どこまでも続く水平線を、俺は車内から眺めていた。
深海棲艦との戦争が始まって数か月。
あらゆる兵器が通用しない奴らを相手に人類は敗戦を重ね、制海権のおよそ九割を喪失した。
はた目から見れば綺麗なこの海も、数キロも沖に出れば生きて帰れない地獄となっている。
そんな海の上を、自由に駆け回る少女たちの集団を見つける。
彼女たちの名前は「
人類と同じくこの世界を生きる妖精たちによって生み出された、対抗手段。
そして、人類最後の希望でもある。
ほどなくして、車はとある建物の前で停止する。
俺は運転手に令を述べたのち車から降りる。
そして、目の前にそびえたつ建物へと視線を移す。
この建物こそ、人類最後の砦にして艦娘たちの居住区、そして俺の新しい配属先でもある「
「本日より艦娘の指揮を預かりました。
「お待ちしておりました、提督。
茶色い髪に、おっとりとした顔立ち。オレンジを基調とした服を着ている彼女の見た目は、ごく普通の女性と何ら変わりない。
しかし、ここにいるということは、彼女もまた人類のために戦う艦娘の一人なのである。
手短な挨拶を済ませた後、神通に連れられ食堂や演習場など、鎮守府全体を案内される。
道中すれ違う艦娘たちは、あるものは不思議な表情で、あるものは元気よく挨拶してくれた。
年も見た目も異なる彼女たちだが、みな深海棲艦と戦う艦娘なのである。
「最後に、ここが
執務室と紹介された室内は、簡素な造りになっている。
部屋の奥には机が置かれており、中央にはソファーと長机が置かれてある。本棚には今までの出撃記録や所属艦娘などをまとめた書類が置かれており、簡素な造りながら執務を行うには十分だ。
「ありがとう神通さん」
「困ったことがあったら呼んでくださいね。それと、神通で大丈夫ですよ」
優しく微笑みながらそういったのち、神通は部屋を出て行った。
「じーんーつーうー」
執務室を後にした神通の後ろから、一人の女性が足早に近づいてくる。
そして、勢いよく神通に抱き着いた。
「何ですか、
神通より暗い色の茶髪に元気いっぱいな顔立ち。そして、神通と同じオレンジを基調とした服を着ている彼女の名前は川内。
「提督とあってきたんでしょ。どんな人だった?」
「優しそうな人でしたよ」
「へぇー。私もあってみたいな」
そんなたわいもない話をしながら廊下を歩く。
渡部に興味があるのは川内だけではない。
ここにいる艦娘はみな、今まで人間と出会ったことがない。
それゆえ、初めての人間である渡部に興味深々なのだ。
俺は本棚から取り出した書類を見て絶句した。
書類には「戦果報告書」と書かれてあり、深海棲艦との戦いが記録されている。
しかしそこに書かれてあったのは、報告書とは到底呼べる代物ではなかった。
かろうじて読める文字に落書きのようなイラスト。
そして薄っぺらい戦果報告が記されてあった。
(これじゃあまるで子供の絵日記だよ)
そんなことを思いながら頭を抱える。
その時だった。
けたたましいサイレン音が鎮守府全体に響き渡る。
「この音は!」
俺は勢いよく立ち上がると、慌てて執務室を出て行った。