シャーレの先生追放計画《集いし4人は無関心》   作:ルルザムート

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-4th ①です、お楽しみください


-4th ①

松ヤニの染みついた松明の火が薄暗い部屋をぼんやりと照らす

部屋とは別に照らし出されるは3人…いや3忍というべきか

 

3人は一言も喋らず、1人は筆と巻物を、1人は忍具の手入れを、1人は常人には見えないはずの新月を窓から見上げていた

 

3人の仲は悪くない、むしろこの絆は誰にも負けない自信があった

故に喋らない、3人全員がただただ来るべき時を待っている

 

「………」スッ

新月を見ていた忍がおもむろに玄関の戸を開けた

 

「…民を導き、土地を治める領土の主がこのような寂れた場所に何用か」

闇の中で光るその眼はまるで新しく月が出たような光を持って茂みを射抜く

 

「…いやはや、流石は伝説と謳われる忍

お見事です。存在だけでなく詳細な正体まで看破されるとは」

 

頭を掻きながら1人の男が茂みから姿を現した

相手を称賛する彼の額には僅かに冷や汗が流れている

「余計な前置きはいらぬ、再度問う。何用か」

 

小柄な体格に反し、ただならぬ威圧感を醸し出すそれに萎縮しながらも領主と呼ばれた男は話し始める

 

「…実は我が1人息子が何者かによって拉致されたのです

直後国の侍達が現れ『この土地から出ていかねば息子を打ち首に処す』と…

 

ですが私が出ていけば領地に住まう民は行き場を失い路頭に迷います、だがたった1人の息子を見捨てることなど出来るわけもなく…

 

…報酬は如何様にもお支払い致します。ミチル様、生きる伝説と呼ばれる貴女のお力で、どうか私の息子をお助けください…!」

 

まるで地面に沈み込まんばかりの勢いで男が頭を下げる

それに対しミチルと呼ばれた忍者は──

 

「…1つ訂正を、私は伝説などではない」

「は…しかし…」

「私1人でできることなどたかが知れている、私が伝説と呼ばれた所以は私が1人ではなく3人だったからだ」

 

「…はっ!?」

気付けば部屋の中にいたはずの2人の忍者がミチルの隣に立っている

そう、確かにそこに居るのだ。だが目の前にして尚、領主には2人の気配が感じられなかった

 

「………イズナ、ツクヨ、聞いての通りだ。力を貸してほしい」

「はい」

「もちろん」

 

「ありがとう。…さて領主よ、我らが望むのは1つだ」

「なんなりと」

 

「…お前の領土で獲れた米を使って、我々3人分の握り飯を用意しておくように」

「──え?」

 

あまりの欲の無さに拍子抜けした領主、だがそんなこと気にも止めずに忍は言い放つ

「日が昇る前に貴殿の子を連れて戻る」

 

部屋の中の松明がゆらめき、ほんの一瞬3人の姿が影に隠れ──

「な…!?」

次の瞬間には、3人ともその姿を消していた

 

「っ、…頼みます、ミチル殿、イズナ殿、ツクヨ殿…!」

希望に満ちた領主の声を気に留めず、3人の忍は動き始めた

 

これまでとは違う、相手はこの国そのもの。本来仕えるべき権力者達。

だがそれを理由に断れようか、たった1人の我が子を助けて欲しいと願う親の心を無下にできるか?

 

否。

 

相手が誰であろうと、国を敵に回そうと忍の誇りだけは曲げるわけにはいかぬ

…さぁ、任務を遂行せよ。民と子の未来は我らに掛かっている

 

 

 

「監督『妙奇ロハン』が送る忍劇伝 完結編!

【伝説と呼ばれし3忍】いよいよ明日公開!

…同時上映、

【シャーレの先生と素直になれない猫のきもち】

合わせてお楽しみに!」

 

 

 

「・・・え、なにこれ???」

夜まで時間があるってことで百鬼夜行連合学園を見て回っていた俺とロハンだったが…

 

「え?見ての通り僕がプロデュースした映画のCMだけど」

「ええ…?」

 

とあるテーマパークみたいなところでロハンの名前が聞こえ、見に行ってみたら雰囲気ブチ壊しの超デカホログラムで映画の宣伝をしてたんだ。なにこれ?以外に何を言えばいい?

 

頭の上には【?】通り越して【???】が浮かんでフリーズ状態に突入してしまった

いやマジでなんなんだ…

 

「あ、ロハン監督だ!こんにちはー!」

「おっと、はいこんにちは」

 

と、百鬼夜行の生徒であろう子が元気よくロハンに挨拶してロハンもそれを返す

それだけでなく…

 

「ロハンさん?ホントだ!映画楽しみにしてます!」

「ありがとう、その期待に応えるとも」

 

「ロハンさん、忍劇伝が完結するって本当!?お願い終わらせないで!私この映画大好きなんだよ!」

「すまないがこれは僕の実力不足でねぇ、これ以上引き伸ばしても駄作になるだけだ。それはキミら視聴者と映画に出てくれるキャストに申し訳が立たない、諦めてくれ」

 

「ロハンだ!」

「ロハンさんだ!」

「ロハン監督!」

 

「おわぁなんだなんだ!」

ロハンの存在を聞きつけて次から次に生徒が集まってくる

まさしく『オフのアイドルを見つけたファン』のそれであり、あっという間にもみくちゃにされてしまった

 

な、なんで俺まで…

「はいはい、分かったから。そろそろ道を開けてくれないかい?僕の友人がびっくりしているだろう」

 

そう言うものの中々ファンの壁は開かず、結局俺もロハンも生徒の波を掻き分けてその場を後にした

 

 

 

「いやぁ、嬉しいねぇ。作品を待ってくれている人が居るというのは。これに勝る喜びは無い。」

「結局なんだったんだよアレ、つーかお前ミレニアム生だろ?なんで百鬼夜行であんなに人気者なんだ?」

 

にへらへらと締まりのない顔のロハンにそもそもの疑問をぶつける

 

「あれ、言ってなかったかい?」

「そもそもオメーのこと殆ど知らねぇよ」

「んー、実は僕この学園の『お祭り運営委員会』ってところと繋がりがあってねぇ

お祭りを盛り上げる出し物の1つとして映画を売り込んだら大ハマり!

ミレニアムから転校してこないかって言われてるよ」

 

…そんなに面白いのかこいつの映画

「ちなみにいくら稼いでるんだ?」

「んー?いや、せいぜい百鬼夜行のとある店で1日3食タダ飯が食べれるくらいでお金は受け取ってないよ」

「はぁ?嘘つくなよ」

 

「嘘じゃないぞ?…あ。キミもしかして僕が金やちやほやされるために映画作ってるとでも思ってるのかい?」

「? 違うのか──ばしーん!イッテェ!!!」

 

ノータイムでブン殴られた

…なんかつい最近もこんなこと無かったか?

 

「違うッ!僕は『観てもらうため』に映画を作っている!

興味を持ってもらい、時間を割いて劇場に足を運び、僕の作った撮った映画を観て『ああ、観にきてよかった』と、そう思ってもらうために映画を作っているんだ!」

 

常に人を小馬鹿にしたような態度は鳴りを潜め、感情を爆発させるロハン

コイツにもこんな情熱があったのか…

 

俺とは方向性がまるで違うが映画という存在がコイツの核であることは間違いない

 

「…すまん、侮辱しちまった」

「あれ…『そんなん知るか』とか言い返してくると思ったんだけど」

「俺をなんだと思ってるんだ、少なくとも雷川ラミィよりずっと理解できる想いだよ」

「比較対象が酷すぎて素直に喜べないねぇ」

 

その酷い奴をスカウトしたのは誰だよまったく

「やれやれ疲れた、宿に戻るぞ」

「ええー?まだ30分も経ってないじゃないか、もう少し観光と取材に付き合ってくれよ」

 

「そんなん知るか、5時間だろうが3分だろうが疲れる時は疲れるんだ、観光はまた──「ロハン殿!」

「別の機会にって……やれやれ」

なんでこうも邪魔が入るんだ?

 

振り返ってみてみればさっきも見た狐少女。…画面の中で、という意味だが。

 

「やぁやぁイズナくん、この前の撮影は大成功だったねぇ!おかげで忍劇伝も最高の終わり方を迎えられそうだよ」

「そ、そうですか?えへへ…」

 

イズナと呼ばれた少女は嬉しそうに耳と尻尾をピコピコ動かして分かりやすく喜んでいる

狐っていうより犬っぽいなこの人。

 

「ところでこの方は?ロハン殿の知り合いでしょうか」

「そんなところさ、忍劇伝が完結したからねぇ

新しい映画制作のために彼女に協力してもらっている」

「なるほど!」

 

…まぁ真実を言うわけには行かないしここは否定しなくていいだろう

「あ。お名前お聞きしてもいいでしょうか!」

と、今度はこっちに注意が向いた

 

「申し遅れた、俺は火神ドグマ。ゲヘナから来た1年生だ。」

「百鬼夜行連合学園、忍術研究部所属!久田イズナです!」

 

…忍術研究部?聞き覚えがある、ような…?

「ゲヘナから…イブキちゃんと同じですね!」

「! …ああ、そうだな」

 

思い出した、確か万魔殿の丹花イブキが忍術研究部と交流があったと以前聞いた事がある

少し探ってみるか?

とはいえどう切り出すか…なにせ俺は彼女のことを何も知らないからな

 

「ははっ、丁度いいじゃあないかドグマくん

彼女に忍術を習ってみたらどうだい?」

「忍術か、ソレいいな!…ただ彼女に迷惑じゃないか?」

 

こちらの心情を知ってか知らずか珍しく良い助け舟を出してくれたロハン

とはいえこのまま安易に乗ってしまってはいけない、とりあえずワンクッション置いて様子見

 

「迷惑だなんてとんでもない!イズナ自身まだまだ未熟ですが折角来てくれたんですからちょっぴりでも忍術に触れて貰えば!」

 

こちらの手をがっちり包み込んでブンブンと興奮気味に振る彼女

いい感触だ、忍術とやらがどんなものかは知らないが丹花イブキと繋がりがあるのならここで交流しておくのも悪くない

 

「体験入部、頑張ってくれたまえよドグマくん

僕は他所で取材があるからここで別れるが…

1時間前までには宿に戻ってくれ、いいかい」

「ああ」

 

ちょうどめんどくさいのも消えた事だし、ここは忍術研究部に行ってみよう

今のところ計画を遂行して風紀委員会に入るのが目的だが場合によっては万魔殿への加入も視野に入れておくべきだしな

 

「では早速ご案内します!着いてきてください!」

「ああ、よろしく頼む」

こうして俺は彼女に連れられて忍術研究部があると言う部室に向かった

 

 

 

 

 

 

「さてと、わざわざここまで足を運んでもらってごめんねぇ」

ドグマくんと別れた後、足早に宿へ戻った僕は先日呼び寄せて置いた彼女達と顔合わせをしていた

 

…と言っても呼んだのは1人だけだったんだが

「それにしても全員お揃いとは、緊張してしまうよ」

「………」

 

それなら、と彼女が取り巻き達に一言。3人の部下は素直に部屋を出ていき…

いや、やたらオドオドした紫髪の子だけは少し躊躇っていたが他の2人に連れられて出て行った

 

「………」

毅然とした態度のまま、残された彼女とテーブルを挟んで座る

…床に座るのだけは慣れないなァ

 

「やぁやぁ、来てくれてありがとう

この度は「────」

 

暇じゃないの、とこちらの前置きをバッサリカット。仕事は何かと彼女が問う

…動機も理由もどうでもいいからさっさと仕事と報酬を提示しろ、ってことかい?ふふ、いいじゃないか

 

「では端的に、私兵として僕に雇われてくれ

日時は5日後、期間は1日間だ

報酬は…そうだね、過去の仕事で最も報酬の良かった依頼を教えてくれ

その倍の額をこの場で払おう」

 

空崎ヒナや万魔殿のせいで目立っていないが彼女たちは強い。ここで確実に確保しておきたいし、なにより敵に回したくない

過去1番の報酬がいくらか知らないが金で解決できるならそれでいい

 

「………」スッ

「おっと?拝見させてもらうよ」

動揺一つせず差し出された紙を受け取り、早速見てみる

 

…へぇ?僕以外にも彼女たちを高く買っていたところがあったのか

だがこれくらいなら財布から充分出せる

…ちょっぴりヘソクリが必要だが。

 

「少し待ちたまえ…うん、よし。これでいい」

2つのアタッシュケースに詰め込んだクレジットを見せ、『君たちを雇えるだけの金がある』と明確に提示。

これでいいかな…うん?

 

「………」

え?…その、今なんて言った?

『倍はいらない、ただし残業もしない。この条件なら引き受ける』…彼女はそう言ってアタッシュケースを押し返した

 

「…はは、『金さえ受け取ればなんでもやる』という謳い文句なのに金に固執してないのには驚いたよ。いいとも、その契約で行こう」

アタッシュケースの1つを手渡し、これにて契約完了。心強い味方ができたねぇ

 

「あーそうそう、滞在用に渡した宿泊券だけど付属の食事はあくまで1日3食×4人分、定食メニューのみだから気をつけて…行ってしまった。

中々肝が据わっているじゃないか、次は彼女の映画を作ってみるというのもいいかもしれないな…?」

 

 

 

同時刻、宿の外にて…

 

 

 

「あれ〜?アルちゃん、受け取らなかったの?

報酬4倍ゲットのチャンスだったのに」

「だって、いくらなんでも貰いすぎよ!

そもそも最初にこっちが提示した金額で既に2倍だったのに、さらにその倍だなんて!」

 

妙奇ロハンが呼び寄せた傭兵こと便利屋68、アウトロー(悪)を目指しているとは思えないお人好しな社長はあわあわしながらアタッシュケースを開く

 

「…それにしたってこれだけあれば当分困らないんじゃない?」

「そ、そうね!これだけあれば生活費はもちろん休憩室のソファは新しくできるし事務所の椅子も新調できるし、それからそれから…」

「………社長、やっぱりやめよう。この依頼は受けるべきじゃない」

 

そこに『待った』を掛けたのは便利屋の課長こと鬼方カヨコだった。依頼主の名前を聞いてからというもの気乗りしないらしい

 

「でも今回はちゃんと相手が分かってるし、アビドスの時とは違うわ

依頼主は生徒で素性もハッキリしてるしお金も先払いだから踏み倒される心配もないじゃない」

「それは、そうだけど…」

 

とはいえお金が無いと困るのはカヨコも分かっている。5日後に私兵として何をするのかはまだ分からないがここのところ仕事が来ず、事務所の貯金箱が悲鳴をあげていたところに大きな仕事が来たのだ、逃せないのはアルだけでなくムツキやハルカも分かっている

だがそれでもカヨコは不安を拭えない

 

「ミレニアムの妙奇ロハン…映画を作るためならなんだってやる奇人…そんな彼女が私たちを雇ったのはなんで?」

「それは私たちが有名になったからに決まってるわ!」

 

有名になったのなら仕事が来ないのはおかしい話だが久しぶりの大仕事に喜ぶ彼女達にそれを言うのは流石に憚られた

 

「とにかく先払いで報酬を貰った以上は引き受ける。それでいいわね?」

「わ、わたしはアル様の決定ならばどんな仕事でも!」

「は〜い、カヨコちゃんもそれでいい?」

「………分かった」

 

口では分かったとは言うものの疑問は尽きない

なぜここまでして私たちを雇った?ここまでの大金を払って1日限りの私兵が欲しい、なんてどう考えてもおかしい

 

何かのトラブルに対しての護衛が欲しいというのも違う気がする、それなら1日守ったところで次の日狙われたら意味がない

要求はあくまで私兵…

 

「さぁ5日間…いや4日間のボーナスタイムの始まりよ!みんな優待券は持ったかしら?

せっかく来たのだからここでしか食べられないものたくさん食べて行くわよ!」

「は、はいぃ!」

「おっけー♪」

 

「………」

妙奇ロハンは私たちを私兵にして…いったい誰と戦うつもりなのだろう?

 

「え、あ、あっ?あっ!」ポスポス アタフタ

「? …あ、もしかしてアルちゃん、優待券を失くし「あるわよ!?ただちょっと見つからないだけで…」

「あ、アル様!あれ、あれを…!」

「へ?」

 

鳩「くるっぽー」ハムハム

「・・・鳩ね」

「うん、アルちゃんの優待券を美味しそうに食べてるね〜」

 

・・・

 

「なっ!なんですってー!?」

 

はと「ぽ?」ジッ…

「お、お願い返してちょうだい!それが無いとご飯も宿も取れなくなって困るのよ!」

とは「ぽーっぽっぽっぽwww」パタパタ~

 

「ああっ!飛んでっちゃダメ!待って!」

「そ、それはアル様のなのによくも…!

逃がさない許さない逃がさない許さない

逃がさない許さない逃がさない許さない

逃がさない許さない逃がさない許さない」

「いやぁ、アルちゃんといるとやっぱり飽きないね〜」

 

鳩を撃ち殺さんばかりに銃を取り出すハルカと『流石に動物虐待はダメ!』となんとか宥めようとするアル、ツボったのか笑いが止まらないムツキ、結局不安が拭い切れないカヨコ

せっかく百鬼夜行連合学園に来た便利屋だったが1日目は鳩との追いかけっこだけで終わってしまうのだった




ワカモの尻尾で窒息したい作者のルルザムートです、ハイ。
もう見て分かるかと思いますがロハンのモデルは露伴先生です
ただあちらの露伴先生から全ての善性を引っこ抜いて漫画から映画にジョブチェンジしてはいますが。
ロハンに限らずラミィとフクヨにもそれぞれモデルがいますので次回以降キャラ紹介でも挟んでいこうかな、と
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