銀鏡イオリ、倫理観ゆるふわ概念 作:雛烏
氏名:
学園:ゲヘナ学園2年生
部活:風紀委員会
年齢:16歳
誕生日:1月25日
身長:181センチ
趣味:イオリと訓練・トレーニング
固有武器:真紅に塗装された|プファイファー・ツェリスカ《スカーレット・リベレーター&スカーレット・アベンジャー》×2
備考:
イオリが直率する風紀委員会第1歩兵中隊所属の第1小隊隊長。
穏やかな表情、飄々とした態度、181センチとゲヘナ内でも屈指の長身が特徴。性格的にはイチカに似ている。
過去、温泉開発部と美食研究会絡みの悲惨な出来事を経験し、それがきっかけで風紀委員に入った。ゲヘナの治安を乱す規則違反者に対する恨み辛みは他の風紀委員とは段違いであり、その感情を胸の内に仕舞って業務に当たっている。
しかし、"外"から帰ってきて、規則違反者への過激思想を剥き出しにしたイオリとの接触で、彼女の本当の性格が表に出てきつつある…。
イメージ(AIイラスト)
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ヘイロー
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――空崎ヒナside
「ぐ…っ!!ゲホッ!ゲホ…ッ!!」
木屑や書類を退かし、イオリに蹴られた腹の痛みに耐えながら立ち上がる。
陸八魔アルの狙撃、列車上で戦った小鳥遊ホシノの銃撃…今まで喰らってきた攻撃の中でも、先ほどのイオリの蹴りはトップクラスに効いた。やはり、以前の彼女よりも遥かに強くなっている。
私でも振りほどけない指の力、全く見えない踏み込み、そして…規則違反者に対する超過激思想。"外"で一体どんな経験をしてきたのか気になるところだ。
「ヒナ委員長ッ!!一体何事ですかッ!!?!?」
流石に、こんな大きな音を出したら気付かれる。私の安否を確認してきた天雨アコがいの一番に執務室へ飛び込んできた。
やはり、私のことになると動きが速い。…勝手に動くときがあるのはいただけないが。
「って、えぇ!?どうしたんですかこの有様は!?い、いえ!それ以前に委員長、お怪我は!?」
「…大丈夫よ、アコ。これは…」
崩れた本棚、散乱した書類とファイル。忙しい中、この惨状を片付けなければいけないのは痛い。
部屋の散らかりようを見たアコへそこまで言って考える。『イオリと口論になって蹴飛ばされた』だなんて言ったら、アコはどう反応するだろうか。
『イオリが委員長を?そんなご冗談を…』
『…ホントに委員長を蹴飛ばしたぁ…!?ゆ、許せませんイオリッ!!反省文を1万枚書いた上で退会処分に…!!いえ、ヒナ委員長の気が晴れるまで銃撃を浴びてもらいましょうっ!!』
…もっと面倒事が増える気がする。
「え、えっと、その…こ、転んじゃって…」
「……はい?」
…言うに事欠き、咄嗟に出た言葉がこれである。他にもっとマシな言い訳ができただろうに。
ちょっと転んだ程度でこの惨状が作られたなど、どんな連鎖反応が働いたとしても有り得ない。というか、『委員長が転んだ!?有り得ませんっ!!』とでもアコは考えるだろう。
「…と、とにかく。手伝ってくれると嬉しいわ」
「は、はい!直ちに!」
苦し紛れの言い訳にアコは半信半疑の表情を浮かべていたが、『手伝ってくれると嬉しい』という私の言葉へ声色が上がり、片付けを手伝い始めた。私に頼られたのが嬉しいらしい。
ぶちまけられた紙を片付けながら、私はイオリの言葉を反芻する。
『被害者には「悪いけど泣き寝入りして」って補償金撒いてお茶を濁すの?』
『何でアウトロー側の肩を持つの?』
『だから委員長はなにも守れないんだよ』
「っ!!!お、おぇぇぇ…っ!!」
脳裏に浮かぶのは先生の姿。
エデン条約でアリウスに襲撃された際、私が付いていながら負傷させてしまい、生死の境を彷徨うことになった人。
先生があんな目に遭ったのは、中途半端な取り締まりしかできない私の甘さが招いた事態なのだろうか…?
「…え!?い、委員長!?」
そんな思考に至った私は、イオリに蹴られたダメージも手伝い、胃の中のものを戻してしまった。
突然の嘔吐に、アコが慌てて駆け寄ってくる。更に掃除の手間を増やすことになるが、アコは床が汚れるのを構わず吐き気が収まるまで背中を摩ってくれた。
「はぁ…はぁ…ありがとう、アコ…」
「は、はい…その、委員長はもうお休みになられては?後片付けは私がやっておきますから…。昨夜も徹夜だったと聞いてますし、これ以上無理をなさるのは…」
嘔吐により、先のガバガバな言い訳に言及され、本当は何があったのか詰められるのを地味に恐れたが、彼女は単純に体調が優れないのだと思っているらしかった。
「…そう、ね。じゃあお願いしようかしら」
少し前の私なら、アコの申し出を断って仕事に戻っていただろう。
しかし、先生と交流して「他人に頼ること」の大切さを少しばかり学んだ私は、今日くらいはとお言葉に甘えることに…
(……って、イオリっ!!)
いや、そんな場合ではない。規則違反者への過激思想を丸出しにしたイオリが、私を押し退けて取り締まりへ行ってしまっている。
不良生徒を死なさずとも、二度と正常な学園生活を送れないような身体にしてしまうかもしれない。
それだけは何としても阻止しなくては。
「…やっぱりいいわ。ちょっと外に――」
直後、風紀委員の隊内無線が鳴る。
嫌な予感を感じ、背筋に冷たいものが走った私は、内心恐る恐るで無線に応じた。
「…どうしたの?」
「ちょっと貴女!タイミングを考えてください!委員長は今からお休みを…!」
「黙ってアコ。…所属は?」
『あ、あぁ、委員長!こ、此方第1中隊所属の第2小隊長、来間ナミですっ!』
突っ掛かるアコを黙らせて聴くと、イオリが直率する第1中隊所属の小隊からだった。
「落ち着いて、何があったの?」
息が上がった電話口の相手を落ち着かせるが、上手くいかないようだ。彼女の息が整うまで10秒ほど要した。
『い、イオリ隊長とジルが…!!』
――嫌な予感は的中したようだった。
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「が…!!??ふひゅ…っ!!?」
一瞬未満で、手近な温泉開発部員との間合いを詰めた私の蟷螂手が、相手の首を鷲掴みにする。
私の戦闘スタイルは躰道がベースだが、蟷螂拳の崩しや歩法、急所攻撃の技術も有効だと考え、組織で中国拳法を得意としていた高官に師事して教わっていた。
『僕の実戦感としては…相手は"非道の者"に限りますね』
『総帥や師範のように、リラックスしてノーモーションで打撃を放ってくるような相手には勝てませんが、そんなにリラックスした冷静な人なんて、そもそも話し合いで解決できるでしょう?』
『なので、私が戦うのは理性なく、欲望に任せて暴れるような文字通りの"悪党"です。武術の腕比べ・力比べをしたいわけではないんで』
その高官が語った実戦感・己が使う武術に対する考え方に感銘を受けた、というのもあるが。
――ゴキッ!!
「ぎ…っ!?!?」
蟷螂手で掴み、握力を強めて折る。この流れはもう様式美だ。やはり、蟷螂拳は相手を"掴める"のが良い。掴んで体勢を崩したり、今のように折ったり、色々とできる。
脱力して意識を失ったそいつを放り投げてやり、ボーリングのように他の部員を薙ぎ払う。
――ドゴッ!!
「がぁっ!?!?」
続いて、手近な部員に対して
躰道の蹴り技。普通の後ろ回し蹴りと同じ動きだが、頭を下げて脚を上げる動作を加えることでより強く、そして相手の視界から外れつつ蹴ることができる。
そして、躰道の他ハプキドー師範の教えである『脚を振り回すのではなく、突き刺すように蹴る』の教えも、素早い・バレ難い足技の実現に一役買っていた。
小さい弧を描いた私の踵が部員の側頭部を打ち据えた瞬間、脳震盪を起こしたのか奴は瞬時に白目を剥き、吹っ飛ばされてコンクリートの壁に突っ込んだ。
「う、うわぁぁぁぁっ!!」
錯乱した部員が2人、私に向けて採掘に使用するものらしいスレッジハンマーを振り上げるが、私は慌てずにコートの裏地に仕込んだグルカナイフを手に取る。
――ズバッ!!
「…ゑっ?」「は、ハンマーが…っ!?」
武器破壊を試みた私は、ハンマーのヘッドをグルカナイフの剣戟で両断してやった。
硬い岩やコンクリートを砕くという用途上、ハンマーヘッドは確かに硬い。普通なら斬るどころか刃の方が折れるだろうが…ナイフをはじめ刃物による近接戦を山ほど鍛錬し、実戦で何度もターゲットの身体に突き立ててきた身である。
ハンマーヘッドを両断どころか、斬撃の余波により床へ真っ直ぐな亀裂が走るほどだ。
(…得物と腕が錆び付く。ナイフで行くか)
素手で制圧できる雑魚ばかりだが、得物を使う機会が無さすぎると、武器を使った戦闘の腕が鈍ってしまう。
コートの裏地に仕込んだコンバットナイフを左手に持ち、グルカナイフとの二刀流で構える。
――ドスッ!!
「っ!?!?…あ゛ああぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?」
グルカナイフの刃を思い切り部員の右腕に叩きつける。
"外"の人間なら、腕が豆腐のように斬り落とされていたところだが、銃弾を『痛い』で済ますキヴォトス人らしくそこまでのダメージはない。
それでも、神秘の防御力を突破した刃は皮膚を突き破って2センチはめり込んだ。自らの腕から大量に流れ出る鮮血を見たこと、そして襲い来る激痛が部員をパニックに陥らせ、大絶叫を上げさせる。
「ひ、ひぃぃぃっ!?!?ち、血がぁ…っ!!!」
仲間の腕に深々と突き刺さるグルカナイフ、止めどなく流れ出る鮮血。いつもの銃撃戦では見ることのない光景を目の当たりにした部員が、腰を抜かしてへたり込み怯えるが…容赦はしない。
グルカナイフが突き刺さったままの部員を蹴飛ばして奴にぶつけて障害とすると、その隙を衝いて距離を一気に詰め…左手のコンバットナイフを一閃。
――ズバッ!!
「ぎぃぃぃああああああっ!?!?」
床を真一文字に斬り裂きながら、奴の右脇腹から左胸にかけてナイフを振り抜く。
タンクトップなど瞬時に切り裂かれ、その下の無駄に豊満な身体に蚯蚓腫れを思わせる真っ赤なラインが引かれ、そこから鮮血が垂れ流された。
(…キヴォトスに帰ってきたって感じするなぁ)
今の剣戟も、相手の胴を両断する気で使ったが…鮮血が溢れ出るものの、肉体は繋がったままだ。
"外"で何度もさっきと同じような技で殺した際、胴体を分断させてやったものだが…それに慣れ過ぎてしまい、五体満足で転がっている相手に対する違和感が凄まじかった。
「…」
「「「ひぃぃ…っ!!」」」
隅に追いやられた10人少しの部員共を睨みつけ、手の中で各種ナイフをプラプラと遊ばせながら、徐々に距離を詰めていく。
「…何怯えてんの?いざ自分たちが痛い目に遭うってなると、尻ごみする感じ?…自分勝手だな」
冷静さを保ち、それでも奴らへの敵意と殺意を滾らせ、右脚に神秘を集中する。
黒い業火を思わせる、渦を巻いた神秘のオーラが膝から下を覆う。
――ドガッ!!
「あがっっっ!?!?」
そのまま飛び掛かりながら放った前蹴りの足先が、部員の腹に真正面から突き刺さる。蹴りの着弾と共に発生した爆発により吹き飛び、仲間を巻き込んで諸共にコンクリートの壁を突き破る。
ヘルメットが砕け、剥き出しの頭は血塗れになっている。足先蹴りによりめり込んだ爪先が肋骨をへし折り開放骨折を起こしたらしく、白いタンクトップが赤く染まっていた。内臓も損傷したのか、口から血が垂れている。
――ズドォッ!!
「ぎっっっ!?!?」
続けて上段の前回し蹴り。此方も、脚を振り回さないで前蹴りと同じ軌道で放つ蹴りだ。『回し蹴りだけど回さない』と、師範たちがよく口にしていたものである。
獄炎の蹴りを側頭に浴びた部員は、瞬時に意識を彼方に吹っ飛ばした。同時に身体も吹っ飛ばされ、頭から壁に突っ込んで動かなくなった。
「…鬼怒川カスミはどこにいる?」
「か…っ!?!?」
壁際まで追い詰めた部員の首を蟷螂手で掴み上げ、締め上げながら奴らの首領の所在を訪ねる。
カスミは話術だけは卓越している。嘗ての私もそれに苦戦したものだが…なら話を聴かず殴り倒せばいい。奴は犯罪者なわけだし、その言い分を聞く必要はないのだから。
「み、ミルを離せぇぇぇっ!!」
残っていた部員がハンマーを手に、半ばヤケクソの様子で殴りかかってくるが…そいつの後ろから弾が飛んできた。
――ドォンッ!!
「げはっ!?」
後頭部を強力な弾丸ーー恐らくはマグナム弾で狙撃されたのだろう。弾かれたように前方へ吹っ飛んだそいつを、私は追い打ちとばかりに旋状蹴りで真横に飛ばしてやった。
「ふ~。隊長、1人で2個中隊位やっちゃった?いや~痛快痛快」
私と同じ黒いコートとシャツ、スリット入りのロングスカート、長い黒髪と糸目…私の中隊の次席指揮官である第1小隊長の緋脚ジル。
「全く、何度も懲りずに参っちゃう…なぁっ!!」
――ゴッッ!!
「あ゛…っ!?!?」
語尾を強くしながら、ジルは残りの部員の腹へ後ろ蹴りを叩き込んだ。
続けて、もう1人に見事なハイキックを見舞って吹き飛ばした。181センチの長身から繰り出される蹴りは凄まじいリーチであり、見栄えが良い。それに、しっかりと『回し蹴りだけど回さない』教えが取り入れられた、素早い蹴りだった。
体系化された体術の無い、喧嘩殺法のような殴り合い・蹴り合いばかり…というか、銃撃戦ばかりで肉弾戦等ほぼ生起しないキヴォトスの民にしては、綺麗な蹴り。
「う~ん、隊長の真似してみたけど、どう?」
「いや、全然上手いけど…ジル、そんな感じだったっけ?」
「ん?…まぁ、前ならやらなかったよねぇ」
そう語るジルは、何処か吹っ切れたような様子だった。嘗ての彼女はもっと行儀が良かったし、ここまで規則違反者共へ強く当たるようなことはしなかったはず。
…何か覚醒した?
「それより、そいつ大丈夫そ?情報吐かせないといけないんじゃない?」
拾ったハンマーの先で私が掴んでいる部員を指す。そこそこ長い間首を絞められているこいつは完全に白目を剥き、もう数十秒絞めてやれば死にそうだ。…それはそれで構わないが、カスミの居場所を吐いてもらわなきゃ困る。
――ドガッッッ!!
「があ゛っ!?!?」
「死んでる暇があったら質問に答えろ」
「わお、隊長鬼畜~。…痺れるね~♪」
思い切り頭から壁に叩きつけ、無理やり意識を取り戻させる。カスミの所在は何としてもはっきりさせねばならない。奴がいる限り、温泉開発部は半永久的に活動し続ける。
その直後。
――ドゴォッッッ!!
『ハーハッハッハッハッハッ!!随分と騒がしいではないか!温泉開発を妨げる邪魔者はどうなっても知らないぞ!!』
新たなシールドマシンが地面から飛び出してきた。こんなのが四六時中ゲヘナのあちこちを掘り返していると思うと、地盤沈下等の被害が心配だ。
やはり、温泉開発部は今後一生活動できないようにしなくては。
「へぇ~。向こうから来てくれるなんて、手間が省けてよかったねぇ隊長?」
「あぁ…纏めて仕留めてやれる」
シールドマシンのスピーカーから聞こえてきたのは、間違いなく鬼怒川カスミの声。
…大将が出てきたのは好都合。今日が温泉開発部の最期だ。
「皆g…全員捕まえるぞ、ジル」
「いいじゃん隊長、『皆殺し』でも♪いうだけならタダだし…こんな奴らは、そうした方がいいよ」
『殺す』という単語は、キヴォトスにおいて禁句と言っていい扱いだ。
"外"での仕事と生活に慣れてしまい、ついつい『皆殺し』と口にしそうになって訂正したが、ジルは別にいいだろうと声が掛けられる。
普段細められている彼女の目が僅かに開かれ、私と同じ赤い瞳が微かに見えた。鮮血のような赤。
ギロリとシールドマシンを睨みつけるジルは…親の仇を見る目をしていた。
感想いただけると嬉しいです。
ジルちゃんは長身を活かした武術・武道やらせたいな…やっぱりテコンドーとかカポエイラ?