない

でも貴女達が命懸けで稼いだ時間は確かに、先生と先生の故郷を守ったわ

…あとは任せて」

 

普段なら会えば『久しぶり』と言って一緒に昼寝の誘いでもするところだが今だけは会いたくなかった

 

「………ヒナ、ちゃん」

「小鳥遊ホシノ…もうやめなさい」




ワカモのほっぺたをこねくりまわしたい作者のルルザムートです、ハイ。
ようやく曇らせタグがアップを始めました、しかしこれでは終わらない
しっかりと後日談もあるのでお楽しみに…(むしろ後日談が本編…)
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