シャーレの先生追放計画《集いし4人は無関心》 作:ルルザムート
「ありゃ、日付が変わってしまった」
「ロハン、まだなの?…今ところ廃墟しか見えないけれど」
「次の角を曲がればすぐさ、そら見えてくるぞ」
ロハン以外ロクに喋らない割と最悪な空気のドライブが終わり、目的の場所が見えた
「………廃墟だけだけど?」
「ああ、地上はね」ついてきてくれ
ラミィとワカモ、そしてゲスト参加のカヨコも連れて廃墟の1つへ足を踏み入れる
ええと確かこの辺に…
「よっ、と」バゴッ
地下への隠し通路をこじ開けて手招き。目的の物はこの先だ
「廃墟の地下にこんな空間が…?」
「上と同じく長い間使われてはいないようですが…電気は通っているんですね」
「それは僕が通したよ、さすがに明かりなしでは入れないからねぇ
ほら、あれだよ」
指し示す方には僕が見つけた時と同じように空間を歪ませ、そこに浮き続けている景色。それを彼女ら3人揃って凝視していた
「………」ポイッ
「わっ、こら!」
ラミィが小さな瓦礫をそこに投げ込む
瓦礫は音もせず穴の中に入り込み、向こうに見える道路へコロコロと転がっていった
…当然、穴の反対側を見ても瓦礫は無い
「ラミィくん、向こうの人間には穴が見えていないんだ。変なことをして向こうから閉じられたらどうする!」
「…ごめん」
ここまで来て仲間のポカで台無しなんてたまったものじゃあない
「景色だけじゃない、犬の散歩をしている人がいるし車や通行人も見える」
「………信じるしかありませんわね
このワカモ、あなたの計画に協力します」
「けっこう!そう言ってくれると信じていたよ」
結果論だがラミィくんのおかげで2人には信じてもらえたようだ
問題はこの後カヨコくんがどう動くかだが
「妙奇ロハン」
「なんだい?」
「先生がこれを使って帰ったとしてこっちに戻ってくることは「ない。聞いていただろう、これは一方通行だと」
そういう質問が誰かから来るだろうと思って準備していた物を見せる
「縄?…焼き切れてるように見えるけど」
「向こうに行った物体がこちらに戻れるのかは見つけた直後に検証したが…この通り、向こう側にいった部分を引き戻そうとしたらそこから先が焼き切れた。試したのはこれ1つだけだが実験はもうできないし、しても意味がない」
「………なら私が実験する、片腕を入れてから引き抜いてみれば分かるはず…!」
やや冷静さを失ったカヨコを間髪入れずワカモが止める
うん、ありがとう
「そんなことしても肘から先が無くなるだけだ、やめたほうがいい
…それにこれ以上無駄使いはできないしね」
どう言う意味?なんて質問が続くことは分かりきっているのでそれを見越して先に答えを提示した
「…小さくなってるんだよ。穴が、使うたびにね
今ははっきり向こうが見えてるし、人が余裕で通れそうな大きさだが縄の実験とラミィくんの投石ではっきりした。
これには回数制限がついている、それも物体の大きさによって減り方が変わるみたいだ」
縄の実験だけでは推測でしか無かったがさっきの瓦礫によって起こった収縮が仕掛けた機器に引っかかった。
「具体的な回数は?」
「さてね、そう多くないことは確かだ」
実を言うと残り回数の調査は終わっているんだが…カヨコくんには言えないな
「………この事を便利屋のみんなに伝えさせてほしい」
「何を勝手に「まぁ待ってくれワカモくん。
…鬼方カヨコ、私たちはこの計画に持ちうる全てを賭けてここにいる。キミ達に前払いした報酬もその1つだ」
「分かってる。邪魔はしない、当日は変わらずあなたの私兵として動く」
「キミは良くても他の3人は納得するかな?」
「必ず説得する。…だからお願い」
…よし
「分かった信じよう。話したまえ」
「ロハン!」
掴みかかる勢いのラミィ
でもこれでいい、これで充分なんだよ
「大丈夫、彼女は裏切らない。それに──」カチッ
『必ず説得する』
「この録音データがあれば充分だ、便利屋の結束は硬い。彼女を嘘つきにしないためにも3人は必ず折れてくれるさ」
「………」
凄まじい疑惑と嫌悪の視線を感じるが構いやしない
「他に質問は無いかな?…うん、無いね。それじゃあ帰ろう!」
外へと歩きつつ、山場の1つを超えた安堵と結果を手帳に書き込む
いつだって予定は未定。だが計画は違う、より良い映画作りのためのプロット作成と進歩状況の確認は必須である
「何書いてるの?…うわぁ、なんて汚い字…」
「あっ、こら覗くんじゃあない」
勝手に見ておいてため息をつくラミィをぐい!と押し戻す
覗かれたところで読めるはずも無いがそれにしたって嫌なものは嫌である
ちなみに書いてある内容は
『映画制作』
『武器調達及び整備』
『先生への手土産買い出し』
『取材』
『映画制作』
『盟友との打ち合わせ』
などなど…
他にもたくさんあるがほとんど文字で真っ黒な手帳を全部読んでいたらキリが無いのでやめておくか
ふふん、さあ今日も頑張ろう
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シャーレにて…
「先生、終わりましたよ」
「えっ、もう!?…本当だ、あんなにあったのに」
先生から貰った仕事は割と早く終わった、反応から見ても俺はかなり仕事の速い方らしい
やってみて分かったがシャーレの仕事…手間と時間はかかるが簡単な物が多い
戦うのは苦手だがこれなら強くない俺でも役に立てる
もっとも、塵も積もればなんとやら。こんなのを毎日やってたら一気にシナシナコースだ。正直3日以上繰り返していたら気が狂う自信がある
「ありがとう、これなら明日の予定を繰り上げても良さそうだ。…の前に、何か飲むかい?」
「いえ、持参の物があるので」
先生の分も持ってきました、とココア缶をポイっと投げる
「え?いや、これはキミが飲んで。この前のカイテンジャーフィギュアといいちょっと貰いすぎだし…」
「実を言うと自販機でアタリを引いたオマケなんですよソレ。昔からクジ運と視力だけはいいので。あ、ココア嫌いでした?それならこっちで処分しますが…」
慌てて否定し、缶を開ける先生
うん。これでよし
それにしてもシャーレの当番に選ばれるとは幸運だった。先生追放計画が遂行されれば2度とこういうチャンスは無くなるからな
先生の情報は風紀委員会も万魔殿も欲しいはずだ。どんな権限を持っているかはもちろん、身体的情報や趣味嗜好まで
もちろん武器にするには計画前にどちらかの組織へ接触しなければならない、かなりタイトなスケジュールになるなこりゃ
「ふぅ、ごちそうさま。さっきの話だけれど明日の予定を繰り上げてもいいかな?」
「もちろん。ここでの決定権は先生にありますから。でも相談してくれてありがとうございます」
話を聞くとトリニティへの出張らしい、場所が場所だけにゲヘナ生の俺は留守番を頼まれたがそれでは意味がない
幸い以前の手が使えそうだったのでそれも合わせて先生を説得。なんとか同行にこぎつけた
まぁ…出張先がシスターフッドなら絶対に行かなかったし行かせなかったが。
そして…
トリニティ 正義実現委員会本部にて…
「正義実現委員会の演習…ですか」
「うん。」
正義実現委員会の制服に身を包み、ひっそりと先生の隣を歩きながら話を聞く
どうも先生の指揮の有無で戦力がどう変わるか
また、先生が居たらできること。できないことの確認のための模擬戦闘訓練らしい
「こんにちは、先生」
「やあハスミ、わざわざ繰り上げてもらってごめんね」
「いえ、今日の方が都合の付く生徒が多いので助かりました」こちらです
正義実現委員会の羽川ハスミ。剣先ツルギ委員長に次ぐNo.2か…
実質的に彼女が正義実現委員会を仕切っているらしい。剣先さんを怖がっている委員が多いからなのだろうか?
…いや、戦闘はともかくこういう細々としたものは苦手そうだなあの人。
「じゃあ行ってくるね」
「ええ」
2人を見送り、事務室へ。
俺が変装してここに来ることはあらかじめ剣先さんには言ってある。あとは演習が終わるまでひっそりと彼女の部屋に隠れて──「どこへ行くっすか?」
…!
「もうすぐ演習が始まるっすよ、早く準備するっす」
…今日はやけに有力者から話しかけられる日だ
こっちこっち、と手招きするのは正義実現委員会の仲正イチカ。温泉開発部部長護送の時にゲヘナに来ているのを見たことがある
「いえ、今回私は不参加です。代わりにツルギ先輩に呼ばれていまして」
「ツルギ委員長の部屋はそっちじゃないっすよ
入ったばかりだとしても知ってるはずっすけど」
…食えない奴だ、堂々と嘘を教えてくるとは。早くもこっちの正体に感付き始めているのだろう
委員長室はこっちで間違いない、一度行ったことがあるから間違えようがない
「あの、イチカ先輩?流石に委員長の部屋くらい分かりますよ。ちゃんとこっちにあります」
「ふーん…冷静っすね」
「なんのことだかよく分かりませんが…呼ばれているので失礼します」
俺の変装を知っているのは剣先さんと先生だけだ、あまり事を大きくしたくはない
「キミ、やっぱりウチの子じゃないっすよね」
「………はぁ」
どうやらもう仲正イチカの中で俺はよそ者だという確信はできあがっているらしい
これ以上否定しても無駄だろう
「…どこで気付きました?」
「今っすよ、ウチの子なら今の質問でオロオロしだす子が多いっすからね
今のは冷静すぎたっす」
やれやれ、そういうことか
「わざわざ変装までしてるってことは…ゲヘナ生あたりっすか。大方、先生の出張に無理言ってついてきたところっすかね」
「ええ、そうですね。今日は私が当番なので
留守の間に先生に何かあったら困りますし
先生と剣先さんにご迷惑なのは分かっていましたが心配性なもので。」
嘘は言っていない、もっと大きな動機は他にあるがこれだって嘘ではないのだ
「本当に冷静っすね、ツルギ委員長が気にするのも分かる気がするっす」
「…うん?」
ってことはつまり
「ちょっぴり試させてもらったすよ、火神ドグマ」
「…名前まで知ってて試さないでくださいよ」
にこにこしてるその表情から一切の考えが読めない
敵に回したくないタイプだな…
「キミが何か大きなことをやろうとしてることは知ってるっす。そしてそれに悪意が無いことも」
「………」
「演習に来るっすよ、私もツルギ委員長もキミがどれほど本気か測りたいんす」
「…部屋に行っても剣先さんは居ないと?」
「ええ、それを伝えに来たのもあるっすね」
………マジかぁ
「…分かりました、ですが示し方は選ばしてもらいますよ」
「それでいいっす」じゃあこっちに
そのまま彼女に連れられて演習場へ
戦いは苦手なんだがな…
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おまけ
またまたキャラ設定編、今回はシスター服を着た悪魔
『雷川ラミィ』を。ではどうぞ
雷川ラミィ
トリニティ生、シスターフッド所属
無口かつ無趣味、他人を嫌っているわけでは無いので話しかけられたら応えはする。
が、そもそも誰かと仲良くなろうとする気が微塵も無いため必要無いことは喋らないし動かない
シスターフッドのトップである歌住サクラコに心酔しており彼女こそがトリニティ、ひいてはキヴォトスを支配するのに相応しい人物だと思っておりその信頼は神に対するものに近い
シスターではあるが神への信仰心はまるで無く、むしろサクラコを神として祈りを捧げているまである
サクラコを神と崇めている分侮辱する者には容赦が無く、それを聞いたり見たりした瞬間必ず激昂し普段の無口はどこへやら。
サクラコを侮辱した(とラミィが感じた)相手がどれだけ逃げようとも追いかけ、あまりに過激な報復をするため恐れられ、他生徒からの嫌がらせやちょっかいもすぐに無くなったという
愛用品はベレッタM9の『ゼーレ』
参考したネタは新世紀エヴァンゲリオン及び雷の天使ラミエル
ちなみに神──サクラコからの評価は『普段何してるかよく分からないがとっても素直で少しだけ不器用な女の子』である
ワカモの獣耳を吸いたい作者のルルザムートです、ハイ。
ようやく次で最初の戦闘シーンが投稿できます
個人的にドグマみたいな戦闘スタイルがかなり好き