転生アルビオン二号機 in カルデア   作:楼ノ卦

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10. ドキドキ!モンスター・バスター特異点-エピローグ

 

 

 

「なるほど─────まぁ、大まかな事情は理解できたぞ」

 

 そう言って、片手で頭を抱えるDr.ロマン。

 

「コフィンなし。存在証明なし。バックアップなしの微小特異点への転移。その際、肉体と魂はそのままカルデアに残り、精神だけが異空間に飛んでいく。……なんなんだ、この現象は!まるで意味がわからないぞ!」

 

「まぁ、落ち着きなよロマニ……と言いたい所だけど、これでは私も落ち着いていられない。なんせ、メディカルチェックを施しても何処にもエラーは生じなかったんだ。……私のラボでも色々模索してみるつもりだけど。コレ、なんだか原因は出てこないような気がするんだよねー」

 

 頰を付きながら溜息を吐いたのは、我らがカルデア技術局特別名誉顧問。ダ・ヴィンチちゃんである。

 

 現在の暦は、九月初頭(人理が存続していれば)。セイバーと共に恐竜と飛竜が行き交う微小特異点から脱出してから、ちょうど1日が経過しようとしていた。今の私は管制室にて、カルデアのトップ達に今回の特異点での活動について報告をしていたのである。

 

 セイバーとの別れを済ませ、意識が落ちた後。私はカルデアのマイルームのベッドの上で目を醒ました。カルデアの白いちょっとメカニカルな床を見て「これで拠点に帰ってこれたんだ」という事実に安堵する。しかし、マスターの仕事は、実働による特異点の修復だけで終わりじゃない。作戦終了時から開始される報告レポート作成や、立ち回りの特別反省会など、マスターは特異点修復後も仕事はバリバリに追加されてしまうのだ。

 

 それは今回の微小特異点でも同じ事。いや、聞き取り等の案件については、むしろいつもよりも厳重に行われていた。何分、イレギュラーな事実ばっかだったので、身体検査や事件の報告に関しては他に待っている仕事を後回しにしても行われたのである。

 

 

 

 私が特異点から解放されベッドで目が醒めると、私の枕元には聖杯が置かれていた。まじか。ベッドに聖杯直置きとかアリなんだ。でも、このセイバーに渡された聖杯どうしようかな……と数分ほど悩み。やっぱ管制室のみんなに見せよう、と思い立ちマイルームを飛び出して廊下を歩いていると。ダ・ヴィンチちゃんのラボに行く途中のマシュとバッタリ会ってしまった。

 

「せ、先輩?!それ、聖杯では……?」

 

 聖杯を抱いて館内を歩行する私の姿に、仰天と困惑が半々で混じった表情を見せてくれたマシュは、管制室に急いで通話にて報告。私の長い報告会は、その時点から始まったのである。

 

 と言っても、特異点の大まかな内容自体は話す事が出来たが、正直最後の黒き竜が話していた内容はちんぷんかんぷん過ぎて、何も分からなかった。報告しようにも、覚えてなさ過ぎて黒幕の目的や、特異点の成立自体は分からず仕舞いである。"聖杯使って世界を滅ぼそうとしていた"という事以外、私には説明ができなかった。

 

「体感三週間ほど特異点に居たはずだったんだけどなぁ………」

 

 セイバーと私は特異点にて数週間の時間を過ごしていたが、肉体が残っていたカルデアからしてみると、特に異常はなかったのだという。

つまりカルデア視点では、今回の特異点調査期間が、私が就寝してから起床することまでの数時間となっているのだ。どうやら、あの特異点内だけ、時空間の流れが乱れていたらしい。

 

 ……そういえば、滞在していた村ではサーヴァント伝説なんてものがあった。人理焼却が起こった七月三十日まで、一ヶ月ちょいぐらいしか経ってないというのに、その短い間だけでサーヴァントの竜退治という流れが、"伝説として成立する"というのは、些かおかしい。これは村に伝わるガチの伝説であり、ヤンキーの武勇伝レベルの伝説ではないのだ。この現象は、あの特異点内の時間の流れがおかしかった故に起こっていたのだろう。

 

 時空間が乱れた、怪物が用意したサーヴァントの狩場。今思うと、寝ているだけでトンデモない場所に辿り着いてしまったものだ。

 

 

「でも、そんな魔境でサーヴァントと落ち合えたのは非常に幸運でしたね」

 

「全くだ。しかも、そのサーヴァント。ファブニール級の竜種を単独で撃破したそうじゃないか。きっと、名高いトップ・サーヴァントだったんだろうな」

 

「でも、本人曰く無銘の怪物らしいんです」

 

 彼は、確か自身のことを無銘の怪物と称していた。そして、空?の果てに住んでいる竜なのだとか。

 

「無銘の怪物……?幻想種ってコト。高位の幻想種、しかも名前の無い怪物が人理に手を貸すなんてことあり得るんだ……たしか、クラスはセイバーでしたよね。どんなサーヴァントだったんですか?」

 

 管制室オペレーターのシルヴィアさんが、私に問いた。

 

「えーっとですね。騎士の鎧を着た白髪の男の子です。髪型を変えれば、下手したら"女の子"で通っちゃいそうなぐらいのキレイな子で」

 

「今男の娘の話した?」

「「「「「「うわあああぁ?!」」」」」」

 

 私のコフィン担当官ジングル・アベル・ムニエル氏が、ぬるっと会話の輪に入ってきた。

 

「ちょ、ムニエル!」

 

「ムニエル一旦、下がれ!」

 

「お前の趣味の話はしてねぇぞ!」

 

「いや、誤解だ!誤解!みんな、一旦冷静に考えてくれ。俺だって、時計塔の魔術師の端くれだった男だ。神秘にはそれなりに通じてると自負してる。なら、そのサーヴァントについての議論に参加する権利は俺にもある筈だ」

 

「まぁ、それもそうか……」

 

「そうかな……?そうかも」

 

 元々、彼が優秀であることを知ってるスタッフは渋々、話の輪に加わるコトを肯定した。

 しかし、シルヴィアさんとエルロンさん女性陣の視線は未だ冷たいままである。

 

「えー、こほん。では、改めて彼について話させて頂きますね」

 

 

 

───────────────────

 

「…………なるほど」

 

「黒幕は竜種だったが、味方も竜種だったとはね」

 

 まぁ、私が知っている彼の来歴は、「星の大坑道」という場所に住んでること。そこに現れた、「楽園の魔術師」とやらに道理を説かれ、人間の身体を持ってサーヴァントとしてこの特異点に召喚されたこと。

 

 このくらいである。

 

「星の大坑道………ってアレよね?ロンドンの時計塔の下にある、発掘現場用の地下空洞のことよね。確か、噂ではアヴァロンまで続いてるんじゃないかって言う」

 

「霊墓アルビオンのことか?確かに、あの場所には幻想種が住み着いてるとは聞くが」

 

 時計塔出身のエルロンさんとムニエルさんは、「星の大坑道」とやらを知ってるらしい。

 

「──────アルビオンだって?」

 

 そんな中、反応を示す男が居た。

 

「ロマニ?知ってるのかい。でも、君は時計塔に行ったことがないんだろ?時計塔の機密たる霊墓。何処でそんな事を知ったんだ?」

 

「……かなり前、マリスビリー前所長が談話室でボクに話してくれた事があってね。曰く、世界最後の純血竜。魔術世界の最大階梯・冠位を冠する境界竜。山に匹敵する巨体を持ち、神代の空の果てを飛翔し続けた最高位のドラゴン。神秘の時代の終わりに、星の内海に行く為に彼が掘った穴と彼自身の骸が、現代では霊墓となったとかなんとか」

 

「そうだったんだ………境界竜かぁ。時計塔の魔術師やってたのに、知らなかったです。やっぱ君主の知識権限すごいなぁ」

 

「でも、ボクはそこが発掘所として使われているのは知らなかったんだけどね」

 

「逆にそっちは知らなかったんですね………現代魔術社会における資源のほぼ全てが、霊墓で獲れるモノだと言われています。逆に、竜のことを知っていて霊墓の内容を知らない事が驚きですよ」

 

「科学と魔術が交差するカルデアらしい空気だねぇ」

 

 感慨深そうに、マーカスさんが腕を組んで頷く。

 

「………もしかして、藤丸君が会った竜って、アルビオンの仔だったりしない?」

 

「まさかぁ。何言ってるんですかドクター。だって、その竜は大地を掘りながら死んでるんですよ。子供を遺す余裕なんてないでしょ」

 

「まぁ、それもそうか……」

 

 うーん、と唸るドクター。

 

「でも、アルビオンか否かはどうかとして、人理を守るために奔走していたワケですから、味方としても考えてもいいでしょう」

 

「……確かにね。もし、縁が結ばれたのであれば、マシュの盾でいつかは召喚されるだろう

─────どうだい、藤丸君。かのサーヴァントは、君にとって信頼に足るものだったかい?」

 

 これまでに前例のない、英霊ではない存在の召喚。その正体は、幻想種という怪物だ。人類の安否に責任どころか関係すらない獣が、サーヴァントとして信頼し得るのか。ドクターは、私に問いた。

 

………その答えは、決まっている。

 

「セイバーは特異点の中、私をずっと守ってくれました。怪物だろうとなかろうと、その事実は変わりません。あの特異点で時間を共にした"セイバー"として召喚されるのならば、確実に私は彼は信じます」

 

 空から大地へ真っ逆さまに堕ちゆく中、彼は手を掴んで私を掴んで救ってくれた。何体もの恐竜とワイバーンを相手に、守り切ってくれた。下手くそで意味のない───不器用過ぎる気遣いを見せてくれた。

 

 特異点の戦いを経て、彼が尋常ではない力を持っているらしいのは分かった。多くの事を知っているのも分かった。でもそんな彼は、怪物と言うには変なくらいに、未熟な人間臭さに溢れていた。

 

 ………それに、彼は自身が消える直前まで、私の未来と幸福を祈ってくれたのだ。そんな彼を信じずして、誰を信じることが出来るのか。

 

「……うん、ずっと特異点の最後まで一緒だったマスターがここまで言うんだ。それにカルデアの召喚には、人理を守る意思のある英霊しか召喚されない。彼が人間だろうと、怪物だろうと。その意思さえあれば此処に来る。なら、彼もきっと来るだろう………そうだね、藤丸君」

 

「─────はい!」

 

 そうだ。彼は、"必ず(マスター)の下に向かいます"と誓ってくれた。

 

"即・来ますので身構えておいた方がお得ですね。"

 

 セイバー。君がそう言ったんだよ?

 だから私、実は朝起きた瞬間から検査を受けてる最中も、今会話しているこの間もずっと身構えていたんだ。でも……正直これって結構疲れるから。早く来てくれると助かるな。

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 ぼくは、暗闇の中で佇んでいた。

 でも此処は、ぼくが住んでいる星の大坑道ではない。真っ暗な空間なのは同じだが、毛色が違う。なんというか、匂いが違う。

 

 特異点から帰還した後、本体の竜に戻っている筈の分霊は、今こうして何も知らない場所に一人突っ立っている。

 

「なんだ………ここ」

 

 ワケの分からない見知らぬ場所。

 だけど、ぼくにはやるべき事があった。

 

 竜種の本能が、後ろを振り向けと吠える。

 お前が見つけるべき物がある、と叫ぶ。

 

 直感に身を委ね、後ろを振り向くと。

 そこには、仄かに輝く虹星があった。

 

 いや………違う。あれは星ではない。

 星に見違えた光、あれは手だ。

 

 

 ──────記憶が呼び起こされる。

 

 

"───そこの君、手を!"

 

 

"────うん。よろしく、セイバー。じゃあ、はい。改めての握手を"

 

 

"うん、改めてよろしくね、セイバー"

 

 

 この世界で生まれて初めて知った掌の温もりの記憶が。彼女と手を繋いだ記憶が、脳髄に残響として響く。今世で初めて見た青空の下で起こった出来事。ぼくの宝物に等しい記憶が、リフレインしていく。

 

 一歩、足を進める。

 もう一歩、足を進めた。

 

 進んでいくうちに、闇が拓けていく。

 広がる朝焼けのような、夜明けのような。

 淡い光が広がっていく。

 

 「───は」

 

 ぼくは、いつの間にか走りだしていた。

 走る度に、光は強くなっていく。

 

 あれは、誰の手なんだろう。

 ……なんて、無粋な疑問は抱かない。

 

 何も考える必要はない。

 さっきの約束をさっさと果たすだけだ。

 

 そうしてぼくは、目の前にまで迫った手を、迷う事なく握った。

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 虹色の光が奔り、マシュのラウンドシールドに光の柱が聳え立つ。

 

 何が来たのだろう?────そんな白白しい疑問を私は抱くつもりはない。

 

 部屋いっぱいに充満した光の中から、ヒトの影が顕れる。 

 

 がしゃん、がしゃん、と鎧の擦れる音がする。顕れたヒトの影が、こちらに歩みよってくる。 

 

「──────"即・来ますので身構えておいた方がお得ですね"って言ったのは正しかったでしょう?」

 

「本当だ。でも、今日中に来てくれなかったら針千本でも飲ましてやろうかなって思ってたところだったから。来てくれて本当によかった」

 

「えぇ………そんなコト考えてたんですか。今日中に来れてよかった。ぼくは心の底から安心してますよ」

 

「私もそんな事せずに済んで本当に良かった。─────また明日の約束、ちゃんと果たせたね。セイバー」

 

 そうして、私の眼前で白髪の少年騎士は微笑んだ。

 

「はい。サーヴァント、クラスはセイ───セ、セイッ?!!」

 

セイバーは、目を文字通り見開いて仰天した。不自然なくらい、声が震えている。

 

「いきなりどうした……?」

 

「えー、あ。こ、こほん。い、いやなんでもないです。あ!そうです。ぼくの銘が、人理に登録されたらしくて。無銘だった霊基が、真名ありに出来るようになったんですよ」

 

「なるほど、真名が。確かに、クラスでずっと呼んでたらカルデアだと不便だもんね。………セイバー、君の真名を教えて貰ってもいいかな?」

 

「は、はい。サーヴァント・セイバー。

ぼくの真名は──────アルビオン。アルビオン・ネオスと申します。改めまして、宜しくお願いしますね、マスター」

 

「───うん、宜しく。アルビオン・ネオス」

 

 私は、初めて知った彼の名前を口にしながら、手を伸ばす。

 

「───はい!」

 

 セイバー………アルビオン・ネオスは、当たり前のように。いつものように。

 

 私の手を、握り返した。

 






※こちらは特異点時のプロフィールとなります
【カルデア召喚時のプロフィールではありません】

【クラス】セイバー
【真名】無銘

筋力C
敏捷B
耐久B
魔力B
幸運D
宝具:B+

身長/体重:160cm・47kg
出典:なし or 『ロード・エルメロイII世の事件簿』
地域:星の大坑道 ブリテン(?)
属性:混沌・善  副属性:星  性別:雄型

【紹介】
偽装特異点: ボッタクル竜骨・記録帯調整局にて初登場(顕現)。白い衣に黒鎧を纏った少年騎士。マーリンに軽く教わった剣で戦うものの、その腕前はぼちぼち程度。術理による戦闘はしょぼい反面、籠手に備えた鉤爪や蹴撃などの暴力的なステゴロ戦闘ではいかんなく高い能力を発揮する。ぶっちゃけ無手の方が強い。
「やば……アステカの神を笑えないなコレ」

【属性一覧】
星(「天地乖離す開闢の星」特攻無効)・混沌・善・竜・男性・騎乗・人型・子供・愛する者・ヒト科以外・魔獣・ケモノ

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