AI生成執筆には驚異的な利点がある。書ける速度が段違いなことや
AI人力添削には致命的な弱点がある。一度書き直し始めたらいつまで経っても終わらへんことや
一夜明けて、今日は『神殿』への配達の日。
神殿にはカルルラハル星の一番偉い人“長老”がいて、その人にザナカドゥスを届けるのが今回のお仕事───……の、はずだったんだけど。
「コトネ。俺は神殿には行かない。お前だけで行け。長老にザナカドゥスを渡せば、ワニャガルネペンタの修復も頼まれてくれるはずだ」
「はぇ? なんで?」
「フッ……何、未来あるザナカドゥス職人に華を持たせてやろうと思ってな。コトネ、それはお前が作ったザナカドゥスだ。お前が客に届けてこそ意味がある」
「ニゲドゥシェフ……」
あぁ、働くってなんて素敵なことなんだろう。きっと流した汗は美しい……。たくさんの夢があれば、苦労なんて何のその。
「わかりました。行ってきます!」
と───その前に、一応プロデューサーたちに連絡しておこう。
夕飯と寝床はニゲドゥシェフが都合してくれたけど、ひとまずちゃんと一晩越せたよって報告しておかなきゃ。
「プロデューサー! おはよーございますっ」
〈藤田さん、よかった。ご無事で何よりです〉
「一晩くらいで大袈裟ですってぇ。あーそうそう、実はかくかくしかじかで───」
つーわけでいまから神殿でカルルラハル星の長老に会ってきま〜す、と言うと……。
〈なるほど……、状況は把握しました。そういうことなら是非もありません。お相手はカルルラハル星の最高権力者ということですから、決して失礼のないように〉
「了解でっす! それじゃ……」
〈待って、ことね〉
おりょ、咲季。何だい何だい、あたしのザナカドゥス職人としての腕を疑うってのかい?
〈……そのニゲドゥって人、怪しくない?〉
「はぁ……? いや、そりゃあ、咲季はシェフと直接会ってないからだよ。見た目はチンピラでも根は良い人だし……」
〈あの紙袋について相談してくれた時のこと、忘れたの? 確かにおじいさんは潔白だったけど、次もそうとは限らないじゃない?〉
「なんだよ〜、らしくもない。咲季ならこういう時、喜び勇んで自分の料理届けに行くでしょ?」
〈そうかも知れないけど───、……まぁいいわ。ことね、気をつけてね〉
……通信終了。
言われてみれば……確かに、ちょっと不自然?
あたしが宇宙基準の常識を持ち合わせてないことはニゲドゥも知っている。面子を大事にするなら、ザナカドゥスの味よりも、長老の前であたしが失礼を働くほうが心配なはずだ。
おじいちゃんは高齢で体力が不安だから、という明確な理由があってあたしにワニャ……なんとかの配達を依頼してきたけど、ニゲドゥシェフは別にそういう感じでもない。
「か……、考えすぎだって。もう、咲季ったら心配性なんだから……」
しかし……けれども……ニゲドゥシェフは、同じ釜のトルトバダン(訳注:炊き込みご飯に似たカルルラハル星の料理)を食べた身の上だ。
どのみち他に頼れるツテもないし───えぇい。ダメで元々、当たって砕けてやろうじゃないか。アイドル候補生の根性、見せてやんよ!
◇ ◆ ◇ ◆
神殿はブロック状のレンガでできた巨大な四角錐型の建物で、要するに地球のピラミッドに似ていた。ところどころ空に向かって不思議な光の帯が立ち上ってるのが特徴かな。
ただ、水場が近いわけでもないのに、またもやあのレモネードみたいな匂いが漂ってくる。一晩経ってカルルラハル星の空気に多少慣れた身でもこれなんだから相当だ。建材はちょっと白っぽい黄色のレンガのはずだけど……これじゃまるで、レモンクッキーでできてるみたいに見える。
「すみませーん。『ヌヘチャンバラム』の藤田ことねでーす。配達に参りましたぁ」
ニゲドゥシェフから預かった通行証を見せる。あ、ヌヘチャンバラムっていうのはシェフのお店の名前ね。学園を出た時からそのままだったレッスン着じゃ格好つかないからって、それらしい服も買ってもらった……カルルラハル星人の身長からすると子供用らしいけど。
槍というか、さすまた? みたいのを持ったカルルラハル星人の警備員さんは、丁寧に頭を下げて通してくれた。青い肌に3つの目、ヒラヒラした翼が動くたびに、なんか熱風みたいなのが漂ってくる。
神殿の中は黄金色の廊下が延々と続いていて、壁に変な模様が彫られている。
廊下を歩きながら、配達ボックスの取っ手を握り直す。朝イチで作ったザナカドゥスは昨日と変わらず自信アリ……だけど、咲季の言葉が頭から離れない。
「ようこそ、フジタコトネさん。お荷物を確認させていただいても?」
「はい。よろしくお願いします」
スマホ(圏外)、財布、寮の鍵、ワニャなんちゃらが入った紙袋、おじいちゃんからもらった通信用の宝珠。
そして、ことねちゃん謹製ザナカドゥスの入ったボックスを開けると─────。
「こっ……これは、ザナカドゥス!?」
優しげな態度だった警備員さんが一転、血相を変えてボックスを掴んだ。な……何……!?
「貴様、何のつもりだ!? こんな危険なものを長老のところに……!!」
「え───えぇぇ!? きっ、危険ってそんな……、ただのサンドイッチじゃ」
「黙れ!! ザナカドゥスは、カルルラハルの民にとっての麻薬だ! 長老にこんなものを食わせる気か!?」
「麻薬……? えっ、物の喩えじゃなくて!? マジの危ないヤツなんですか!?」
なるほど、海はレモネードでサブウェイが麻薬……うわあぁぁカルルラハル星ぜんぜんわかんないよ〜〜〜〜〜!!
「ちょちょちょ、ちょっと待ってください! あたしは……!」
警備員たちがさすまたを構え、あたしをばっちり取り囲む。黄金色の神殿の柱に背中を押しつけられて逃げ場なし。
ごめんよ咲季……あたしが間違ってた。一宿一飯の恩があるとはいえ、会ったばかりのチンピラっぽいエイリアンを信用するなんて……。
「───待て、お前たち。まずは話を聞こう」
すると……部屋の奥から、何やら威厳のある声が響いた。
ぴかぴかの玉座に腰かけたそのカルルラハル星人は、格ゲーのインド人キャラみたいな布をゆるく巻いた服装で、青い肌にはたくさんのシワとシミが浮き出ている。
じゃあ───きっとこの人が、カルルラハル星の長老……!
「お嬢さん、落ち着いて。どうやら騙されたようだね」
その声はしゃがれていて深みがあるが、優しげでこちらへの気遣いが感じられる。ニゲドゥとは明らかに違う理知的で慈悲深い目をしていた。
「確かにザナカドゥスは、ここらの銀河において珍しい品ではない。しかし残念なことに、この星の環境に適応した我々にとっては厄介な代物でね。古くから禁忌の品となっている」
長老の鶴の一声で、警備員さんたちもすぐに警戒を解いてくれた。
さすまたを引かれて解放されたあたしは、とりあえず急いで頭を下げる。
「そ、……そうとは知らず、あの───本当に、すみませんでした!! ……ただ……その、あたし、色々あって急いでて。捕まっちゃうのは少し……だからっ」
「あぁ、いいとも、いいとも。事情はどことなく察しがつく。だが……これだけは聞かせて欲しい。そのザナカドゥスは、いったい誰に作らされたのかな?」
ぐぬぬ、許すまじニゲドゥ。あんたを師匠だなんて思ったあたしがバカだったよ。
「えっと……ニゲドゥっていう、ちょっと肌の黒いチンピラみたいなヤツです。ワニ……ワニャガールネータを直してもらうための、交換条件だって……」
「ニゲドゥ!? あの亡命者か! やはり、裏で糸を引いていたか……!」
警備員の一人が叫んで、なんか通信機みたいなのにガンガン怒鳴り出した。
亡命者……? うわ、チンピラどころかガチの犯罪者だったのか。ほんとにテロ企んでたなんて……完全にハメられたなこれ。
でも、とりあえずわかってもらえたみたいで良かった。
このまま何事もなく無罪放免とはいかないかもしれないけど、いきなりレーザー光線で処刑されるとかはなさそう……。
「─────ハハハハハッ!! コトネ、よくやった!」
するとその時、後ろのでっかい扉がバーンって開いて飛び込んできたのは……ニゲドゥ!?
青黒い肌、ボロボロの翼、チンピラみたいな雰囲気。間違いない。三つ目がギラギラ光って、なんかニヤついてる。いつもより余裕たっぷり。
「ザナカドゥス、食わせたんだろ? これで、このバースのカルルラハル星は俺の……!」
「出たな薄汚い亡命者め!! お前の企みは既に割れている、ザナカドゥスはここだ。長老は口にされていない!」
さっきニゲドゥをなじってた警備員の人が叫ぶ。
かく言うニゲドゥは、きょとんとした顔で、あたしと長老を交互に見た。
「……何だと? だがコトネ、お前さっき……」
〈───ふふん。どうやら、タイミングばっちりだったみたいね!〉
あれっ。咲季?
〈驚かせてすみません、藤田さん。実は、雑貨屋のご主人が俺のスマホに細工を……平たく言えば、宝珠の管理アプリをインストールしてくれたんです。そして、宝珠には宇宙のあらゆる通信インフラにアクセスする機能があるそうですから、それを応用してニゲドゥ氏と話しました〉
〈で、やっぱり怪しいって話になってね。最初はもちろん、ことねに連絡すべきだと思ったんだけど……こっちが自分の企みに勘づいたと知ったら、そいつがどんな手段に出てくるかわかんないでしょ? ことねが潔白だってことを周りに知らせるためにも、ニゲドゥが自分から出てくるよう仕向けたってわけ!〉
な……なるほどぉ。さすが咲季、ってとこかな?
頭良いのは知ってるけど、まさかこの手のスパイ合戦みたいなことまで出来るとは思わなかった。逆に貴様は何を持ち得ないのだ。
「クソッ!! クソッ、クソクソクソ……、こうなったら───!」
で───ニゲドゥの青い顔が真っ赤になるが早いか、ヤツは懐から玩具の光線銃みたいなのを取り出した。
……みたいな、っていうか、あたしもいい加減学習した。あれ、たぶん玩具じゃない。
「どけっクソジジイ!! この星は俺のもんだァァッ!!」
「うわあぁぁ!?」
発砲───ビュンという漫画みたいな音がして、発射された光線があたしの頭上を掠めた。
弾は外れたみたいだけど、当たった壁面の一部が……真っ黒に焦げて、なんか溶けてる……!
「し、神聖な奥の間でなんということを……!! 総員、戦闘配置!!」
警備員さんたちの持っているさすまたの先っちょから光の刃が飛び出し、槍のように変形した。長老とあたしを除くその場の全員が、一斉にニゲドゥへ飛びかかる。
警備員さんたちもプロだとは思うけど、チンピラっぽい見た目の通りニゲドゥもかなり喧嘩慣れしてるようだ。ましてや光線銃まで持ってるんだから、これが恐ろしくしぶとい。
……とりあえずあたしは柱の影に隠れ、言った。
「どーしてこうなった……!!」