今も青き、呪術アーカイブ   作:ネログリフィス

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いろいろと先駆者様の作品を読んでいて、我慢できなくなり書いてしまいました。
完全に見切り発車ですが、ひとまずは週2ペースを目標で更新していけたらと思います。



プロローグ
いつもより慌ただしい日常


学園都市『キヴォトス』

 

 

数千にも及ぶ学園が運営する自治区とキヴォトス全体の行政を担当する連邦生徒会が管理する地域「D.U.(District of Utnapishtim)」で構成される巨大学園都市である。学園都市の名の通り、学園に通う生徒達は勿論、学園とは無関係な一般市民も多く住んでいる───────まあ、犬や猫、果てはロボットといった多様すぎる外見をしているため、初見の人は驚くだろう。

 

「はあ・・・なんでこんなに立て続けに問題が発生しているんだ。」

 

そんな『キヴォトス』は現在、治安が過去最悪といっていいほど悪い。ここ数週間報道されるニュースは、大抵が治安悪化による事件によるものがほとんどだ。『キヴォトス』を構成する学園の一つ『ミレニアムサイエンススクール』のとある部屋にて、俺は深くため息を吐いた後にポツリと声を漏らす。

 

「う、魚里(うおざと)先輩・・・・今度は連邦矯正局から停学中の生徒たちが一部脱走したらしいです。」

 

「ははは・・・・もう滅茶苦茶だ~っ!!」

 

同じ部屋で仕事をしていた『早瀬(はやせ) ユウカ』から伝えられたニュースで、俺は乾いた笑いと共に手に持っていた書類とペンを放り投げて机に突っ伏す。普段は正午過ぎの日差しが心地よいのだが、三徹目を乗り越えた俺にとっては、ただ明るすぎる照明以外の何物でもない。

 

「こんな時にリオはどこいったんだよ・・・・あいつがいれば、何倍も速く終わるだろうに。」

 

「最近は学内でも見てませんね。」

 

自分自身、普通の人よりも書類仕事が早い自信はあるが、セミナーの会長であるリオや会計職の早瀬と比べると何倍も遅い。特にリオは、あらゆる分野で一流の才覚を持っているため、単純に書類の処理速度が増すだけでなく、別の視点での解決方法を模索してくれるかもしれないのだ。

 

「失礼します。」

 

もう完全に仕事をする手が止まり、早瀬と雑談をしていると、入り口の扉が開いて『生塩(うしお) ノア』が中に入ってくる────────大量の書類を両手に抱えて。

 

「よいしょ・・・っと。C&Cが暴徒と化している不良グループを鎮圧する際に、近隣の建物を破壊してしまったようで、その弁償に関する書類です。」

 

「「またか・・・・。」」

 

生塩からの報告を受けて、俺と早瀬が頭を抱える。ここまでの疲労とストレスの蓄積に対して、更なる追いうちだ。もうずっとこの調子なのだ。何か問題が発生し、それに対してC&Cが対処する。そして、任務の過程で何かしら建物や備品を破壊してしまう。特にここ最近は、C&C側も忙しさからか、普段よりも高確率で、任務完了の報告とセットでこの書類がやってくる。

 

「ちょっと休憩しようか、早瀬、生塩。」

 

俺はもう目の前の書類の山から隈だらけの目をそらして、現実逃避することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お二人ともどうぞ。」

 

俺は生塩が入れてくれたコーヒーを、早瀬はココアを飲んで心と体を休めるのが、ここ最近のルーティンだ。目元の隈は濃くなっていく一方ではあるのだが。

 

「こうも書類仕事が続いていると、流石に身体の方がまいっちゃうよ。俺自身、書類仕事よりも現場で動いている方が向いているのに。」

 

「そうは言っても、リオ会長が全然姿を見せない今、この『セミナー』のトップは副会長である先輩なんですから頑張ってください。」

 

「うい・・・。」

 

早瀬からの厳しい言葉を受けて、俺は情けない声で応えながら項垂れる。

 

元々『ミレニアムサイエンススクール』は、『千年難題』と呼ばれる7つの難題を解き明かすべく集まった研究者たちの研究機関が集まって誕生した学校であり、『キヴォトス』における最新鋭、最先端の多くがこの学校から生み出される。そのため、他校と比べて歴史は浅いものの、キヴォトス三大校の一角を担うほどの影響力があるのだ。

 

俺と早瀬、生塩が所属する『セミナー』は、『ミレニアムサイエンススクール』の運営を担う生徒会である。

 

「前から気になっていたのですが、魚里先輩はどうして『セミナー』に入られたのですか?現場で動く方が向いているという話でしたら、C&Cの方がよかったのでは?」

 

「いや、男の俺がメイド服を着るのは流石に・・・。」

 

そもそも、『セミナー』に入ったのはリオに誘われたからである。まあ、その誘った本人がこの場にいないのは如何なものかと思うが。

 

「大丈夫です。きっとお似合いになりますよ。」

「似合う似合わないの問題じゃなくて、尊厳の問題なんだけど。」

 

生塩からの何も大丈夫でないお墨付きをもらったところで、またもや入口の扉が勢いよく開く。

 

「大変です。うちの風力発電所がまたシャットダウンしました!!」

 

「「「・・・・・。」」」

 

突如告げられた悲報により、和みつつあった空気が逆戻りする。先日は、風力発電所が落ちた時には非常電源に切り替わったおかげで大事に至らなかった。しかし、今回は前回から短いスパンでの再発であり、対策をする余裕も、更なる非常電源の準備もできていない。

 

「生塩、ここ直近の消費電力量と残電力量を早瀬に伝えて、どれぐらいで尽きるか計算してくれ。」

 

指示を出して10数秒後、早瀬が計算結果を答える。

 

「・・・えっと、69時間37分12秒です。」

 

短すぎる期間にも感じるが、研究者が多く在籍するミレニアムにおいては仕方がない。むしろ良く持つ方であるだろう。最悪の場合は、公共の電力会社から一時的に電力を購入することもできる。ただ、うちの財政面では大打撃だ。

 

「2人は復旧作業はヴェリタスを中心に依頼しておいてくれ。」

 

俺は外出のために身支度を整え出す──────と言っても、椅子にかけていた上着を羽織るだけだが。

 

「魚里先輩はどちらへ?」

 

入り口ではなく、換気のために開いた窓の方に向かう俺の背中から生塩が質問を投げかけてくるので、俺は窓枠に足を乗せながら振り向いて答える。

 

「連邦生徒会に殴り込みに行ってくる。」

 

そう答えると、俺は窓から飛び降りる。

とても普通の人間が飛び降りて助かる高さではなく、自暴自棄になったことによる身投げにも思えるかもしれないが、いつものことだ。

 

まあ、自暴自棄になったのは事実だが。

 

自らに宿る『呪力』を腹の底から練り上げ、身体を纏うように操作する。特に足回りはより多くだ。呪力を纏うことで、身体能力や頑丈さを引き上げることができる。外の世界にいた時に師匠から教えてもらった技術だ。

 

「──────っ!!」

 

無事に無傷で着地すると、さらに足へと呪力を集中させて駆け出す。

 

自動車にも劣らぬ速さでしばらく走っていると、10数人で固まって立っている不良たちが見えてくる。手には当然のように銃が握られており、中にはガトリング砲のようなものを武装しているものもいる。

 

「またかよ・・・。」

 

これに関しては、普段のキヴォトスと何も変わらない。ここは、銃器で武装するのが当たり前の超銃器社会であり、キヴォトスにいる住民は銃撃や砲撃の直撃すら痛いで済ませるほど頑丈なのだ。

 

ただ、俺は外の世界出身であるため違う。早瀬や生塩、目の前の不良グループたちの頭の上にあるヘイローと呼ばれる輪っかも俺にはなく、まともに銃弾を浴びれば致命傷だ。

 

「止まれ!!無事のまま通りたいなら金目のもn───────」

 

どうやら不良グループたちのターゲットになったらしい。彼女たちは、銃口をこちらにむけて、脅し文句を吐く。しかし、引き金に指をかけるよりも早く、俺は自身の射程範囲内へと入る。

 

「邪魔だ、どけぇえええええ!!!」

 

たった数秒の交戦。

その中で繰り出した呪力を纏った数発の拳と蹴りによって、彼女たちは発砲する間もなく無力化される。

 

「ぐへぇ・・・・。」

 

幸い全員意識はあるようだが、しばらくは激痛で立つことができないだろう。正直女の子に手をあげるのは、自分でもどうかと思うが、力が全てと言わんばかりのキヴォトスに来て数年。もう慣れたものだ。

 

『やらなきゃやられる。』

 

それがキヴォトスでの掟なのである。

 

「こっちは急いでいるんだ。絡むんなら後にしてくれ!」

 

「お、覚えてろ・・・・!!」

 

不良グループのうちの一人が、捨て台詞を吐いているのを尻目に、俺はD.U.へと急ぐのであった。

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