銀鏡イオリ、倫理観ゆるふわ概念 作:雛烏
いっそ日本刀とか持たせてみるか…それだと殺し屋っぽさがなくなる感じする。でも篁さんみたいでカッコいいとも思うな…。
あ、感想いただけますと幸いです。感想は全て読ませていただいております。
シールドマシンから戦場を見回した鬼怒川カスミは、これまでにない異質さを感じ取った。
「――な、何なのだこれは…!?」
彼女が目にしたのは…
「痛い゛…!!い゛だい゛~~…っ!!」
シラットの関節破壊により、腕や脚があらぬ方向へ曲がった部員。
「あ゛ぁぁ~~…っ!!目、目がぁ~~…っ!!」
蟷螂手で眼球を引っ掛かれ、目元を押さえながらのたうち回る部員。
「血…!!血が…!!あぁ…っ!!止まんない…!!いやぁ…っ!!」
ナイフの斬撃を浴び、腕や脚から血を流す部員。
「「「…」」」
蹴飛ばされて頭から壁に突っ込んで沈黙している部員。
いずれも、いつも通りのドンパチでは見られない、思わず視線を外したくなるようなやられ方をしている部員たち。
その中央にいるのは、彼女も知っている人物だった。
「…来たか。鬼怒川カスミ」
少し前、キヴォトス中を震撼させた行方不明騒ぎの中心人物…銀鏡イオリだ。彼女が行方不明の間は、温泉開発が捗ったものである。
ヒナに次ぐ強敵ではあるが、口車に上手く乗せればそう苦戦することはない…のだが。
「が…っ!!??ぶ、ぶちょ…逃げ…!!」
カスミに対し、白目を剥いて泡を噴きながら逃げるよう促す部員。
その首根っこを鷲掴みしているイオリは、煩いと言わんばかりに彼女を投げ捨てた。
彼女はコンクリート柱の角に思い切り背中が打ち付け、カスミは思わず背筋を張らせる。
(し、銀鏡イオリ…本当にこいつはあのイオリなのか…!?)
一筋の汗を滴しながら、目をひん剥いて眼前の少女を見つめるカスミ。ハイランダー鉄道学院の列車内で遭遇したときとの変貌ぶりと、今までにない敵意が込められた視線に、普段の剽軽な態度が崩れかけている。
「…ジル。他を頼む」
「はいはい。人使い荒いんだから」
イオリはジルへカスミ以外の部員の対処を任せた。カスミ以外にも、わらわらと温泉開発部の部員たちが出てきていた。
「でもいいよ。こいつ等を容赦なくボッコボコにできる…あははっ♪♪」
仇敵の1つを前にした彼女は糸目を微かに開き、血を思わせる赤目を覗かせながら、口元を弧月のように吊り上げる。
まるで、無力な獲物を前にしたシリアルキラーのような笑みに、部員たちは見るからに怯んだ。
不良生徒への憎悪を隠そうともしないその様は、ある意味隣に並ぶイオリをも上回る存在感があった。
「それじゃ、
状況に似合わないニコニコとした笑みを浮かべながら、愛銃を構えてゆっくりと温泉開発部の雑兵たちに向けて歩みを進めるジル。
彼女の異様な雰囲気を感じ取った部員たちは、身体が震えて動けない。
「さて、じゃあカスミ。お前を拘束させてもらう。抵抗するなら…こいつらと同じ目に遭わせてやるけど?」
――ドガッ!!
「がぁっ!?!?」
目の前に寝転がる部員を軽く蹴り飛ばす。軽くとはいえ、イオリ基準の"軽く"だ。蹴られた部員は血と唾液を吐き出して吹っ飛び、カスミの乗るシールドマシンの車体に鈍い音を立てて叩きつけられる。
「ひ…っ!?お、おい銀鏡イオリっ!!温泉開発の妨害も勿論だが、これは風紀委員の業務としては明らかにやり過ぎだろう!?学園の風紀を守る君が、こんなただの暴力組織のような真似を…」
見せしめの蹴りで飛ばされた部員の有様を見たカスミが狼狽えながら叫ぶ。巧みな話術でその場の主導権を握る人心掌握術の持ち主である彼女らしくない狼狽ぶりだ。
――ズドォッ!!
「…がっっっ!?!?」
しかし、セリフの途中で銃弾が彼女の右手を襲う。
イオリが持つ
明らかに対物ライフルの間合いじゃない超至近距離での銃撃。カスミの
直撃と同時に炸裂した50口径弾の運動エネルギーは、カスミの右手に強烈なダメージを残す。飛び散った愛銃の破片やら爆炎が彼女の手を焼き、斬り刻み、骨を軋ませた。
「…犯罪者の戯言を聴く執行者がいると思うか?それも、お前みたいな更生の余地がない奴の」
「な…なに…っ!?」
片手でヘカートⅡを構えるイオリが、絶対零度の声色でその言葉を投げかけると、カスミは右手を抑えながら得体の知れない化け物を見るような目で目の前の
ヒナを前にしたときとは全く違う恐怖に、身体がピクリとも動かない。ヒナに出くわしたときは、『ひぇぇぇぇぇぇぇ!!』などとギャグのような情けない怯え方をしていたが…そんな反応すらできない。ヒナのときとは違う…明確な死の影を濃く感じた。
――ガシッ!!
「ぎぃっ!?!?」
シールドマシンの車体上部へ音もなく飛び乗ったイオリは、キューポラから身を乗り出していたカスミの首を蟷螂手で掴み上げると、そのまま投げ落とした。
「がは…っ!?」
掴まれた首と叩きつけられた腹を抑えて悶絶するカスミ。そんな彼女に対し、イオリは全く容赦がなかった。
三度、右脚を黒い業火が覆うと同時に跳躍。全体重がかけられたその足裏が、逃げようと地面を這いずるカスミの右足首へ振り下ろされた。
――ベキィッ!!
「――あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?!?」
神秘を集中させたイオリの踏み蹴り。地面にクレーターを穿つ威力を足首に一点集中されたカスミが無事で済むわけがない。
地面が陥没する轟音に混じり、骨が砕ける聞くに堪えない音が響き渡る。骨が砕け、最早皮と肉だけで脚と繋がっている足首は、頼りなくプラプラと揺れている。
「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!い゛だい゛い゛だい゛い゛だい゛い゛い゛い゛ぃぃぃぃぃぃっ!!!!!!」
「五月蠅い。見かけは重症だけど、治療して安静にしてれば3日位でくっつき始めるだろ」
顔から出す液体を全部出して絶叫するカスミとは対照的に、冷静且つ冷酷に告げるイオリ。事実、"外"の人間なら足首から下を切断するであろう怪我だが、並外れた頑丈さ・回復力が特徴のキヴォトス人なら、適切に治療を施してある程度の期間安静にしていれば元通りだ。
しかし、キヴォトスで起きるドンパチで生徒たちが負う傷と言えば、打撲や擦り傷、出血と言っても血が滲む程度。『足首が千切れかける』なんて大怪我は、キヴォトス史上類を見ないと言ってよかった。
「さて、お前は温泉を掘るのもそうだが、浸かるのも好きみたいだな」
「ひゅ…っ!!ひゅ…っ!!な、なにを…する、つもりだ…!?」
痛みのあまり過呼吸になりながら、ゆっくりと歩み寄るイオリから手だけで這って逃げようとするが…。
――ドスッ!!
「げあっっっ!?!?」
背中を思い切り踏みつけ、動きを封じる。動けないカスミを見下ろしながら、イオリは懐から小さなガラス容器を取り出す。
「…この廃工場、化学薬品を使う工場だったみたいだな。色々と薬品が手つかずで残ってた」
「は…?な、なにを言って…?」
茫然とするカスミを尻目に、取り出した薬品の容器をゆっくりと開封。容器を傾け、液体をカスミのすぐ横の地面に少し垂らした。
――しゅうぅぅぅ…!
「…っ!?!?」
液体が地面に垂れた瞬間、コンクリートの床が不気味な音と共に煙を上げ、小さな穴が開いた。
具体的な物質名は分からないが、強酸性の液体に違いない…カスミは震えながらその認識に達した。
「こんな液体を入れておける容器、凄いな。どうやって作ってるんだか」
無表情で冷静な口調のまま、わざとらしく容器を見つめてそんな感想を発するイオリ。
「まぁ、そう強張るな。ただ…」
今まで表情を変えなかったイオリの顔つきが変わった。
前よりも細まった目はそのまま、口元だけを釣り上げる。相手を安心させるような微笑み。しかし、カスミにとっては自身の命を奪う死神の嘲笑に感じた。
「――一生、大好きな温泉に入れなくしてやるだけだ」
そう宣言し、ゆっくりと容器を傾けた。
ジルちゃんの戦闘シーンは次回書きます。別サイトでグヘへなお話書きたいのでちょっと遅れるかもです。
次回は温泉開発部モブとメグがヤベェ目に遭う予定です。
今更だけど時系列どうしよう…今あるメインストーリーは全部終わってるって体で書いてきたけど、パヴァーヌ第2章開始前から書きたいって考えてる自分もいる…。