学園銀河ヒッチハイク・マスター   作:ごまぬん。

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激闘、再会、そして

 

 ニゲドゥvs神殿警備隊、未だ決着つかず。

 あたしの純情を弄んでくれたカルルラハル星人の風上にも置けないヤツは、しかし八面六臂の大立ち回りでなかなかお縄についてくれない。

 警備員さんたちは完全に頭に血が上っていて、市場ではみんな敬語で話していたカルルラハル星人と同じ種族とは思えないほどに罵詈雑言が飛び交っている。コンプライアンス的にここには書けないレベルだ。

 

「邪魔だどいてろ!」

 

「うぁっ───、つっ……!」

 

 で、右往左往してたらなんか突き飛ばされちゃった。

 転んで頭は打たなかったけど、身体を庇った手が少し擦りむけてる。血が滲んで痛い……ちょっと、このことは事務所に報告させてもらうからね! 生きて帰れたら……。

 

「うぅっ、プロデューサぁ〜! 咲季……手毬ぃ……!」

 

 

 

「きゅ〜っ!!」

 

 

 

 すると突然、あたしのすぐそばの壁が爆発した。

 もうもうと立ち込める煙の中に、でっかい影。あれは───。

 

「あっ……アザラシくん!?」

 

「きゅう!」

 

 顔だけであたしの身長くらいあって、ほっぺが赤くて、鼻がヒクヒク動いてる……間違いない、あのぬいぐるみみたいなヤツ!

 ……でも、なんか……鼻の下の辺りに、青い血みたいなのがベットリついてる。

 う、うそ……あの時のタコマダム、まさか───いや、考えないでおこう。怖すぎる。

 

「わふっ! わふー!」

 

 アザラシくん、めっちゃ暴れ回って、警備員の皆さんをバタバタ薙ぎ倒していく。

 警備員さんたちは光の槍を振り回しながら叫ぶけど、彼(?)の分厚い毛に全部弾かれてる。ニゲドゥも光線銃を撃ったが、ビームが毛に吸い込まれて呆然。ぅゎぁざらιっょぃ。

 

「きゅう……きゅー?」

 

「うひゃっ」

 

 そしてゴロッとあたしに近づいてくるアザラシくん。

 大きな鼻でスンスンって匂いを嗅いできたかと思うと、擦り傷のある手のひらをペロッと舐められた。ちゃんと口あったのかおまえ、毛深くてよく見えなかったけど。

 若干傷に染みはしたものの……なんか、気遣ってくれてる?

 

「なに? もしかして、あたしを助けてくれるの?」

 

「わふっ」

 

 アザラシくんは一声鳴いて、気絶してる警備員さんの一人の手を突っつく。光の刃が消えてさすまたに戻った武器が転がっている。

 こ……これを使えって? いやいや、それはさすがに───、あっ。

 

「待てよ……カルルラハル星人の能力!」

 

 この星に来た目的であり、昨夜の内にニゲドゥにも聞いていたカルルラハル星人の能力───触れた物体を直したり、複製したりする不思議パワーだ。

 

「ちょっと失礼しますよ……!」

 

 気絶した警備員さんの手を掴み、紙袋からワニャ……ワニャガ……なんとかを取り出す。

 右手にワ……もうワニャガでいいや。とにかくワニャガを握らせて、左手を広げて……、あれ? 具体的にこっからどうすんだ?

 

「きゅっ」

 

「ぐぼぇあ!?」

 

「うぇあぁ!?」

 

 と思っていたら、アザラシくんの無慈悲なる拳(ヒレ)が警備員さんのみぞおちに突き刺さった。あたしもつられて変な声出しちゃった。

 すると……なんか警備員さんの額にある3番目の眼が虹色に輝き、み〜っという音と共に左手が明滅して、もうひとつのワニャガが生えてきた!

 

「サンキュー、アザラシくん!」

 

 ちゃっかり当初の目標は達成できたが、喜んでばかりいられる状況でもない。

 アザラシくんの乱入で現場はハチャメチャに混乱しており、警備員さんたちが同士討ちを始めてしまった。ニゲドゥも……姿が見えないけど、ちょっと向こうの方から聞こえる悲鳴はたぶんアイツのもののはずだ。

 

「きゅー」

 

「あー……そーだね。とりあえず、逃げるしかねーかぁ……」

 

 荷物を回収して、アザラシくんと一緒に神殿の出口へとダッシュ。なんか懐かれちゃったな。

 

 ───走りながら、ふと気づく。

 アザラシくん、なんか……体が縮んでる?

 さっきまで5メートルは下らなかった体長がどんどん小さくなって、あたしの肩に乗れるくらいになってく。

 

「きゅ……きゅ───」

 

「んん……、……んっ!?」

 

 しかも……毛がスルスル落ちて、顔が───えっ。もしやこれ、あたし!?

 キラキラの目に小さな手足、体毛は消えたけど代わりに服が生えてくるのはお約束。まるでぬいぐるみとしてデフォルメされた藤田ことねそのものだ。

 

「なんであたしの……!? というか、いまそうなる必要あった?」

 

 アザラシくん改めちっちゃいあたしは答えず、何も考えてないような笑顔を向けてくるばかりだった。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 神殿からほうほうのていで脱出して、カルルラハル星の砂まみれの路地にへたり込む。

 肩に乗ったちっちゃいあたしが、鼻をスンスン鳴らしながらあたしの頬を突っついてきた。本当に不思議な生き物だ。

 さて、これからどうしたものか……と途方に暮れてたら、宝珠が光ってブーンって振動した。地球からの着信だ。

 

〈もしもし、藤田さん? ご無事ですか?〉

 

「プロデューサー! うん、なんとか無事ですっ。親切なアザラシがいたもんで」

 

〈アザラシ……?〉

 

 かくかくしかじかまるまるうまうま。

 そんなこんなでアザラシくん及びミニ藤田ことねに助けてもらった話をすると、咲季がちょっと笑いながら割り込んできた。

 

〈なんだかまるで、ことねを小さなぬいぐるみにしたみたいね。ふふ……ことねちゃんぬいぐるみ、かわいいかも〉

 

〈なるほど、それは良いアイデアですね。では省略して『ことぬい』とでも呼びましょうか。藤田さん、かまいませんか?〉

 

「こ、ことぬい……。まぁ確かにそんな感じですケド……」

 

 やや呆れつつ、肩のちっちゃいヤツ───ことぬいを見る。

 なんかついさっきまでより2割増しでキラキラした目でこっちを見ている。おいおい、確かおまえさんにはミュミャ……なんとかいう名前が既にあったろうに。新しい名前をつけてもらったのがそんなに嬉しかったのだろうか? まぁ……、本人が喜んでるならこの際いいか……。

 

「それで───プロデューサー、次はどーすればいいですか?」

 

〈はい、藤田さん。最終目的地はまだ遠く、一度のワープでは到達できません。まずは『バースΔ-194』の『ミクノモノモス星』を経由する必要があります。カルルラハル星の宇宙港に戻り、ミクノモノモス星行きの便に搭乗してください。……、ただし……〉

 

 ただし……? あっ、嫌な予感……。

 

〈神殿の騒ぎを受けて、宇宙港にも厳戒態勢が敷かれています。フライトは全面中止にこそなっていませんが減便していて、そもそも、藤田さんは重要参考人として当局に指名手配されている可能性が高いです〉

 

「……それ、正直に出頭しちゃダメなんです?」

 

〈……状況が変わった、としか。良くも悪くも、ことぬいが神殿を強襲したためですね……〉

 

 横目で肩のことぬいを見やると、何やらちょむっと小首を傾げやがった。文句の一つでも言ってやろうと思っていたのだが、その仕草で怒る気が失せてしまった。

 

「とゆーことは……、また密航……ですか」

 

〈また密航……ですね〉

 

 マジでどうかと思うけどしょうがない。こっちは手毬の命が懸かっている。マジでどうかと思うけど。

 

「わ……わかり、ました。あたしも腹、括ります……! 今度はどこに行けば?」

 

〈貨物エリアの第7区画です。ミクノモノモス星行きの貨物便が準備されています。くれぐれも気をつけて〉

 

〈ことね……ほんと無茶苦茶な状況なのに、よくやってると思うわ。手毬のことはわたしたちに任せて、自分のことに集中してね〉

 

 ……咲季の優しい言葉が身に沁みる。

 あー、まったく。最初は流れと私利私欲で手ぇ組んで、口を開けばしょーもないことで喧嘩してばかりのあたしたちだけど……あたし、やっぱこいつらのこと好きなんだよな。絶対直接は言ってやらないが。

 首元の宝珠をぎゅっと握り、ことぬいを肩に乗せたまま、宇宙港に急ぐ。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 プロデューサーの懸念通り、宇宙港は物々しい雰囲気に満ちていた。

 神殿での騒動が広まったのか、青い肌の警備員がそこら中ウロウロしてる。

 あたしはことぬいを上着のポケットに押し込み──懐から感じる振動は明らかな抗議と非難の意思表示だが無視──、フードを被って貨物エリアの第7区画に忍び込む。小洒落たパーカーだとばかり思ってたけど、なるほどこうして人相を隠すための服だったか……。

 

 コンテナの隙間から様子をうかがって───見つけた。なんか四脚のついた丸い水槽みたいなロボット。

 大きさはあたしの半分くらいで、足とは別に生えたアームで器用に荷物を運んでいる。そして何よりの特徴は……。

 

「うぇっ……、何あれグロぉ……」

 

 水槽の中にはなんと、ピンク色の脳みそがプカプカと浮いていた。

 彼らの種族はほぼ完全に機械化された文明の惑星の出身で、人工子宮の中で交配した受精卵から脳だけが生まれ、あんな感じで一生をロボットの身体で過ごすのだとか。何それ怖い。

 事前に話には聞いてたけど、かなりショッキングな姿だな……麻央ちゃん先輩辺りに見せてみたい。

 で、そんな脳みそエイリアンの連れてるペットは、

 

「ボフッ。ボフッ、ボフッ」

 

「またこのパターンかぁ」

 

 一言で言うと、ゾウくらいデカいチャウチャウだった。

 確かに元からデカい犬種だけど、これはさすがに度を越してる。しかも額にはチェーンソーみたいなトゲトゲした角が生えており、お尻からは尻尾の代わりに青い電撃が迸っていた。なんでこのレベルのバケモンなのに基本パーツはチャウチャウなんだよ。

 

 脳みそエイリアンはコンテナをチェックしながら何事か喋っていて、宝珠の翻訳によると……。

 

「フゥ……。さぁノダムポラ、おいで。ミクノモノモス星に着いたらまた会おうな」

 

 ことぬいの本来の名前といい、宇宙人のネーミングセンスってどうなってるんだろう。それともやっぱり、宇宙基準じゃあたしらの名前のほうが変に聞こえるんだろうか。

 とにかく、チャンスは今しかない。息を殺して忍び寄り……。

 

「とりゃっ───おっ、お、お? うわっぷ……!」

 

 ケージはタコマダム所有のそれに比べるといくらか安上がり、もとい不親切な作りで、飛びついて入り込むのになかなか苦労した。

 ことぬいもポケットからピョンっと出てきて、チャウチャウの分厚い毛皮に潜り込む。

 クソデカチャウチャウの様子は……おや、意外と大人しい。頼むからこのまま静かにしててくれよ……。

 

 だが、そんなあたしの祈りも虚しく、脳みそエイリアンが急にこちらを振り返った。

 なんでぇ!? 主従の絆!?

 

「うん? ……なんか虫でも紛れ込んだか? まぁいいや。そのうちどっか行くだろ」

 

 え、虫……。……失敬な!

 あっさりスルーされたのは助かったけど、なんか釈然としない……。

 

 しばらくして、前回と同じようにケージがガタガタ揺れた。次元航行艇が出発したらしい。

 チャウチャウの毛をもふもふして気分を鎮めていると、ことぬいがあたしの肩にちょこんと乗って、頬を突っついてきた。これは……慰めてくれてる、のか?

 

「ありがと、ことぬい。でもいいんだ、いつか宇宙一稼げるアイドルになって見返してやるからナ〜」

 

 とりあえず、再び密航成功だ。

 次の目的地は───バースΔ-714、ミクノモノモス星。

 















初星学園ぬいぬい部、宇宙進出!
ところで書き終わってから気づいたんですけどヒッチハイクと真逆のことしてますねこの作品。
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