転生アルビオン二号機 in カルデア   作:楼ノ卦

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05.ドキドキ!モンスター・バスター特異点-3

 

 

 

 小型恐竜たちの前に躍り出たセイバー。

だが、それも無策ではない。この戦場に立っているのは、彼だけではないのだ。

 

「──── plag set

 

 礼装を起動する。

 現在の装備に実装された三つの魔術。その中から、最もこの状況に適したモノを選択する。

 

瞬間強化(ブーステッド)!」

 

「助かります!」

 

 瞬間的な強化魔術。効果は一瞬。

されど、その一瞬は、戦闘の数勢を左右する決定打となり得る。セイバーは、強化されたリソースを左手の鉤爪に収束させる。

 収束させたエネルギーは、赤黒く煌めき、奔流としてスパークし。限界まで引き絞った鉤爪を、彼は恐竜たち目掛け振りかぶった。

 

 セイバーが放ったのは斬撃。剣ではなく、鉤爪によって放たれた魔力の鋭き衝撃波だ。

 魔力波を放ったことで、前列(1wave)から中列(2wave)にかけての小型恐竜は、まるで削砕されるように身体が吹き飛ばれていく。

 

 だが、全てが殺されたワケではない。前方の同胞が盾になり、生き残った者たちが此方へ突っ込んでくる。

 

 着地したセイバーへと、四方八方から迫り来る牙と爪の包囲網。この包囲を一網打尽にしなければ、二人の人間が確実に死ぬ。

 

「─────」

 右、左、後、前。

 セイバーは、瞳も首も動かすことなく、それら全てを把握する。

 その瞬間、彼は右手の剣を手放した。手放した右手からは、左手と同じように鉤爪を生成される。

 

 前方から放たれた鋭利な爪による飛び蹴りを、右手の鉤爪を以て握り潰す。機能しなくなった「後ろ脚だったもの」をそのまま握って、右後ろから首に噛みつこうとした恐竜へと、まるで投げ付けるようにぶつける。双方の首骨を砕いた感触を確かめてから、握ったモノを放り出す。

 

 二体撃破。残り四体。

 

 その間に、左手の鉤爪を左方から襲ってきた敵の頭蓋に突っ込む。鱗を穿ち、骨を砕き、肉まで至った指を骸から抜き出す。

 

 一体撃破。残り三体。

 

 前から飛び出して来た恐竜の顔面を蹴り上げる。彼の足の平は顎を捉え、砕く。奔る衝撃が、また一体の恐竜を絶命させる。

 

 一体撃破。残り二体。

 

 片足を蹴り上げた状況から、地面に接地したもう片方の足で魔力を解き放つ。放たれた魔力はセイバーの身体を持ち上げ、彼は空中で身を翻しながら後方へ一回転(バック宙)する。その間に鉤爪を引っ込ませ、無手となった両手で、襲い掛かる左後ろ方からの恐竜の頭を空中で掴む。

 

 恐竜の顔面をホールドしながら、そこから魔力を逆噴射し、空中で前方に回転。大地へと着地すると同時に、右前方向から襲って来た最後の恐竜へと掴んだ敵を叩き付ける。

 

 轟音を響かせ、重なりながら呻く二匹の恐竜。彼らにトドメを刺すべく、彼は先程落とした剣の鍔を右足で蹴り上げ、両手で掴み。そして、振り下ろした。二頭の躯を同時に貫通した剣は彼らの生命にちゃんと届き、息の根を止める。

 

 二体撃破。残り0体。

 

「周囲に敵性反応なし。戦闘、終了します

……ふぅ。なんとかなりました」

 

「お疲れ様、セイバー」

 

 倒した恐竜たちは種火となり、セイバーへと吸い寄せられていく。いつの間にか、セイバーの上の表示は、Level10/10となっていた。

 

 ……レベル上限、ということだろうか。

 

「すまん、あんたたち。助かったキノ。

恩に着るキノ。……サーヴァントが実在すんなら、来るのを待っておいた方がよかったキノ…」

 

「いやなんですかその語尾」

 

 声の主は、先ほど倒れ込んでいた男だった。

 あれ?さっき襲われてる時、こんな語尾付けてなかったような……

 

「あれは気が動転してたからキノね。気にしたら負けキノ」

 

「染み付いた方言とかじゃなくて、意図的に語尾をキノにしてるのですね……」

 

 おじさんがキノキノ言ってるのは見てて正直キツい。随分とキャラが濃い現地人と遭遇してしまったようだ。

 

「ん?……"サーヴァントが来る"?」

 

「おう、そうキノ。………あ、そうだった。サーヴァントは異邦から迷い込んだ存在。この土地については、お前さんたち。右も左もわからないだっけキノ」

 

「そうなのです。ぼくたち、本当に分からないことばかりで」

 

「そうだろう、そうだろう。えーっと、まずは……そうキノ。ここから幾らかの距離を進んでいくと、俺たちの村落があるキノ」

 

「村落…!」

 

「あんたら、そのナリから見るに住む宛はないキノ?俺なら寝泊まり出来る場所ぐらい用意できるキノ。どうキノ?。俺たちの村落に行く、というのは。……来てくれたら、この土地についてのことを歩きがてら教えてやるキノ」

 

 私たちは、彼の提案に同意した。

 

 私たちが助けた男は、その村落の村長の四男坊だった。彼は偏屈的なキノコ愛好家であり、薬の材料を収集するのに森に入る事を許された薬師なのだとか。

 そして、この村落の周囲なのだが、古来より小型の恐竜が徘徊するヤバい土地であるらしい。故に、森に入ることは基本的に御禁制。恐竜たちはこの森から出ることはないから、不可侵を保っていれば、安全に暮らせる………はずなのだが。実はこの土地、ある一定周期を以て、「7つの竜災」という七匹の巨大な翼の化け物が飛来してくるという。

 

 飛行能力を持つ彼らは、彼らにとっての厄災以外の何者でもない。なんせ、森に住む恐竜たちと異なり、彼らは森の外であろうと傍若無人に飛び回るのだ。

それは、村人の生活圏であっても関係ない。

 空を飛び、人の領域を侵す暴威。しかし、その災害は抗え得るものであった。

 

 そんな災害に見舞われた時、異邦の地からこの地には戦士が召される。

 それが、サーヴァント。

 サーヴァントは7つの竜災と戦い、そして戦いを終えた後は、人知れずこの地を去っていくと伝えられている。

 

「……なるほど」

 

「最近、またその周期が来ちまったみたいキノ。……お前さんたちも空に飛んでるヤツを見たキノ?青空を我が物顔で闊歩する、翼トカゲの野郎のことキノ」

 

「あのね、キノコおじさん。実はそのワイバーン………さっき、このセイバーが既に一体倒しているのです!」

 

「うわっ……?!マジかキノ!

もう退治してくれたのか〜。それは助かるキノ。……となると、竜災が終わるまで、あと6体だキノ」

 

「よかった。残りの竜災もあの強さぐらいであれば、なんとかぼくでも倒せそうです」

 

 それに、モンスターを倒し種火を得たことでセイバーの性能も少々向上している。あの程度の強さであれば、彼は遅れを取らないだろう。

 

 男の案内で、私たちは村へと歩みを始めた。

途中で遭遇した恐竜は、毎度セイバーが蹴散らしていく。その様子を見た男は、ひどく感動していた。

 

「おぉ……セイバーがいれば森でキノコ取り放題だキノ!……どうキノ、セイバー。俺の助手になる気はないキノ?」

 

「すみません。今世では今は仕えるべき方が居まして。また、ご縁があれば考えさせて頂きますね」

 

「ぬう……残念キノ」

 

 セイバーは誘いを丁重に断った。

 それはそうだ。語尾をキノにするレベルのキノコ異常愛者のおっさんの弟子になりたいという人間は、果たして世界に何人いるのだろう。

 

 そうして、三人で獣道を進んでいると。

 すこし遠くの空に、灰色のもくもくしたものが立ち上ってのが見えて来た。

 

「セイバー、あれって」

 

「煙……ですね」

 

「……あれ、村の方から上ってる!」

 

おじさんが、震えた声で叫ぶ。

 

「村の方から?!」

 

「……竜災の時は、襲撃を避けるために焚き火や狼煙は控えるようにしてる。なのに、煙が出てるってことは、まさか」

 

 セイバーが下したワイバーン。あの怪物は、火球を放つ能力を持っていたことを思い出す。

 

「……っ!セイバー」

 

「お二人とも、口を閉じといて下さいね!」

 

 セイバーは私とおじさんを両脇に抱え、走り出す。強化された霊基は、先ほどおじさんを助けた時よりも高出力の魔力を解き放つ。

 明らかに走りづらい重心、踏破しづらい獣道。それら全てを超人的な力で吹き飛ばし、セイバーはカッ飛んでいく。

 

「着きました!」

 

 森を抜け、道を駆け、門を潜ったその先に。

 燃え盛る家屋の隣に。

 7つの竜災の一つ。既に倒したモノとは別個体のワイバーンが、居座っていた。

 

「ワイバーン……!」

 

「■■■■■■■!」

 

 私たちを捕捉した亜竜は咆哮を上げ、こちらの方に走りながら突撃していく。

 

「二人とも、下がって!」

 

私たちを地面へと下ろしたセイバーは、接近してくるワイバーンに立ち向かう。大気のマナ(魔力)を一息で根こそぎ吸い込み、それら全てを己のモノにしたセイバー。彼は、剣を抜きながら敵へ飛び掛かる。

 

 セイバーは剣。ワイバーンは牙。

二つの刃が衝突し、鈍い音が鳴り渡る。

力と力のぶつかり合いで、両者が共に弾かれる。

 

「ぐ……重っ」

 

「セイバー?!」

 

「マスター、このワイバーン前回の個体よりも強いです……!」

 

 初戦のワイバーンでは十秒で敵を解体し。何回も襲いかかってきた恐竜たちを、一方的に屠ってきたセイバー。そんな彼から苦悶の声を聞くのは初めてだった。

 

 おじさんと共に、ある程度戦闘から距離をとり、物陰に隠れる。今のうちに回路を賦活させ、いつでも礼装でセイバーを支援出来るように備えよう。そうして体内で魔力を回していると、いきなりおじさんに話しかけられた。

 

「お、おい。嬢ちゃんは戦わないのかい」

 

「え」

 

「……?

お嬢ちゃんもサーヴァントなんだろ?」

 

「いや、私はサーヴァントじゃなくてマスターですよ」

 

「……ます、たあ?」

 

 首を傾げるおじさん。

 サーヴァントはいるというのに、この特異点にはマスターという概念がないのだろうか。

 

「えーっと、マスターっていうのはサーヴァントを維持するための要石というか。指揮官みたいたものです」

 

「そうなのか。じゃあ、嬢ちゃんは異邦の戦士じゃないんだな」

 

「そうです。ここではない場所から来たという意味ではサーヴァントと同じかもしれませんが」

 

 サーヴァントとマスターは、分けられない存在である筈。もしかして、この特異点に現れたと言い伝えられたサーヴァントは、全て逸れのサーヴァントだったのだろうか。

 

 そう思索していると、私たちの近くの地面が抉れ砕けた音がした。砂塵が舞う中、そちらを見ると剣を弾き飛ばされ、無手の状態のセイバーがいた。

 

「ぐぅ……」

 

 少々のダメージが蓄積しているようだ。

 

「セイバー!応急手当(ファースト・エイド)!」

 

 礼装を起動し、彼の傷を癒す。

 

「……助かりました」

 

 上空を見ると、そこには翼を広げ、私たちを見下しているワイバーンの姿があった。

 なぜ、ワイバーンがここまで強いんだ。初戦で戦った時は、そんなに強くなかったのに。

 

 ………もしかして。

 自身の双眸を、ワイバーンへと向け注視する。すると、あの敵の頭上から文字列が浮かび上がってきた。

 

 《20/■》Level、という数値を。

 あいつ、レベル20だ。

 セイバーのレベルの10上!

 

 セイバーと殴り合って若干押しているのも、おそらくレベルアップの恩恵だ。

……そういえば、最初にワイバーンに遭遇していた時も、アレは種火となる恐竜たちを倒していた。おそらく、あの時もレベルアップが目的だったのだろうか。

 

「ふぅ、殴り合うのは骨が折れる。でも───これで狙い通りです。……マスター。」

 

「うん」

 

「ぼくは、わざとワイバーンを空へ飛ぶように誘導させました。そうしなければ、打てない手があったからです。空中なら、何処にも被害が出ません。なので─────"宝具"の使用、よろしいですか」

 

 宝具。それは、サーヴァントが持つ切り札。人間の幻想を骨子に作り上げられた、英雄そのものを象徴する兵装だ。

 

「ぼくの宝具なら、アレを撃ち落とせます。そして、そのまま倒せます。宝具発動には、マスターの令呪の補助は必要ありません。ぼくの魔力だけで充分です」

 

 セイバーの瞳を直視する。どこまでも広大で不純物のない青空のような瞳。見方を変えれば、何処か空虚さを感じてしまうほどの美しい、澄んだ眼。────だが、この時は。

その双眸が、"ぼくにやらせてくれ"と、熱く懇願していた。

 

「わかった。お願い、セイバー」

 

「承知」

 

 セイバーが、私とおじさんの前に立つ。

 

「聖剣・仮想展開開始」

 

 自身の右手を左胸に当てる。

そこは、ちょうど生き物の心臓がある場所。血流と魔力が身体を廻るメインエンジン。 

 その高鳴り(駆動音)は止まることを知らず。その音に呼応して、神秘の熱量が渦となって、胸を奔る。

 

「聖剣・鍛精」

 

 いつしか胸で渦巻く熱量は、炎となり、彼はその渦を"引き抜いた"。 胸から抜かれた炎の渦は、右の手にしかと握られ、いつしか"剣"のカタチを持つ。

 

「これは、楽園を護るいかずち。

それは、楽園を護るほむら。

ソラとセカイの境界(はざま)より。

最後の竜は我が掌に」

 

「■■■■■■!!」

 

 上空のワイバーンが、大地にて迸る熱量に気付く。その熱量を危惧し、セイバーが何かしでかす前に潰すため、タメ無しの早撃ちで火球を放つ。

 

 しかし、ワイバーンの判断と行動はあまりにも遅かった。

 

「倣/抜鍛せし炎剣(イミテーション・ラハット・ハヘレヴ)──────!」

 

 セイバーの放つ極焔が、大いなるうねりの中で解き放たれた。

 その熱量は、ワイバーンの火球を一瞬で呑み込み、そしてワイバーンの躯体を滅却する。

 

 村を焼いた怪物の末路。それは、自身の肉体が一片も残らない完璧な灼失だった。

 

 

 

 

 

「敵性生命反応、焼失。戦闘終了です、マスター」

 

 敵を倒したセイバー。彼の周りを見ると、例の聖杯の雫と銀の種火がぷかぷか浮いていた。

それらはセイバーに吸い込まれ、彼のLevel表示が《15/20》となる。どうやら、レベルの上限が解放され、ワイバーン討伐分のレベルが上がったらしい。

 

「ありがとう、セイバー。でも……」

 

改めて、周囲の様子を見渡す。

 

 セイバーは、破損していない家屋や、残ってるかもしれない人々の安全に配慮して、空に向けて宝具を撃ってくれた。

 しかし、それでも村の現状は芳しくない。

 少なくない数の家屋は焼け砕かれ、地面はボコボコに抉れている。それに、辺りに人の影も一つもない。

 

「これじゃあ、生存者は」

 

 口に出さなくても分かる。そんなものが絶望的であることなんて、子供でも理解出来る。

……結局、きのこのおじさんの故郷は、助けられなかった。

 

「おじさん……ごめ」

 

「おーい!みんなー!」

 

「……ん?」

 

 おじさんが声を叫ぶと、何処からともなく人々がゾロゾロと現れて来た。

 

 その中でも、壮年の男と丸坊主の男がこちらへと駆け寄ってくる。

 

「おぉ、我が息子よ。生きておったか」

 

「よう兄弟!死んだんじゃねぇかってンで、こっちゃヒヤヒヤしたぜ!」

 

「当たり前だキノ。兄者も親父たちも生きててよかったキノ」

 

 どうやら、彼らはきのこのおじさんの父の村長と、彼の兄らしい。

 

「日々の避難訓練のたまものじゃわい。外に出てたオマエさん以外、全員無事に避難が出来た」

 

 どうやら、村員みんなが生き残ることが出来たらしい。……よかった。

 

「ジジババだけしゃなくて、ワカモンの避難意識が高かったのもあるワナ。

だけどまぁ、ワイバーンが短時間で去った……ってことはアレが来てくれたってコトでいいンだよな?」

 

「あぁ、そうキノ。二人には紹介したいヤツらがいるキノ。おーい、セイバー、嬢ちゃん!来るキノ!」

 

 きのこのおじさんに二人の前へと連れてかれる。

 

「は、はじめまして。藤丸立香と申します」

 

「はじめまして。サーヴァント、セイバーと申します」

 

「おぉ!やはりサーヴァントか」

 

「初めましてじゃ。ワシはこの村の村長じゃ。

……で、こっちがワシの次男坊じゃ」

 

「こいつの兄貴だ!俺たちを助けてくれてありがとウよ!」

 

 お爺さんが、村長。そして、勢いの良い男が、村長の次男坊か。そして、その三男坊が────

 

「改めてありがとうキノ、セイバー、嬢ちゃん。オマエさん達のおかげで、俺たちは助かった。そして────ようこそ、この村へ。

 

 

 

村を救ってくれたオマエさん達を、俺たちは歓迎するキノ!」

 

 そう言って、きのこのおじさん達の村は、私たちを暖かく迎えてくれた。




【宝具】

「倣/抜鍛せし炎剣」

ランク:B+ 種別:仮想対軍宝具
イミテーション・ラハット・ハヘレヴ。 
 自身の肉体から、自身の神秘を「剣」というカタチとして仮想展開し、抜剣。その神秘の奔流を、斬撃として撃ち出すセイバーの宝具(仮)。守るべきものを守る時。そして、マスターの近くであればあるほど、その宝具威力は上がる。「天使」の名前を使った、非常に現代魔術的な仮想宝具である。それでもB+と非常に強力な威力を持つのは、セイバー自身の高いポテンシャル故だろう。

 製造者曰く、「赤の外套のアーチャー君ほどではないが、宝具の改造については割と得意でね。かの騎士のための練習がてら、魔術概念を使って宝具を偽装してみたのさ」とのこと。
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