学園銀河ヒッチハイク・マスター   作:ごまぬん。

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バースΩ-9999・“至天の奈落”

 

 “至天の奈落”: 最高に有害

 厳密には惑星ではないが、『行ってはいけない危険地帯』の項に記した『絶対に行くな』の一文では納得できなかった読者のためにこちらでも解説する。

 マルチバースの最果てに位置する特異点であり、かつて多元宇宙全土を戦火に巻き込んだ超危険種族“白き闇”の王が封印されている。

 訪問者は手始めに、自分の名前が記載された行方不明者通知書を受け取るのが恒例だ。例外は最寄りの郵便局に勤める配達員のみで、彼らは観光客の質問には一切答えない。

 また、マルチバース旅行協会は万界暦12025年から『“至天の奈落”観光バッジ』を発行している。申請者の99.98%は郵便でしか連絡が取れないものの、旅の記念にいかがだろうか。

 

 ───ルクスティウム書房刊『オムニバース・トラベラー』第2^276709版より

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 吾輩は地球人である。名前は藤田ことね。

 藤田ことねは、初星学園のアイドル候補生である。バイトをやり、アイドルを目指して暮して来た。

 

 ミクノモノモス星での配信バトルを乗り越え、ワープゲートを潜り抜けた瞬間、息が止まった。

 

 バースΩ-9999───“至天の奈落”。

 

 一面真っ白だったワープゲートとは対照的に、目の前に広がるのは漆黒の壁面。ただし七色に鈍くキラキラ光って、まるで星空がそのまま形になったかのよう。

 頭上には吸い込まれそうな深さの闇がグルグルと渦巻き、時折淡い光が瞬いては、遠くで低い唸り声みたいな音が響く。

 

「……世界の果て、か」

 

 バースΩ-9999───まさにその座標が意味する通りの場所だ。

 地面には白い結晶みたいな塊がゴロゴロ転がっており、ほのかに金色とか赤色とかに光っている。近づくとビリッて電気が走る感じ。

 岩の洞窟っぽいけど、結晶じゃない壁は……うわ、なんか柔らかい。指で押したら人肌みたいに温かくて、かすかにトクトク動いてる。うえぇ鳥肌もんですわ……。

 けど……なんか、こう、変な安心感もあるんだよね。胎内回帰体験ってやつ?

 これまでにも不思議な土地は見てきたが、ここはそれに輪をかけて異様だ。

 ことぬいがピョンとあたしの肩から飛び降り、短い腕で上の方を指し示す。

 

「こっち? 上に行けばいいの?」

 

 見ると、螺旋状の道が上へ上へと伸びていて、あたしたちは最下層からスタートだ。おっといきなりしんどいぞ?

 

 宝珠が光った。地球からの着信だ。

 

「もしもし……」

 

〈───やぁ、ことねちゃん。至天の奈落に辿り着いたんだね〉

 

「おじいちゃん!」

 

 そう言えば、ワープゲートを抜けた先の宇宙港での通信を最後に、ぱったりと声を聞かなくなっていた。カルルラハル星の神殿からは話にさえ出てきていない。

 プロデューサー曰く、老い先短い身体で『猟犬』に寿命を差し出したことで衰弱しており、地球組にいくらかのフォローをしてから、どこかへ帰っていったって……。

 

「おじいちゃん……その、身体は───」

 

〈平気だ、いまは落ち着いているとも。それより、今回の依頼人……アリュゾホート・マグサリナスは最上層にいる。ワニャガルネペンタを頼んだよ。……気をつけてね〉

 

 記憶にあるより弱々しい声。けれど発音ははっきりしていて、確かに復調してはいるらしい。

 色々と思うところはあるものの、ひとまず安心していい……のかな?

 

 螺旋の道を登りながら、そこら中に転がる白い結晶を見る。

 不思議な淡い光が規則正しいリズムで明滅していて、なんか生きてるみたい。

 というか後で知ったけど、実際これは“白き闇”───ことぬいたちと同じ種族の死骸なんだって。何それ怖い。

 まぁ……おまえのファンタジー生物っぷりにも慣れたから、もう深く考えないよ。信じてるぜ相棒。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 坂を登るたび、空気がずっしり重くなる。壁のドクンドクンって脈が強まって、遠くの……何だろう、風? の唸りが大きくなる。

 反面、あたしの前を行くことぬいの足取りは軽い。ちっちゃな手足でピョコピョコ進んでいく。

 

「元気だねー。勝手知ったるというか……もしかして、ここが実家?」

 

 ─────そして、ついに辿り着いた。

 至天の奈落の最上層、白い結晶で埋め尽くされた螺旋の果て。

 空間は薄暗いのに白っぽく光っていて、奇妙な静寂に満たされている。

 中心部には、砂状に砕けた結晶がうず高く積もっていて、その頂点に……椅子? それもアンティークっぽいというか……、玉座?

 

「きゅー!!」

 

 するとことぬい、久々のアザラシモードにフォームチェンジ。

 その鳴き声に応えるかのように、玉座の上で身じろぎしたのは……。

 

「───? お前は……」

 

 ややっ、ちっちゃいアザラシのぬいぐるみ!? かわいい!

 ことぬいそっくりだけどもっとデフォルメされてて、大きさは30センチくらい。玉座の上でヒレをだらっと下げ、何やら気だるそうなご様子。

 この人(?)が今回の依頼人、おじいちゃんの古い友達───アリュゾホート・マグサリナスか。

 

「えっと……はじめまして! あたし初星学園の……あぁいや、地球から来た……」

 

「藤田ことね、だろ? 遅かったな」

 

 おりょ、遮られた。若干ご機嫌斜め? まぁ、お菓子ひとつに1ヶ月も待たされりゃそうもなるか。

 

「ごめんなさい、言い訳のしようもないです……。配達が遅れて申し訳ありませんでした。───ところで、なんであたしの名前を?」

 

「見てわからないか。そいつは僕の目だ」

 

 目……あ、ことぬいのこと?

 なんとまぁ、これはまた……あたしとことぬい、出会ったのは偶然じゃなかったってわけだ。

 

「ミクノモノモス星の配信も見たよ。『初星学園』と言えば、今やマルチバース全土で話題のスポットだ。キミ、結構有名だぜ」

 

 そうなの!? しまった、やっぱもっと企業案件とか受けてギャラとか試供品とかもらっとくべきだった……!

 

「そ、そうでしたか〜。ありがとうございますぅ……、あ。こちら、ご注文のワニャガルネペンタです。改めまして、本当にすみませんでした」

 

 配達ボックスを開き、ワニャガルネペンタ(さすがに覚えた)の紙袋を取り出す。結晶の砂山を登って……シャクシャクしてて登りにくいなここ……、アリュゾホートさんのちっちゃなヒレに手渡した。ついにお仕事完了である。

 すると、宝珠がピカッと光って、おじいちゃんの声が聞こえてきた。

 

〈やぁ、アル。今回はずいぶん待たせてしまって悪かったね。料金は要らない、そのまま受け取って欲しい〉

 

「当然だ。それより、悪いと思うなら直接会いに来るのが筋じゃないか?」

 

〈それもすまない。近頃は足の調子が良くなくてね、元より人を遣うつもりだったんだ。ことねちゃん、本当に頑張ってくれたんだよ。許してやって欲しい〉

 

「まったく……マルチバース最高最速の運び屋が、聞いて呆れる」

 

 アリュゾホートさんの言葉はキツイけど、本気で怒ってるってほどでもない。おじいちゃんもちゃんと謝りつつ、意外にフランクな感じ。

 友達っていいね……。ていうかおじいちゃん、実は凄い人だったんだね……。

 

「おじいちゃんも頑張ってくれたんですよ。特に……その、ワープゲートでは『猟犬』に───」

 

「……『猟犬』?」

 

 あれっ……? アリュゾホートさん、目がピクッて動いて、声がちょっと低くなる。

 

〈こ、ことねちゃん……!〉

 

「支払ったのか? 奴らに通行料を?」

 

 ───バチリ、と黒い稲妻が走った。

 世界が震える。比喩や誇張じゃない。目に見えない圧力がどこまでも拡散して、空間そのものが悲鳴を上げている。

 

「ティンダロスの糞袋ども。僕のものと知って手を出したのか? アリュゾホート・マグサリナスを怒らせた奴らがどうなってきたか、知らないはずもないだろうに」

 

 ひえぇぇめちゃくちゃ怒ってる……!!

 ヤバいヤバいヤバいヤバい、これまでで一番ヤバい! 純二次元人といい、エイリアンってなんか見た目ゆるいヤツほどヤバいの!?

 

〈よしてくれ、アル! 本を正せば俺のミスなんだ……! それに、老い先短い俺の命なんて大したもんじゃない───〉

 

「あんたが良くても僕が良くない。……いまはこの場所に縛られているとしても、僕ならミゼーアを殺せる。銀の鍵の門の外にいるのは自分たちだけじゃないってこと、思い出させてやらなきゃ」

 

 な、なんかこのまま話題続けるのダメそう!

 とりあえず違う話、アリュゾホートさんの気を逸らせるような……! えっと、うー……あっ、そうだ!

 

「あっ……アリュゾホートさん! あのっ───配信! ミクノモノモス星の、見てくれたんですよね? マルチバースでの評判って……どうでしたか? あたし、リアルな視聴者さんの感想聞きたいですっ!」

 

「ん……?」

 

 フッ───と、恐ろしい気配が霧散した。

 小さなアザラシから放出される圧力が弱まり、空間を走る黒い稲光も消えていく。

 

「……、はぁ。ま、そうだな……過ぎたことは仕方ない」

 

 手毬みたいなこと言うなこの人。いまはありがたいけど。

 

「───純二次元人があんなに楽しそうにしてるのは久々に見た。最近のあれは、配信業始めてから作ったキャラだからね」

 

 えっ。そうだったの? 1ヶ月もミクノモノモス星にいたのに、知らないこともあるもんだな。

 でも……そっか。あたしたちと一緒の動画作り、楽しんでくれてたんだ。

 

「実は、僕も何度かコメントしたんだ。お揃いのTシャツ、贈ってくれただろ?」

 

「え? あっ……あー、プレゼント企画の!」

 

 ミクノモノモス星では、純二次元人がファンに頼まれて勝手にあたしの衣装を送ってしまったトラブル──返す返すもわんぱくすぎる──があったんだけど、そこからヒントを得て、一度だけプレゼント企画をやってみたのだ。

 スケジュールが鬼進行すぎて1着しか用意できなかったものの、どうせ一点物なら熱心なファンにあげたほうが周りの覚えも良いかと思って……待て、ということは……確か、

 

「───MrGoma682! ハンドルネーム……あれって、アリュゾホートさんだったの!?」

 

 アリュゾホートさんは一瞬目を丸くし、やがてちょっと照れたような声になって言った。

 

「すごいな、覚えてたのか? ……まぁ、バレちゃったからには隠してもしょうがないな。その通りだよ」

 

 ふっふっふ。いやぁ、実際こうして熱心なファンに会えると嬉しいもんですなぁ。たとえ相手がエイリアンだとしても。

 そういえば、世の中にはこういうのってあんまりバレたくないって人もいるんだけど、アリュゾホートさんは寛容で助かった。

 

「ここは牢獄なんだ。娯楽がない。だから、キミたちの配信は結構楽しみだったよ。地球……バースα-12345か。エルダーズパンテオンの管理下にない宇宙じゃ色々難しいとは思うけど、これからも期待してる」

 

 ……牢獄? それにエル……あんだって?

 まぁいいや、人もといアザラシには何かと事情があるものだし。宇宙の果てにもファンがいるってわかっただけでも御の字だよね。

 

「はぁい、ありがとうございま〜す! これからも応援、よろしくお願いしますネっ♡」

 

〈ふふ……。あぁ、ことねちゃん。アイドル活動もいいけど、他に聞くことがあるんじゃないのかい?〉

 

 おっとそうだった、危ない危ない。いや本当に危ない───こちとら人の命が懸かっているのだ。

 

「まだ何か?」

 

「はい。実は……えっと、あたしの地球人の友達が、その……ワニャガルネペンタのことを、よく知らないまま一口食べちゃって。もちろん、いまアリュゾホートさんに渡した分は、それから用意し直したものなんですけど……」

 

「あぁ、そういうこと。それは厄介だろうね。ふむ……」

 

 おじいちゃんに頼まれたお仕事は完了。後は手毬を助ける方法だ。

 もふもふの毛の下でもごもご呟くアリュゾホートさんの返事を待つ。見た目にはことぬいと瓜二つ、違うのはサイズだけ……大きなもふもふと小さなもふもふ、うーむ。甲乙つけがたい。

 

「……そうだな。ニュグレの呪術医なら───」

 

 そして、アリュゾホートさんが、ヒレをピクッて動かした瞬間。

 

 

 

 ─────空が、割れた。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 この旅でさんざっぱら奇妙なもの、不思議なものは見てきたつもりだったけど、これはその中でもとびっきりだ。

 

 至天の奈落の星空が割れて、走った亀裂の奥に禍々しい光の渦が覗いている。

 そこから現れたのは、一隻の船だ。古い映画とかに出てきそうな、けれど明らかにハイテクな金属の外装でできた、巨大すぎる帆船。風にはためく帆は身分を示す旗を兼ねていて、見たこともない角のある動物の頭蓋骨が描かれている。

 

 帆船───いや、宇宙戦艦の……舳先っていうの? 一番前の方に、船の存在感に負けないくらい大きな影が立っている。

 

「───いよう、負け犬の白豚ども!!」

 

 真っ赤な帽子、同じ色のコート、黒い眼帯。それに、左腕の金属でできた義手。

 

「あれ、ミクノモノモス星で見た……!」

 

「ま、今日はテメェらに直接用があるわけじゃねぇが……なァ? わかるだろ?」

 

 サメ頭のデカい奴───宇宙海賊!

 でも、ミクノモノモス星で見た連中よりデカい。背丈がアザラシモードのことぬいと同じくらい……5メートルはあって、おまけに牙が金色に光ってる。趣味悪っ……。

 

「出てこォい、フジタコトネェェェ!! ミクノモノモスで俺様の大事な部下を可愛がってくれた借り、返してもらうぞォォッ!!」

 

「あたし───っ!?」

 

 うそ、なんでぇ!? あたし何かした!?

 いや……まぁ、確かに絡まれたけど……あの時は、純二次元人のみんなが助けてくれて。てかそもそも、あんたらがあたしに絡んできたのが悪いんじゃん……!!

 

「ことね、落ち着け。奴はキャプテン・ンゴロミィ───宇宙海賊『バロディック』の首領。マルチバース全土で悪名高いクズどもの頭だ。……ミクノモノモス星で何かあったのか?」

 

「何かって、あたしは何も……。あいつらに捕まって、奴隷商? に売り飛ばされそうになったところを、純二次元人のみんなに助けてもらっただけで」

 

「じゃあそれだ。そいつらたぶん、バロディックの先遣隊だったんだ。この様子じゃ、ミクノモノモスは今頃奴らの手の中だな」

 

 ─────え?

 

「バロディックはここ20年じゃ一番の大物だ。マルチバースの星々を荒らし回って、惑星丸ごと焼き払ったこともある。次元を渡って略奪、虐殺、町の破壊、なんでもやる。連中の旗艦、あそこに見える『混沌の王の鎖号』は、単独で星系一つ消滅させる火力がある」

 

 惑星を……丸ごと、焼き払う?

 じ……、じゃあ。じゃあ……純二次元人の、みんなは───。

 

〈いいやことねちゃん、早まらないで。奴らが至天の奈落にワープして来られたってことは、純二次元人を無理やり協力させたに違いない。帰り道の案内も必要だから、きっと彼らはまだ生きてる〉

 

「そう……なの? でも……」

 

「バハハハハハ……、おォ? そこの、黄色い毛の二本足……ハハ!! 見つけたぜ、お前がフジタコトネかァァ! この陰気な場所ごと、宇宙の塵にしてやるぜェ!」

 

 げっ、見つかった! 黄色い毛の二本足……ぐぬぬ、マルチバースの住人はそういう感じでしか他人様(ひとさま)のルックスを評価できんのか!

 

「おい、お前」

 

「わふ?」

 

「はい? あっ、ことぬいのほうか」

 

「コトヌイ? ……そうか。お前、名をもらったんだな」

 

「きゅっ。きゅー!」

 

 アリュゾホートさんの表情は──口が見当たらないし、鼻がデカくて丸すぎるので目元からしか窺えないけど──険しい。

 けれど、ことぬいを見る一瞬だけは、柔らかい目線を向けていたような気がした。

 

「ならば、ことぬい。僕の客人を守れ」

 

「きゅっ! わふー!」

 

「ことね。ンゴロミィ率いるバロディック本隊は3000万の戦闘員と100万隻の戦艦を擁する大艦隊だが、所詮は寄せ集めの有象無象。“白き闇”───僕とことぬいが付いていれば怖い相手じゃない。ただし、『混沌の王の鎖号』とその同型艦、それから『ゴーレム』と呼ばれる機械歩兵だけは別格だ。ことぬいのそばを決して離れるな。赤い目をしたデカいロボットを見かけたら、すぐに逃げろ」

 

「わ、わかった。アリュゾホートさんは?」

 

「戦う。“白き闇”に逃走はない。この場所は僕らにとっての牢獄だけど、墓標でもある」

 

 アリュゾホートさんが空を睨み、小さな身体は玉座から離れて宙に浮く。

 また黒い稲妻が走って、静かな怒りの波動が、世界のすべてを覆い尽くした。

 

「我が同胞の眠りを妨げた罪、その首級(くび)で贖わせてやる。泣き叫べ芥ども─────貴様らの死に、安息はない」

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 虚空を切り裂く漆黒の雷光は、至天の奈落の主が湛える怒りそのものだ。

 

「きゅー! きゅー! わふっ!」

 

 ことぬいは、大層頑張ってくれている。

 サメ頭のデカいの、タコマダムを彷彿とさせる紫色やら赤色やらの8本足、毛深い狼男、スマブラで見たことある感じのロボット、肌が青い女の人、その他その他。

 襲い来るエイリアンや異世界人をちぎっては投げちぎっては投げ、あたしが劉邦なら以下略。

 ……なのだが……。

 

〈Grrrrrrrrrrrrrr───!!〉

 

〈Ahhhhhhhhhhhhhh〉

 

〈Bmooooooooooooooo!〉

 

 何……なん……なんだあれ?

 ひぃ、ふぅ、みぃ……えーと、たぶん10匹くらいか。

 アリュゾホートさんが何やらかっこいい台詞と共に召喚したハチャメチャにデカいモンスターたちが、バロディックの艦隊を蹂躙している。ウマいもんたち呼んでるぜ食えば食うほど溢れるパワーって感じだ。

 

「その程度か宇宙海賊!! 侮られたものだなッ───!!」

 

 あとアリュゾホートさん本人が強い。めちゃくちゃ強い。もんのすごく強い。なんかシューティングゲームの裏ボス戦でしか見たことない量の光の弾とかビームとか出してる。召喚士タイプなのに本体もちゃんと強いヤツなんて浅倉威や夏油傑ぐらいしか許されないだろ。

 

「あたしたち要らない子かもねぇ」

 

「きゅうー」

 

 ────しかし、そんな呑気なことを言っていられたのも最初だけだった。

 

「ケッケッケ……面白ぇ。久々に全力でブッ放せそうだなァオイ!! 旗艦艦隊、前へ!!」

 

 敵もさる者だ。アリュゾホートさんも言ってた『混沌のうんちゃら号』と同じ形の戦艦が、ズラッと並んで飛んでくる。

 戦艦の正面には、ユニコーンの角みたいなクリスタルの柱がついていて……そこから、見るからにヤバそうな極太のビームが!!

 

「うわあぁあぁぁ!?」

 

「きゅ〜っ!!」

 

 推定主砲の一撃が遥か上空を通過しただけで、とんでもない衝撃波と突風が吹き荒れた。

 どう見ても味方の戦闘機みたいなのも巻き込んでるのに、ンゴロミィのヤツはお構い無しにドカドカ撃ってくる。こっちのクソデカモンスターたちは……やられるまでは行ってないけど、大ダメージっぽい!

 

 しかも、なお悪いことに───。

 

「……ん?」

 

「……お?」

 

 ことぬいにブン殴られて倒れたダンゴムシみたいなヤツを足蹴にして、新しいエイリアンがやってくる。

 青黒い肌、長い手足、三つ目に牙、頭のみょんって感じの触手、背中に小さいボロボロの羽。なんか、見覚えあるような……。

 

「……あーっ!! ニゲドゥ!?」

 

「コトネ!!」

 

 カルルラハル星の! いつの間に宇宙海賊なんかに……!?

 

「ニゲドゥ、おまえ〜っ!! よくもぬけぬけとあたしの前に出てこれたな!」

 

 思わずアイドルらしからぬ罵声を浴びせてしまったが、こやつに関してはそうしていいだけの借りがある。ザナカドゥスの一件はマジで許さん。

 対するニゲドゥは、触手をクネクネさせて、ヘラヘラした態度で答える。

 

「ヘッ、こっちだってお前のせいで何もかも台無しにされたんだ! 上手くいけば今頃、あの星は俺のものだったはずなのに……!」

 

「ふざけんなっ! 逆恨みもいいとこじゃんか!」

 

「うるせぇ!! 俺はバロディックの旗の下で生まれ変わった……もうこの世の誰にも見下されねぇ! ……ククク……あぁ、良いこと教えてやるよコトネ。バロディックの司令部はな……テメェに懸賞金をかけてるんだ……!」

 

 なぬ!? えっ、事情は聞いたけどやっぱりあたしが主犯にされてない!?

 

「おいテメェらァァ!! コトネだ、賞金首のフジタコトネがいるぞ! 懸賞金100億クレジット! ここだァーッ!!」

 

「おおおおおめー何言ってんだマジでおまえおまえおまえぇぇぇ!?」

 

 100億ぅ!? あ、あたしにかかったお金ならあたしにくれよ!! ……違うそうじゃない、藤田ことね史上最大最高にして空前絶後のピンチ……!

 

「ことぬい〜っ!!」

 

「きゅ───っ!!」

 

 耳聡い金の亡者どもが続々と雪崩込んでくる。

 ことぬいはヒレでバコバコぶっ飛ばすけど、数が多すぎる!

 

「ケヒャヒャヒャヒャ!! 良い格好だなコトネェ〜? 大人気じゃねぇか! アイドル冥利に尽き───」

 

「わふ!」

 

「グエッ」

 

「ナイスことぬい!」

 

 やったぜ。悪は滅びた。

 ……いや全然滅びてない! 次から次へとキリがない───確か、戦闘員が全部で3000万だっけ? あとどんだけいるんだよ〜!!

 

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